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第三十三節「二つ世の理 相対せし二人の意思 正しき風となれ」
~剛性と粘性 魔剣を司りし秘密~
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心輝の訴えも虚しく、魔剣の強化提案は却下された。
その難易度は既に不可能とも言えるレベルに近いものだったからだ。
勇はともかく、茶奈達の持つ力はもはや現存するあらゆる物質の強度を凌駕する。
それらを強化する事が出来る命力があろうとも……その上限を超えて使用すれば当然、自壊は免れない。
内に秘めた命力も伸びを期待する事は出来ない。
例え限界を超えた彼等とて、その先の成長は牛歩の如く遅く小さい。
力を養う程の時間も暇も無い彼等には、武器の強度を著しく上げる様な成長を見込む余地などありはしないのだから。
カプロが悩み、心輝が悩み。
見つからない答えに頭を抱える。
もう今までのままで良いのではないか……そんな想いすら過らせながら。
話に付いていけていない女性陣を置き去りにしたまま。
「要するに凄い金属があればいいって事なんじゃないの?」
そんな時、レンネィの口からあっけらかんとした一言が飛び出す。
それが思わず周囲の苦笑を呼び……レンネィが思わず眉間を寄せさせていた。
「ま、単純に言えばそうなんスけどね。 ぶっちゃけて言うともう物性、物質の構造的に不可能に近いんスよ」
「ふぅん」
物質とは分子が様々な現象で互いに重なりくっつく事で物体となって象られる物である。
強度とは簡単に言えばその分子結合が強固であるという事。
例えば鉄であれば、鉄の素体となる鉄分の分子同士が無数に重なりあう事で『鉄』という物質を生み出している。
ただこの鉄そのものだけでは、鉄系金属としては非常に柔らかい部類に分類されてしまう。
同じ金属同士で叩けばすぐに曲がるし、へこみもする。
ここに炭素や鉛などといった別の物質を混ぜ合わせ、適度な加工を行う事で……鋼鉄や超鋼といった、より強固な材料へと生まれ変わるのである。
こういった強度の事を人はまとめて、剛性と呼ぶ。
もちろん硬いだけでは、実は金属としては失格だ。
硬ければ硬いほど、脆いといった欠点が存在するからだ。
例えば、地球上に存在する最高の硬度を持つダイヤモンド。
これは石材の類ではあるが……もしこれを魔剣に使えれば非常に有効な武器になると思うかもしれない。
だがダイヤモンドは硬いが……脆いのだ。
一点の傷でもあれば、そこを撃つだけで……崩壊してしまう。
金属もまたしかり。
そこで必要になってくるのは……粘性。
鉄の板が曲がったり、へこんだりする所を見た事があるだろうか。
それは鉄が強い粘性を持ち、柔らかいから。
人間の体と比べれば数段にも硬いが、柔軟性を持っているからこそ変形に耐えうることが出来る。
しかし当然剛性と粘性は同居する事が出来ない。
どちらかが高ければ、どちらかが低くなる……そういう性質なのである。
そして心輝の持つ魔剣は、それらが最もバランスよく配分された金属を使用していた。
そのおかげで格闘武器として耐え、炎の熱にも耐え、命力走行にも順応し、体の動きに追従する……そんな武器だったのである。
「―――という訳で、ただ硬けりゃいいとかそんなんじゃねぇんスよ」
そんな話を長々と説明されたせいか、物理化学に興味の無い女性陣はもはやウンザリといった表情を浮かべていた。
茶奈に至っては眠そうにあくびを上げており、どこかに腰を掛けたら今にも眠ってしまいそうだ。
当のカプロはと言えば……得意げに話す余り留まる事を知らず、未だ言葉を並べている訳だが。
一人で続く話を前に、心輝ですらもう付いていけていない様子。
「おあつらえ向きに新素材がありゃ、話は別ッスけどねぇ」
しまいにはそんな一言で締めくくられ、もはや誰しもがぐうの音も出ない。
やはり世の中そんなに上手くはいかないもので。
心輝に至っては「もういいって、前のままでよ」などと面倒を払い除ける様を見せていた。
だがその中で……一人、考えを巡らせる者が居た。
「なぁカプロ、新素材があればいいんだよな?」
それは勇。
カプロの話を前に、理系でも無い彼が珍しく最後まで聞き耳を立てていたのだ。
「そうっスね、見当もつかねッスけど」
もはやカプロとしても冗談交じりに「うぴぴ」と笑うだけ。
現実をよく理解する彼が見えぬ期待に重きを置く事は無い。
そんな彼を前に、勇は何を想ったのか……そっとカプロの傍へと歩み寄る。
そして彼が思うがままに、カプロの耳元で何かを囁いていた。
仲間達がキョトンと二人を眺める中で、静かに囁きは続く。
すると時を置けば置く程……カプロの顔が徐々に驚きを帯び始めた。
しまいには顎を落とさんばかりに口を開き、目をも見開かせて。
呆気にとられるばかりに、鼻水すらズルリと垂れ落ちる程。
勇が彼に伝えたのは……それ程までの何か。
その全てを伝え終えると、勇がそっと足を引いてカプロから離れる。
話を終えた勇の顔には……ありありと自信を覗かせた笑みが零れていた。
「……勇さん、本当ならそれは教えて欲しくなかった情報ッスね。 出来れば自分で見つけたかったッス」
「まぁしょうがないだろ、今が今なんだからさ」
仲間達にはカプロが何を聴いたのかはわからない。
だが自信家のカプロがそこまで驚く程の話があって。
