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第三十四節「鬼影去りて 空に神の憂鬱 自由の旗の下に」
~願望、退き~
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アルディの引き渡しも済み、残す所は次の目的を定める事のみ。
しかし議論を重ねる度に大きな問題にぶち当たり、会議が留まりを見せる。
一番のネックは勇の持つ創世の鍵の力だ。
皆が思う以上に世界の歪みは創世の鍵の力を奪い、著しい力不足を呼んでいた。
それでもただ普通の敵と戦うだけなら十二分にも足る強さである事には間違いない。
だがアルトラン・ネメシスを始め、その他強敵を前にどこまで通用するかは定かではない。
最終目標であるアルトラン・ネメシスはともかく、デューク=デュランという存在が如何に強いのか。
不確定要素が大きく、判断材料に乏しいのだ。
それらに対する確実性を増す為にはどうすれば良いか、決めあぐねているという訳である。
そもそも勇はそういった戦略性に頭を回せるほど思考に余裕がある訳ではない。
どちらかと言えば脳筋派、考えるより体を動かす方が得意だ。
今まで肉体改造を研究的に見る事が出来たのも、彼が直感的に肉体の事を理解出来たからに過ぎない。
肉体派理系といえばわかりやすいだろうか。
それ以外の事となると、ア・リーヴェの知恵にアクセスして力を借りなければならなくなる訳で。
この力を使用している間は具現化したア・リーヴェの知恵がほんの少しばかり落ちていくというデメリットがあるので多用は禁物である。
という事もあり、勇は考えが纏まらない事があると体を動かしに行く。
もちろん天力の実践訓練を兼ねた大事なトレーニングである。
今はそれが許されるから、焦る事も無かったのだ。
居住区地下、訓練スペース。
そこでは相変わらずグランディーヴァの面々が訓練に励む姿が見受けられた。
訓練スペースを見渡す事の出来る見学ルームには同伴組も入る事が出来るので、彼等の訓練を眺めに来る者も少なくはない。
ちなみにイシュライトの訓練の際は何故か女性陣がこぞって訪れるので、楽しそうに眺める彼女達の姿を拝む事が可能だ。
今、そこには丁度訓練を終え、長椅子に座りながら息を整える勇の姿が。
前述通りの、会議を抜け出した後の気晴らしの訓練である。
それを終えた所で、休憩も兼ねて仲間達の訓練を見下ろし眺めていた。
するとそんな時、勇の背後へゆっくりと歩み寄っていく一人の人影が。
「あのぅ……」
その声に気付いた勇が振り向き、視界に映したのは―――竜星だった。
「あれ、乾君、どうしたんだ?」
今日の竜星は珍しく一人。
いつもならばナターシャと、最近であればそれに加えてアンディも一緒な事が多いのにも拘らず。
「ちょっと藤咲さんに相談がありまして……」
「え、俺に?」
竜星がどこか気恥ずかしそうに視線を外しながら答える様に、勇が思わず首を傾げる。
何の事かと思いつつも勇はそっと椅子隣を手でそっと叩き、座るよう促した。
竜星が勇の下に訪れた理由は、先日のナターシャとの話の事だ。
彼もまた魔剣使いに憧れ、ナターシャと一緒に戦いたいと願った。
結局その時はアンディと鉢合わせして仲直りするというハプニングに遭遇、うやむやになってしまったが。
そして今日、日を改めて勇の下へと訪れたのである。
一人で来たのは、こんな事までナターシャに頼るのも恥ずかしいと思ったからだ。
そこで竜星は勇へと悩みを打ち明けた。
ナターシャの力になりたいという事。
魔剣使いになって世界の為に戦いたいという事。
勇の様な強い存在になりたいという事。
そんな想いを語る彼の声はいつもの様に力強く。
もはや遠慮をする様な仲でもないから、心内の想いを全て曝け出した。
憧れを体現したいから。
「―――という訳なんです。 僕も皆さんの力にならせてくれませんか……?」
竜星の語りはとても強い願いに満ち溢れていた。
勇が深く考えてしまう程に。
腕を組み、顔を深く落とし、唸り声を上げて。
しかしその顔に浮かぶのは―――眉間にシワを寄せた、苦悶に満ちた表情だった。
「悪いけど、俺はその願いに賛同する事は出来ない」
「えっ……」
それは予想に反した答え。
一瞬理解する事も出来ず、竜星がその身を固まらせる。
そんな中で勇が顔をそっと上げ、竜星へと僅かに振り向かせた。
左眼の蒼瞳で鋭く見つめながら。
「もちろん乾君が魔剣を持ちたいっていう意思はわかるし、それを止めるつもりは無いよ。 そこまで口出しする権利は俺には無いさ」
そのままそっと天井を見上げる様に顔を持ち上げると、両腕を解いて椅子に突く。
その時思うのは、自身が魔剣使いになった経緯。
きっかけはただの復讐からだった。
親友の統也が殺されて、その仇討をする為に剣聖から剣を譲り受けた。
それもすぐに済んで、それからはただがむしゃらに戦った。
誰かの為に、望まれるままに、自身の目的も無く。
きっとそれと比べれば、竜星の熱意は正当と言える。
しっかりとした目的を有し、守りたい者もいて、戦う理由が存在するのだから。
そんな彼が魔剣を扱えばきっと近い将来、勇と肩を並べて戦える程に強くなる事が出来るだろう。
それだけの時間が有るのならば。
「でも、俺達と同じ戦場に立つ事を認める訳にはいかない」
「何故ですか?」
「それは君が俺達の様に強くなるまでの時間が圧倒的に足りないからなんだ」
