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第三十六節「謀略回生 ぶつかり合う力 天と天が繋がる時」
~Quatrième porte "Nda'luodja" <第四の門 ナ・ロゥダ>~
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【創世の鍵】には【門】と呼ばれる十一の封印が存在する。
世界を分断する為に使われた力の封印が。
それらは一つ一つにシステムの制限が施されていて、自由に開く事は出来ない。
核となるア・リーヴェの許可を得て初めて、順々に開く事が出来る様になっているのだ。
しかし一度許可を得れば、天士はその力を自由に行使する事が可能。
当然、戦闘能力として応用する事も。
勇は現在、第三門までの開門を果たしている。
人間や魔者相手ならば、それだけで戦力としては十分だから。
その力の概要はこう。
【第一の門 ト・ミュベ】
【創世の鍵】との邂逅門。
この門を開く事で【創世の鍵】とのアクセスが自由に行える様になる。
これによってア・リーヴェとの会話が可能になり、存在の認識も出来る様に。
彼女の許可があれば、この時点でその存在を他者へと伝達する事も可能。
勇がアルライ隠れ里の碑石に触れた事で成し遂げたのがこれである。
【第二の門 シ・ノェジョ】
ア・リーヴェとの意識・知識を繋げる門。
ここが開かれる事によって、天士は彼女の知恵や知識を得られる事が可能に。
それだけでなく、彼女を通じてフララジカシステムに蓄積された記録をも覗き見る事も。
またその知識を自身に入力し、様々な天士技術をも習得出来る。
複幻体を精製する力もこの門が開門された恩恵の一つ。
【第三の門 ヴョ・クェテー】
【創世の鍵】の力を具現化する門。
この門を開門した時、天士は自身の天力を創世宝具へと進化させる事が出来る。
その力の秘密は天力転換の極みを強制的に習得させる事にあり。
これは本来、双世界の物理構造を分裂させる為に要された力で。
勇はこの力を利用し、精神物質を構築して創世剣などの武具を生み出しているのだ。
そして今開こうとしているのが【第四の門 ナ・ロゥダ】。
この門はいわゆる中核点の一つ。
十一門の合間に幾つか存在する重要門として。
そこに秘められし力は今までの概念を凌駕する事であろう。
その力の秘密とは果たして―――
空を舞うデュランを前に、勇がその身を再び屈ませる。
己の誇る力を高め、再び跳び上がる為に。
「まだ諦めていないのはさすがだ。 だが、だからといって容赦するつもりは無いッ!! 君を完全消滅させるまで、私は何度でも究極剣を撃ち放ってみせよう!!」
「なら俺はそれを乗り越える!! 乗り越えてお前に伝えてみせるッ!! リデルさんの想いを、俺達の想いを!!」
新たな門を開く決意が、覚悟が。
仲間達の想いが、願いが。
今この時、勇の創世剣に力を与えた。
光り輝くは虹色の光。
大地を優しく撫で上げるかの様に、それでいてとめどなく。
魂の迸りに応え、握り手さえにも力を漲らせていく。
しかしデュランも負けていない。
彼の力にはまだまだ力が迸っている。
誰にも負けないと思える程の強い力が。
「そうか、それが君の力か!! ならばどちらが!!―――」
「乗り越えられるかッ!!―――」
だからこそ二人は今、猛り咆哮える。
「「―――勝負だッ!!」」
己の存在意義と使命と約束を果たす為に。
遂に二人がその身を押し出させる。
そうした時、既に二人は肉迫していた。
それだけの速度、それだけの勢いで飛び込んでいたから。
ガッキャァーーーーーーンッ!!
たちまち、二人の間から凄まじいまでの衝撃波が炸裂する。
二人の剣がただ打ち当ったただけで。
虹の光が空を裂く。
大地に抉る様な傷跡を残す程に。
それ程までに力が弾け飛んだのだ。
その二人は、再び距離を離していた。
自分達の体重すら物ともしない衝撃だったのだ、弾かれもするだろう。
でもデュランはそれさえも凌駕する機動力を有している。
即座にその反力をも殺す程の推力を撃ち出し、勇へと突撃していく。
「空を飛べないのが君の弱点だあッ!!」
反力がいくら強大でも、大地に到達するにはコンマ数秒の時間が必要。
その時間さえも縫い、デュランが再びあの必殺剣をその手で刻み込む。
「再びその身で味わえッ!! 【十三烈神光破斬】ッ!!!」
もはやその力の奔流、無尽蔵。
先程の威力にも寸分違わぬ後光の剣が、再び勇の体を覆い尽くす。
その光の波動、例え空を飛べようとも逃げる事叶わない。
ギィィィーーーーーーンッ!!!