そして勇が呟いたのだから……そこに特殊な何かが有った事だけは理解出来ていた。
「うぴぴ……出来る、出来るッスよ! シン、アンタの要望、全部ひっくるめて叶えてやるッス!!」
その難易度は既に不可能とも言えるレベルに近いものだったからだ。
勇はともかく、茶奈達の持つ力はもはや現存するあらゆる物質の強度を凌駕する。
それらを強化する事が出来る命力があろうとも……その上限を超えて使用すれば当然、自壊は免れない。
内に秘めた命力も伸びを期待する事は出来ない。
例え限界を超えた彼等とて、その先の成長は牛歩の如く遅く小さい。
力を養う程の時間も暇も無い彼等には、武器の強度を著しく上げる様な成長を見込む余地などありはしないのだから。
カプロが悩み、心輝が悩み。
見つからない答えに頭を抱える。
もう今までのままで良いのではないか……そんな想いすら過らせながら。
話に付いていけていない女性陣を置き去りにしたまま。
「要するに凄い金属があればいいって事なんじゃないの?」
そんな時、レンネィの口からあっけらかんとした一言が飛び出す。
それが思わず周囲の苦笑を呼び……レンネィが思わず眉間を寄せさせていた。
「ま、単純に言えばそうなんスけどね。 ぶっちゃけて言うともう物性、物質の構造的に不可能に近いんスよ」
「ふぅん」
物質とは分子が様々な現象で互いに重なりくっつく事で物体となって象られる物である。
強度とは簡単に言えばその分子結合が強固であるという事。
例えば鉄であれば、鉄の素体となる鉄分の分子同士が無数に重なりあう事で『鉄』という物質を生み出している。
ただこの鉄そのものだけでは、鉄系金属としては非常に柔らかい部類に分類されてしまう。
同じ金属同士で叩けばすぐに曲がるし、へこみもする。
ここに炭素や鉛などといった別の物質を混ぜ合わせ、適度な加工を行う事で……鋼鉄や超鋼といった、より強固な材料へと生まれ変わるのである。
こういった強度の事を人はまとめて、剛性と呼ぶ。
もちろん硬いだけでは、実は金属としては失格だ。
硬ければ硬いほど、脆いといった欠点が存在するからだ。
例えば、地球上に存在する最高の硬度を持つダイヤモンド。
これは石材の類ではあるが……もしこれを魔剣に使えれば非常に有効な武器になると思うかもしれない。
だがダイヤモンドは硬いが……脆いのだ。
一点の傷でもあれば、そこを撃つだけで……崩壊してしまう。
金属もまたしかり。
そこで必要になってくるのは……粘性。
鉄の板が曲がったり、へこんだりする所を見た事があるだろうか。
それは鉄が強い粘性を持ち、柔らかいから。
人間の体と比べれば数段にも硬いが、柔軟性を持っているからこそ変形に耐えうることが出来る。
しかし当然剛性と粘性は同居する事が出来ない。
どちらかが高ければ、どちらかが低くなる……そういう性質なのである。
そして心輝の持つ魔剣は、それらが最もバランスよく配分された金属を使用していた。
そのおかげで格闘武器として耐え、炎の熱にも耐え、命力走行にも順応し、体の動きに追従する……そんな武器だったのである。
「―――という訳で、ただ硬けりゃいいとかそんなんじゃねぇんスよ」
そんな話を長々と説明されたせいか、物理化学に興味の無い女性陣はもはやウンザリといった表情を浮かべていた。
茶奈に至っては眠そうにあくびを上げており、どこかに腰を掛けたら今にも眠ってしまいそうだ。
当のカプロはと言えば……得意げに話す余り留まる事を知らず、未だ言葉を並べている訳だが。
一人で続く話を前に、心輝ですらもう付いていけていない様子。
「おあつらえ向きに新素材がありゃ、話は別ッスけどねぇ」
しまいにはそんな一言で締めくくられ、もはや誰しもがぐうの音も出ない。
やはり世の中そんなに上手くはいかないもので。
心輝に至っては「もういいって、前のままでよ」などと面倒を払い除ける様を見せていた。
だがその中で……一人、考えを巡らせる者が居た。
「なぁカプロ、新素材があればいいんだよな?」
それは勇。
カプロの話を前に、理系でも無い彼が珍しく最後まで聞き耳を立てていたのだ。
「そうっスね、見当もつかねッスけど」
もはやカプロとしても冗談交じりに「うぴぴ」と笑うだけ。
現実をよく理解する彼が見えぬ期待に重きを置く事は無い。
そんな彼を前に、勇は何を想ったのか……そっとカプロの傍へと歩み寄る。
そして彼が思うがままに、カプロの耳元で何かを囁いていた。
仲間達がキョトンと二人を眺める中で、静かに囁きは続く。
すると時を置けば置く程……カプロの顔が徐々に驚きを帯び始めた。
しまいには顎を落とさんばかりに口を開き、目をも見開かせて。
呆気にとられるばかりに、鼻水すらズルリと垂れ落ちる程。
勇が彼に伝えたのは……それ程までの何か。
その全てを伝え終えると、勇がそっと足を引いてカプロから離れる。
話を終えた勇の顔には……ありありと自信を覗かせた笑みが零れていた。
「……勇さん、本当ならそれは教えて欲しくなかった情報ッスね。 出来れば自分で見つけたかったッス」
「まぁしょうがないだろ、今が今なんだからさ」
仲間達にはカプロが何を聴いたのかはわからない。
だが自信家のカプロがそこまで驚く程の話があって。
そして勇が呟いたのだから……そこに特殊な何かが有った事だけは理解出来ていた。
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