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第二十八節「疑念の都 真実を求め空へ 崩日凋落」
~SIDE福留-02 それは願いの力~
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勇に握られた光の剣。
それが何なのかはわかりはしなかった。
だが、勇はそれを感じ取り、そして引き付けられた。
その結果……彼は福留と再会を果たしたのだ。
二人が相対したのは偶然でも奇跡ではない……必然だったのである。
「この光の剣の力の源は『想いの力』……誰かが願い、想い、訴える事で発現出来る力なんです」
それは……己の想い、願い、感情を乗せて力とする魔剣とは対となる力の源。
デュゼローと戦った時。
遠征で仲間達と共に戦った時。
二次転移でグリュダンと戦った時。
いずれも、条件は整っていたのだ。
日本や世界での多くの人々の想いが。
勇を想う仲間達の期待が。
脅え助けを請う民衆の願いが。
強く、強く……天を駆け巡った時……彼は力を呼び起こす事が出来たのだ。
そして今も、福留が願った心は……勇に届いていた。
それはたった一人分の願いでも、魔剣兵達を一刀両断出来る程に強く激しい力と成って。
「今、魔剣兵を倒したのは福留さん……貴方の願いの力だったんですよ」
福留が獅堂へ願った、「助かって欲しい」という願い。
それは勇へと宿り、魔剣兵を屠る程の力と成ったのである。
「でも、ただ願ったりするだけじゃダメなんです。 前向きの……希望を乗せた想いでなきゃ。 そしてそれを俺は福留さんから感じて力に出来た。 それは福留さんが何を想っているか理解出来たから……」
勇は福留を信じた理由を、願いから感じ取っていたのだろう。
それが勇への敵意では無く……好意に近いものだったから。
「そして俺にその事を気付かせてくれた人が居る。 俺にずっと……想いを乗せてくれた人が。 だから俺はずっと戦ってこれたんだろうって思っています。 その想いは……思っているだけでも信じる事が出来る想いだから……!!」
勇の脳裏に茶奈の笑顔が浮かぶ。
ずっと彼を支えようとしてくれた彼女の想い。
いつか教えてくれた、そんな彼女の価値観。
助けて助けられて……積み重なって来た想いは、もはや信頼を超える。
「だから俺は……信じて愛したい人の為に、前に進みます。 例え遅かろうと、何だろうと……俺は彼女と歩む未来を守る為に、彼女と共に突き進みます……全てを切り開いてでも!!」
その瞳に浮かぶ意思は、例え暗闇に包まれたこの時であってもしっかりと福留の目に留まっていた。
それ程までに、相対する勇は……以前の彼とは違っていたから。
ただ指示を受け、実行に移すだけの受け身だった彼はもう居ない。
福留の前に立つのはもはや想いを揺らす男ではない。
真の意味で自立を果たし、自ら考えて答えを導こうとする……漢だったのである。
彼の変わり様を前に、福留はもはや声一つ上げる事すら叶わない程……目を見開かせた驚きの顔を見せていた。
「福留さん……貴方が例えそれでも敵として立ち塞がると言うならば、俺は貴方を討ちます。 そうしなければ進む事が出来ないなら。 ……その覚悟はもうとっくに出来ています」
想う者を守る為に。
それが彼の信念の源流。
だが、彼の想いは……高く、強く、そして広大だった。
「―――でも、そんな貴方であっても……俺は救いたい……!!」
福留もまた、ずっと勇を支えてきたから。
例え心の内ではどう思っていたかわからなくとも、それだけは間違いない。
勇を助け、支え、苦言を呈し、励まし、願いを乗せる。
そんな彼をずっと信じて来たから。
そして彼は……自分を信じてくれる人々が望む未来《明日》を守る為に―――決心したのだ。
「だから俺は……愛する人や守りたい人々と共に過ごす未来を創る為に、世界を……救います!!」
それはかつてデュゼローがやろうとしていた様に。
だが【救世同盟】のやり方とは違う、彼が思う方法で。
