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第二十八節「疑念の都 真実を求め空へ 崩日凋落」
~SIDE勇-14 野望の終焉~
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現在時刻 日本時間19:24......
「もう諦めろ、小嶋由子……俺はもうお前を見逃すつもりはない!!」
「くッ……藤咲勇……ッ!!」
「俺は知った……アンタが今までやってきた事を。 その所為で多くの命が奪われた……そして今も……!! だから俺はアンタを許す気なんて無い……その思想がある限り、世界は救われないッ!!」
勇が怒声を上げ、怒りに身を震えさせる。
小嶋由子の所業を知り、今なお繰り返そうとしている事が許せないから。
しかし勇がそう言い放つと……小嶋は怯えながらもその目を鋭く剥き、睨み返した。
「ふ……ふふ……救われない、ですって……ハッ! 誰も救って欲しいなんて頼んでないでしょう?」
「ッ!?」
「いいえ、例え命を救われても、この腐った世の中で生きていくよりは……理想を描いたまま死んだ方がマシでしょうね?」
勇と小嶋……価値観は全く別だった。
勇にとって、この世界は命に溢れた明るい世界。
だが小嶋にとっては……この世界は醜い者で溢れかえる肥溜めでしかない。
二人が噛み合う余地などありはしなかったのだ。
「お前の様な若造が……本当に救えると思っているのですか!? こんな醜い世界を……ッ!!」
どうしようもないしがらみに縛られて。
信じていた世界に裏切られて。
もう彼女は救えないと理解したから。
「―――出来る訳がないッ!! 愚劣な人間を全部始末しない限りッ!! だから私がやるのだ!! 私が新世界を統べると言っているッ!!」
「アンタも同じ様な事を!!」
「裸で結構!! ならば裸でいられる世界を創り上げるだけ!! 民衆など必要無い!! 私を崇め讃える存在以外は不要!!」
確固たる意志がそこにあった。
勇も、小嶋も、互いに譲れぬ想いの形が。
価値観が違うが故に、その根幹の大事さをも異なる。
彼女の心に潜む闇がどれだけ深いのか。
おぞましいまでに歪んだ欲望と絶望は……彼の知る何よりも深い。
それでも勇はそんな人間を多く見て来た。
嫌になる程に。
だから彼はここに居る。
全ては払拭出来る、そう信じているのだから。
「……確かに愚かな人間は沢山いる……俺だってそんな事くらいは知っている!! だから殺して、無かった事にしたって……根源が変わらなきゃ何も変えられない……」
「だから全ての愚民を滅ぼせばいい!!」
「それは違う!! 例え滅んだとしても……次に愚かになるのはアンタ達だッ!!」
「ッ!?」
小嶋の声が思わず詰まる。
彼女の理想の根幹が勇の言葉で揺れ動く。
「アンタ達は人を殺す事で収まる事を知る……そうすればもう止まらない!! 気に入らなければ殺し、邪魔であれば殺す……そうすればもう、それを良しとする誰もが愚か者になるだけじゃないかッ!! 人間そのものの意識を変えなければ後にも先にも同じ事が続くだけだ!!」
「う、うるさいッ!! そうならない為の愚民という犠牲が必要なのだッ!! お前もその一人だ藤咲勇ッ!!」
だがそれでも小嶋は止まらない
止められない。
意固地でも頑固でもなく……彼女は自分の理想を盲信し続けているから。
そして勇もまた気付く。
彼女はもう止まれないのだという事を。
理想に溺れ、道を踏み外し、人間であって人である事を辞めた彼女はもう……。
説得すら叶わず、小嶋はなお勇に敵意を向け続ける。
小嶋は命力も操れない、いわば普通の人間。
逃げる事など敵わないだろう。
捕まえる事など、勇にとっては簡単な事だった。
しかし小嶋は言い合いの最中、咄嗟に算段を練っていた。
自分が何も出来ない人間……そう思わせればいいのだ、と。
隙を伺い、殺してしまえばいいのだ、と。
どうしてそう思えたのか。
それは彼女にそう思わしめた要因が、勇の背後から迫っていたからだ。
音も無く忍び寄る三つの影。
それが小嶋の切り札……魔剣兵。
彼女の護衛用に配備された、最後の三体である。
小嶋が心を殺す。
勇に悟られない為に。
勇も気付かない。
その視線が彼女に向けられている限り。
その敵意、その殺意が……彼の首元すぐに迫っていた事に。
……そう思い込んでいた。
キュィィィーーーーーーンッ!!
