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第三節「未知の園 交わる願い 少年の道」
~何かが動こうとしていますね~
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自衛隊側では、隊員達の間で困惑の声が広がっていた。
いくら銃弾を放とうとも、車を止めるどころか傷一つ付けられないのだから。
こうしている間にも弾丸はなお放たれ続けているが、それも無為に消えるのみ。
当然、彼等が命力の盾の事など知る由も無い。
「目標止まりません!! 銃撃が通用しません!!」
「な、なんだと!? バカなッ!?」
彼等からでも弾丸が弾かれている様子は当然見えている。
何せ赤の軌跡が車に弾かれ明後日の方向へと舞っていく様子が丸見えなのだから。
信じられない出来事を前に、先程まで堂々としていた指揮官の顔色はただただ蒼白まっしぐらである。
「おやおや、どこかで聴いた台詞ですねぇ」
一方で老人はと言えば―――
眉をピクリと動かすだけで、様子は先程と殆ど変わらない。
堂々と背筋を伸ばし、相変わらず双眼鏡を除いたままだ。
異様とも言える状況に指揮官とその周囲は動揺を隠せない。
次の指示を仰ぐ様に隊員達の視線が指揮官へと集まっていく。
しかしそこで誰よりも先に口を開いたのは、他でもない老人であった。
「さて皆さん、攻撃はそこまでにしましょうか」
「なっ!? しかし部外者を入れる訳には―――」
指揮官も発砲を許可した手前、引き下がれはしない。
狼狽えながらも食い下がり、声を荒げて抵抗の意思を示す。
だがその時、指揮官の身そのものの動きが「ガチリ」と止まる。
まるで石になってしまったかの様に。
そんな彼に、老人の鋭い眼光を向けていたのだ。
双眼鏡との隙間から、彼だけにわかる様にして。
「部外者でしたらそうなるでしょう。 しかし彼等は危険を顧みずこの場にやってきました」
覗き込んでいた双眼鏡を「スッ」と降ろし、いつの間にか緩ませていた目を真っ直ぐ向ける。
もう既に双眼鏡が必要無い程に車両が接近を果たしていたから。
「しかもあの奇妙な現象。 これは何かあるのでしょうなぁ」
彼はずっと分析していたのだ。
一体彼等は何なのか、果たして何故ここに来たのか、と。
しかしそれも間も無く、考える必要性を失う事となるだろう。
とある者の行動が老人の疑念を確信へと変えたのだから。
「やめてください!! そこを通してください!! お願いしますッ!!!」
勇が剣聖の前で立ち上がり、軍隊に向かって大声で叫んでいたのだ。
「こ、子供ッ!?」
勇の姿を見た指揮官が驚きを隠せず身を固まらせる。
そんな彼に脇目も振らず。
突如老人が一歩前に踏み出し、老躯とは思えぬ大声を張り上げた。
「直ちに障害物を撤去し、彼等を全力で通しなさい! これは最上位命令ですっ!」
「えっ、あ、了解! 攻撃部隊は直ちに攻撃を中止。 速やかに障害物を撤去して彼等を通せ! 繰り返す―――」
勇達の乗る車が間も無くキャンプへと到達しようとした時、隊員達が凄まじい行動力を見せつける。
その道を阻んでいた車両を即座に移動させ、機器を総出で持ち上げて運び出し始めたのだ。
指揮官も既に駆け出し、隊員達と共に行動を起こしていて。
気付けばあっという間に車の通り道が出来上がっていた。
勇達にとってはそれがまるで誘われている様に見えて。
素直に通っても良いかどうか迷いはあっただろう。
それでも通らなければ、先にある【フェノーダラ】へ辿り着かなければならなかったから。
「親父ッ!!」
「ああっ!!」
そんな声が自衛隊員達にも聞こえる中で交わされて。
勇達の乗る車は速度を落とさぬまま、とうとう自衛隊員達の作った道を通り過ぎていく。
その時一瞬だけ―――勇と老人の視線が合わさっていた。
老人が優しそうな笑みを浮かべて手を翳していたから、勇は思わず視線を奪われたのだろう。
車が過ぎ去った後もそんな老人の姿が気になって、後ろ髪を引かれる様に振り向く勇の姿が。
間も無くそんな姿も遠のき、景色に混じっていく。
それを見届ける様に、老人は自信のままに胸を張り上げながら健やかな微笑みを向け続けていて。
「何故彼等を通したのですか?」
撤去行動を終え、老人の下に戻って来た指揮官が思わず問い掛け。
その意思に応える様に、老人は笑顔のままに指揮官をそっと見上げる。
「あの少年、日本語を話していました」
「は?」
それはさも当然の様にそう答え。
指揮官達も、当たり前の事に思わず首を傾げるのみ。
でもそれは、老人だけが当たり前の中に潜む違和感に気付いていたからこそ。
一歩二歩……少し前進すると、目の前にそびえる城を見つめ。
腕を腰裏に回し「ウンウン」と頷く。
「つまり、彼は何かしらの事情を知りながらこの場にいる『我々側』の人間という事なのでしょう」
「はぁ……」
そう答えた老人は、それ以上は多く語らなかった。
口が堅かったのか、それともまだ疑惑を脱せていないからだろうか。
しかし、その彼の心に一つの言葉が過る。
―――もし彼がそうだとした場合、何かが動く。 そんな気がしますねぇ―――
ひと時の喧噪が過ぎ去り、駐屯地に再び静かな空気が流れ始める。