それは剣聖達が追い求める、世界を分断する方法。
勇はこの日……自らの意思で、世界の混沌を払う方法を探す事を決心したのだ。
争い合う世界では無く。
憎み合う世界では無く。
人と魔者が互いに手を取り合い、明日を創れる様にする為に。
世界の滅亡に根本から抗う為に。
勇の見せた覚悟と決心は……福留の心に強く響き渡る。
それは彼の心を揺れ動かすには十分過ぎる程に。
「勇君……そう、ですか……そう……」
途端、福留の腕が力無くだらりと下がり……拍子に拳銃が地面へと転がり落ちる。
虚しく響く乾いた擦れ音は、炎の音に掻き消され無為に消えていった。
そんな中で、福留の口元から……鼻をすする音が僅かに響く。
僅かに届く炎の貰い光で瞳を瞬かせながら。
「君は……強くなったんですね、私の知らない間に……大きく……」
彼は彼なりに、勇へ思う所があったのだろう。
彼に期待し、育ててきた事で……。
そして失望していたから。
勇が潔く引き下がり、魔特隊を辞めた事を。
そこで「彼は終わった」……そう思っていたから。
それはきっと、只の勘違いに過ぎなかったのだろう。
成長した勇という存在が目の前に現れた今が、何よりもそれを強く証明した瞬間だった。
そんな最中、空に赤い光が筋を描いて近づいてくる。
獅堂の下から駆け付けた心輝の到着であった。
炎を纏いながら着地を果たした心輝に二人の視線が向けられる。
二人からしんみりとした顔付きで見つめられ、視線のやり場に困った心輝は思わず空を見上げた。
「お、まぁなんつか、雰囲気的に? 解決したんだよな?」
「ああ、わかってくれたよ」
「ええ、心輝君達にも大変心配をお掛けしました……」
心輝が現れた途端に和やかな雰囲気となったのか……勇の顔に笑顔が浮かぶ。
だが依然として福留は神妙な面持ちを保持したまま、二人に顔を向けた。
「本当ならゆっくりお話をしたい所ですが……時間が無いので早急にいきます。 勇君、これを」
すると何を思ったのか、福留が懐からスマートフォンを取り出して勇に差し出す。
そこに映っていたのは、素早く操作されて浮かび上がった地図と何かのアイコン。
点滅し続けるアイコンは常に地図上を動き続けており、何かが移動している事を示している様であった。
「これは?」
「小嶋由子の乗る車に発信機を取り付けてあります。 これは彼女を追跡しているマーカです」
それを勇が受け取り見つめる。
そこはまだ日本であるのだろう、周囲の地名が日本語で表示されていた。
「彼女はまだ日本に居ます。 今頃成田空港へ向かっているハズです。 ですが、もし彼女が国外に飛べばもう追跡は不可能となり、彼女の足取りは潰えます。 だから彼女が国内に居る内に捕らえてください……さもなければ、君達はアウトです」
既にマップ上には成田空港の近くである事を悟らせる表記が映っており、その間は僅か10分程で届く距離。
物理的に考えれば追い付くなど到底無理な話である。
「それとこれも」
福留が再び懐へと手を伸ばす。
そしてすぐに出て来たのはタブレット。
「ここには【魔剣技研】と呼ばれる施設の場所が記録されています。 その場所には魔剣兵の製造工場が存在します。 事情は知っていますね?」
二人が素早く頷き応えると、福留は空かさず声を連ねる。
「もし片方だけに集中すれば片方には逃げられます。 なので同時に叩く必要があります。 貴方達なら、やれますね?」
再び二人が頷き、素早く意思を疎通させる。
そして勇と心輝が視線を合わせると……心輝が勇よりも先に身を乗り出し声を上げた。
「なら俺が【魔剣技研】をやる!!」
心輝が放ったのは、これ以上に無い強い意思。
時間が圧しているのにも拘らず、二人の間に緊張にも足る間が生まれていた。
「……いいのか?」
「ああ……俺が行かなきゃなんねぇ……ッ!!」
そう言い放つ彼は……既に怒りを臨界にまで達させていた。
心の奥底から湧き出る様な怒りに震えた声が何よりもの証拠であろう。
「わかった……なら頼む!!」
勇がそっとタブレットを心輝に渡す。
