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第三十六節「謀略回生 ぶつかり合う力 天と天が繋がる時」
~Or et argent <金と銀> マヴォとアージ①~
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白毛の闘士が二人、遂に相まみえる。
兄アージと、弟マヴォ。
かつては仲良き兄弟だった二人も、今となっては敵意を向け合う敵同士。
互いに牙を剥き合い、握る拳もいつも以上に熱く力強い。
「武器を変えたという噂は本当だった様だな。 だが―――」
その時、アージが遂に引き摺っていた魔剣を掲げて見せつける。
以前よりずっと変わる事も無く使い続けて来た魔剣【アストルディ】を。
「―――生半可な技術で、俺に勝てると思うなよ……!!」
その威風、相も変わらずの迫力。
アルディ戦の時よりもずっと力強く、そして気迫に満ち溢れている。
それはあの時とは条件が違うから。
リビアでの戦いの際は、あくまでもデュランの依頼でアルディの作戦の手助けをしただけ。
それも戦いでは無く、ただの囮役として。
だから気乗りもせず、あれ程に気が抜けていたのだ。
でも今はもう何の疎いも無い。
今自身が信じるデュランの為に。
師の志を受け継いで世界を救済する為に。
そして敵意を露わとする弟マヴォを討ち払う為に。
「この武人アージッ!! 貴様如き若造に遅れを取る程落ちぶれてはおらんッ!!」
その気迫が、覚悟が、巨大な斧型魔剣全身に光を灯す。
神々しいまでの黄金の輝きを。
だが―――それに対するマヴォは、実に冷静だった。
己が持つ斧槍型魔剣【アンフェルジィ】を低く構え、己の腰も低く据え。
微動だにもしないその姿はまるで、戦いの時を今かと待つかのよう。
「……アンタが消えてから、俺は迷った。 これからどうすれば良いのかとな。 でもすぐに理解したよ。 俺が空いた穴を埋めればいいのだと。 仲間を支え、助け、守ればいいのだと。 そして気付いたんだ。 その難しさをな」
その全ては、ずっと秘めた想いをぶつけんが為に。
【東京事変】の後、マヴォはずっと悩み、頭を抱え続けた。
あれ程喧嘩などもした兄だったが、それでも彼にとっては心の支えだったから。
でもいつだか気付いたのだ。
「兄が居ないのなら、自分が兄の代わりになればいい」のだと。
だから口調も矯正し、素行も正し、戦い方さえも準拠して。
兄と間違われる程に、自身を徹底的に鍛え直したのだ。
その上で知った。
「兄が背負っていた世界はとても重く苦しい」のだと。
それはマヴォが厳格な事を苦手とする性格だからかもしれない。
ただ考え過ぎだっただけなのかもしれない。
けれど、それをアージは見せて来てくれたから。
憧れの存在として当たり前の様に。
だからこそ、今許せないでいたのだ。
勇を裏切って【救世同盟】に加担した事も。
師を殺した理由も伝えないまま消えた事も。
こうして殺意を露わにして対峙している事さえも。
「だが俺は全て乗り越えたぞアージッ!! アンタが逃げて、逃げて、逃げ続けている間にッ!!」
「ッ!?」
「だから敢えて言わせてもらうッ!!」
その時、斧槍の先端が大地を切り裂いて。
銀光の円環を生みながらぐるりと回り。
そしてその中心を射抜いた時、マヴォは咆える。
「今の俺は―――兄者より強いッッ!!!」
目の前の憧れだった者に対して。
堂々と、臆する事無く。
「言う様になった。 ならばもう語る必要はあるまい」
その雄叫びが、もはや語り合う雰囲気すら粉々に打ち砕く。
アージもが深く構え、その身に力を蓄えさせる。
力のアージと速さのマヴォ。
もはや二人の間に相容れるもの無し。
たちまち二人の体が―――並んで駆け出し始める。
互いに隙を狙い、見定め、狙いを澄まして。
その身のこなし、もはや人間のそれとは桁違いだ。
まるでその速度は車の如く。
周囲の景色が風の様に過ぎ去り、砂塵すら激しく立ち上らせる程。
大地も削り、大気も裂き、爆音を掻き鳴らしながら地上を駆け抜けていく。
そのまま隙が見つからなければ、国の果てまで走り去ってしまいそうな程に。
でもその時はすぐにでも訪れる。
