時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
779 / 1,197
第二十八節「疑念の都 真実を求め空へ 崩日凋落」

~SIDE勇-09 魔剣兵製造計画~

しおりを挟む
 現在時刻 日本時間17:53......

 小嶋由子に関する証拠を一通り見終え、勇が出立の準備を始めようと席を立つ。
 すると何を思ったのか、勇の父親が代わりマウスを取り……画面を動かし始めた。

「所でこっちはなんなんだ?」

 彼が見つけたのは、小嶋由子に関する証拠写真を仕舞い込んだフォルダの隣に並ぶもう一つのフォルダ。 
 そこには【魔剣兵製造計画】と銘打たれており、勢いに身を任せた勇の父親がフォルダの中身を開いた。

 その先に現れたのは、研究資料と思しきデータ。
 見慣れた形式のファイルともあり、勇の父親は遠慮する事なく開いた。
 
「これは……なんなんだ……?」

 表計算ソフトを使用した研究資料。
 文字が羅列し、中には計算式や図式などが描かれている。

「何々……『魔剣兵製造プロセスとその有効性』……」

 皆が覗き込む中、ゆっくりとスクロールバーを降ろしていく。
 バーが小さく思える程に長々と連ねられた資料には写真も掲載されており、誰かへの報告用と思われる文体が読み易さを助長していた。

 勇達が見守る中、勇の父親がそれを読み上げていく。

「『魔剣の特性とは、所持者が長期間魔剣を持ち続けて命力と呼ばれるスピリチュアルパワーを高める事で、人知を遥かに超えた力を持てるようになる事である。 だが、その力を持つ為には使用者の精神状態の醸成及び熟練度、戦闘経験などが必須であり、大きな不安定要素を含んでいるのは事実だ』」

 短くまとめられているが、概ねその通りである。
 勇達も長きにわたる戦いと訓練、それと勇が閃いた鍛錬方法で強くなったのだから。

「『だが我々は鋭意ある研究の結果、魔剣に関する最も有用的な活用方法を見つけた。 その方法とはこうだ。 人工命力珠を、熟練者の細胞を培養して造り出した肉の袋に埋め込み、それを包み込む事で、命力珠に熟練者が持っていると錯覚させるのである』」

 そこで資料に貼られていたのは、命力珠のサンプルの画像と、肉塊に命力珠を埋め込む簡易的な図式。
 既に狂気染みていると思われる内容が見え始め、思わず見ている者達の気分を害する。

「『そしてそれをブラックボックス化して被験体の各部へ移植するだけでいい。 被験体は精神制御を行った者が望ましいだろう。 下手に制御が外れた場合、暴走の危険性が考慮されるからだ』」

 その後に貼られていたのは、被験者と思しき人物の裸体写真。
 体中が刻まれたのだろう、縫い跡が幾つも見られる。
 それがおおよそ五人程……いずれも年端も行かぬ子供ばかり。

 痛々しい映像を前に、心を打たれた者達が思わずその口を押さえていた。

「『移植に成功した被験者に魔剣を持たせる事で、当人の命力が熟練者同様の力を発揮する事が可能となった。 ただし基礎能力は被験者次第ともあり、補助的に増幅器ブースター代わりの命力珠を追加移植する事となった。 この時点で全被験者十名の内六人が死亡。 だが残る四人は安定した様子を見せており、一旦の成功とする事にした』」

「ひでぇ……人体実験かよ……!」

 恐らく被験者は身寄りの無い孤児なのだろう。
 その中でも、住所などがわからない様な……特別に身元がわからない者。

「『この実験結果から、命力増幅器ソウルブースターを搭載した被験体を魔剣兵と呼称し、今後の運用を目指して量産計画へ移す事とする』」

「魔剣兵……つまり、人工的に作り出した魔剣使い……」

「それも、精神制御で操り人形っつうオマケつきだぜ……胸糞わりぃ!!」

 気付けば勇達も聴き入り、勇の父親の朗読に耳を貸す。



 だが次の瞬間……不意に勇の父親の声が止まり、震えた声が断続的に漏れ始めていた。



「そ、そんな……」

「どうしたんだ親父……?」

 その先を読んで知ってしまったのだろう。
 知ってしまったのだ……信じられない事実を。

 勇の父親は震えた唇を抑え、再び口を動かし始める。
 それが自分に課せられた役目なのだとしたから。

「続きます……『魔剣兵を量産するにあたり、今回使用した細胞の有用性が立証された為、以降も当細胞を使用し続けるサンプルとする。 採取元の肉体はに耐えられるよう厳重にし、移送の際はせぬよう注意を払って行う事―――』」



 そして彼等は、その事実を前に驚愕する。





「『サンプル体、【園部亜月】の肉体は最重要資料として扱う事』」





 その一言を聞いた途端、心輝の母親が堪らず飛び上がった。

「いやぁあああ!! なんでぇ!!!!」
「お、おい、お前ッ!!」

 奇声にも足る叫び声を上げる彼女を、隣に居た心輝の父親が抱え込む。
 なおも叫び続ける彼女を前に、周りの者達は何もする事が出来ない。

 そして心輝は……静かに佇みながらも……見ただけでわかる程に、体を震わせて命力を昂らせていた。

「でもなんでだ、あずの体は火葬したはずだ!!」

 しかしその答えは……すぐ続きに書かれていた。

「『……葬儀の際に極秘裏にすり替えを行って手に入れたこの肉体はこれ以上に無いサンプルである。 別世界の肉体はサンプルとしては申し分無いが手に入り辛く、細胞とマッチするかどうかが怪しいからである。 今後別世界の人間のサンプルを入手し、研究を重ねる価値はあるだろうが―――』」

「親父、もういい……もう……」

「わかった……」

 心輝の母親が泣き叫ぶ中、彼女を心配する様に母親達が囲う。
 ソファーへ誘い、宥め続ける中……勇達は気持ちを纏め、己の体に力を篭め始めていた。

「これだけでもう十分だ……後は行動に移す……!!」

 勇も、茶奈も、そして心輝も……既に怒りでどうにかなりそうだった。
 知った人物の遺体が道具として扱われている事。
 それが堪らなく悔しくて、悲しくて……。

 もう、彼等に止まる理由は完全に無くなった瞬間であった。

「心輝さん、勇さんと一緒に行ってください。 ここは私が守りますから」

「茶奈ちゃん……すまねぇ、恩に着る……!!」

「行こう、シン……俺達が小嶋由子を止めるんだ。 そしてあずを取り返す……!!」

「ああ……絶対ぜってぇーに許さねぇ……!!」

 怒りを力とし、勇と心輝は力強く踏み出す。
 玄関から飛び出し……都心中央、総理官邸へと向けて飛び上がった。



 全身全霊……持ちうる力を最大限に奮い、二人の戦士が舞う。
 その時、再び空を扇ぐのは一羽の赤鳥。
 暗くなり始めた東京の空を焼き進み、人々の心に様々な情景を焼き付けた。



 家族と、友人達の想いを胸に……彼等は戦地へ向かう。
 間に合うかどうかもわからない現状で、彼等は今あるかもしれない可能性に賭けたのだ。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...