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第二十七節「空白の年月 無念重ねて なお想い途切れず」
~そして見つかる《愛》~
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時間で言えばおおよそ3分程度。
勇が広場で戦い始めてたったその時間だけで……全てのグリュダンは動きを止めた。
広場の中央にはグリュダンだった残骸が山の様に積み重ねられ、全てを終えた勇はその頂きで【光の剣】を無へと還したのだった。
勇の圧倒的な戦闘能力を前に、茶奈はへたり込みながら眺める事しか出来なかった。
彼女が変化を迎えた後の勇の戦いを直に見るのは三回目。
とはいえ……勇の身体能力は以前見た時よりも更に上がっている。
茶奈が想像していた強さよりもずっと遥か高みに……勇は居たのである。
「さすが……勇さんですね……」
いつからか、ずっと憧れていた。
彼の様になりたくて。
誰かを守れる様になりたくて。
そんな彼に後を任されて。
ずっと彼を追い越したつもりだった。
でも、彼はこうしてまだ上に立っている。
彼女はまた……こうして見上げる事が出来る。
自身が最も信頼出来る人の背中を。
茶奈の心が安堵に包まれ、自然に口元から笑みが零れる。
戦いに勝利したからというのもあったかもしれないが……何よりも、勇という存在が未だ健在だという事が喜ばしかったから。
勇が残骸の山の頂で周囲を見渡す。
周囲の被害の事も心配だったが……何よりも、ボロボロだった茶奈が心配だったから。
ゆっくりと振り向き、麓に居る茶奈に気付くと……迷う事無く視線を向けた。
僅かな間……静寂の中で二人の視線が合い、互いに見つめ合う。
いつもなら真っ先に駆け寄って来るはずの勇は未だ頂きに立ったまま。
どこかいつもならない雰囲気の彼に、茶奈はキョトンとした表情を浮かばせる。
太陽を背にした彼の顔は陰りを帯び、表情がよく見えない。
その時、そんな勇の口からそっと……優しい声が響いてきた。
「俺……今までずっと……わかっていなかったんだ……人を守る事がどういう事なのかって……」
それはどこか優しくも訴えたい様な、僅かに声を詰まらせた言葉。
けれどその先がどこか気になって……茶奈は静かに彼の声に耳を傾けた。
勇もまた、まるで彼女の好意に甘える様に……その言葉を連ねる。
「最初はただ、『守らなきゃいけない』ってそう思ってた。 家族だったり、仲間だったり……ただがむしゃらに、守る為に戦わなきゃいけないってさ」
でも、それでも彼は守る事が出来なかった。
彼の力が無かったから?
「そうやって、何でも守ろうとして、それでも届かなくて……ずっと後悔してきた」
それは違う。
彼は守ると言いながら、守っていなかったから。
「エウリィも、あずも……守ってあげる事が出来なかった……それはきっと、守るって事の本質をわかっていなかったから……」
安全な所に置く事が守る事では無い。
戦いから退けさせる事が守る事では無い。
「俺はやっとそれに気付いた気がする……誰を守りたいのか、どうして守りたいのか……」
守るというがどういう事であるのか……その本質に気付けたから。
今こそ彼は言える。
「俺はずっと……君を守りたかったんだ」
ずっと勇の背中を茶奈が支えてきた。
彼女を守り、守られて……一緒にここまで生きてきた。
想いを交わし、共に過ごしながら、二人は知らず内に守ってきたのだ。
互いの願いを……明日を。
「茶奈……俺は最初からずっと……君が好きだったんだ……!」
山の頂で、勇がその手を茶奈へと向けてそっと差し出した。
陰りを帯びたその手はどこか大きく見えて。
そして僅かに傾いた顔に日の光が当たって覗く優しい微笑みが頼もしくて。
そんな彼が目の前に居て。
気付けば茶奈は立ち上がり、踏み出していた。
山を登る事なんて苦じゃなかった。
手足の痛みなんて苦じゃなかった。
彼の下へ行く事なんて……何の抵抗もありはしなかった。
差し出された手を取ると、彼女の小さな掌を彼の指が優しく包み込む。
そっと優しく……その手を引いた。
そんな時の茶奈にも大きな笑顔が生まれ、互いが顔を合わせた時―――
「私も……勇さんが好き……!」
―――二人は心を交わし、本当の≪想い≫に気付く事が出来た。
