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第三十二節「熱き地の再会 真実は今ここに 目覚めよ創世」
~伝説を伝えし者の唄~
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ゴトフ族……それが訪れた里に住む者達の種族の名前だった。
彼等は今までの魔者とは全く異なり、最初から友好を越えた親愛にも近い感情で勇達を迎えたのだ。
全ては悲願を成就したと思って……。
幾つかの謎が残るものの……和気藹々とした雰囲気で溢れる里長ヤヴの家。
もはや蟠りなど何一つ無い中で、勇達はなんて事のない世間話を交わしていた。
勇達から伝えるのはいつも通り、この世界がフララジカに見舞われ混ざり始めた事だ。
他にも、勇達『こちら側』の文化の事や、多くの魔者達が人と手を取り始めている事、そして【救世同盟】がゴトフの里に牙を向けていた事。
当然剣聖も知らぬ事ばかりで彼までもが耳を傾ける中で……勇達は現状で知る事を余す事無く伝えた。
ヤヴが語るのは、彼等がいつやってきたか、という事だった。
ゴトフが転移してきたのはおおよそ二ヶ月前。
気付けば里の周囲が突如として知らぬ場所へと変わっていたのだという。
しかし途端、消えていた里との連絡が取れるようになり……そこでジヨヨとも会話を交わしたという訳だ。
「―――という訳でな、ある程度は彼等から聞いているのだ」
「そうだったんですね……でも随分最近転移してきたのに、『待っていた』っていうのも変な話だと思いますけど」
茶奈が思わず首を傾げ、悩む様な仕草を見せる。
彼女も先程ヤヴが零した一言が気になっていた様だ。
勇達がゴトフの里に訪れた際、ヤヴは一言「お前達を待っていた」とハッキリ言い放った。
それは茶奈だけでなく勇達皆が不思議に思っていた事。
茶奈の一言を皮切りに……勇達の疑念が声へと変わり始める。
「そうだな……俺も同じ事を思った。 ヤヴさんはどうしてあんな事を?」
例え勇の事を知らされていたとはいえ、歓迎するならば別の言葉があるだろう。
しかし彼の一言は言うなれば、フララジカ前から待ち詫びていた様にも聞こえて。
まるで悲願達成を望む老人達の姿と重なる様に……。
「何……いずれお主達がここに訪れるのを予感していただけの事にすぎんよ。 隠れ里本来の役目とは別に、遥か昔から受け継がれし役目をワシらは担っているのだ」
「役目……?」
「うむ……それは創世伝説の真実を言い伝える事。 何一つ間違う事無く、な」
途端、先程までの緩い雰囲気は消え失せ……ヤヴの顔に真剣味が帯びる。
勇達もまた彼の雰囲気に流される様に、緩んだ顔を引き締めさせていた。
「創世伝説の真実……」
「さよう。 伝説はいつか歪み、あらぬ形へと変わり果てる。 それを歪ませる事無くありのままを言い伝え残すのが我々の役目なのだ。 それこそ先程言っていた【グゥの日誌】に描かれていたという過去の出来事をな」
つまりは語り部の里と言った所だろうか。
人伝で伝わる物語が元ある形で伝わる事などほとんど無いに等しいと言っても過言ではない。
だが彼等はそれを元ある形のままで言い伝え続けてきたというのだ。
ただただ、自分達の里と、繋がる里同士だけで。
過去を忘れさせない為に。
「もしかしたらグゥ達エウバ族も同じ事をしようとして、偶然手に入れたであろう日誌に描かれていた内容に気付き、それを伝える事にしたのかもしれん」
「そういう話なら確かにそうかもしれねぇな。 俺達があの書を失くしたのはだいぶ初期の頃だ。 そいつが渡りに渡ってエウバって奴等の手元に届いたのなら、時期的にも有り得る事だしな」
そして描かれていた事もまた間違っていなかったからこそ、エウバ族は日誌を記録の書として手元に置いたのだろう。
「お主達の話が本当ならば、その日誌に描かれていた事は紛れもない真実であろう。 ただ、フララジカとやらに関してはワシらも至らぬ所ではあるがな」
「なんでぇ、そこは伝わってねぇのかよ……ん、伝わってねぇ……?」
その時何かを思い付き、剣聖が顔を俯かせる。
「何故だ。 過去を伝えるのが役目にも拘らずフララジカの事がスッポリと抜け落ちているみてぇに感じるぜ。 まるで敢えて伝承しないかのように……」