そして二人が目標を見定めると……そっと小さく囁いた。
「福留さん……また後でゆっくり話しましょう」
その一言を最後に、二人は闇落ちる空へと姿を消した。
吹き荒れる風が福留の体を揺するも、辛うじて支え耐える。
いずこかに消えたかもわからぬ状況で、福留は一人空を仰ぎ……静かに呟いた。
「……ええ、是非ともゆっくりと……話し合いたいですねぇ……」
彼の顔にはいつもの笑顔が戻っていた。
いつも勇達に向けていた、穏やかな笑顔が。
何を思っての行動か……落とした拳銃を探して拾い上げると、装填していた弾丸を静かに抜き出して懐に仕舞い込む。
そっと近くの塀へと寄っていき、静かに腰を掛け、そこへ背を預けた。
「ふぅー……」と深い溜息が彼の口から吐き出され、疲れを僅かに癒す。
彼も老人だ……疲れない訳がないのだから。
「私も年老いたものですね……ははは……」
そんな弱音を一つぽつりと漏らすと、彼は再び空を見上げる。
勇達が自分達の為に国を変えようとしている。
それが良い事かと言われればそうではないのだろう。
だが結果的に良くなれば、それでいいのだろう。
そして彼等が正しい事を望むのならば……きっと悪い世界にはなりはしない。
少なくとも、自身が計画していた事を下回る事は無いだろうと信じたのだ。
福留は【東京事変】以降、今までずっと小嶋由子と行動を共にしてきた。
それは彼女がオファーしたからという事もあったが、彼自身も共に居るべきだと察したから。
それは何故か?
小嶋由子の躍進に疑念を持ったからだ。
彼女、小嶋由子の求心力は元々強かったのは真実だ。
強硬派と呼ばれ、強気の姿勢は後退した日本経済下で苦しむ人々の指示を多く得ていたのが専らの要因である。
だが突然、その力が急激に強くなった。
前総理である鷹峰氏の退任後、彼女は官僚としての経験が無かったにも拘らず、多くの官僚の支持を得て総理の座を勝ち取ったのだ。
そこに疑念を感じ、密かに調査しようとしたのがキッカケだった。
そして福留の予感は的中していた。
彼女が【救世】のメンバーであった事がわかったのである。
でも、だからこそ彼は潔く受けたのだ
それが最も信憑性の高い情報を得る方法だったから。
福留はずっと己の心を殺して、小嶋の正体を突き止める為に彼女の下で働き続けていたのである。
小嶋は隠す事も無く【救世同盟】としての活動をも指示し、彼はそれを潔く受け続けてきた。
彼女が彼の内情を知っていたかどうかは定かではないが……福留が優秀だったからこそ「裏切る事が出来ない」、そう知って敢えて任せた所があったのかもしれない。
それがアメリカ政府にとっては彼を『共謀者』とするには十分過ぎたのだろう。
しかしそれも福留にとっては想定の内だった。
福留には一つの目的があったから。
それは……【救世同盟】に反旗を翻すという事。
福留は元々、裏側の人間だ。
表舞台に立つ事無く、裏側から日本だけでなく各国の助けを行い支える為に動く人物である。
今までもそうだ。
勇達と出会った時も裏側の人間としてフェノーダラと接触しようと動いていた。
魔特隊も裏側の存在だったから、彼はトップとして動く事が出来た。
そして魔特隊が表舞台に出た瞬間、彼は姿を消した。
彼は今まで表舞台に立った事は無いのである。
だが今、彼は覚悟を決めて表舞台に立とうとしていた。
それは己の正義感が故に。
今までに培ってきた己のコネクションを最大限に発揮し、【救世同盟】に反抗しようとしていたのだ。
だが今日、彼はらしくもなく本気で焦っていた。
小嶋由子の動きが想定を超えて早かったからだ。
その原因である勇と茶奈の行動も、彼にとっては大きな誤算だった。
想定外の事態に彼の計画は大き崩れ始め、大きな不安となって襲い掛かっていたのである。
だがもう何も心配ないと感じた彼は静かに体を休め、彼等に願う。
そう願い、そう想えるから……福留は自らの思惑を棄て、勇達に道を託す事が出来たのだ。
勇達のしている事は言うなれば反撃。
福留の反抗計画よりもずっと効果的な【救世同盟】への一撃となるだろう。
