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第二十八節「疑念の都 真実を求め空へ 崩日凋落」
~SIDE勇-01 引けぬ想い~
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広場に出来た瓦礫の山。
その頂から、二人の男女が滑る様に駆け下りていく。
笑顔を浮かばせ、互いに手を繋ぎながら仲良く降りていく様はまるで恋人のよう。
だがもう、二人は恋人同士なのだろう。
家族でも、友達でも、仲間でも無く。
恋人になろうと約束を交わした訳でもない。
想いを交わし、通じ合った。
ただそれだけだったが……二人にはそれ以上に必要な言葉など無かったのである。
二人が瓦礫の山から降り立つ。
するとまるでそれを見計らっていたかの様に、その遥か先にある建物の影から心輝達が姿を現した。
「おーい!! 勇ーーー!!」
手を振りながら笑顔で駆け寄って来る心輝達を前に、勇もまた驚きながらも大きな笑顔で迎える。
当然だろう……茶奈だけでなく心輝達とも久しぶりの再会を果たしたのだから。
「皆、久しぶりだなぁ!!」
もっとも、勇からしてみれば心輝はテレビなどで見ていたという事もあり、一方的ではあるが言う程の懐かしさを感じてはいなかった様だが。
勇が思わず茶奈の手を離し、彼等の登場に大手で応える。
彼等に先程の事を見られていたなど露知らず。
しかしふと、勇は魔特隊の戒訓を思い出し……心輝達の登場に疑問を抱いた。
「でもお前等、どうしてここに……」
「そうですよ……普段は出れないんじゃ……」
茶奈ですら不思議そうな顔を向ける始末だ。
だが、まるでそんな質問が飛ぶなどわかりきっていたかの様に、瀬玲が手で払い除ける仕草を見せつけながら面倒そうに答えた。
「そりゃもう、緊急性の高い事案なんだからって事で無理矢理出て来たに決まってるじゃん」
彼女曰く、こういった緊急事態に対して特例として【特務急行】が許される事があるのだという。
あくまでも事後結果からそう判断される事であり、飛び出す事が許されている訳ではないが。
「ただ、正直このタイミングでこの事態はヤバいって思ってる」
そう答えた時、瀬玲の表情から余裕の笑顔が消える。
彼女だけではない。
心輝やイシュライトからも既に笑みは消え、真剣な眼差しが勇へと向けられていた。
彼等が思う事態……それを勇もまたそこで認識する。
それは、勇と茶奈の出会っていた事実が公になる可能性が高いという事。
今の世の中、情報はあっという間に拡散する。
それがただの有名人のお忍びであれば、大した話題にもならないだろう。
せいぜい「〇〇がここに居た」程度だ。
だが、今起きた戦いは違う。
【二次転移】という明らかなセンセーショナル性を交えた大事件。
そして勇と茶奈の戦い。
いずれも恐らく既に隠れていた人々によって撮影、拡散されている可能性は大いにあったのだ。
それはすなわち、勇と茶奈が自身に嵌められた枷を解き放ってしまったのを公表してしまったという事に他ならない。
その結果、待つのは……二人の関係者への報復的罰則。
魔特隊のルールを破り捨て、彼等の義務を放棄した事に対する罰則は重く厳しい。
それはこの国に生きる以上、幾ら彼等が力を持とうとも抗う事の出来ない社会の掟なのである。
「……茶奈、これを」
瀬玲がそっと背後に手を回し、何かを取り出す。
それを茶奈へと向けて放り投げると、慌てる様に茶奈が掴み取った。
「これって……イルリスII……」
瀬玲が背負って持ってきていた物……それは茶奈の魔剣だった。
【イルリスエーヴェII】……より航空用に仕上げられ、格納性に富んだ棍型魔剣。
黄金色の筐体に、伸縮機構を有した柄、そして半月斧型の刃に似た飾りが杖先に突き出ているのが特徴的だ。
意匠は前型である【イルリスエーヴェ】を踏襲していると言っても過言ではない。
彼女が使ってきた魔剣【クゥファーライデ】と【イルリスエーヴェ】の機能を掛け合わせた複合型タイプだと言えるだろう。
何故瀬玲がそれを持って来たのかわからず、茶奈がくりんとした目を見開きキョトンとする。
瀬玲は茶奈へ魔剣が渡ると、二人へ向けて静かに答えた。
「二人共……今はどこか遠くに逃げて。 家族は私達がなんとかするから」
それは瀬玲が導き出した、彼等を想うが故の選択。
彼女にはそれしか無かったのだ。
それが二人を守る事が出来る……唯一の提案。