知らせを受け、心輝・瀬玲・イシュライトが急ぎ現場へと姿を現した。
壊れた建物などを横目に、現れたであろう敵を探しつつ……荒れた道を突き進んでいく。
そんな折、先行したイシュライトが建物の先で何かに気付き……建物の影に隠れる様に頭を引かせた。
「どうした、イシュ?」
不思議に思い、彼に続く様に心輝と瀬玲がそっと建物の影からその先を覗く。
だが二人もまた、その先にある光景に気付くとすぐに頭を引き、建物の影へとそっと隠れた。
「フフ、どうか水を差さぬよう……心輝?」
「バァカ……それ程俺ァ無神経じゃあねぇよ、ったく……ようやくかよ、へへ」
「あの二人だけがずっと気付いていなかったからね……」
三人が声を合わせ、壁に背を預けて空を見上げる。
嬉しさを体現した笑顔を浮かべて。
そんな建物の先、広場の中央。
骸の瓦礫の山の頂で、互いの想いを交わし……二人の男女が抱き合う。
青空の下、太陽の光に包まれて……唇を重ねる二人の姿は、まるで光り輝いているようであった……。
その時にだけ手を差し伸べただけならば、それはただの救いにしかならない。
人を守るという事。
それはすなわち、『守り続ける』という事。
簡単な様で、深く重い言葉。
思う者が多ければ多い程、その手から砂粒の様に零れ、すり抜けていく。
だからこそ、人は守ると決めた者と、こう誓うのだ。
「「共に生き続けよう」」と。
「君だけは必ず守る」という……それは一つのとある誓約。
それは最初からずっと心に在ったのだろう。
ずっと互いを想い続けて、でもそれが何であるかわからなくて。
何度も擦れ違って、再び混じり合って……それでも気付けなかった。
わからないまま、二人は離れ離れとなった。
疎遠になったから、二人はやっとわかったのだ。
それこそが、≪恋≫なのだと。
この日、勇と茶奈は五年越しの≪恋≫に気が付いた。
そして二人の募りに募った想いは≪恋≫を≪愛≫へと昇華える。
今この時……二人は互いに守り合い続ける事を誓い、愛し合う事を受け入れたのだ。
第二十七節 完
勇が広場で戦い始めてたったその時間だけで……全てのグリュダンは動きを止めた。
広場の中央にはグリュダンだった残骸が山の様に積み重ねられ、全てを終えた勇はその頂きで【光の剣】を無へと還したのだった。
勇の圧倒的な戦闘能力を前に、茶奈はへたり込みながら眺める事しか出来なかった。
彼女が変化を迎えた後の勇の戦いを直に見るのは三回目。
とはいえ……勇の身体能力は以前見た時よりも更に上がっている。
茶奈が想像していた強さよりもずっと遥か高みに……勇は居たのである。
「さすが……勇さんですね……」
いつからか、ずっと憧れていた。
彼の様になりたくて。
誰かを守れる様になりたくて。
そんな彼に後を任されて。
ずっと彼を追い越したつもりだった。
でも、彼はこうしてまだ上に立っている。
彼女はまた……こうして見上げる事が出来る。
自身が最も信頼出来る人の背中を。
茶奈の心が安堵に包まれ、自然に口元から笑みが零れる。
戦いに勝利したからというのもあったかもしれないが……何よりも、勇という存在が未だ健在だという事が喜ばしかったから。
勇が残骸の山の頂で周囲を見渡す。
周囲の被害の事も心配だったが……何よりも、ボロボロだった茶奈が心配だったから。
ゆっくりと振り向き、麓に居る茶奈に気付くと……迷う事無く視線を向けた。
僅かな間……静寂の中で二人の視線が合い、互いに見つめ合う。
いつもなら真っ先に駆け寄って来るはずの勇は未だ頂きに立ったまま。
どこかいつもならない雰囲気の彼に、茶奈はキョトンとした表情を浮かばせる。
太陽を背にした彼の顔は陰りを帯び、表情がよく見えない。
その時、そんな勇の口からそっと……優しい声が響いてきた。
「俺……今までずっと……わかっていなかったんだ……人を守る事がどういう事なのかって……」
それはどこか優しくも訴えたい様な、僅かに声を詰まらせた言葉。
けれどその先がどこか気になって……茶奈は静かに彼の声に耳を傾けた。
勇もまた、まるで彼女の好意に甘える様に……その言葉を連ねる。
「最初はただ、『守らなきゃいけない』ってそう思ってた。 家族だったり、仲間だったり……ただがむしゃらに、守る為に戦わなきゃいけないってさ」
でも、それでも彼は守る事が出来なかった。
彼の力が無かったから?
