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第三十五節「消失の大地 革新の地にて 相反する二つの意思」
~ 僕は彼の目的が果たせれば満足ですから~
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勇達が二人の魔剣使いに襲撃を受けていた頃。
パリ南西部―――
その街一帯は景観が考慮され、高層ビルなどは一切存在しない。
いずれの建物も見上げればすぐに屋根が見える程の背丈である。
そこに一つの大きなホテルがあった。
そのホテルも当然他の建物と同じで、どちらかと言えば高さよりも横幅の方が大きい。
その外観はガラス張りをメインとした一見シンプルなモダンデザイン。
しかしただ張り合わせただけではなく、視覚と立体を意識した特殊な意匠を誇っている。
よほどの高級ホテルなのだろう、その存在感は明らかに周囲から浮かび上がるかのよう。
ガッシャァーーーーーーンッ!!!
だが途端そのガラス窓の一つから何かが飛び出し、破片を周囲に撒き散らす。
それは瀬玲と心輝。
二人が力の限りに外へと飛び出したのだ。
それを追うのは黒づくめの戦闘員達。
ただ追撃も虚しく、二人の素早い逃走を前に成す術も無く。
たちまち二人の体がパリの空を高く舞い上がる。
ただし揃って生身私服のまま、武器や装備を所持しないままで。
その通り二人は武器を持って来ていない。
持って来てそれが見つかれば正体がバレてしまう可能性もあるからだ。
それに彼等は今や魔剣が無くても普通の人相手ならなんて事無く戦う事が可能。
フル装備の戦闘員達ですらも彼等にとっては対処可能な相手なのである。
では何故そんな二人がこうして逃げるハメになったのか―――
「チッキショ!! 初日からアウトかよおッ!!」
「初日どころか私らが来た事なんてお見通しだったのよッ!! 最初からさあッ!!」
パリに着いてからホテルに入るまで全く何も異常は無かった。
入国時も、移動時も、チェックインの時も。
精々私事が漏れた程度で、それだけでバレる要素があった訳ではない。
だがその途中で瀬玲は感付き始めていたのだ。
余りにも何も無さ過ぎるという事に。
瀬玲もある程度は心の色を読む事が出来る。
だからこそここまでの道中で色んな人間の心を覗き見て来たものだ。
入国審査員、空港員、タクシーの運転手、道行く人々。
チェックイン待ちをする客、ホテルマン、客室案内人などなど。
最初はそういうものかと思っていた。
それが普通だと思っていたのだ。
自分達に直接関わらなかった人だけが憎悪の赤を抱いていた事を。
そう、関わった人間は皆、そんな色を見せなかった。
穏やかで敵意の無い優しい黄色の心ばかりで。
客商売だから?
そういう人柄だから?
それは違う。
「あの入国審査員ッ!! アイツだッ!! アイツがもう私達の事をわかってやがったってさあッ!!」
そう、二人が入国を果たした時に相対した者こそが見抜いた人物。
【救世同盟】は最初からその様に罠を張っていたのだ。
入国審査員を感情コントロール訓練済みの移民系信者に任せていたのである。
移民系、それはつまり元々の母国がフランスではないという事。
それに対して瀬玲達は知らず内に命力翻訳で母国語の様に語っていた。
「自分達はフランスに帰って来た」と宣い、外国語を語っていたのだ。
それは明らかな命力翻訳を逆手に取った作戦。
瀬玲達はそれにまんまと乗せられてしまっていたのである。
そうもなれば罠の一つや二つ用意される事も当然の事。
知らず内に戦闘員達が二人を仕留めんと迫り寄っていたのだ。
だからこうして逃げる事しか出来なかったのである。
相手が準備万端である以上、立ち向かえば逆に返り討ちにされかねないのだから。
「んじゃどうすんだよおッ!?」
「予定通り逃げるしかないでしょッ!!」
二人が全力で逃げれば一日でフランスから出る事も不可能では無いだろう。
でもここはフランスの中心地パリ、国外に行くには骨が折れる距離が二人を待ち構えている。
おまけに追撃込みで。
万が一の逃走経路は熟知済みとはいえ、いささか厳しいと言えるこの状況。
二人の顔に堪らず苦悶が浮かぶ。
「このまま一気に抜けていくッ!! 私に掴まりなさいッ!!」
「何処に掴まれってぇんだよおッ!?」
「胸でも腰でもいいからとっとと掴まんなさいよッ!!!」
グワイヴも無い今の心輝に機動力はほぼ皆無。
だからこそ頼れるのは、魔剣が無くとも自在機動を可能とする瀬玲の力のみ。
屋根上を跳ねながら、二人の問答が夜の空に響き渡る。
ただそんな大胆な発言を前に心輝もさすがの抵抗ありの模様。
「だああ!! レンネィすまねぇーーー!!」
「バカ言ってんじゃない!!」
そして意を決した心輝が瀬玲の腰に抱きかかった途端―――
二人の体が空中でガクンと大きく跳ねあがる。
その時輝くのは、瀬玲の両手から伸びた命力糸。
それをあたかも蜘蛛の糸の様に建物へ伸ばし、引き込む事によって空中跳躍させたのだ。
スリングショットの要領である。
そうなった時、もはや瀬玲の足は屋根すら付きはしない。
凄まじい勢いで二人の体が空中を突き抜けていく。
「このまま一気にパリを抜けて―――」
だがその時、彼女の予想もしえない事態がその身に巻き起こる。
ピュウンッッッ!!!