しかしその一言は、逆に今の勇と茶奈にとって何よりも選択したくない選択肢だった。
守るという事を知ったから。
その本当の意味を理解したから。
だから……勇は既に答えを導き出していた。
「セリ……それは出来ない」
即答だった。
その応えを前に、瀬玲、心輝やイシュライトまでもが耳を疑い、その身を固まらせる。
しかし茶奈だけは……勇の答えを聞き届けると、再びそっと彼の手を取った。
彼の想いを理解したからこそ、共にありたいと思ったから。
「俺は……いや、俺達は……」
茶奈の柔らかな手の感触を感じ取り、そっとその手を握り返す。
途端、互いの温もりが手を通し、まるで気持ちまでも共有するかの様に伝わっていった。
「前に進まなきゃいけないんだ。 ずっと踏み出したつもりで足踏みしていただけだったから……」
掴み合った二人の手に力が籠り、強い心を体現していく。
「立ち止まってやっとわかったんだ。 この二年間を越えて……やっと理解出来た」
もはやそこに、恥ずかしさや疚しさなどありはしない。
二人は自信を持ってありのままを曝け出す。
その想いと共に。
「俺達がこの状況を全て解決するんだ。 可能性がある限り……!!」
その時、心輝も瀬玲もイシュライトも……勇の自信に満ち溢れた様を前にただ圧倒されていた。
彼の言う通り、今まではただ依頼を受けて状況を解決していただけなのだろう。
フララジカの解決も、剣聖達の言う通りに任せただけなのだろう。
そして【東京事変】後も、課せられたルールに従っていただけなのだろう。
だが勇はそうする事が本当の解決には至らないと知ったから。
茶奈の心と触れ合って……前に進む事の大事さを知ったから。
二人はもう、前に進む事を決めたのだ。
「現状は茶奈から大体聞いてる。 その上で何か閃くなら教えてくれ、お前達が思う最善策を」
勇の真剣な眼差しが瀬玲へと向けられる。
するとそれに合わせる様に、茶奈や心輝達もが瀬玲に視線を向けた。
こういった時、彼女が何かと悪知恵が回る事を知っているから。
逃走の提案を考えた時と同じ様に。
瀬玲は視線が集まった事に気付くと、観念したかの様に「はぁ……」と溜息を一つ吐いた。
しかし彼女もまた、勇が強い意思を見せた時から考えを巡らせていたのだろう。
悩む事無く、勇へと強い視線を返してその口を開いた。
「……わかった、ならその可能性に賭ける事にする。 でも正直、不透明な事が多すぎて成功する確率なんて弾き出せない事くらいは理解してよね?」
「わかってるさ。 だから全力で答えを導くだけだ」
低いながらもハッキリと、それでいてキレの良さを感じさせる返しの一言。
確固たる意志が声質から伝わってくる様だった。
それを汲み取った瀬玲が静かに頷き、自身の考えうる提案を導き出す。
「……今、日本が世界の情報の一部をシャットアウトしているのは知ってるよね?」
「ああ。 だから俺は世界で起きている事の詳細を知らない」
「なら、貴方のツテに頼る事にする。 日本の現状に詳しく、かつ日本政府の息が掛からない人物……そんな人とコンタクトを取るの。 そしてそこでもし真実を知る事が出来たなら、そこから導き出せる答えからアンタ達の最終行動を決めて」
それは提案と言うよりも、願望に近いものだった。
まるで海底を見ずに潜り、「そこに狙った宝がある」そう信じて底を漁る様なものだ。
ただ、そこに狙った宝があるかどうか……それを知るのは勇の可能性に足る人物のみ。
「今の私達に外部への連絡手段は無い。 私の培ってきた関係も今や無いのと同じ。 だったら外との繋がりをこうなる前から私と同等以上に持っているかもしれないアンタに頼るしか他に無いってワケ」
「外部との繋がり……か……」
勇が顎に手を充てて考えを巡らせる。
勇自身もまた言う程に外部との関係を持っていないだろう。
だが、最善で最良の答えは……すぐに導き出される事となる。
「アンタ達が居ない間、私達がなんとか時間を稼ぐ。 でもあんまり時間は無いと思って。 ……けれど、アンタ達の力なら不可能を可能に出来るって思ってるから、真の相手の度肝を抜く事くらいは出来るハズよ」
「……わかった! ありがとう、セリ、シン、イシュ……皆、頼んだ!!」
「おう、任せとけ!!」
「微力ながら、力添えいたしましょう」
そう交わすと……勇は突然茶奈の腰を取り、抱え上げる。
茶奈は「わわっ」と慌てるものの……それを受け入れる様にじっと彼の腕の中に埋まった。
「茶奈、行こう!!」
「うんっ!!」
ドンッッッ!!!!