すると勇が訓練スペースへと視線を移し、ある一点へと向けて指を向ける。
竜星はそれに気付くと、追従する様に顔を振り向かせた。
その先、視界に映ったのは―――地面に突っ伏す獅堂の姿だった。
しかし議論を重ねる度に大きな問題にぶち当たり、会議が留まりを見せる。
一番のネックは勇の持つ創世の鍵の力だ。
皆が思う以上に世界の歪みは創世の鍵の力を奪い、著しい力不足を呼んでいた。
それでもただ普通の敵と戦うだけなら十二分にも足る強さである事には間違いない。
だがアルトラン・ネメシスを始め、その他強敵を前にどこまで通用するかは定かではない。
最終目標であるアルトラン・ネメシスはともかく、デューク=デュランという存在が如何に強いのか。
不確定要素が大きく、判断材料に乏しいのだ。
それらに対する確実性を増す為にはどうすれば良いか、決めあぐねているという訳である。
そもそも勇はそういった戦略性に頭を回せるほど思考に余裕がある訳ではない。
どちらかと言えば脳筋派、考えるより体を動かす方が得意だ。
今まで肉体改造を研究的に見る事が出来たのも、彼が直感的に肉体の事を理解出来たからに過ぎない。
肉体派理系といえばわかりやすいだろうか。
それ以外の事となると、ア・リーヴェの知恵にアクセスして力を借りなければならなくなる訳で。
この力を使用している間は具現化したア・リーヴェの知恵がほんの少しばかり落ちていくというデメリットがあるので多用は禁物である。
という事もあり、勇は考えが纏まらない事があると体を動かしに行く。
もちろん天力の実践訓練を兼ねた大事なトレーニングである。
今はそれが許されるから、焦る事も無かったのだ。
居住区地下、訓練スペース。
そこでは相変わらずグランディーヴァの面々が訓練に励む姿が見受けられた。
訓練スペースを見渡す事の出来る見学ルームには同伴組も入る事が出来るので、彼等の訓練を眺めに来る者も少なくはない。
ちなみにイシュライトの訓練の際は何故か女性陣がこぞって訪れるので、楽しそうに眺める彼女達の姿を拝む事が可能だ。
今、そこには丁度訓練を終え、長椅子に座りながら息を整える勇の姿が。
前述通りの、会議を抜け出した後の気晴らしの訓練である。
それを終えた所で、休憩も兼ねて仲間達の訓練を見下ろし眺めていた。
するとそんな時、勇の背後へゆっくりと歩み寄っていく一人の人影が。
「あのぅ……」
その声に気付いた勇が振り向き、視界に映したのは―――竜星だった。
「あれ、乾君、どうしたんだ?」
今日の竜星は珍しく一人。
いつもならばナターシャと、最近であればそれに加えてアンディも一緒な事が多いのにも拘らず。
「ちょっと藤咲さんに相談がありまして……」
「え、俺に?」
竜星がどこか気恥ずかしそうに視線を外しながら答える様に、勇が思わず首を傾げる。
何の事かと思いつつも勇はそっと椅子隣を手でそっと叩き、座るよう促した。
竜星が勇の下に訪れた理由は、先日のナターシャとの話の事だ。
彼もまた魔剣使いに憧れ、ナターシャと一緒に戦いたいと願った。
結局その時はアンディと鉢合わせして仲直りするというハプニングに遭遇、うやむやになってしまったが。
そして今日、日を改めて勇の下へと訪れたのである。
一人で来たのは、こんな事までナターシャに頼るのも恥ずかしいと思ったからだ。
そこで竜星は勇へと悩みを打ち明けた。
ナターシャの力になりたいという事。
魔剣使いになって世界の為に戦いたいという事。
勇の様な強い存在になりたいという事。
そんな想いを語る彼の声はいつもの様に力強く。
もはや遠慮をする様な仲でもないから、心内の想いを全て曝け出した。
憧れを体現したいから。
「―――という訳なんです。 僕も皆さんの力にならせてくれませんか……?」
竜星の語りはとても強い願いに満ち溢れていた。
勇が深く考えてしまう程に。
腕を組み、顔を深く落とし、唸り声を上げて。
しかしその顔に浮かぶのは―――眉間にシワを寄せた、苦悶に満ちた表情だった。
「悪いけど、俺はその願いに賛同する事は出来ない」
「えっ……」
それは予想に反した答え。
一瞬理解する事も出来ず、竜星がその身を固まらせる。
そんな中で勇が顔をそっと上げ、竜星へと僅かに振り向かせた。
左眼の蒼瞳で鋭く見つめながら。
「もちろん乾君が魔剣を持ちたいっていう意思はわかるし、それを止めるつもりは無いよ。 そこまで口出しする権利は俺には無いさ」
そのままそっと天井を見上げる様に顔を持ち上げると、両腕を解いて椅子に突く。
その時思うのは、自身が魔剣使いになった経緯。
きっかけはただの復讐からだった。
親友の統也が殺されて、その仇討をする為に剣聖から剣を譲り受けた。
それもすぐに済んで、それからはただがむしゃらに戦った。
誰かの為に、望まれるままに、自身の目的も無く。
きっとそれと比べれば、竜星の熱意は正当と言える。
しっかりとした目的を有し、守りたい者もいて、戦う理由が存在するのだから。
そんな彼が魔剣を扱えばきっと近い将来、勇と肩を並べて戦える程に強くなる事が出来るだろう。
それだけの時間が有るのならば。
「でも、俺達と同じ戦場に立つ事を認める訳にはいかない」
「何故ですか?」
「それは君が俺達の様に強くなるまでの時間が圧倒的に足りないからなんだ」
すると勇が訓練スペースへと視線を移し、ある一点へと向けて指を向ける。
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