「なっ!?」
突如として、自身を引いていた命力糸の一本が―――千切り飛ばされたのである。
たちまち二人の体がバランスを崩し、街へと向けて落下していく。
「んなくそッ!!」
それは突然の事だった。
自慢の命力糸の断裂、それが信じられなくて。
でも瀬玲は諦めない。
新たな糸を生み出し、再び跳躍を果たす。
しかしその直後、再び一本の命力糸が虚しく千切れ飛ぶ。
今度は跳んだ後だったからこそ実害は無いが。
「ふっざっけ!!」
「何が起きてるんだよォ!?」
それは瀬玲にもわからない。
ただただ、起きた事実を前に対処するだけだ。
それも間も無く、考える余裕すら奪い去る。
ピュウンッッッ!!!
「くうッ!?」
それは空気を貫く音。
真っ直ぐ、そして激しく。
そんな何かが今、瀬玲の顔スレスレを突き抜けて行ったのだ。
間一髪躱したが、彼女は焦りを隠せない。
「弾丸ッ!? 嘘でしょッ!!?」
そう、突き抜けて行ったのは紛れも無く弾丸。
それも命力弾ではない、至って普通の狙撃用ライフル弾だ。
ただ、その銃弾に異常なまでの強い命力が篭められていたが。
瀬玲の命力糸は言わば物理干渉が出来る程の強い命力濃度を誇っている。
それを千切る事は通常弾では愚か、命力弾でさえ不可能な程。
あのアージでさえ手をこまねく程に強靭かつ自由自在の妙技なのだ。
つまり、撃ち放った者はそれを千切り飛ばすという程の力を持ち得ているという事。
そんな弾丸がもしも直撃してしまえば、怪我どころか即死は免れない。
そして驚くべき点はそれだけに留まらない。
二人は常に動き続けている。
髪の毛程の細い命力糸も同様にして。
なのに当てたのだ。
一発もミスする事無く。
その恐ろしさがどれほどか理解出来るだろうか。
狙撃銃の弾は撃ち放てば素直に真っ直ぐ飛んでいく訳ではない。
火薬炸裂での衝撃による砲身のブレ、砲身そのものの射撃精度再現性。
更には弾丸そのものの空気抵抗、風向きや気圧による軌道偏向。
撃った先の距離による時間差や見えた先の光の屈曲によるズレ。
そういった障害を乗り越えて当てなければならないシビアな世界なのだ。
おまけに相手は常時動いて不規則、狙った物も見えるはずがない程に細い物。
それを狙う事など、いくら達人でも不可能と言える所業。
それを相手は成している。
間違いなく狙って。
その事を理解してしまったからこそ、瀬玲は驚きを隠せなかったのである。
そんな瀬玲を撃ったのは、とある屋上から狙いを付ける青髪の青年。
屋敷に居た時とは違い、裸眼で目標をしっかりと定める姿が。
床に膝を突きながら狙撃ライフルに備えられた望遠筒を覗き込み、逃げる瀬玲を追い続ける。
狙いを付ける動きは機械の様に精密、かつ正確。
『さすがだエクィオ君。 どうだい、我が軍に入る気は無いかね?』
耳に付けたインカムもまた、形こそ違うがグランディーヴァのと同じ用途の物。
そこから野太い男の声による場違いの会話までが交わされる。
「折角ですがお断りさせて頂きます。 僕はデュランの目的が果たせればそれだけで―――」
ピチュンッ!!!