剣聖が己の記憶を遡り、かつての日誌を覗いた思い出を脳裏に走らせる。
そこで見た記憶は鮮明で、ハッキリと手に取って見える様だった。
そこに映るのは……同じ筆跡で書かれた創世伝説とフララジカの記述。
伝説の続きと世界の終わりと始まり。
「答えろ……おめぇら、何か隠してねぇか?」
剣聖の目に浮かぶのは疑心。
威嚇の如く、ヤヴを刺す様に睨み付けていた。
しかしヤヴはそんな剣聖を前にしてもなお態度を変える事も無く、落ち着いた物腰のままだった。
「隠してなどいないさ。 私達はきっとそこまで知らされていないのだろう」
「何……ッ!?」
「伝える必要は無いと先人が判断したのかもしれんし、先人も知らぬ事だったのかもしれぬ……だが、きっとそれはこれから話そうとしている事に起因するのだろうな」
するとヤヴは「ふぅ」と一呼吸を付き、勇達から視線を外す様に顔を俯かせる。
彼にも彼なりに話を聴いて思う所があるのかもしれない。
だが一呼吸を置くと……ヤヴが勇達の方へと真剣な顔を向け、「コクリ」と一つ頷いて見せた。
「ワシらの役目……それはその伝説を伝え、そして【創世の鍵】の在り処を伝える事だ」
その瞬間、勇達の間に一瞬の騒めきを呼び込む。
焦らないはずがなかった。
動揺しないはずがなかった。
これこそが勇達の追い求めていた答え。
世界を分断し、元に戻す為の力……【創世の鍵】。
勇も、剣聖も……それを求めて、ここにやって来たのだから。
「お主達が求めるのはその事なのだろう?」
「そうだ、俺はそれを求めて三百年以上も生きてきたんだ!! さぁ今すぐ教えやがれ!!創世の鍵の事を……!!」
まるで今にも飛び掛からんばかりに、両拳を床に突いて前のめりで咆え上げる剣聖。
そんな彼を前にしてもなお、ヤヴは動じない。
それどころか……その顔付きを更に険しいものとし、勇達に強い緊張感を呼び起こさせた。
「いいだろう……ならば単刀直入に言わせてもらう」
途端、勇達だけでなく剣聖もが黙り、彼の答えを待つ。
緊張が押し潰してしまいそうな程にその場を包み、冷や汗すらをも呼び込む。
それすらをも感じさせぬ雰囲気の中で……ヤヴが背筋を伸ばし、遂に紡いでいたその口を紐解いた。
「【創世の鍵】は……ここにある……!」
彼等は今までの魔者とは全く異なり、最初から友好を越えた親愛にも近い感情で勇達を迎えたのだ。
全ては悲願を成就したと思って……。
幾つかの謎が残るものの……和気藹々とした雰囲気で溢れる里長ヤヴの家。
もはや蟠りなど何一つ無い中で、勇達はなんて事のない世間話を交わしていた。
勇達から伝えるのはいつも通り、この世界がフララジカに見舞われ混ざり始めた事だ。
他にも、勇達『こちら側』の文化の事や、多くの魔者達が人と手を取り始めている事、そして【救世同盟】がゴトフの里に牙を向けていた事。
当然剣聖も知らぬ事ばかりで彼までもが耳を傾ける中で……勇達は現状で知る事を余す事無く伝えた。
ヤヴが語るのは、彼等がいつやってきたか、という事だった。
ゴトフが転移してきたのはおおよそ二ヶ月前。
気付けば里の周囲が突如として知らぬ場所へと変わっていたのだという。
しかし途端、消えていた里との連絡が取れるようになり……そこでジヨヨとも会話を交わしたという訳だ。
「―――という訳でな、ある程度は彼等から聞いているのだ」
「そうだったんですね……でも随分最近転移してきたのに、『待っていた』っていうのも変な話だと思いますけど」
茶奈が思わず首を傾げ、悩む様な仕草を見せる。
彼女も先程ヤヴが零した一言が気になっていた様だ。
勇達がゴトフの里に訪れた際、ヤヴは一言「お前達を待っていた」とハッキリ言い放った。
それは茶奈だけでなく勇達皆が不思議に思っていた事。
茶奈の一言を皮切りに……勇達の疑念が声へと変わり始める。
「そうだな……俺も同じ事を思った。 ヤヴさんはどうしてあんな事を?」
例え勇の事を知らされていたとはいえ、歓迎するならば別の言葉があるだろう。
しかし彼の一言は言うなれば、フララジカ前から待ち詫びていた様にも聞こえて。
まるで悲願達成を望む老人達の姿と重なる様に……。
「何……いずれお主達がここに訪れるのを予感していただけの事にすぎんよ。 隠れ里本来の役目とは別に、遥か昔から受け継がれし役目をワシらは担っているのだ」
