時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第三十三節「二つ世の理 相対せし二人の意思 正しき風となれ」

~疑念と真実 集められし者達~

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 【創世の鍵】……その力を得る事が出来る様になったという事実。
 勇が持ち帰った成果はグランディーヴァの面々を驚愕させる事となる。

 ただ、勇の態度はそれで全てが解決したとは言えぬ事を示唆させていた。
 今、世界を取り巻く状況が彼等の思う以上に複雑だという事を知ったからだ。

 勇が知った事実を全て説明する為に、福留を通して日本政府の関係者や日本に残った仲間とも言える者達を呼び集める。
 その中で……機動旗艦アルクトゥーンは日本本土へと向けて空を突き抜けていた。 





 真実を知る者は多ければ多い方が良い……それがの下した判断だった。
 それは多くを知らぬ者も例外ではない。
 艦内に居る者は漏れなく関係者として勇から話を聴く為に呼び集められようとしていた。

 それはとて例外ではない。

 アルクトゥーン後部、収監区画。
 とある一つの部屋と通路を繋ぐ扉が開かれる。
 その先に居るのは……部屋の床中央に胡坐をかいて座り込む大男。

「……何の用だ?」

 彼はバロルフ。
 アルクトゥーンが日本を発つ以前、勇との一対一の対決で敗北した魔剣使いである。
 敗北以降、彼は以前の様に粋がる事も無く、大人しく収監されていた。
 だが覇気そのものを失った訳でも無く……こうして扉を開いた者へと鋭い視線を向ける。

 扉を開いたのは当然……勇だ。

「お前にも聴いてもらいたい話があってな」

 勇が見せるのは以前と同様の余裕を感じさせる微笑み。
 バロルフはそんな彼を前に「ピクリ」と眉を動かすも……そっと瞼を閉じ、面長の顎を俯かせた。

「……いいだろう」

 バロルフがそのままゆっくりと腰を上げる。
 立ち上がった様は相変わらずの剣聖にも負けず劣らずの体躯。
 しかし肩が僅かに下がった様は、どこか気後れを感じさせる。
 それは勇を前に委縮している様にも見えなくも無かった。

 のしりのしりと一歩を踏み出し、部屋から出ていく。
 勇を見下ろす程の巨体が部屋から姿を現すと、周囲に居た国連兵が思わずその目を見張らせていた。

「いきなり暴れるなよ?」

 周りから見れば、勇を威圧するかの様な風体。
 対決によってバロルフの粗暴な性格を知った勇だからこそ、こんな釘を刺す一言が出るのも無理は無い。

 しかし対してのバロルフは……意外な反応を見せた。

「案ずるな、そんなつもりは欠片も無い。 俺は負けたのだ、敗者は勝者に大人しく従うものよ」

 それもまた彼の持つ『あちら側』のルール。
 強者が勝ち、敗者を統べる……彼を筆頭にした【七天聖】もそうして出来た集まり。
 そして勇に負けたからこそ、こうして潔く従う事もまた必然だったのだ。

「そうか。 暴れたりしなきゃ俺はそれで構わないさ」

「……それで話とはなんだ?」

 相変わらずの笑みを見せる勇を前に、バロルフがその顔を背ける。
 その余裕の笑みが彼にとっては一種のトラウマにもなっていたから。

「それは皆が集まってから話すつもりだ。 その中にお前も居て貰いたいって思ってさ」

「何が目的かは知らんが、お前がそう言うのならば従おう」

 それでもどこか抵抗を見せる節があるのは、彼が強者であり続けた故か。

 目の前に居る勇という絶対的強者。
 その力の根源が未だ理解出来ないからこそ、納得しきれない部分もあるのだろう。

 バロルフが大人しかったという事もあり、勇が踵を返す。
 向かおうとする先はもう一人が収監された場所。

 そう、アルディである。

 彼もまた真実を伝えねばならぬ相手。
 敵でありながらも勇達に知る限りの真実を伝え、背中を押してくれたからこそ……その返礼をしなければならない。
 何より彼もまた真実を知りたいと言っていたのだ。
 これを拒否する理由を……勇は持ち合わせてはいないのだから。

ガコン……
ギギギ……

 また一つ、扉が開かれる。
 その先から姿を現したのは当然……茶褐色の肌を持つ男、アルディ。

「やあユウ=フジサキ……今日は何の用かね?」

 バロルフと違い、アルディの様相は実に落ち着いたものだった。
 狭い一室の中に小さな机とベッドが置かれ、本やゲーム機がきっちりと整えられて置かれている。
 丁度読書中だったのだろう、本を片手にベッドへ寝ころんでいた。

「手に入れたぞ、世界の真実を」

「ほう? それは随分と早いじゃないか」

 前回の話からまだ一週間と経ってはいない。
 昨日の今日とも言える状況に、アルディもどこか懐疑の目を浮かべていた。

「まぁ、疑うのも無理は無いよな。 でも実際に話を聞けば絶対に納得するさ」

「ふむ、ならば聞くとしよう。 私としても世界の真実とやらには実に興味がある」

 するとアルディは器用に片手で本を畳み、枕の傍へとそっと置く。
 そのまま腰を起こして立ち上がると、凝り固まった体を解す様に肩を回しながら部屋の外へと歩み出した。

「安全を期して拘束はさせて頂く」

 アルディが兵に言われるがまま、何の抵抗も無く腕を背後に回して背を向ける。
 清々しい程に潔い態度は相変わらずと言った所か。
 しかし兵はと言えば煮え切らないのか、拘束を施す様はどこか荒々しい。

「あまり手荒な事はしないでくれよな?」

「はい、申し訳ありません……つい感情が出てしまって」

 兵が怒るのも無理は無い。
 勇達が本質を知ったとはいえ、アルディのやった事は本来許されない事。
 国連という秩序を守る為の団体に所属する様な者が憤らない訳も無いのだから。

 もしかしたら、アルディに対して友好的な態度を見せる勇達にも憤りを持つ者も居るかもしれない。
 例え個人が納得しようと、その心の在り方は伝搬しないから。

 天力という力を得てもなお難しい、心を伝えるという事。
 それを改めて実感する勇なのであった。


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