その間、一秒たりとも掛からぬ一瞬の出来事。
それだけの瞬撃で、デュランはいとも容易く勇を捉えたのである。
その光の槍たる一撃は大地をも貫く。
どこまでも、どこまでも深く深く突き刺さる程に。
だが。
デュランは知る。
その一撃が。
当たったと思い込んでいただけという事に。
「がはあッ!?」
何とその時、デュランは驚くべき事実をその身で味わう。
勇がデュランの腹に深い膝蹴りを見舞っていたのだ。
先程まで落下していたはずなのに。
デュランが技を揚々と撃ち放っていたのに。
つい今しがたまで、必殺の光槍に貫かれていたはずなのに。
でもそれはまだ始まりに過ぎない。
驚異の幕開けに過ぎない。
「ごはッ!!??」
今、勇は膝蹴りを見舞っていたはずなのに。
デュランを打ち上げていたはずなのに。
勇は既に真横から、デュランの頬へと拳撃を見舞っていたのだ。
しかもまるで真横から飛び込んで来たかの様に。
「ぐぅぶッ!!!???」
更には同じ腕で、ほぼ同時に、その顎を真上に打ち抜いていた。
その身全身で突き上げる様にして。
それはもはや分身。
どの勇もが本人であるかの如く。
その間に刹那ほどの時間も与える事無く。
隙間無く、三連撃を見舞っていたのである。
いずれもまるで駆け抜けて全力で殴った様な一撃ばかりを。
「バッ……カなッ!!?」
しかしデュラン当人は何が起きたのかわかってはいない。
突如現れては攻撃を見舞われた、その程度にしか見えなかったからだ。
それでも負けじと空へ舞い、再び落ち行く勇を見届ける。
異質な行動力を見せつける相手と間合いを開く為に。
それが叶わないとも知らずに。
ドッギャァンッ!!
突如、飛び上がっていたデュランの背が反り上がる。
勇がその背を蹴り落としていたのだから。
「があああッ!!?」
デュランは今の一瞬まで勇から目を離してはいない。
瞬きすらしてはいないし、移動の予兆すら見てはいない。
移動した所を見た訳でもない。
なのに、勇はもう蹴り終えている。
しかもその威力、魔導鎧装すら防げぬ程に強烈。
まるで勢いよく飛んで突き出されたかの様な蹴りの如く。
それらを全て、勇は刹那の刻だけで実行して見せたのである。
厳密に言えば、それは一刻すら刻んではいない。
全ては、【第四の門 ナ・ロゥダ】の賜物である。
【第四の門 ナ・ロゥダ】。
その力が秘めしは、フララジカシステムへの直結。
つまり、双星を守り抱く防衛システムへの直接アクセスが可能となるという事。
それが可能という事はすなわち、星の命脈との自由接続が出来る様になり。
人の意思や感情に左右されずに天力移動が可能となるのである。
そしてそれだけではない。
天力転換におけるプロセスに一定の自由度が与えられるのだ。
例えば、移動前と移動後で体の向きや動き、慣性までをも自由に変えられるなど。
すなわち、移動前では「無行動状態」でも、移動後には「行動直前状態」に出来る。
その間のプロセスを全て省く事が可能となるのである。
だから勇は移動後、膝蹴り寸前の状態で転移して。
その直後に顔を殴り飛ばす状態で転移して。
更にその後には顎を撃ち抜く状態で転移、そして最後の蹴りをもノンプロセスで実行したのだ。
その全てに、全力の一撃に匹敵する程の威力を篭めさせて。
ドドォーーーーーーンッッッ!!!!