空気を裂く様な鳴音が周囲に鳴り響く。
その時、勇を中心とした閃光の輪が突如浮かび上がっていた。
大きく刻まれた輪は、小嶋の視界にすら映る程にハッキリと、その場に残り続けている。
だがそれを描いた挙動は見えていない。
そもそも勇の体そのものに変化は無く、小嶋に向けられ続けていた。
その手に掴んだ光の剣以外は。
小嶋が事態を認識した時……既にその顔には怯懦に足る怯えに引きつった表情を浮かべていた。
勇に飛び掛かっていた魔剣兵が漏れなくその体を真っ二つに裂かれ、大地へ転がっていたからである。
「な……あ……ああ……!?」
そして認識する。
彼女の手駒が全て失った事を。
もはや自身を守るモノは何も無いという現実を。
「諦めろと言ったハズだ小嶋由子……もう逃げ場なんてありはしない!! 公安もアンタの正体を知った……待っているのは罪を償う事だけだッ!!」
「……ふ、ふざけるなぁッ!!」
「ッ!?」
すると何を思ったのか……小嶋が突然その身を乗り出し、大地へ飛び掛かった。
そこにあったのは平野が落とした拳銃。
空かさず拳銃を拾い上げ、両腕を水平に並べて両手で構える。
銃など持った事が無いであろう、素人の持ち方だ。
しかし構えが普通でなくとも、近くに居る勇に当たらない距離では無い。
敵意を乗せ、指を引き金に掛け……勇目掛けて銃口を向ける。
それに対し……勇は彼女の一連の行動を前に身じろぐ事無く彼女を睨み付けたまま。
「お前さえいなければ……お前さえェェッ!!」
ダァンッ!!
空港に響く発砲音。
小嶋の握る拳銃から銃弾が解き放たれ、一直線に勇へと向かっていく。
だが……銃弾は彼の体に当たるや否や、弾けて逸れて無為に消えた。
赤の残光が彼方へ消え、虚しい間が二人の間に呼び込まれる。
もう小嶋には……その意味を考える余裕すら、ありはしなかった。
「うわああああああ!!!!!」
ダァン!!
ダァン!!
己のか細い腕の痛みなど忘れ、発砲の反動に苦しみ苛まれながらも……小嶋は何度も、何度も発砲し続けた。
腕が跳ね上がってもなお歯を食いしばり、脅えた表情を浮かべながら……必死に撃ち続けた。
暗闇に赤い閃光が幾度と無く筋を作り、それでもなお弾かれ虚空に舞っていくとしても。
「なんで……対命力弾のハズ……なんでえッ!?」
その中でも勇は怯む事無く、そんな彼女との距離を詰めていく。
そんな光景を空港から多くの人々が覗き見る中……小嶋はなおも撃ち続けていた。
ガチッ!!
遂に銃弾が底を突き、拳銃の上部スライダがホールドされる。
だがそんな事など知らぬ小嶋がなおも引き金を引き続けた。
虚しい空回り音が響き渡る中……遂に勇が小嶋の前へと辿り着く。
怯え惑う小嶋はとうとう背を車へとへばりつかせ、恐怖で慄かせた表情を見せたのだった。
「う……ああ……!?」
「例え愚かでも、人は変わる事が出来る。 俺がそうだった様に……きっかけさえあれば変えられるんだ。 だからもう、皆からその可能性を奪うな!!」
「あ、ううぅ……うああクソがああああァーーーーーー!!」
追い詰められた小嶋が手に持った銃を振り上げ、今までに無いおぞましい敵意を振りまく。
憤怒、憎悪、諦念……様々な負の感情を篭めた攻撃の意思は、勇へ向けて振り下ろされた。
そして彼女は見る事だろう。
勇が携えし光の剣、その太刀筋を。
凡人である小嶋ですら見える程に、ハッキリとした形で刻まれた……横一閃。
彼女の目線中心を抜ける様に刻まれた太刀筋は、車の上部を巻き込む形で振り切られた。
小嶋が目を大きく見開く中……背後で金属の弾ける音が「バキン」と鳴り響く。
それは車の天板が本体から離れ、自重でズレ落ちた音。
間も無く、天板の落下した音が……「ガシャン!!」と続けて鳴り響いた。
それを聴いた途端、小嶋はぐるりと目を回し……そしてそのまま糸が切れた操り人形の様に倒れ込んだのであった。
小嶋自身は斬れてなどいなかった。
彼女が切れない様、光の剣に細工を施していたのである。
彼女もまたいつか変わる日が来る……そう信じ、罪を償わせる為に。
