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第三十三節「二つ世の理 相対せし二人の意思 正しき風となれ」
~諦念と決断 愛に生きる者が選ぶ道は~
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アルクトゥーンには地上へとアクセスする為の出口が五か所ほど存在する。
最も大きいのは居住区中央最下層に設置された出入口。
展望室とも共有し、十数人が同時に搭乗可能な……勇達が一番よく使う出入口だ。
その他はいずれも四~五人程度が乗れる程の小型浮遊エレベータであり、外出時にのみ使われる事が多い。
その中の一台が誰知らず動き、降下を始める。
そこに乗るのは他でもない心輝。
魔剣や魔装を備え、今にも戦いに行くと言わんばかりの装い。
その顔に浮かぶのはどこか思い詰めた様に沈んだ表情。
いつもの様な落ち着きの無い様子は見られず、静かに近づく地表を虚ろな目で眺めていた。
エレベーターが地表へと到達すると、心輝がゆっくりと大地へと踏み出す。
何を想ってのか、そっと頭上に浮かぶアルクトゥーンを見上げながら。
何一言残す事無く……そこから離れる様に歩を進めた。
「黙ってどこに行くつもりなんだ?」
その瞬間、歩み始めようとした心輝の足が止まる。
その声が聞こえたのは彼の背後。
誰も居ないはずだった、エレベーター付近からの声。
心輝がその一言に応える様にそっと振り向く。
睨みつける様な鋭い眼光と共に。
そして向けられる視線。
その先に居たのは……紛れも無い、勇本人だった。
「なんとなく、何があったのかは察する。 けどお前が考える程―――」
「だからってよ、そう簡単に諦められるほど俺は薄情じゃねぇんだ!!」
その時心輝の口から漏れ出たのは、詰まりに詰まったものが溢れた様な……憤り。
「趣味ばっかりの俺がよ、今までこんなに想った事はねぇんだ……心から愛したのはアイツが初めてだったんだよ……!! そこまで本気で愛しちまったから―――」
どうすればいいのか悩んだのだろう。
もしこのまま戦い続けてアルトラン・ネメシスと対峙した時、きっとレンネィの命は奪われる。
もし戦う事を止めれば、世界は滅ぶ。
どちらに転んでも、彼にとっては絶望しかなかったから。
「―――だったら俺はアイツが生きる道を選ぶ為に手段を択ばねぇ!!」
それが心輝の決断だった。
彼の戦う目的の一つ、それはレンネィと共に生きる為。
勇と何ら変わらない、愛に順じたもの。
もし勇が同じ立場だったら同じ様な事を考えていたかもしれない。
彼にとって茶奈は誰よりも何よりも大事な人だから。
その想いが痛い程にわかるから、彼もまた悩んだのだ。
「悪いが俺はここまでだ。 こうなっちまったらよ、俺はアルトランにでも頼み込んで世界崩壊後でも生きられる様にしてもらうしかねぇ。 相手は神みたいな奴なんだろ? なら俺達を天士みたいに換える事も出来るかもしれねぇからな!!」
これが心輝の持つ一抹の希望。
アルトラン・ネメシスと関わってしまったが故に縛られた末の結論だった。
愛する者を守る為に世界や仲間達を切り捨てる。
もはやそれは……一つの諦念にも近い。
でも、だからこそ……勇は立ち塞がったのだ。
「それがお前の出した結論か。 確かにそれは可能かもしれないな。 でもな、奴にとって俺達は滅亡の対象でしかない。 レンネィさんの様に有効利用の道具にされるのが関の山だ」
それは全てを知ったからではない。
決して諦めでもない。
勇は信じているのだ。
心輝と共に戦い、そしてレンネィの命も救う事が出来る方法がきっとあるのだと。
例え心輝が絶望に沈もうとしているのであろうとも。
その心を拾い上げる為に。
「だから俺は何が何でもお前を止める!! お前の為にも、レンネィさんの為にも!!」
心輝がこの様な道を選ぶ事もまた一つの考えとしてはあった。
勇がア・リーヴェの事を知った後から、その考えは心の奥底に引っかかっていた。
覚悟を決める時間もあったから……こうして迷う事無く立ち塞がる事が出来たのだ。
時間を置いて話そうとしたのは、この為でもあったのだから。
だがその時、心輝の表情が強い強張りを見せる。
「ならよぉ……ッ!!」
カッ!!