しかもそんな返しを上げながらもなお狂う事無く。
エクィオと呼ばれた青年によって容赦の無い射撃が撃ち放たれていて。
当然の如く、その一発もまた瀬玲の命力糸を見事に断裂させていた。
「―――満足ですから」
その顔に緩やかな微笑みを浮かばせながら。
付け加えるならば、その狙撃ライフルの先端にはしっかりと消音器が取り付けられている。
ここはあくまで街の中。
住む人間達に迷惑を掛けまいと敢えて備えているのだ。
つまり、銃弾の勢いを落とす恐れのある機器を取り付けてもなお射撃は正確無比のまま。
それを可能とするエクィオの狙撃能力はその様に勧誘したくなってしまうほど卓越しているのである。
「それよりもナビゲーションサポートの徹底をお願いします。 間も無く射程圏外に逃げられそうです」
『わかった。 安心して追撃してくれたまえ』
「了解。 迎撃行動を継続します」
すると何を思ったのか、エクィオは銃口を下げてその身を起こさせ。
突如として―――跳ねた。
凄まじい脚力であった。
その身を瀬玲達とも変わらない程に高く高く空へと舞わせる程に。
この時迸ったのは雷光が如き青の閃光。
僅かな光であったが、彼の身軽な体を浮かせるには十分な力を誇っていたのだ。
そしてあろう事か、その状態でなんと銃を構えているではないか。
髪の毛が逆立って暴れる程の逆風によって煽られる中で。
「残念ですがお二人にはここで死んでもらいます。 デュランの邪魔をこれ以上させる訳にはいきませんから」
そのまま撃ち放たれた弾丸は四度、瀬玲の命力糸を千切れさせる。
ここまで外したのは先程の頭部を狙った一発のみ。
この男、エクィオ―――その底力は未だ計り知れない。
パリ南西部―――
その街一帯は景観が考慮され、高層ビルなどは一切存在しない。
いずれの建物も見上げればすぐに屋根が見える程の背丈である。
そこに一つの大きなホテルがあった。
そのホテルも当然他の建物と同じで、どちらかと言えば高さよりも横幅の方が大きい。
その外観はガラス張りをメインとした一見シンプルなモダンデザイン。
しかしただ張り合わせただけではなく、視覚と立体を意識した特殊な意匠を誇っている。
よほどの高級ホテルなのだろう、その存在感は明らかに周囲から浮かび上がるかのよう。
ガッシャァーーーーーーンッ!!!
だが途端そのガラス窓の一つから何かが飛び出し、破片を周囲に撒き散らす。
それは瀬玲と心輝。
二人が力の限りに外へと飛び出したのだ。
それを追うのは黒づくめの戦闘員達。
ただ追撃も虚しく、二人の素早い逃走を前に成す術も無く。
たちまち二人の体がパリの空を高く舞い上がる。
ただし揃って生身私服のまま、武器や装備を所持しないままで。
その通り二人は武器を持って来ていない。
持って来てそれが見つかれば正体がバレてしまう可能性もあるからだ。
それに彼等は今や魔剣が無くても普通の人相手ならなんて事無く戦う事が可能。
フル装備の戦闘員達ですらも彼等にとっては対処可能な相手なのである。
では何故そんな二人がこうして逃げるハメになったのか―――
「チッキショ!! 初日からアウトかよおッ!!」
「初日どころか私らが来た事なんてお見通しだったのよッ!! 最初からさあッ!!」
パリに着いてからホテルに入るまで全く何も異常は無かった。
入国時も、移動時も、チェックインの時も。
精々私事が漏れた程度で、それだけでバレる要素があった訳ではない。
だがその途中で瀬玲は感付き始めていたのだ。
余りにも何も無さ過ぎるという事に。
瀬玲もある程度は心の色を読む事が出来る。
だからこそここまでの道中で色んな人間の心を覗き見て来たものだ。
入国審査員、空港員、タクシーの運転手、道行く人々。
チェックイン待ちをする客、ホテルマン、客室案内人などなど。
最初はそういうものかと思っていた。
それが普通だと思っていたのだ。
自分達に直接関わらなかった人だけが憎悪の赤を抱いていた事を。
そう、関わった人間は皆、そんな色を見せなかった。
穏やかで敵意の無い優しい黄色の心ばかりで。
客商売だから?