「役目……?」
「うむ……それは創世伝説の真実を言い伝える事。 何一つ間違う事無く、な」
途端、先程までの緩い雰囲気は消え失せ……ヤヴの顔に真剣味が帯びる。
勇達もまた彼の雰囲気に流される様に、緩んだ顔を引き締めさせていた。
「創世伝説の真実……」
「さよう。 伝説はいつか歪み、あらぬ形へと変わり果てる。 それを歪ませる事無くありのままを言い伝え残すのが我々の役目なのだ。 それこそ先程言っていた【グゥの日誌】に描かれていたという過去の出来事をな」
つまりは語り部の里と言った所だろうか。
人伝で伝わる物語が元ある形で伝わる事などほとんど無いに等しいと言っても過言ではない。
だが彼等はそれを元ある形のままで言い伝え続けてきたというのだ。
ただただ、自分達の里と、繋がる里同士だけで。
過去を忘れさせない為に。
「もしかしたらグゥ達エウバ族も同じ事をしようとして、偶然手に入れたであろう日誌に描かれていた内容に気付き、それを伝える事にしたのかもしれん」
「そういう話なら確かにそうかもしれねぇな。 俺達があの書を失くしたのはだいぶ初期の頃だ。 そいつが渡りに渡ってエウバって奴等の手元に届いたのなら、時期的にも有り得る事だしな」
そして描かれていた事もまた間違っていなかったからこそ、エウバ族は日誌を記録の書として手元に置いたのだろう。
「お主達の話が本当ならば、その日誌に描かれていた事は紛れもない真実であろう。 ただ、フララジカとやらに関してはワシらも至らぬ所ではあるがな」
「なんでぇ、そこは伝わってねぇのかよ……ん、伝わってねぇ……?」
その時何かを思い付き、剣聖が顔を俯かせる。
「何故だ。 過去を伝えるのが役目にも拘らずフララジカの事がスッポリと抜け落ちているみてぇに感じるぜ。 まるで敢えて伝承しないかのように……」
剣聖が己の記憶を遡り、かつての日誌を覗いた思い出を脳裏に走らせる。
そこで見た記憶は鮮明で、ハッキリと手に取って見える様だった。
そこに映るのは……同じ筆跡で書かれた創世伝説とフララジカの記述。
伝説の続きと世界の終わりと始まり。
「答えろ……おめぇら、何か隠してねぇか?」
剣聖の目に浮かぶのは疑心。
威嚇の如く、ヤヴを刺す様に睨み付けていた。
しかしヤヴはそんな剣聖を前にしてもなお態度を変える事も無く、落ち着いた物腰のままだった。
「隠してなどいないさ。 私達はきっとそこまで知らされていないのだろう」
「何……ッ!?」
「伝える必要は無いと先人が判断したのかもしれんし、先人も知らぬ事だったのかもしれぬ……だが、きっとそれはこれから話そうとしている事に起因するのだろうな」
するとヤヴは「ふぅ」と一呼吸を付き、勇達から視線を外す様に顔を俯かせる。
彼にも彼なりに話を聴いて思う所があるのかもしれない。
だが一呼吸を置くと……ヤヴが勇達の方へと真剣な顔を向け、「コクリ」と一つ頷いて見せた。
「ワシらの役目……それはその伝説を伝え、そして【創世の鍵】の在り処を伝える事だ」
その瞬間、勇達の間に一瞬の騒めきを呼び込む。
焦らないはずがなかった。
動揺しないはずがなかった。
これこそが勇達の追い求めていた答え。
世界を分断し、元に戻す為の力……【創世の鍵】。
勇も、剣聖も……それを求めて、ここにやって来たのだから。
「お主達が求めるのはその事なのだろう?」
「そうだ、俺はそれを求めて三百年以上も生きてきたんだ!! さぁ今すぐ教えやがれ!!創世の鍵の事を……!!」
まるで今にも飛び掛からんばかりに、両拳を床に突いて前のめりで咆え上げる剣聖。
そんな彼を前にしてもなお、ヤヴは動じない。
それどころか……その顔付きを更に険しいものとし、勇達に強い緊張感を呼び起こさせた。
「いいだろう……ならば単刀直入に言わせてもらう」
途端、勇達だけでなく剣聖もが黙り、彼の答えを待つ。
緊張が押し潰してしまいそうな程にその場を包み、冷や汗すらをも呼び込む。
それすらをも感じさせぬ雰囲気の中で……ヤヴが背筋を伸ばし、遂に紡いでいたその口を紐解いた。
「【創世の鍵】は……ここにある……!」
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