激しい衝撃音が周囲に響き渡り、たちまち周囲に突風が吹き荒れる。
心輝達は身を屈ませ衝撃に耐えながらも、二人が消えた空へと視線を向けた。
「ったく勇の奴……前よりすさまじくなってるんじゃねェか?」
「彼の真の実力を拝見した事はありませんでしたが……ここまでとは思いもしませんでしたよ」
堪らず心輝とイシュライトが驚きの表情を浮かべる。
勇は茶奈を抱えたまま空へと跳び去って行ったのだ。
彼が思い付く限りの……最も最善な情報を握る人物の下へと。
「……頼んだよ、二人共……」
瀬玲が、心輝が、イシュライトが……勇と茶奈に希望を託し、願いを送る。
二人の導く可能性が成就する事を祈って。
まだ彼等の思惑は始まったばかり。
その行動が導く結果はまだ誰にもわかりはしない。
広場に出来た瓦礫の山。
その頂から、二人の男女が滑る様に駆け下りていく。
笑顔を浮かばせ、互いに手を繋ぎながら仲良く降りていく様はまるで恋人のよう。
だがもう、二人は恋人同士なのだろう。
家族でも、友達でも、仲間でも無く。
恋人になろうと約束を交わした訳でもない。
想いを交わし、通じ合った。
ただそれだけだったが……二人にはそれ以上に必要な言葉など無かったのである。
二人が瓦礫の山から降り立つ。
するとまるでそれを見計らっていたかの様に、その遥か先にある建物の影から心輝達が姿を現した。
「おーい!! 勇ーーー!!」
手を振りながら笑顔で駆け寄って来る心輝達を前に、勇もまた驚きながらも大きな笑顔で迎える。
当然だろう……茶奈だけでなく心輝達とも久しぶりの再会を果たしたのだから。
「皆、久しぶりだなぁ!!」
もっとも、勇からしてみれば心輝はテレビなどで見ていたという事もあり、一方的ではあるが言う程の懐かしさを感じてはいなかった様だが。
勇が思わず茶奈の手を離し、彼等の登場に大手で応える。
彼等に先程の事を見られていたなど露知らず。
しかしふと、勇は魔特隊の戒訓を思い出し……心輝達の登場に疑問を抱いた。
「でもお前等、どうしてここに……」
「そうですよ……普段は出れないんじゃ……」
茶奈ですら不思議そうな顔を向ける始末だ。
だが、まるでそんな質問が飛ぶなどわかりきっていたかの様に、瀬玲が手で払い除ける仕草を見せつけながら面倒そうに答えた。
「そりゃもう、緊急性の高い事案なんだからって事で無理矢理出て来たに決まってるじゃん」
彼女曰く、こういった緊急事態に対して特例として【特務急行】が許される事があるのだという。
あくまでも事後結果からそう判断される事であり、飛び出す事が許されている訳ではないが。
「ただ、正直このタイミングでこの事態はヤバいって思ってる」
そう答えた時、瀬玲の表情から余裕の笑顔が消える。
彼女だけではない。
心輝やイシュライトからも既に笑みは消え、真剣な眼差しが勇へと向けられていた。
彼等が思う事態……それを勇もまたそこで認識する。
それは、勇と茶奈の出会っていた事実が公になる可能性が高いという事。
今の世の中、情報はあっという間に拡散する。
それがただの有名人のお忍びであれば、大した話題にもならないだろう。
せいぜい「〇〇がここに居た」程度だ。
だが、今起きた戦いは違う。
【二次転移】という明らかなセンセーショナル性を交えた大事件。
そして勇と茶奈の戦い。
いずれも恐らく既に隠れていた人々によって撮影、拡散されている可能性は大いにあったのだ。