マヴォの脚力から生む自在性が、アージの僅かな動揺を引き出したのだ。
マヴォの言った事は伊達では無い。
その足取りは誰よりも鋭く素早く洗練されていて。
イシュライトから学んだフットワークを生かした牽制踏歩が隙を生んだのである。
そうもなれば、射程距離の長いマヴォの方が断然有利だ。
全長六メートルもある【アンフェルジィ】ならば、例え近付かなくとも攻撃可能。
たちまち素人とは思えぬ瞬速突きがアージに向けて解き放たれた。
「おおおーーーッッ!!!」
「ヌゥ!?」
その瞬閃、まさに全てが光の如く。
何発打ち込まれたのかもわからぬ無数の刃がアージ一身に襲い掛かる。
「カァーーーッッ!!!」
しかしそれを、アージはなんと全て受け止めた。
巨大な斧の腹を盾として、強引に塞き止めたのである。
それどころか、押し切る様にして打ち上げ―――
「甘いわぁーーーーーー!!!」
丸太の様な蹴りを、巨斧の影から真っ直ぐ飛び出させたのだ。
この身のこなし、以前よりもずっと軽い。
それこそ以前のマヴォの様に。
ただそれも、本家を前にして敵う程甘くはない。
既にその蹴りの先にマヴォの姿は無かった。
なんと、弾かれた魔剣と共に宙を舞っていたのである。
その巨体が、その体躯が、まるで翼駆る鳥の様に。
「なんだとッ!?」
「意表を突くのは俺の得意技だと、いつから忘れていたッ!! アージッ!!!」
とは言えその飛距離は、槍の長さ程ではない。
その力を籠めるには、間隔が足りない。
だがそれも全て、マヴォの意思のままに。
この時、【アンフェルジィ】が形を変える。
後柄がなんと抜けて外れ、短くなったのだ。
この魔剣の強みは、脱着機構を用いて長さ調整が利くという事にある。
すなわち、その射程距離、自由自在。
そして適正距離ならば、その力を十二分に奮う事が出来るだろう。
その距離を導き出す事など、今のマヴォの熟練度ならば造作も無い。
「だからこそ俺は止められんッ!! アンタが倒れるまではッ!!」
こうして繰り出されたのは、豪雨の如き刺突の嵐。
それが大地に佇むアージへ一直線に降り下ろされる。
ドガガガガッ!!!
まさにその様、集中豪雨。
火花が返り雫の様に打ち上がり続ける。
巨斧を盾にして耐えるアージであるが、その勢いを前に押しきる事が出来ない。
「ぬうおおお!?」
たちまち隙間から覗く腕の端が、肩が、豪雨閃に晒され無数の傷を刻まれていく。
それ程までの量の閃撃をマヴォは撃ち放っていたのである。
「くぅおおーーーッ!!」
だが逃げ道が無い訳ではない。
だからこそアージは大地スレスレに跳ねる。
起死回生を狙い、ただひたすら力の限りに―――
「やはりアンタは逃げるんだな。 あの時と同じ様に」
―――それが起死回生になると思っていたのだろうか。
そんな甘い考えなど、もはやマヴォにはお見通しだった。
そしてどう逃げるかも、お見通しだった。
長い間付き添い、共に戦い続けて来たからこそ。
【白の兄弟】と怖れられる程に考えを合わせて来たからこそ。
わからないはずも無かったのだ。
「なん、だとぉッ!?」
跳ねるアージの前には、並走する彼が居た。
全く、寸分の狂いも無い同速度で飛ぶマヴォが。
それを可能にする力こそ、【白迅甲ギュラ・メフェシュ改】。
対アメリカ戦におけるデータを素に仕上げられた、完全完成形の白銀甲である。
あの時よりもずっとスマートに、繊細に。
時には、パワフルに、豪胆に。
本人の意思次第で微調整さえも可能となり。
それ程に洗練化された魔剣が、今マヴォの機動力の特性を大きく変えた。
「だから言ったハズだ。 今の俺は―――」
より柔軟に、より強靭に。
組み合わせて生まれる体術は、もはやグランディーヴァの中でも頂点。
あの勇でさえも、イシュライトでさえも、この魔剣を備えたマヴォには一歩届かない。
それ程の力を誇る強靭な足が、凄まじい速度で空を切り裂いた時―――
「兄者より、強いとおッッッ!!!!!」
―――圧倒無比なる蹴撃がアージの腹部へ突き刺さる。
「ごッはァッ!!??」
その威力、もはや魔剣使いの常識さえも遥かに凌駕しよう。
アージを吹き飛ばしてもなお力は衰えず。
大地を激しく打ち崩し、空を黒に染め上げる程の土砂を巻き上げて。