そう、期待せずにはいられない。
福留の口元に浮かぶ笑みがそれを物語っている様に見えた……。
勇に握られた光の剣。
それが何なのかはわかりはしなかった。
だが、勇はそれを感じ取り、そして引き付けられた。
その結果……彼は福留と再会を果たしたのだ。
二人が相対したのは偶然でも奇跡ではない……必然だったのである。
「この光の剣の力の源は『想いの力』……誰かが願い、想い、訴える事で発現出来る力なんです」
それは……己の想い、願い、感情を乗せて力とする魔剣とは対となる力の源。
デュゼローと戦った時。
遠征で仲間達と共に戦った時。
二次転移でグリュダンと戦った時。
いずれも、条件は整っていたのだ。
日本や世界での多くの人々の想いが。
勇を想う仲間達の期待が。
脅え助けを請う民衆の願いが。
強く、強く……天を駆け巡った時……彼は力を呼び起こす事が出来たのだ。
そして今も、福留が願った心は……勇に届いていた。
それはたった一人分の願いでも、魔剣兵達を一刀両断出来る程に強く激しい力と成って。
「今、魔剣兵を倒したのは福留さん……貴方の願いの力だったんですよ」
福留が獅堂へ願った、「助かって欲しい」という願い。
それは勇へと宿り、魔剣兵を屠る程の力と成ったのである。
「でも、ただ願ったりするだけじゃダメなんです。 前向きの……希望を乗せた想いでなきゃ。 そしてそれを俺は福留さんから感じて力に出来た。 それは福留さんが何を想っているか理解出来たから……」
勇は福留を信じた理由を、願いから感じ取っていたのだろう。
それが勇への敵意では無く……好意に近いものだったから。
「そして俺にその事を気付かせてくれた人が居る。 俺にずっと……想いを乗せてくれた人が。 だから俺はずっと戦ってこれたんだろうって思っています。 その想いは……思っているだけでも信じる事が出来る想いだから……!!」
勇の脳裏に茶奈の笑顔が浮かぶ。
ずっと彼を支えようとしてくれた彼女の想い。
いつか教えてくれた、そんな彼女の価値観。
助けて助けられて……積み重なって来た想いは、もはや信頼を超える。
「だから俺は……信じて愛したい人の為に、前に進みます。 例え遅かろうと、何だろうと……俺は彼女と歩む未来を守る為に、彼女と共に突き進みます……全てを切り開いてでも!!」
その瞳に浮かぶ意思は、例え暗闇に包まれたこの時であってもしっかりと福留の目に留まっていた。
それ程までに、相対する勇は……以前の彼とは違っていたから。
ただ指示を受け、実行に移すだけの受け身だった彼はもう居ない。
福留の前に立つのはもはや想いを揺らす男ではない。
真の意味で自立を果たし、自ら考えて答えを導こうとする……漢だったのである。
彼の変わり様を前に、福留はもはや声一つ上げる事すら叶わない程……目を見開かせた驚きの顔を見せていた。
「福留さん……貴方が例えそれでも敵として立ち塞がると言うならば、俺は貴方を討ちます。 そうしなければ進む事が出来ないなら。 ……その覚悟はもうとっくに出来ています」
想う者を守る為に。
それが彼の信念の源流。
だが、彼の想いは……高く、強く、そして広大だった。
「―――でも、そんな貴方であっても……俺は救いたい……!!」
福留もまた、ずっと勇を支えてきたから。
例え心の内ではどう思っていたかわからなくとも、それだけは間違いない。
勇を助け、支え、苦言を呈し、励まし、願いを乗せる。
そんな彼をずっと信じて来たから。
そして彼は……自分を信じてくれる人々が望む未来《明日》を守る為に―――決心したのだ。
「だから俺は……愛する人や守りたい人々と共に過ごす未来を創る為に、世界を……救います!!」
それはかつてデュゼローがやろうとしていた様に。
だが【救世同盟】のやり方とは違う、彼が思う方法で。
それは剣聖達が追い求める、世界を分断する方法。
勇はこの日……自らの意思で、世界の混沌を払う方法を探す事を決心したのだ。
争い合う世界では無く。
憎み合う世界では無く。