その中で老人はただ一人、陽射しの照らす日の下へとゆっくり足を踏み出していた。
彼等が今の状況を打開してくれるかもしれない、そんな大きな期待を抱きながら。
いくら銃弾を放とうとも、車を止めるどころか傷一つ付けられないのだから。
こうしている間にも弾丸はなお放たれ続けているが、それも無為に消えるのみ。
当然、彼等が命力の盾の事など知る由も無い。
「目標止まりません!! 銃撃が通用しません!!」
「な、なんだと!? バカなッ!?」
彼等からでも弾丸が弾かれている様子は当然見えている。
何せ赤の軌跡が車に弾かれ明後日の方向へと舞っていく様子が丸見えなのだから。
信じられない出来事を前に、先程まで堂々としていた指揮官の顔色はただただ蒼白まっしぐらである。
「おやおや、どこかで聴いた台詞ですねぇ」
一方で老人はと言えば―――
眉をピクリと動かすだけで、様子は先程と殆ど変わらない。
堂々と背筋を伸ばし、相変わらず双眼鏡を除いたままだ。
異様とも言える状況に指揮官とその周囲は動揺を隠せない。
次の指示を仰ぐ様に隊員達の視線が指揮官へと集まっていく。
しかしそこで誰よりも先に口を開いたのは、他でもない老人であった。
「さて皆さん、攻撃はそこまでにしましょうか」
「なっ!? しかし部外者を入れる訳には―――」
指揮官も発砲を許可した手前、引き下がれはしない。
狼狽えながらも食い下がり、声を荒げて抵抗の意思を示す。
だがその時、指揮官の身そのものの動きが「ガチリ」と止まる。
まるで石になってしまったかの様に。
そんな彼に、老人の鋭い眼光を向けていたのだ。
双眼鏡との隙間から、彼だけにわかる様にして。
「部外者でしたらそうなるでしょう。 しかし彼等は危険を顧みずこの場にやってきました」
覗き込んでいた双眼鏡を「スッ」と降ろし、いつの間にか緩ませていた目を真っ直ぐ向ける。
もう既に双眼鏡が必要無い程に車両が接近を果たしていたから。
「しかもあの奇妙な現象。 これは何かあるのでしょうなぁ」
彼はずっと分析していたのだ。
一体彼等は何なのか、果たして何故ここに来たのか、と。
しかしそれも間も無く、考える必要性を失う事となるだろう。
とある者の行動が老人の疑念を確信へと変えたのだから。
「やめてください!! そこを通してください!! お願いしますッ!!!」
勇が剣聖の前で立ち上がり、軍隊に向かって大声で叫んでいたのだ。
「こ、子供ッ!?」
勇の姿を見た指揮官が驚きを隠せず身を固まらせる。
そんな彼に脇目も振らず。
突如老人が一歩前に踏み出し、老躯とは思えぬ大声を張り上げた。
「直ちに障害物を撤去し、彼等を全力で通しなさい! これは最上位命令ですっ!」
「えっ、あ、了解! 攻撃部隊は直ちに攻撃を中止。 速やかに障害物を撤去して彼等を通せ! 繰り返す―――」
勇達の乗る車が間も無くキャンプへと到達しようとした時、隊員達が凄まじい行動力を見せつける。
その道を阻んでいた車両を即座に移動させ、機器を総出で持ち上げて運び出し始めたのだ。
指揮官も既に駆け出し、隊員達と共に行動を起こしていて。
気付けばあっという間に車の通り道が出来上がっていた。
勇達にとってはそれがまるで誘われている様に見えて。
素直に通っても良いかどうか迷いはあっただろう。
それでも通らなければ、先にある【フェノーダラ】へ辿り着かなければならなかったから。
「親父ッ!!」
「ああっ!!」
そんな声が自衛隊員達にも聞こえる中で交わされて。
勇達の乗る車は速度を落とさぬまま、とうとう自衛隊員達の作った道を通り過ぎていく。
その時一瞬だけ―――勇と老人の視線が合わさっていた。
老人が優しそうな笑みを浮かべて手を翳していたから、勇は思わず視線を奪われたのだろう。
車が過ぎ去った後もそんな老人の姿が気になって、後ろ髪を引かれる様に振り向く勇の姿が。
間も無くそんな姿も遠のき、景色に混じっていく。
それを見届ける様に、老人は自信のままに胸を張り上げながら健やかな微笑みを向け続けていて。
「何故彼等を通したのですか?」
撤去行動を終え、老人の下に戻って来た指揮官が思わず問い掛け。
その意思に応える様に、老人は笑顔のままに指揮官をそっと見上げる。
「あの少年、日本語を話していました」
「は?」
それはさも当然の様にそう答え。
指揮官達も、当たり前の事に思わず首を傾げるのみ。
でもそれは、老人だけが当たり前の中に潜む違和感に気付いていたからこそ。
一歩二歩……少し前進すると、目の前にそびえる城を見つめ。
腕を腰裏に回し「ウンウン」と頷く。
「つまり、彼は何かしらの事情を知りながらこの場にいる『我々側』の人間という事なのでしょう」
「はぁ……」
そう答えた老人は、それ以上は多く語らなかった。
口が堅かったのか、それともまだ疑惑を脱せていないからだろうか。
しかし、その彼の心に一つの言葉が過る。
―――もし彼がそうだとした場合、何かが動く。 そんな気がしますねぇ―――
ひと時の喧噪が過ぎ去り、駐屯地に再び静かな空気が流れ始める。
その中で老人はただ一人、陽射しの照らす日の下へとゆっくり足を踏み出していた。
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