それはすなわち、勇と茶奈が自身に嵌められた枷を解き放ってしまったのを公表してしまったという事に他ならない。
その結果、待つのは……二人の関係者への報復的罰則。
魔特隊のルールを破り捨て、彼等の義務を放棄した事に対する罰則は重く厳しい。
それはこの国に生きる以上、幾ら彼等が力を持とうとも抗う事の出来ない社会の掟なのである。
「……茶奈、これを」
瀬玲がそっと背後に手を回し、何かを取り出す。
それを茶奈へと向けて放り投げると、慌てる様に茶奈が掴み取った。
「これって……イルリスII……」
瀬玲が背負って持ってきていた物……それは茶奈の魔剣だった。
【イルリスエーヴェII】……より航空用に仕上げられ、格納性に富んだ棍型魔剣。
黄金色の筐体に、伸縮機構を有した柄、そして半月斧型の刃に似た飾りが杖先に突き出ているのが特徴的だ。
意匠は前型である【イルリスエーヴェ】を踏襲していると言っても過言ではない。
彼女が使ってきた魔剣【クゥファーライデ】と【イルリスエーヴェ】の機能を掛け合わせた複合型タイプだと言えるだろう。
何故瀬玲がそれを持って来たのかわからず、茶奈がくりんとした目を見開きキョトンとする。
瀬玲は茶奈へ魔剣が渡ると、二人へ向けて静かに答えた。
「二人共……今はどこか遠くに逃げて。 家族は私達がなんとかするから」
それは瀬玲が導き出した、彼等を想うが故の選択。
彼女にはそれしか無かったのだ。
それが二人を守る事が出来る……唯一の提案。
しかしその一言は、逆に今の勇と茶奈にとって何よりも選択したくない選択肢だった。
守るという事を知ったから。
その本当の意味を理解したから。
だから……勇は既に答えを導き出していた。
「セリ……それは出来ない」
即答だった。
その応えを前に、瀬玲、心輝やイシュライトまでもが耳を疑い、その身を固まらせる。
しかし茶奈だけは……勇の答えを聞き届けると、再びそっと彼の手を取った。
彼の想いを理解したからこそ、共にありたいと思ったから。
「俺は……いや、俺達は……」
茶奈の柔らかな手の感触を感じ取り、そっとその手を握り返す。
途端、互いの温もりが手を通し、まるで気持ちまでも共有するかの様に伝わっていった。
「前に進まなきゃいけないんだ。 ずっと踏み出したつもりで足踏みしていただけだったから……」
掴み合った二人の手に力が籠り、強い心を体現していく。
「立ち止まってやっとわかったんだ。 この二年間を越えて……やっと理解出来た」
もはやそこに、恥ずかしさや疚しさなどありはしない。
二人は自信を持ってありのままを曝け出す。
その想いと共に。
「俺達がこの状況を全て解決するんだ。 可能性がある限り……!!」
その時、心輝も瀬玲もイシュライトも……勇の自信に満ち溢れた様を前にただ圧倒されていた。
彼の言う通り、今まではただ依頼を受けて状況を解決していただけなのだろう。
フララジカの解決も、剣聖達の言う通りに任せただけなのだろう。
そして【東京事変】後も、課せられたルールに従っていただけなのだろう。
だが勇はそうする事が本当の解決には至らないと知ったから。
茶奈の心と触れ合って……前に進む事の大事さを知ったから。
二人はもう、前に進む事を決めたのだ。
「現状は茶奈から大体聞いてる。 その上で何か閃くなら教えてくれ、お前達が思う最善策を」
勇の真剣な眼差しが瀬玲へと向けられる。
するとそれに合わせる様に、茶奈や心輝達もが瀬玲に視線を向けた。