人と魔者が互いに手を取り合い、明日を創れる様にする為に。
世界の滅亡に根本から抗う為に。
勇の見せた覚悟と決心は……福留の心に強く響き渡る。
それは彼の心を揺れ動かすには十分過ぎる程に。
「勇君……そう、ですか……そう……」
途端、福留の腕が力無くだらりと下がり……拍子に拳銃が地面へと転がり落ちる。
虚しく響く乾いた擦れ音は、炎の音に掻き消され無為に消えていった。
そんな中で、福留の口元から……鼻をすする音が僅かに響く。
僅かに届く炎の貰い光で瞳を瞬かせながら。
「君は……強くなったんですね、私の知らない間に……大きく……」
彼は彼なりに、勇へ思う所があったのだろう。
彼に期待し、育ててきた事で……。
そして失望していたから。
勇が潔く引き下がり、魔特隊を辞めた事を。
そこで「彼は終わった」……そう思っていたから。
それはきっと、只の勘違いに過ぎなかったのだろう。
成長した勇という存在が目の前に現れた今が、何よりもそれを強く証明した瞬間だった。
そんな最中、空に赤い光が筋を描いて近づいてくる。
獅堂の下から駆け付けた心輝の到着であった。
炎を纏いながら着地を果たした心輝に二人の視線が向けられる。
二人からしんみりとした顔付きで見つめられ、視線のやり場に困った心輝は思わず空を見上げた。
「お、まぁなんつか、雰囲気的に? 解決したんだよな?」
「ああ、わかってくれたよ」
「ええ、心輝君達にも大変心配をお掛けしました……」
心輝が現れた途端に和やかな雰囲気となったのか……勇の顔に笑顔が浮かぶ。
だが依然として福留は神妙な面持ちを保持したまま、二人に顔を向けた。
「本当ならゆっくりお話をしたい所ですが……時間が無いので早急にいきます。 勇君、これを」
すると何を思ったのか、福留が懐からスマートフォンを取り出して勇に差し出す。
そこに映っていたのは、素早く操作されて浮かび上がった地図と何かのアイコン。
点滅し続けるアイコンは常に地図上を動き続けており、何かが移動している事を示している様であった。
「これは?」
「小嶋由子の乗る車に発信機を取り付けてあります。 これは彼女を追跡しているマーカです」
それを勇が受け取り見つめる。
そこはまだ日本であるのだろう、周囲の地名が日本語で表示されていた。
「彼女はまだ日本に居ます。 今頃成田空港へ向かっているハズです。 ですが、もし彼女が国外に飛べばもう追跡は不可能となり、彼女の足取りは潰えます。 だから彼女が国内に居る内に捕らえてください……さもなければ、君達はアウトです」
既にマップ上には成田空港の近くである事を悟らせる表記が映っており、その間は僅か10分程で届く距離。
物理的に考えれば追い付くなど到底無理な話である。
「それとこれも」
福留が再び懐へと手を伸ばす。
そしてすぐに出て来たのはタブレット。
「ここには【魔剣技研】と呼ばれる施設の場所が記録されています。 その場所には魔剣兵の製造工場が存在します。 事情は知っていますね?」
二人が素早く頷き応えると、福留は空かさず声を連ねる。
「もし片方だけに集中すれば片方には逃げられます。 なので同時に叩く必要があります。 貴方達なら、やれますね?」
再び二人が頷き、素早く意思を疎通させる。
そして勇と心輝が視線を合わせると……心輝が勇よりも先に身を乗り出し声を上げた。
「なら俺が【魔剣技研】をやる!!」
心輝が放ったのは、これ以上に無い強い意思。
時間が圧しているのにも拘らず、二人の間に緊張にも足る間が生まれていた。
「……いいのか?」
「ああ……俺が行かなきゃなんねぇ……ッ!!」
そう言い放つ彼は……既に怒りを臨界にまで達させていた。
心の奥底から湧き出る様な怒りに震えた声が何よりもの証拠であろう。
「わかった……なら頼む!!」
勇がそっとタブレットを心輝に渡す。
そして二人が目標を見定めると……そっと小さく囁いた。
「福留さん……また後でゆっくり話しましょう」
その一言を最後に、二人は闇落ちる空へと姿を消した。
