時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第三十三節「二つ世の理 相対せし二人の意思 正しき風となれ」

~旧界と新界 その成り立ちとは~

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 世界が二つに分かたれた後、私には星に取り込まれるまで少しだけ自由に動ける時間がありました。
 なので私は取り込まれて意識を失うまでの間に、出来うる事をしようと動き回りました。
 争い、戦う者達の中には疲弊し、争う事に飽き飽きした人々も少なくはありません。
 私はそんな人々の中から、彼の事を今でも想える者を探し出して集めたのです。

 いつかきっと、彼が帰ってきてこの争いの世界を何とかしてくれるだろう。
 そんな想いを胸に、背景に起きた真実と共に彼等に二つの技術を託しました。

 一つは命脈を通して通信出来る通信技術。
 二つは集落を隠す結界の張り方。

 彼等は私の話を受け止めて下さり、納得してくれました。
 誤解が生んだ悲劇に涙を流す方すらいらっしゃいました。
 そして彼等はその後、各地へと散り……各々の里を作り、争いを避ける為に隠れたのです。



 全ては……彼が帰ってきた時、帰れる場所がありますようにと願いを込めて……。



 こうして私の半身は星に飲み込まれました。

 でもきっと、この世界に再び平穏が訪れる事を信じていたから。
 私は今もここに居られるのでしょう。










 一方で、もう片方の星へと旅立った二人の天士は人類の始祖に再び知恵を与えようと行動を開始します。
 しかし以前の様ではきっとまた同じ事が繰り返されるだけでしょう。

 だから彼等は一つ方法を変える事にしました。
 敢えて自ら星に同化させ、命脈へと乗せる事にしたのです。
 そうする事で、微粒子の様な存在と成って自身を無数に撒く事が出来るから。
 パートナーとなる動物を進化させる事もしません。

 私が体を張ったからこそ……彼等もまた、大きな決断を下す事にしたのでしょう。

 それ一つ一つはとてもとても小さなキッカケしか生み出しません。
 ですが、人類が成長するには十分なキッカケでした。

 微細な天士の意識が人の潜在意識に入り込む事で、ちょっとした知恵を与えます。
 すると彼等は無意識に知恵を閃き、使う事を憶え、そこから応用し、発展させます。
 そう……たったそれだけで人は成長出来るポテンシャルを持っていたから。
 前回の様に最初から最後まで付き合う必要なんて無かったのです。

 無意識に天士を心に宿した人々が知恵を閃き続け、新たな世界はどんどんと成長していきます。
 以前の世界と比べれば当然遅いですが、それでも確実に前に進んでいったのです。
 最初は道具を使う事から始まり。
 仲間同士で集落を生み出しました。
 そこから火を使い、道具を作り始めます。
 そんな小さな発展も、重ねて行えば次第に大きくなる。
 時には人同士の戦争もありました。
 でもその度に彼等は乗り越え、発展する事を止めませんでした。
 ただひたすら前向きに。

 戦いと平和の時代を繰り返し、人は大きく成長を果たしました。
 彼等はそういった行為に取り決めを設け、必要以上の争いをしない事を決めたのです。

 自身で考え、悩み、構築し、取り決め、それを守る。
 その積み重ねが秩序を生みます。
 それをキッカケに、秩序の下で発展が加速していきました。
 そこから私達の知るものとは異なる文明を生み、育て、大きくしていったのです。

 そして今、世界は今ここにまでに至りました。



 そう、その新たな世界こそ……貴方達の住む地球の事なのですよ。






――
――――
――――――





「―――つまり、『あちら側』と『こちら側』は元々同じ世界だったって事?」

『はい。 ですが少し意味合いが異なります。 僅かに時間軸をずらし、存在を共有しながらも二つであり続ける双子星』

「平行世界みたいなもんか」

『いえ、しいて言えば〝並走世界〟という所でしょう。 互いに認識出来ないとはいえ、同じ次元に存在する世界ですから』

 ア・リーヴェの話が一旦の落ち着きを見せると、多くの質問が噴出する。

 彼女の語った真実……それは二つの世界の関連性。
 『こちら側』の者にとっても決して無関係とは言い難い……衝撃の事実だった。

「しかしまさかルーツが同じ世界だったとは驚きですねぇ」

『そう思うのも無理は無いかもしれません。 フララジカシステムによって星の構築元素も書き換えているので、互いの星で採れる物質も隔てられてしまいましたから』

 動植物であれば進化の可能性が分かれる事も当然あるだろう。
 だが星の組成物質、元素となれば話は別だ。
 それは星が生まれた時から共有していた物で、永遠と変わる事は無い。
 それも世界が分けられた事で、一部だけが分別されてしまった。
 だから同じ世界だとは気づかなかったのだろう。
 『こちら側』と『あちら側』にある金属が異なるのはそういう理由だったのだ。
 
『ですが、このフララジカシステムは本来この世界に存在してはいけない物。 もしかしたら私達の過ちはこの装置を設置してしまった事から始まったのかもしれません』

 ア・リーヴェが天を仰ぎ、想いを馳せる。

 もしそれがなければきっと『こちら側』は生まれなかっただろう。
 その一言は『こちら側』にとってしてみれば複雑な発言でもある。

 しかしその真意は……皆が思う程に軽くは無かった。

『星を二つに分けたのはフララジカシステムの力によるもの。 ですが今そのシステムに狂いが生じ、再び一つに戻そうとしています。 その現象こそ、皆さんが【フララジカ】と呼称しているもの。 これが全てを終えた時……皆さんが知る通り、世界は、宇宙は完全に崩壊します』

 もしフララジカシステムが存在しなければ、今の様な事態には陥らなかったかもしれない。
 『あちら側』の人類文明が滅ぶだけで終わったかもしれない。
 だが今起きようとしているのは……宇宙全体の崩壊の危機なのだ。

 そんな中、アルディがやはり首を傾げ、疑問の色を覗かせる。

「そこがやはり引っ掛かるな。 何故この星が一つになるだけで宇宙全体に影響があるのか。 あまりに事実だけが飛躍し過ぎている気がしないかね」

 そこは知識人も揃って頷きを見せる。
 彼等にとっての星の融合フララジカは物理現象としか見えていない。
 それは宇宙の中の一つの事象に過ぎず、ただ星が崩壊するだけとしか思えないからだ。

「出来るならば、そこを論理的に説明して頂けないだろうか?」

 アルディだけでなく、他の知識人も多少の科学に対する知識を有している。
 そうでなくとも、多少なりに頭が回れば論理的な説明もある程度は理解出来るだろう。

 そんな思惑を乗せたアルディの要請に、ア・リーヴェはそっと頷いて見せた。

『ええ、わかりました。 皆さんへ通じる言葉に変換する為、多少の語弊・不足があるかもしれませんが』

「それで構わない」

 その返事を皮切りに、ア・リーヴェはそっとその両腕を広げ、天井を見上げる。
 すると突如として彼女の上に、巨大な半透明の映像が浮かび上がった。

 そこに映ったのは、彼女の知る宇宙。
 世界を象る一つの真理であった……。


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