「そうやって、何でも守ろうとして、それでも届かなくて……ずっと後悔してきた」
それは違う。
彼は守ると言いながら、守っていなかったから。
「エウリィも、あずも……守ってあげる事が出来なかった……それはきっと、守るって事の本質をわかっていなかったから……」
安全な所に置く事が守る事では無い。
戦いから退けさせる事が守る事では無い。
「俺はやっとそれに気付いた気がする……誰を守りたいのか、どうして守りたいのか……」
守るというがどういう事であるのか……その本質に気付けたから。
今こそ彼は言える。
「俺はずっと……君を守りたかったんだ」
ずっと勇の背中を茶奈が支えてきた。
彼女を守り、守られて……一緒にここまで生きてきた。
想いを交わし、共に過ごしながら、二人は知らず内に守ってきたのだ。
互いの願いを……明日を。
「茶奈……俺は最初からずっと……君が好きだったんだ……!」
山の頂で、勇がその手を茶奈へと向けてそっと差し出した。
陰りを帯びたその手はどこか大きく見えて。
そして僅かに傾いた顔に日の光が当たって覗く優しい微笑みが頼もしくて。
そんな彼が目の前に居て。
気付けば茶奈は立ち上がり、踏み出していた。
山を登る事なんて苦じゃなかった。
手足の痛みなんて苦じゃなかった。
彼の下へ行く事なんて……何の抵抗もありはしなかった。
差し出された手を取ると、彼女の小さな掌を彼の指が優しく包み込む。
そっと優しく……その手を引いた。
そんな時の茶奈にも大きな笑顔が生まれ、互いが顔を合わせた時―――
「私も……勇さんが好き……!」
―――二人は心を交わし、本当の≪想い≫に気付く事が出来た。
知らせを受け、心輝・瀬玲・イシュライトが急ぎ現場へと姿を現した。
壊れた建物などを横目に、現れたであろう敵を探しつつ……荒れた道を突き進んでいく。
そんな折、先行したイシュライトが建物の先で何かに気付き……建物の影に隠れる様に頭を引かせた。
「どうした、イシュ?」
不思議に思い、彼に続く様に心輝と瀬玲がそっと建物の影からその先を覗く。
だが二人もまた、その先にある光景に気付くとすぐに頭を引き、建物の影へとそっと隠れた。
「フフ、どうか水を差さぬよう……心輝?」
「バァカ……それ程俺ァ無神経じゃあねぇよ、ったく……ようやくかよ、へへ」
「あの二人だけがずっと気付いていなかったからね……」
三人が声を合わせ、壁に背を預けて空を見上げる。
嬉しさを体現した笑顔を浮かべて。
そんな建物の先、広場の中央。
骸の瓦礫の山の頂で、互いの想いを交わし……二人の男女が抱き合う。
青空の下、太陽の光に包まれて……唇を重ねる二人の姿は、まるで光り輝いているようであった……。
その時にだけ手を差し伸べただけならば、それはただの救いにしかならない。
人を守るという事。
それはすなわち、『守り続ける』という事。
簡単な様で、深く重い言葉。
思う者が多ければ多い程、その手から砂粒の様に零れ、すり抜けていく。
だからこそ、人は守ると決めた者と、こう誓うのだ。
「「共に生き続けよう」」と。
「君だけは必ず守る」という……それは一つのとある誓約。
それは最初からずっと心に在ったのだろう。
ずっと互いを想い続けて、でもそれが何であるかわからなくて。
何度も擦れ違って、再び混じり合って……それでも気付けなかった。
わからないまま、二人は離れ離れとなった。
疎遠になったから、二人はやっとわかったのだ。
それこそが、≪恋≫なのだと。
この日、勇と茶奈は五年越しの≪恋≫に気が付いた。
そして二人の募りに募った想いは≪恋≫を≪愛≫へと昇華える。
今この時……二人は互いに守り合い続ける事を誓い、愛し合う事を受け入れたのだ。
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