吹き荒れる風が福留の体を揺するも、辛うじて支え耐える。
いずこかに消えたかもわからぬ状況で、福留は一人空を仰ぎ……静かに呟いた。
「……ええ、是非ともゆっくりと……話し合いたいですねぇ……」
彼の顔にはいつもの笑顔が戻っていた。
いつも勇達に向けていた、穏やかな笑顔が。
何を思っての行動か……落とした拳銃を探して拾い上げると、装填していた弾丸を静かに抜き出して懐に仕舞い込む。
そっと近くの塀へと寄っていき、静かに腰を掛け、そこへ背を預けた。
「ふぅー……」と深い溜息が彼の口から吐き出され、疲れを僅かに癒す。
彼も老人だ……疲れない訳がないのだから。
「私も年老いたものですね……ははは……」
そんな弱音を一つぽつりと漏らすと、彼は再び空を見上げる。
勇達が自分達の為に国を変えようとしている。
それが良い事かと言われればそうではないのだろう。
だが結果的に良くなれば、それでいいのだろう。
そして彼等が正しい事を望むのならば……きっと悪い世界にはなりはしない。
少なくとも、自身が計画していた事を下回る事は無いだろうと信じたのだ。
福留は【東京事変】以降、今までずっと小嶋由子と行動を共にしてきた。
それは彼女がオファーしたからという事もあったが、彼自身も共に居るべきだと察したから。
それは何故か?
小嶋由子の躍進に疑念を持ったからだ。
彼女、小嶋由子の求心力は元々強かったのは真実だ。
強硬派と呼ばれ、強気の姿勢は後退した日本経済下で苦しむ人々の指示を多く得ていたのが専らの要因である。
だが突然、その力が急激に強くなった。
前総理である鷹峰氏の退任後、彼女は官僚としての経験が無かったにも拘らず、多くの官僚の支持を得て総理の座を勝ち取ったのだ。
そこに疑念を感じ、密かに調査しようとしたのがキッカケだった。
そして福留の予感は的中していた。
彼女が【救世】のメンバーであった事がわかったのである。
でも、だからこそ彼は潔く受けたのだ
それが最も信憑性の高い情報を得る方法だったから。
福留はずっと己の心を殺して、小嶋の正体を突き止める為に彼女の下で働き続けていたのである。
小嶋は隠す事も無く【救世同盟】としての活動をも指示し、彼はそれを潔く受け続けてきた。
彼女が彼の内情を知っていたかどうかは定かではないが……福留が優秀だったからこそ「裏切る事が出来ない」、そう知って敢えて任せた所があったのかもしれない。
それがアメリカ政府にとっては彼を『共謀者』とするには十分過ぎたのだろう。
しかしそれも福留にとっては想定の内だった。
福留には一つの目的があったから。
それは……【救世同盟】に反旗を翻すという事。
福留は元々、裏側の人間だ。
表舞台に立つ事無く、裏側から日本だけでなく各国の助けを行い支える為に動く人物である。
今までもそうだ。
勇達と出会った時も裏側の人間としてフェノーダラと接触しようと動いていた。
魔特隊も裏側の存在だったから、彼はトップとして動く事が出来た。
そして魔特隊が表舞台に出た瞬間、彼は姿を消した。
彼は今まで表舞台に立った事は無いのである。
だが今、彼は覚悟を決めて表舞台に立とうとしていた。
それは己の正義感が故に。
今までに培ってきた己のコネクションを最大限に発揮し、【救世同盟】に反抗しようとしていたのだ。
だが今日、彼はらしくもなく本気で焦っていた。
小嶋由子の動きが想定を超えて早かったからだ。
その原因である勇と茶奈の行動も、彼にとっては大きな誤算だった。
想定外の事態に彼の計画は大き崩れ始め、大きな不安となって襲い掛かっていたのである。
だがもう何も心配ないと感じた彼は静かに体を休め、彼等に願う。
そう願い、そう想えるから……福留は自らの思惑を棄て、勇達に道を託す事が出来たのだ。
勇達のしている事は言うなれば反撃。
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
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