たちまちデュランが大地へ打ち付けられ、大地に巨大なクレーターが形成される。
大量の土砂を打ち上げながら。
それだけの威力を体現出来る一撃が、ノンプロセスで実行可能。
これ程の脅威を見せつける勇には、もはや並の人間が敵うはずは無い。
何故なら、彼の行動能力はもはや物理特性を完全に無視しているから。
今の勇は―――もはや光すら超えているに等しいのだから。
新たな門を開いた時、勇の力は光をも超える。
物理すら超え、原理すら超え、光を超えた今、この世界に超せる物はもう存在しない。
人間が越えられない壁を乗り越えた今の勇は、もう止められない。
「がはッ……今のは、何なんだッ!? 何が起きた……!!」
「簡単さ。 動作を省いただけだ。 天士の力でな」
大地に蹲るデュランの傍に、勇が降り立つ。
傷さえも消し去った姿で。
今の勇はもう、敵意を向けられようが自由に天力転換が可能となっている。
それはすなわち、生半可な傷程度ならば即座の修復が可能だという事。
天力子になれば身体を変化前に戻す事が容易に出来るからだ。
そして動作飛ばしの攻撃は、人間では捉える事など出来ない。
それがわかっているから、もう勇に疎いは無い。
立ち上がるデュランを前に、その力を何度でもぶつけるだけだ。
わかってもらうまで、理解してもらうまで。
「一つ封印の力を解いた。 お前がそれだけ強かったからさ」
「クッ、それほど天士とやらは奥が深いか……! だがその事実を教えたのは君の失敗だ。 ならば私はその能力すら超えてみせるさ」
ただ、そんな力を見せられようともデュランの心は折れていない。
むしろその力さえも跳ね退ける気概が彼にはある。
その身に備えた魔導鎧装と魔剣が何もかもをも超える力を与えてくれるから。
その力を増幅させる数多の特殊能力があるから。
再びその身を構えさせ、来たる攻撃に備えるだけだ。
「がッ……!?」
だが既に、そんなデュランの腹側部に―――勇の拳が突き刺さっていた。
魔導鎧装に亀裂をもたらす程の威力で。
たちまち、再びデュランの体が跳ね飛ばされて。
クレーターの縁さえ吹き飛ばし、大地上を盛大に舞い上がる。
でもその身は間も無く再び大地へ叩き付けられる事となるが。
「ぐぶおおおッッ!!?」
その一撃、急転直下の流星が如き突蹴。
遥か上空から隕石で撃ち抜いたかの様な衝撃がデュランを襲う。
これも当然、無間。
その凄まじいまでの一撃がデュランの体を再び大地へ叩き付けさせ。
まるで地面を転がる様にして彼方へ跳んでいく。
自力で制御出来ない程に荒々しく。
もはやデュランには、自身がどの様に転がっているのかさえ認識出来ていなかった。
それ程までに天地が乱転し、平衡感覚さえ失わせ。
その上でどこから攻撃してきているかも理解出来ないから。
更には、超速度で転がっているにも拘らず、胸部を狙った勇の蹴り上げが炸裂し。
太陽輝く大空へとその身が高く舞い上げられて。
「うおああああ!!??」
闇雲に拳撃を振り回すが、それもを無為に消える事となる。
その隙間を縫うかの様に、剛打が肩を撃ち抜いていたのだ。
虹の光が弾ける程の天力を篭めて。
創世拳の一撃である。
「がかッ……!?」
ズズウゥン……!!
そしてデュランの身はそのまま大地へ落ち、大量の土煙を巻き上げてその身を埋める。
相応なる威力故の振動を大地へ響かせながら。
圧倒的だった。
ここまでの形成逆転が成せる程に。
デュランもまさかここまでとは思っても見なかったのだろう。
勇の言い放った「省く」という力の根幹がこれ程とは。
そう、勇は全て見えているのだ。
デュランがどうやって反撃するかも、したのかも。
その上で決める事が出来る。
自身がどう攻撃したかを。
加えて、今の勇ならば創世武具の形成までをもプロセスアウト可能。
つまり、移動後に別武器へと持ち替えた状態で攻撃する事も出来るのだ。
これこそが【第四の門 ナ・ロゥダ】の真価。
人間と天士の存在が決定的にわかれる程の力をもたらす、中核点の能力なのである。
世界を分断する為に使われた力の封印が。
それらは一つ一つにシステムの制限が施されていて、自由に開く事は出来ない。
核となるア・リーヴェの許可を得て初めて、順々に開く事が出来る様になっているのだ。
しかし一度許可を得れば、天士はその力を自由に行使する事が可能。
当然、戦闘能力として応用する事も。
勇は現在、第三門までの開門を果たしている。
人間や魔者相手ならば、それだけで戦力としては十分だから。
その力の概要はこう。
【第一の門 ト・ミュベ】
【創世の鍵】との邂逅門。
この門を開く事で【創世の鍵】とのアクセスが自由に行える様になる。
これによってア・リーヴェとの会話が可能になり、存在の認識も出来る様に。
彼女の許可があれば、この時点でその存在を他者へと伝達する事も可能。
勇がアルライ隠れ里の碑石に触れた事で成し遂げたのがこれである。
【第二の門 シ・ノェジョ】