その瞬間、勇の足元が激しい光を打ち放った。
それは彼の身を真っ白に染め上げる程の……凄まじい炎の光。
ドッバァァァァーーーーーー!!!!
そしてたちまち、勇の体を覆い尽くし消す程の巨大な炎の渦が撃ち上がったのだった。
「悪ぃな……俺は最初からこうするつもりだったんだ」
心輝もまた、勇がこうやって立ち塞がる事を想定していたのだろう。
いや、むしろ確信していたのかもしれない。
そうだからこそ、彼は予めこうなる様に罠を張る事が出来ていた。
これは心輝が持つ力の一端。
相手に気付かせる事すら無く、間接的に相手を焼く事が出来る白炎の罠。
敢えて形容するならば……【転焼滅却《プロミナスゲイル》】
なお激しく渦巻き、全てを焼き尽くす白の炎……臨界点の力。
心輝が持ちうる最大の焼却力が中で渦巻いているのだ。
これは誰にも見せた事の無い、彼の持つ最大の技の一つ。
例え絶対防御を誇る茶奈であろうと無事では済まされないであろう程の威力を誇る秘術なのである。
「お前を倒せば箔が付くってもんだ。 そうなりゃアルトランだって便宜くらい計ってくれるだろうよ」
もし今アルトランと対峙した時、最も有効に戦えるのは間違いなく勇。
脅威とも言えるその彼の首を取ったとあれば、何も持たずに赴くよりはずっと良い評価を得られるだろう。
そう思っての行動だった。
そう出来る程に、彼は追い詰められていたのだ。
親友を手に掛ける事も厭わない程に。
きっと何が正しいだとか、正義だとかは関係ない。
ただ自分が大事に思う者を救う為に心輝は全てを投げ捨てた。
彼にとっては……もうそれ以上の選択肢は無かったのだから。
最も大きいのは居住区中央最下層に設置された出入口。
展望室とも共有し、十数人が同時に搭乗可能な……勇達が一番よく使う出入口だ。
その他はいずれも四~五人程度が乗れる程の小型浮遊エレベータであり、外出時にのみ使われる事が多い。
その中の一台が誰知らず動き、降下を始める。
そこに乗るのは他でもない心輝。
魔剣や魔装を備え、今にも戦いに行くと言わんばかりの装い。
その顔に浮かぶのはどこか思い詰めた様に沈んだ表情。
いつもの様な落ち着きの無い様子は見られず、静かに近づく地表を虚ろな目で眺めていた。
エレベーターが地表へと到達すると、心輝がゆっくりと大地へと踏み出す。
何を想ってのか、そっと頭上に浮かぶアルクトゥーンを見上げながら。
何一言残す事無く……そこから離れる様に歩を進めた。
「黙ってどこに行くつもりなんだ?」
その瞬間、歩み始めようとした心輝の足が止まる。
その声が聞こえたのは彼の背後。
誰も居ないはずだった、エレベーター付近からの声。
心輝がその一言に応える様にそっと振り向く。
睨みつける様な鋭い眼光と共に。
そして向けられる視線。
その先に居たのは……紛れも無い、勇本人だった。
「なんとなく、何があったのかは察する。 けどお前が考える程―――」
「だからってよ、そう簡単に諦められるほど俺は薄情じゃねぇんだ!!」
その時心輝の口から漏れ出たのは、詰まりに詰まったものが溢れた様な……憤り。
「趣味ばっかりの俺がよ、今までこんなに想った事はねぇんだ……心から愛したのはアイツが初めてだったんだよ……!! そこまで本気で愛しちまったから―――」
どうすればいいのか悩んだのだろう。
もしこのまま戦い続けてアルトラン・ネメシスと対峙した時、きっとレンネィの命は奪われる。
もし戦う事を止めれば、世界は滅ぶ。
どちらに転んでも、彼にとっては絶望しかなかったから。
「―――だったら俺はアイツが生きる道を選ぶ為に手段を択ばねぇ!!」