そういう人柄だから?
それは違う。
「あの入国審査員ッ!! アイツだッ!! アイツがもう私達の事をわかってやがったってさあッ!!」
そう、二人が入国を果たした時に相対した者こそが見抜いた人物。
【救世同盟】は最初からその様に罠を張っていたのだ。
入国審査員を感情コントロール訓練済みの移民系信者に任せていたのである。
移民系、それはつまり元々の母国がフランスではないという事。
それに対して瀬玲達は知らず内に命力翻訳で母国語の様に語っていた。
「自分達はフランスに帰って来た」と宣い、外国語を語っていたのだ。
それは明らかな命力翻訳を逆手に取った作戦。
瀬玲達はそれにまんまと乗せられてしまっていたのである。
そうもなれば罠の一つや二つ用意される事も当然の事。
知らず内に戦闘員達が二人を仕留めんと迫り寄っていたのだ。
だからこうして逃げる事しか出来なかったのである。
相手が準備万端である以上、立ち向かえば逆に返り討ちにされかねないのだから。
「んじゃどうすんだよおッ!?」
「予定通り逃げるしかないでしょッ!!」
二人が全力で逃げれば一日でフランスから出る事も不可能では無いだろう。
でもここはフランスの中心地パリ、国外に行くには骨が折れる距離が二人を待ち構えている。
おまけに追撃込みで。
万が一の逃走経路は熟知済みとはいえ、いささか厳しいと言えるこの状況。
二人の顔に堪らず苦悶が浮かぶ。
「このまま一気に抜けていくッ!! 私に掴まりなさいッ!!」
「何処に掴まれってぇんだよおッ!?」
「胸でも腰でもいいからとっとと掴まんなさいよッ!!!」
グワイヴも無い今の心輝に機動力はほぼ皆無。
だからこそ頼れるのは、魔剣が無くとも自在機動を可能とする瀬玲の力のみ。
屋根上を跳ねながら、二人の問答が夜の空に響き渡る。
ただそんな大胆な発言を前に心輝もさすがの抵抗ありの模様。
「だああ!! レンネィすまねぇーーー!!」
「バカ言ってんじゃない!!」
そして意を決した心輝が瀬玲の腰に抱きかかった途端―――
二人の体が空中でガクンと大きく跳ねあがる。
その時輝くのは、瀬玲の両手から伸びた命力糸。
それをあたかも蜘蛛の糸の様に建物へ伸ばし、引き込む事によって空中跳躍させたのだ。
スリングショットの要領である。
そうなった時、もはや瀬玲の足は屋根すら付きはしない。
凄まじい勢いで二人の体が空中を突き抜けていく。
「このまま一気にパリを抜けて―――」
だがその時、彼女の予想もしえない事態がその身に巻き起こる。
ピュウンッッッ!!!
「なっ!?」
突如として、自身を引いていた命力糸の一本が―――千切り飛ばされたのである。
たちまち二人の体がバランスを崩し、街へと向けて落下していく。
「んなくそッ!!」
それは突然の事だった。
自慢の命力糸の断裂、それが信じられなくて。
でも瀬玲は諦めない。
新たな糸を生み出し、再び跳躍を果たす。
しかしその直後、再び一本の命力糸が虚しく千切れ飛ぶ。
今度は跳んだ後だったからこそ実害は無いが。
「ふっざっけ!!」
「何が起きてるんだよォ!?」
それは瀬玲にもわからない。
ただただ、起きた事実を前に対処するだけだ。
それも間も無く、考える余裕すら奪い去る。
ピュウンッッッ!!!