ア・リーヴェとの意識・知識を繋げる門。
ここが開かれる事によって、天士は彼女の知恵や知識を得られる事が可能に。
それだけでなく、彼女を通じてフララジカシステムに蓄積された記録をも覗き見る事も。
またその知識を自身に入力し、様々な天士技術をも習得出来る。
複幻体を精製する力もこの門が開門された恩恵の一つ。
【第三の門 ヴョ・クェテー】
【創世の鍵】の力を具現化する門。
この門を開門した時、天士は自身の天力を創世宝具へと進化させる事が出来る。
その力の秘密は天力転換の極みを強制的に習得させる事にあり。
これは本来、双世界の物理構造を分裂させる為に要された力で。
勇はこの力を利用し、精神物質を構築して創世剣などの武具を生み出しているのだ。
そして今開こうとしているのが【第四の門 ナ・ロゥダ】。
この門はいわゆる中核点の一つ。
十一門の合間に幾つか存在する重要門として。
そこに秘められし力は今までの概念を凌駕する事であろう。
その力の秘密とは果たして―――
空を舞うデュランを前に、勇がその身を再び屈ませる。
己の誇る力を高め、再び跳び上がる為に。
「まだ諦めていないのはさすがだ。 だが、だからといって容赦するつもりは無いッ!! 君を完全消滅させるまで、私は何度でも究極剣を撃ち放ってみせよう!!」
「なら俺はそれを乗り越える!! 乗り越えてお前に伝えてみせるッ!! リデルさんの想いを、俺達の想いを!!」
新たな門を開く決意が、覚悟が。
仲間達の想いが、願いが。
今この時、勇の創世剣に力を与えた。
光り輝くは虹色の光。
大地を優しく撫で上げるかの様に、それでいてとめどなく。
魂の迸りに応え、握り手さえにも力を漲らせていく。
しかしデュランも負けていない。
彼の力にはまだまだ力が迸っている。
誰にも負けないと思える程の強い力が。
「そうか、それが君の力か!! ならばどちらが!!―――」
「乗り越えられるかッ!!―――」
だからこそ二人は今、猛り咆哮える。
「「―――勝負だッ!!」」
己の存在意義と使命と約束を果たす為に。
遂に二人がその身を押し出させる。
そうした時、既に二人は肉迫していた。
それだけの速度、それだけの勢いで飛び込んでいたから。
ガッキャァーーーーーーンッ!!
たちまち、二人の間から凄まじいまでの衝撃波が炸裂する。
二人の剣がただ打ち当ったただけで。
虹の光が空を裂く。
大地に抉る様な傷跡を残す程に。
それ程までに力が弾け飛んだのだ。
その二人は、再び距離を離していた。
自分達の体重すら物ともしない衝撃だったのだ、弾かれもするだろう。
でもデュランはそれさえも凌駕する機動力を有している。
即座にその反力をも殺す程の推力を撃ち出し、勇へと突撃していく。
「空を飛べないのが君の弱点だあッ!!」
反力がいくら強大でも、大地に到達するにはコンマ数秒の時間が必要。
その時間さえも縫い、デュランが再びあの必殺剣をその手で刻み込む。
「再びその身で味わえッ!! 【十三烈神光破斬】ッ!!!」
もはやその力の奔流、無尽蔵。
先程の威力にも寸分違わぬ後光の剣が、再び勇の体を覆い尽くす。
その光の波動、例え空を飛べようとも逃げる事叶わない。
ギィィィーーーーーーンッ!!!
その間、一秒たりとも掛からぬ一瞬の出来事。
それだけの瞬撃で、デュランはいとも容易く勇を捉えたのである。
その光の槍たる一撃は大地をも貫く。
どこまでも、どこまでも深く深く突き刺さる程に。
だが。
デュランは知る。
その一撃が。
当たったと思い込んでいただけという事に。
「がはあッ!?」
何とその時、デュランは驚くべき事実をその身で味わう。
勇がデュランの腹に深い膝蹴りを見舞っていたのだ。
先程まで落下していたはずなのに。
デュランが技を揚々と撃ち放っていたのに。
つい今しがたまで、必殺の光槍に貫かれていたはずなのに。
でもそれはまだ始まりに過ぎない。
驚異の幕開けに過ぎない。
「ごはッ!!??」
今、勇は膝蹴りを見舞っていたはずなのに。
デュランを打ち上げていたはずなのに。
勇は既に真横から、デュランの頬へと拳撃を見舞っていたのだ。
しかもまるで真横から飛び込んで来たかの様に。
「ぐぅぶッ!!!???」
更には同じ腕で、ほぼ同時に、その顎を真上に打ち抜いていた。
その身全身で突き上げる様にして。
それはもはや分身。
どの勇もが本人であるかの如く。
その間に刹那ほどの時間も与える事無く。
隙間無く、三連撃を見舞っていたのである。
いずれもまるで駆け抜けて全力で殴った様な一撃ばかりを。
「バッ……カなッ!!?」
しかしデュラン当人は何が起きたのかわかってはいない。
突如現れては攻撃を見舞われた、その程度にしか見えなかったからだ。
それでも負けじと空へ舞い、再び落ち行く勇を見届ける。
異質な行動力を見せつける相手と間合いを開く為に。
それが叶わないとも知らずに。
ドッギャァンッ!!