生みしは巨大なクレーター。
畑一つの区画が丸ごと吹き飛ぶまでの大穴が姿を晒す。
それを成してしまう程の威力を、今の一撃は誇っていたのである。
兄アージと、弟マヴォ。
かつては仲良き兄弟だった二人も、今となっては敵意を向け合う敵同士。
互いに牙を剥き合い、握る拳もいつも以上に熱く力強い。
「武器を変えたという噂は本当だった様だな。 だが―――」
その時、アージが遂に引き摺っていた魔剣を掲げて見せつける。
以前よりずっと変わる事も無く使い続けて来た魔剣【アストルディ】を。
「―――生半可な技術で、俺に勝てると思うなよ……!!」
その威風、相も変わらずの迫力。
アルディ戦の時よりもずっと力強く、そして気迫に満ち溢れている。
それはあの時とは条件が違うから。
リビアでの戦いの際は、あくまでもデュランの依頼でアルディの作戦の手助けをしただけ。
それも戦いでは無く、ただの囮役として。
だから気乗りもせず、あれ程に気が抜けていたのだ。
でも今はもう何の疎いも無い。
今自身が信じるデュランの為に。
師の志を受け継いで世界を救済する為に。
そして敵意を露わとする弟マヴォを討ち払う為に。
「この武人アージッ!! 貴様如き若造に遅れを取る程落ちぶれてはおらんッ!!」
その気迫が、覚悟が、巨大な斧型魔剣全身に光を灯す。
神々しいまでの黄金の輝きを。
だが―――それに対するマヴォは、実に冷静だった。
己が持つ斧槍型魔剣【アンフェルジィ】を低く構え、己の腰も低く据え。
微動だにもしないその姿はまるで、戦いの時を今かと待つかのよう。
「……アンタが消えてから、俺は迷った。 これからどうすれば良いのかとな。 でもすぐに理解したよ。 俺が空いた穴を埋めればいいのだと。 仲間を支え、助け、守ればいいのだと。 そして気付いたんだ。 その難しさをな」
その全ては、ずっと秘めた想いをぶつけんが為に。
【東京事変】の後、マヴォはずっと悩み、頭を抱え続けた。
あれ程喧嘩などもした兄だったが、それでも彼にとっては心の支えだったから。
でもいつだか気付いたのだ。
「兄が居ないのなら、自分が兄の代わりになればいい」のだと。
だから口調も矯正し、素行も正し、戦い方さえも準拠して。
兄と間違われる程に、自身を徹底的に鍛え直したのだ。
その上で知った。
「兄が背負っていた世界はとても重く苦しい」のだと。
それはマヴォが厳格な事を苦手とする性格だからかもしれない。
ただ考え過ぎだっただけなのかもしれない。
けれど、それをアージは見せて来てくれたから。
憧れの存在として当たり前の様に。
だからこそ、今許せないでいたのだ。
勇を裏切って【救世同盟】に加担した事も。
師を殺した理由も伝えないまま消えた事も。
こうして殺意を露わにして対峙している事さえも。
「だが俺は全て乗り越えたぞアージッ!! アンタが逃げて、逃げて、逃げ続けている間にッ!!」
「ッ!?」
「だから敢えて言わせてもらうッ!!」
その時、斧槍の先端が大地を切り裂いて。
銀光の円環を生みながらぐるりと回り。
そしてその中心を射抜いた時、マヴォは咆える。
「今の俺は―――兄者より強いッッ!!!」
目の前の憧れだった者に対して。
堂々と、臆する事無く。
「言う様になった。 ならばもう語る必要はあるまい」
その雄叫びが、もはや語り合う雰囲気すら粉々に打ち砕く。
アージもが深く構え、その身に力を蓄えさせる。
力のアージと速さのマヴォ。
もはや二人の間に相容れるもの無し。
たちまち二人の体が―――並んで駆け出し始める。
互いに隙を狙い、見定め、狙いを澄まして。
その身のこなし、もはや人間のそれとは桁違いだ。
まるでその速度は車の如く。
周囲の景色が風の様に過ぎ去り、砂塵すら激しく立ち上らせる程。
大地も削り、大気も裂き、爆音を掻き鳴らしながら地上を駆け抜けていく。
そのまま隙が見つからなければ、国の果てまで走り去ってしまいそうな程に。
でもその時はすぐにでも訪れる。
マヴォの脚力から生む自在性が、アージの僅かな動揺を引き出したのだ。
マヴォの言った事は伊達では無い。
その足取りは誰よりも鋭く素早く洗練されていて。
イシュライトから学んだフットワークを生かした牽制踏歩が隙を生んだのである。