「もう諦めろ、小嶋由子……俺はもうお前を見逃すつもりはない!!」
「くッ……藤咲勇……ッ!!」
「俺は知った……アンタが今までやってきた事を。 その所為で多くの命が奪われた……そして今も……!! だから俺はアンタを許す気なんて無い……その思想がある限り、世界は救われないッ!!」
勇が怒声を上げ、怒りに身を震えさせる。
小嶋由子の所業を知り、今なお繰り返そうとしている事が許せないから。
しかし勇がそう言い放つと……小嶋は怯えながらもその目を鋭く剥き、睨み返した。
「ふ……ふふ……救われない、ですって……ハッ! 誰も救って欲しいなんて頼んでないでしょう?」
「ッ!?」
「いいえ、例え命を救われても、この腐った世の中で生きていくよりは……理想を描いたまま死んだ方がマシでしょうね?」
勇と小嶋……価値観は全く別だった。
勇にとって、この世界は命に溢れた明るい世界。
だが小嶋にとっては……この世界は醜い者で溢れかえる肥溜めでしかない。
二人が噛み合う余地などありはしなかったのだ。
「お前の様な若造が……本当に救えると思っているのですか!? こんな醜い世界を……ッ!!」
どうしようもないしがらみに縛られて。
信じていた世界に裏切られて。
もう彼女は救えないと理解したから。
「―――出来る訳がないッ!! 愚劣な人間を全部始末しない限りッ!! だから私がやるのだ!! 私が新世界を統べると言っているッ!!」
「アンタも同じ様な事を!!」
「裸で結構!! ならば裸でいられる世界を創り上げるだけ!! 民衆など必要無い!! 私を崇め讃える存在以外は不要!!」
確固たる意志がそこにあった。
勇も、小嶋も、互いに譲れぬ想いの形が。
価値観が違うが故に、その根幹の大事さをも異なる。
彼女の心に潜む闇がどれだけ深いのか。
おぞましいまでに歪んだ欲望と絶望は……彼の知る何よりも深い。
それでも勇はそんな人間を多く見て来た。
嫌になる程に。
だから彼はここに居る。
全ては払拭出来る、そう信じているのだから。
「……確かに愚かな人間は沢山いる……俺だってそんな事くらいは知っている!! だから殺して、無かった事にしたって……根源が変わらなきゃ何も変えられない……」
「だから全ての愚民を滅ぼせばいい!!」
「それは違う!! 例え滅んだとしても……次に愚かになるのはアンタ達だッ!!」
「ッ!?」
小嶋の声が思わず詰まる。
彼女の理想の根幹が勇の言葉で揺れ動く。
「アンタ達は人を殺す事で収まる事を知る……そうすればもう止まらない!! 気に入らなければ殺し、邪魔であれば殺す……そうすればもう、それを良しとする誰もが愚か者になるだけじゃないかッ!! 人間そのものの意識を変えなければ後にも先にも同じ事が続くだけだ!!」
「う、うるさいッ!! そうならない為の愚民という犠牲が必要なのだッ!! お前もその一人だ藤咲勇ッ!!」
だがそれでも小嶋は止まらない
止められない。
意固地でも頑固でもなく……彼女は自分の理想を盲信し続けているから。
そして勇もまた気付く。
彼女はもう止まれないのだという事を。
理想に溺れ、道を踏み外し、人間であって人である事を辞めた彼女はもう……。
説得すら叶わず、小嶋はなお勇に敵意を向け続ける。
小嶋は命力も操れない、いわば普通の人間。
逃げる事など敵わないだろう。
捕まえる事など、勇にとっては簡単な事だった。
しかし小嶋は言い合いの最中、咄嗟に算段を練っていた。
自分が何も出来ない人間……そう思わせればいいのだ、と。
隙を伺い、殺してしまえばいいのだ、と。
どうしてそう思えたのか。
それは彼女にそう思わしめた要因が、勇の背後から迫っていたからだ。
音も無く忍び寄る三つの影。
それが小嶋の切り札……魔剣兵。
彼女の護衛用に配備された、最後の三体である。
小嶋が心を殺す。
勇に悟られない為に。
勇も気付かない。
その視線が彼女に向けられている限り。
その敵意、その殺意が……彼の首元すぐに迫っていた事に。
……そう思い込んでいた。
キュィィィーーーーーーンッ!!