「くうッ!?」
それは空気を貫く音。
真っ直ぐ、そして激しく。
そんな何かが今、瀬玲の顔スレスレを突き抜けて行ったのだ。
間一髪躱したが、彼女は焦りを隠せない。
「弾丸ッ!? 嘘でしょッ!!?」
そう、突き抜けて行ったのは紛れも無く弾丸。
それも命力弾ではない、至って普通の狙撃用ライフル弾だ。
ただ、その銃弾に異常なまでの強い命力が篭められていたが。
瀬玲の命力糸は言わば物理干渉が出来る程の強い命力濃度を誇っている。
それを千切る事は通常弾では愚か、命力弾でさえ不可能な程。
あのアージでさえ手をこまねく程に強靭かつ自由自在の妙技なのだ。
つまり、撃ち放った者はそれを千切り飛ばすという程の力を持ち得ているという事。
そんな弾丸がもしも直撃してしまえば、怪我どころか即死は免れない。
そして驚くべき点はそれだけに留まらない。
二人は常に動き続けている。
髪の毛程の細い命力糸も同様にして。
なのに当てたのだ。
一発もミスする事無く。
その恐ろしさがどれほどか理解出来るだろうか。
狙撃銃の弾は撃ち放てば素直に真っ直ぐ飛んでいく訳ではない。
火薬炸裂での衝撃による砲身のブレ、砲身そのものの射撃精度再現性。
更には弾丸そのものの空気抵抗、風向きや気圧による軌道偏向。
撃った先の距離による時間差や見えた先の光の屈曲によるズレ。
そういった障害を乗り越えて当てなければならないシビアな世界なのだ。
おまけに相手は常時動いて不規則、狙った物も見えるはずがない程に細い物。
それを狙う事など、いくら達人でも不可能と言える所業。
それを相手は成している。
間違いなく狙って。
その事を理解してしまったからこそ、瀬玲は驚きを隠せなかったのである。
そんな瀬玲を撃ったのは、とある屋上から狙いを付ける青髪の青年。
屋敷に居た時とは違い、裸眼で目標をしっかりと定める姿が。
床に膝を突きながら狙撃ライフルに備えられた望遠筒を覗き込み、逃げる瀬玲を追い続ける。
狙いを付ける動きは機械の様に精密、かつ正確。
『さすがだエクィオ君。 どうだい、我が軍に入る気は無いかね?』
耳に付けたインカムもまた、形こそ違うがグランディーヴァのと同じ用途の物。
そこから野太い男の声による場違いの会話までが交わされる。
「折角ですがお断りさせて頂きます。 僕はデュランの目的が果たせればそれだけで―――」
ピチュンッ!!!
しかもそんな返しを上げながらもなお狂う事無く。
エクィオと呼ばれた青年によって容赦の無い射撃が撃ち放たれていて。
当然の如く、その一発もまた瀬玲の命力糸を見事に断裂させていた。
「―――満足ですから」
その顔に緩やかな微笑みを浮かばせながら。
付け加えるならば、その狙撃ライフルの先端にはしっかりと消音器が取り付けられている。
ここはあくまで街の中。
住む人間達に迷惑を掛けまいと敢えて備えているのだ。
つまり、銃弾の勢いを落とす恐れのある機器を取り付けてもなお射撃は正確無比のまま。
それを可能とするエクィオの狙撃能力はその様に勧誘したくなってしまうほど卓越しているのである。
「それよりもナビゲーションサポートの徹底をお願いします。 間も無く射程圏外に逃げられそうです」
『わかった。 安心して追撃してくれたまえ』
「了解。 迎撃行動を継続します」
すると何を思ったのか、エクィオは銃口を下げてその身を起こさせ。
突如として―――跳ねた。
凄まじい脚力であった。
その身を瀬玲達とも変わらない程に高く高く空へと舞わせる程に。
この時迸ったのは雷光が如き青の閃光。
僅かな光であったが、彼の身軽な体を浮かせるには十分な力を誇っていたのだ。
そしてあろう事か、その状態でなんと銃を構えているではないか。
髪の毛が逆立って暴れる程の逆風によって煽られる中で。
「残念ですがお二人にはここで死んでもらいます。 デュランの邪魔をこれ以上させる訳にはいきませんから」
そのまま撃ち放たれた弾丸は四度、瀬玲の命力糸を千切れさせる。
ここまで外したのは先程の頭部を狙った一発のみ。
この男、エクィオ―――その底力は未だ計り知れない。
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※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
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