そうもなれば、射程距離の長いマヴォの方が断然有利だ。
全長六メートルもある【アンフェルジィ】ならば、例え近付かなくとも攻撃可能。
たちまち素人とは思えぬ瞬速突きがアージに向けて解き放たれた。
「おおおーーーッッ!!!」
「ヌゥ!?」
その瞬閃、まさに全てが光の如く。
何発打ち込まれたのかもわからぬ無数の刃がアージ一身に襲い掛かる。
「カァーーーッッ!!!」
しかしそれを、アージはなんと全て受け止めた。
巨大な斧の腹を盾として、強引に塞き止めたのである。
それどころか、押し切る様にして打ち上げ―――
「甘いわぁーーーーーー!!!」
丸太の様な蹴りを、巨斧の影から真っ直ぐ飛び出させたのだ。
この身のこなし、以前よりもずっと軽い。
それこそ以前のマヴォの様に。
ただそれも、本家を前にして敵う程甘くはない。
既にその蹴りの先にマヴォの姿は無かった。
なんと、弾かれた魔剣と共に宙を舞っていたのである。
その巨体が、その体躯が、まるで翼駆る鳥の様に。
「なんだとッ!?」
「意表を突くのは俺の得意技だと、いつから忘れていたッ!! アージッ!!!」
とは言えその飛距離は、槍の長さ程ではない。
その力を籠めるには、間隔が足りない。
だがそれも全て、マヴォの意思のままに。
この時、【アンフェルジィ】が形を変える。
後柄がなんと抜けて外れ、短くなったのだ。
この魔剣の強みは、脱着機構を用いて長さ調整が利くという事にある。
すなわち、その射程距離、自由自在。
そして適正距離ならば、その力を十二分に奮う事が出来るだろう。
その距離を導き出す事など、今のマヴォの熟練度ならば造作も無い。
「だからこそ俺は止められんッ!! アンタが倒れるまではッ!!」
こうして繰り出されたのは、豪雨の如き刺突の嵐。
それが大地に佇むアージへ一直線に降り下ろされる。
ドガガガガッ!!!
まさにその様、集中豪雨。
火花が返り雫の様に打ち上がり続ける。
巨斧を盾にして耐えるアージであるが、その勢いを前に押しきる事が出来ない。
「ぬうおおお!?」
たちまち隙間から覗く腕の端が、肩が、豪雨閃に晒され無数の傷を刻まれていく。
それ程までの量の閃撃をマヴォは撃ち放っていたのである。
「くぅおおーーーッ!!」
だが逃げ道が無い訳ではない。
だからこそアージは大地スレスレに跳ねる。
起死回生を狙い、ただひたすら力の限りに―――
「やはりアンタは逃げるんだな。 あの時と同じ様に」
―――それが起死回生になると思っていたのだろうか。
そんな甘い考えなど、もはやマヴォにはお見通しだった。
そしてどう逃げるかも、お見通しだった。
長い間付き添い、共に戦い続けて来たからこそ。
【白の兄弟】と怖れられる程に考えを合わせて来たからこそ。
わからないはずも無かったのだ。
「なん、だとぉッ!?」
跳ねるアージの前には、並走する彼が居た。
全く、寸分の狂いも無い同速度で飛ぶマヴォが。
それを可能にする力こそ、【白迅甲ギュラ・メフェシュ改】。
対アメリカ戦におけるデータを素に仕上げられた、完全完成形の白銀甲である。
あの時よりもずっとスマートに、繊細に。
時には、パワフルに、豪胆に。
本人の意思次第で微調整さえも可能となり。
それ程に洗練化された魔剣が、今マヴォの機動力の特性を大きく変えた。
「だから言ったハズだ。 今の俺は―――」
より柔軟に、より強靭に。
組み合わせて生まれる体術は、もはやグランディーヴァの中でも頂点。
あの勇でさえも、イシュライトでさえも、この魔剣を備えたマヴォには一歩届かない。
それ程の力を誇る強靭な足が、凄まじい速度で空を切り裂いた時―――
「兄者より、強いとおッッッ!!!!!」
―――圧倒無比なる蹴撃がアージの腹部へ突き刺さる。
「ごッはァッ!!??」
その威力、もはや魔剣使いの常識さえも遥かに凌駕しよう。
アージを吹き飛ばしてもなお力は衰えず。
大地を激しく打ち崩し、空を黒に染め上げる程の土砂を巻き上げて。
生みしは巨大なクレーター。
畑一つの区画が丸ごと吹き飛ぶまでの大穴が姿を晒す。
それを成してしまう程の威力を、今の一撃は誇っていたのである。
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