時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第五節「交錯する想い 友よ知れ 命はそこにある」

~急行 飛翔 火の国へ向かう~

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 事情説明の中も車はずっと走り続け。
 いつもよりも比較的空いた首都高を高速で突き抜けていた。
 当然、目立たない程度に交通規制を掛けたおかげである。

 それから一時間程だろうか。
 話を終えて外へと視線を向ければ、そこには一面のアスファルトが広がる光景に変わっていて。
 その先に見える幾つもの建物や飛翔物を前にただただ驚きを見せるばかりだ。

 そう、そこは飛行場の滑走路。

 しかも一般人が扱う様な場所ではない。
 その証拠に、車内からは大型のヘリコプターや戦闘機らしき姿までが覗き見えていて。
 自衛隊員と思しき迷彩服を着た者達が物々しい雰囲気で走り回っていたのだから。
 
「さて皆さん、実は結構時間が押しておりまして。 急いで私に付いてきて貰えますか?」

 福留がそう言った直後の事。
 まるで図ったかの様に車が突如として停車する。
 中に居た勇達がバランスを崩してしまう程の急停止で。

 すると途端に後部座席が解き放たれ、出迎えの自衛隊員がその姿を現した。

「さぁ行きましょう」

 隊員までもが急かす様に手招きしながら駆ける中、勇達も急いで車の外へ。

 そんな彼等を迎えたのは、なんと少人数用の小型ジェット機。
 勇達の向かう先はこれに乗らねばならない程に遠いという事なのだろう。
 思わぬ乗り物の登場に勇やちゃなですらも驚きを隠せない様子。

 でも足を止める事は許されない。
 それほど急を要しているという事なのだろう。
 勇達が即座に乗り込んで間も無く、機体が動き始めていて。
 そのまま留まる事も無く、滑走路を高速で駆け抜けていく。



 こうして、小型機は遂に大空の彼方へと飛び去っていった。
 多くの自衛隊員が見守る中、その背に一心の期待を受けながら。

 彼等も願わずにはいられなかったのだ。
 少年達の無事と活躍を。

 国を愛する彼等にとっても、勇とちゃなの存在は希望そのものなのだから。





◇◇◇





 広がる青空の下、一機の小型ジェット機が高速で突き抜けていく。

 勇達が乗らせられたのはいわゆるジェット機の類だ。
 つまり、政府が所持している物ではないという事である。

 それを示すかの様に、内部の至る所の文字は全て英語で書かれていて。
 しかも子供も乗った事があるのだろうか、幼児用の玩具シールまで貼られていたのだから。
 もちろんそれも欧米で人気のキャラクターモノだ。

 とはいえ内装は比較的質素ではあるが。
 それでも勇達が乗るだけなら十分だろう。

「うおお、すげぇ! 本当に空飛んでる!!」

「まじだーあはは、すごーい!!」

 しかし心輝とあずーはそんな事になど一切気にせず、空の様子を大興奮で眺め観る。
 よほどこんな飛行機に乗れた事が嬉しいのだろう。
 節操の無い様は隣に座る瀬玲が呆れてしまう程だ。

「これからどこに向かうんですか?」

 そんな騒がしい中でも勇は相変わらずで。
 やはり目的が目的なだけに、場所が気になる様だ。

 実はまだ勇もちゃなも目的地までは聞かされていない。
 というよりもそんな説明を受ける余裕も無かった訳だが。

 心輝達への説明も済み、飛行機に乗り込んだ事で余裕も生まれたから。
 こうして訊かれる事で福留もようやくその口を開く事が出来る。

「目的地は熊本です。 阿蘇山の、と言えばわかりますよね?」

「熊本……九州でしたっけ?」

 これから勇達が向かうのは九州、熊本県。
 日本列島の左端、九州地方の中央部に控えている県だ。
 活火山阿蘇を構え、いつからか火の国とも呼ばれている。
 そのお陰で九州地方の中でも指折りと言える知名度から観光客も多い。
 ゆるキャラと呼ばれる興業キャラクター【くまノン】も日本でトップを飾るなど、勢いは地方だけに留まらない程である。

 しかしいきなり日本の端の方に行く事になるなど夢にも思わなかっただろう。
 これには勇達もさすがに驚くばかりだ。

「実は阿蘇山の麓も変容が発生していましてね、そこにも魔者が出たのですよ」

「そんなところにもか……」

「えぇ。 彼等は自分達を『ザサブ』と呼んでいるらしく、しかもやたらと攻撃的でして。 地元住民にも被害が出てしまっているのです」

 そして恐らくは転移による行方不明者も。
 
 その話を聞いた時、勇の唖然としていた顔に強張りが生まれ。
 膝の上で握っていた拳に力が籠る。

「今は自分達の住処に戻った所を自衛隊が取り囲んで膠着状態です。 しかしそれ以上の事も出来ず、勇君達の力に頼らざるを得ないという事になった訳です」

「なるほど……え、でも名前を名乗ったって事は、話は通じるんじゃ?」

 そう気付いた勇が思わずその首を傾げさせる。

 名前がわかるという事はつまり、ウィガテ族の時の様に会話が成り立つという事だ。
 人間ではなく魔者であれば命力のおかげで対話は不可能ではない。

 だからこそ勇は思う。
 今の状況は彼等にとっても異様で、戦っている場合では無いはず。
 例え凶暴であろうとも話せる知能があるなら和解も出来るのではないか、と。
  
 だが、その予想も間も無く覆される事となる。
 福留が首を横に振る姿を目にする事で。

「交渉はしました。 ですが彼等は話を一切聞こうとはしません。 それどころか脅しを展開する始末でして。 『すぐに立ち去れ、さもなければ皆殺しだ』とね」

 更に、そう語る顔には諦めの沈んだ表情が浮かんでいたのだから。



 恐らく【ザサブ族】という者達は、ダッゾ族の様に獰猛な者達なのだろう。
 つまり、問答無用に人間を殺す事もいとわない殺意の塊とも言える存在。

 その先に見えるのは本物の死闘だ。
 ウィガテ王の様なおちゃらけた存在との戦いとは訳が違う。
 もしかしたらあの恐ろしいダッゾ王の様な存在が相手かも知れない。

 そんな想いが勇の脳裏に駆け巡り、強い緊張感をもたらす。

 今の自分に勝てるのだろうか。
 退ける事が出来るのだろうか。
 その様な不安と共に。  

 でも勇は負けるつもりなどさらさら無い。

 ここまでに出来る事は充分やって来たから。
 心輝達にも自身の雄姿を見せて安心させたいから。

 ただ全力でぶつかり、生きて帰るだけなのだと。



 緊張と高揚が入り混じり、それでも強気であろうと頬を緩ませる。
 そこに覗くのは覚悟か自信か、それとも慢心か。



 幾多もの感情が入り乱れる中、彼等は遂に九州へと降り立つ。
 小型ジェット機から今度は大型軍用ヘリへと乗り換えて、次に目指すは火の国熊本。

 そこに待つのは果たして一体どの様な者達なのだろうか。


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