空気を裂く様な鳴音が周囲に鳴り響く。
その時、勇を中心とした閃光の輪が突如浮かび上がっていた。
大きく刻まれた輪は、小嶋の視界にすら映る程にハッキリと、その場に残り続けている。
だがそれを描いた挙動は見えていない。
そもそも勇の体そのものに変化は無く、小嶋に向けられ続けていた。
その手に掴んだ光の剣以外は。
小嶋が事態を認識した時……既にその顔には怯懦に足る怯えに引きつった表情を浮かべていた。
勇に飛び掛かっていた魔剣兵が漏れなくその体を真っ二つに裂かれ、大地へ転がっていたからである。
「な……あ……ああ……!?」
そして認識する。
彼女の手駒が全て失った事を。
もはや自身を守るモノは何も無いという現実を。
「諦めろと言ったハズだ小嶋由子……もう逃げ場なんてありはしない!! 公安もアンタの正体を知った……待っているのは罪を償う事だけだッ!!」
「……ふ、ふざけるなぁッ!!」
「ッ!?」
すると何を思ったのか……小嶋が突然その身を乗り出し、大地へ飛び掛かった。
そこにあったのは平野が落とした拳銃。
空かさず拳銃を拾い上げ、両腕を水平に並べて両手で構える。
銃など持った事が無いであろう、素人の持ち方だ。
しかし構えが普通でなくとも、近くに居る勇に当たらない距離では無い。
敵意を乗せ、指を引き金に掛け……勇目掛けて銃口を向ける。
それに対し……勇は彼女の一連の行動を前に身じろぐ事無く彼女を睨み付けたまま。
「お前さえいなければ……お前さえェェッ!!」
ダァンッ!!
空港に響く発砲音。
小嶋の握る拳銃から銃弾が解き放たれ、一直線に勇へと向かっていく。
だが……銃弾は彼の体に当たるや否や、弾けて逸れて無為に消えた。
赤の残光が彼方へ消え、虚しい間が二人の間に呼び込まれる。
もう小嶋には……その意味を考える余裕すら、ありはしなかった。
「うわああああああ!!!!!」
ダァン!!
ダァン!!
己のか細い腕の痛みなど忘れ、発砲の反動に苦しみ苛まれながらも……小嶋は何度も、何度も発砲し続けた。
腕が跳ね上がってもなお歯を食いしばり、脅えた表情を浮かべながら……必死に撃ち続けた。
暗闇に赤い閃光が幾度と無く筋を作り、それでもなお弾かれ虚空に舞っていくとしても。
「なんで……対命力弾のハズ……なんでえッ!?」
その中でも勇は怯む事無く、そんな彼女との距離を詰めていく。
そんな光景を空港から多くの人々が覗き見る中……小嶋はなおも撃ち続けていた。
ガチッ!!
遂に銃弾が底を突き、拳銃の上部スライダがホールドされる。
だがそんな事など知らぬ小嶋がなおも引き金を引き続けた。
虚しい空回り音が響き渡る中……遂に勇が小嶋の前へと辿り着く。
怯え惑う小嶋はとうとう背を車へとへばりつかせ、恐怖で慄かせた表情を見せたのだった。
「う……ああ……!?」
「例え愚かでも、人は変わる事が出来る。 俺がそうだった様に……きっかけさえあれば変えられるんだ。 だからもう、皆からその可能性を奪うな!!」
「あ、ううぅ……うああクソがああああァーーーーーー!!」
追い詰められた小嶋が手に持った銃を振り上げ、今までに無いおぞましい敵意を振りまく。
憤怒、憎悪、諦念……様々な負の感情を篭めた攻撃の意思は、勇へ向けて振り下ろされた。
そして彼女は見る事だろう。
勇が携えし光の剣、その太刀筋を。
凡人である小嶋ですら見える程に、ハッキリとした形で刻まれた……横一閃。
彼女の目線中心を抜ける様に刻まれた太刀筋は、車の上部を巻き込む形で振り切られた。
小嶋が目を大きく見開く中……背後で金属の弾ける音が「バキン」と鳴り響く。
それは車の天板が本体から離れ、自重でズレ落ちた音。
間も無く、天板の落下した音が……「ガシャン!!」と続けて鳴り響いた。
それを聴いた途端、小嶋はぐるりと目を回し……そしてそのまま糸が切れた操り人形の様に倒れ込んだのであった。
小嶋自身は斬れてなどいなかった。
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