こういった時、彼女が何かと悪知恵が回る事を知っているから。
逃走の提案を考えた時と同じ様に。
瀬玲は視線が集まった事に気付くと、観念したかの様に「はぁ……」と溜息を一つ吐いた。
しかし彼女もまた、勇が強い意思を見せた時から考えを巡らせていたのだろう。
悩む事無く、勇へと強い視線を返してその口を開いた。
「……わかった、ならその可能性に賭ける事にする。 でも正直、不透明な事が多すぎて成功する確率なんて弾き出せない事くらいは理解してよね?」
「わかってるさ。 だから全力で答えを導くだけだ」
低いながらもハッキリと、それでいてキレの良さを感じさせる返しの一言。
確固たる意志が声質から伝わってくる様だった。
それを汲み取った瀬玲が静かに頷き、自身の考えうる提案を導き出す。
「……今、日本が世界の情報の一部をシャットアウトしているのは知ってるよね?」
「ああ。 だから俺は世界で起きている事の詳細を知らない」
「なら、貴方のツテに頼る事にする。 日本の現状に詳しく、かつ日本政府の息が掛からない人物……そんな人とコンタクトを取るの。 そしてそこでもし真実を知る事が出来たなら、そこから導き出せる答えからアンタ達の最終行動を決めて」
それは提案と言うよりも、願望に近いものだった。
まるで海底を見ずに潜り、「そこに狙った宝がある」そう信じて底を漁る様なものだ。
ただ、そこに狙った宝があるかどうか……それを知るのは勇の可能性に足る人物のみ。
「今の私達に外部への連絡手段は無い。 私の培ってきた関係も今や無いのと同じ。 だったら外との繋がりをこうなる前から私と同等以上に持っているかもしれないアンタに頼るしか他に無いってワケ」
「外部との繋がり……か……」
勇が顎に手を充てて考えを巡らせる。
勇自身もまた言う程に外部との関係を持っていないだろう。
だが、最善で最良の答えは……すぐに導き出される事となる。
「アンタ達が居ない間、私達がなんとか時間を稼ぐ。 でもあんまり時間は無いと思って。 ……けれど、アンタ達の力なら不可能を可能に出来るって思ってるから、真の相手の度肝を抜く事くらいは出来るハズよ」
「……わかった! ありがとう、セリ、シン、イシュ……皆、頼んだ!!」
「おう、任せとけ!!」
「微力ながら、力添えいたしましょう」
そう交わすと……勇は突然茶奈の腰を取り、抱え上げる。
茶奈は「わわっ」と慌てるものの……それを受け入れる様にじっと彼の腕の中に埋まった。
「茶奈、行こう!!」
「うんっ!!」
ドンッッッ!!!!
激しい衝撃音が周囲に響き渡り、たちまち周囲に突風が吹き荒れる。
心輝達は身を屈ませ衝撃に耐えながらも、二人が消えた空へと視線を向けた。
「ったく勇の奴……前よりすさまじくなってるんじゃねェか?」
「彼の真の実力を拝見した事はありませんでしたが……ここまでとは思いもしませんでしたよ」
堪らず心輝とイシュライトが驚きの表情を浮かべる。
勇は茶奈を抱えたまま空へと跳び去って行ったのだ。
彼が思い付く限りの……最も最善な情報を握る人物の下へと。
「……頼んだよ、二人共……」
瀬玲が、心輝が、イシュライトが……勇と茶奈に希望を託し、願いを送る。
二人の導く可能性が成就する事を祈って。
まだ彼等の思惑は始まったばかり。
その行動が導く結果はまだ誰にもわかりはしない。
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