それが心輝の決断だった。
彼の戦う目的の一つ、それはレンネィと共に生きる為。
勇と何ら変わらない、愛に順じたもの。
もし勇が同じ立場だったら同じ様な事を考えていたかもしれない。
彼にとって茶奈は誰よりも何よりも大事な人だから。
その想いが痛い程にわかるから、彼もまた悩んだのだ。
「悪いが俺はここまでだ。 こうなっちまったらよ、俺はアルトランにでも頼み込んで世界崩壊後でも生きられる様にしてもらうしかねぇ。 相手は神みたいな奴なんだろ? なら俺達を天士みたいに換える事も出来るかもしれねぇからな!!」
これが心輝の持つ一抹の希望。
アルトラン・ネメシスと関わってしまったが故に縛られた末の結論だった。
愛する者を守る為に世界や仲間達を切り捨てる。
もはやそれは……一つの諦念にも近い。
でも、だからこそ……勇は立ち塞がったのだ。
「それがお前の出した結論か。 確かにそれは可能かもしれないな。 でもな、奴にとって俺達は滅亡の対象でしかない。 レンネィさんの様に有効利用の道具にされるのが関の山だ」
それは全てを知ったからではない。
決して諦めでもない。
勇は信じているのだ。
心輝と共に戦い、そしてレンネィの命も救う事が出来る方法がきっとあるのだと。
例え心輝が絶望に沈もうとしているのであろうとも。
その心を拾い上げる為に。
「だから俺は何が何でもお前を止める!! お前の為にも、レンネィさんの為にも!!」
心輝がこの様な道を選ぶ事もまた一つの考えとしてはあった。
勇がア・リーヴェの事を知った後から、その考えは心の奥底に引っかかっていた。
覚悟を決める時間もあったから……こうして迷う事無く立ち塞がる事が出来たのだ。
時間を置いて話そうとしたのは、この為でもあったのだから。
だがその時、心輝の表情が強い強張りを見せる。
「ならよぉ……ッ!!」
カッ!!
その瞬間、勇の足元が激しい光を打ち放った。
それは彼の身を真っ白に染め上げる程の……凄まじい炎の光。
ドッバァァァァーーーーーー!!!!
そしてたちまち、勇の体を覆い尽くし消す程の巨大な炎の渦が撃ち上がったのだった。
「悪ぃな……俺は最初からこうするつもりだったんだ」
心輝もまた、勇がこうやって立ち塞がる事を想定していたのだろう。
いや、むしろ確信していたのかもしれない。
そうだからこそ、彼は予めこうなる様に罠を張る事が出来ていた。
これは心輝が持つ力の一端。
相手に気付かせる事すら無く、間接的に相手を焼く事が出来る白炎の罠。
敢えて形容するならば……【転焼滅却《プロミナスゲイル》】
なお激しく渦巻き、全てを焼き尽くす白の炎……臨界点の力。
心輝が持ちうる最大の焼却力が中で渦巻いているのだ。
これは誰にも見せた事の無い、彼の持つ最大の技の一つ。
例え絶対防御を誇る茶奈であろうと無事では済まされないであろう程の威力を誇る秘術なのである。
「お前を倒せば箔が付くってもんだ。 そうなりゃアルトランだって便宜くらい計ってくれるだろうよ」
もし今アルトランと対峙した時、最も有効に戦えるのは間違いなく勇。
脅威とも言えるその彼の首を取ったとあれば、何も持たずに赴くよりはずっと良い評価を得られるだろう。
そう思っての行動だった。
そう出来る程に、彼は追い詰められていたのだ。
親友を手に掛ける事も厭わない程に。
きっと何が正しいだとか、正義だとかは関係ない。
ただ自分が大事に思う者を救う為に心輝は全てを投げ捨てた。
彼にとっては……もうそれ以上の選択肢は無かったのだから。
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