突如、飛び上がっていたデュランの背が反り上がる。
勇がその背を蹴り落としていたのだから。
「があああッ!!?」
デュランは今の一瞬まで勇から目を離してはいない。
瞬きすらしてはいないし、移動の予兆すら見てはいない。
移動した所を見た訳でもない。
なのに、勇はもう蹴り終えている。
しかもその威力、魔導鎧装すら防げぬ程に強烈。
まるで勢いよく飛んで突き出されたかの様な蹴りの如く。
それらを全て、勇は刹那の刻だけで実行して見せたのである。
厳密に言えば、それは一刻すら刻んではいない。
全ては、【第四の門 ナ・ロゥダ】の賜物である。
【第四の門 ナ・ロゥダ】。
その力が秘めしは、フララジカシステムへの直結。
つまり、双星を守り抱く防衛システムへの直接アクセスが可能となるという事。
それが可能という事はすなわち、星の命脈との自由接続が出来る様になり。
人の意思や感情に左右されずに天力移動が可能となるのである。
そしてそれだけではない。
天力転換におけるプロセスに一定の自由度が与えられるのだ。
例えば、移動前と移動後で体の向きや動き、慣性までをも自由に変えられるなど。
すなわち、移動前では「無行動状態」でも、移動後には「行動直前状態」に出来る。
その間のプロセスを全て省く事が可能となるのである。
だから勇は移動後、膝蹴り寸前の状態で転移して。
その直後に顔を殴り飛ばす状態で転移して。
更にその後には顎を撃ち抜く状態で転移、そして最後の蹴りをもノンプロセスで実行したのだ。
その全てに、全力の一撃に匹敵する程の威力を篭めさせて。
ドドォーーーーーーンッッッ!!!!
たちまちデュランが大地へ打ち付けられ、大地に巨大なクレーターが形成される。
大量の土砂を打ち上げながら。
それだけの威力を体現出来る一撃が、ノンプロセスで実行可能。
これ程の脅威を見せつける勇には、もはや並の人間が敵うはずは無い。
何故なら、彼の行動能力はもはや物理特性を完全に無視しているから。
今の勇は―――もはや光すら超えているに等しいのだから。
新たな門を開いた時、勇の力は光をも超える。
物理すら超え、原理すら超え、光を超えた今、この世界に超せる物はもう存在しない。
人間が越えられない壁を乗り越えた今の勇は、もう止められない。
「がはッ……今のは、何なんだッ!? 何が起きた……!!」
「簡単さ。 動作を省いただけだ。 天士の力でな」
大地に蹲るデュランの傍に、勇が降り立つ。
傷さえも消し去った姿で。
今の勇はもう、敵意を向けられようが自由に天力転換が可能となっている。
それはすなわち、生半可な傷程度ならば即座の修復が可能だという事。
天力子になれば身体を変化前に戻す事が容易に出来るからだ。
そして動作飛ばしの攻撃は、人間では捉える事など出来ない。
それがわかっているから、もう勇に疎いは無い。
立ち上がるデュランを前に、その力を何度でもぶつけるだけだ。
わかってもらうまで、理解してもらうまで。
「一つ封印の力を解いた。 お前がそれだけ強かったからさ」
「クッ、それほど天士とやらは奥が深いか……! だがその事実を教えたのは君の失敗だ。 ならば私はその能力すら超えてみせるさ」
ただ、そんな力を見せられようともデュランの心は折れていない。
むしろその力さえも跳ね退ける気概が彼にはある。
その身に備えた魔導鎧装と魔剣が何もかもをも超える力を与えてくれるから。
その力を増幅させる数多の特殊能力があるから。
再びその身を構えさせ、来たる攻撃に備えるだけだ。
「がッ……!?」
だが既に、そんなデュランの腹側部に―――勇の拳が突き刺さっていた。
魔導鎧装に亀裂をもたらす程の威力で。
たちまち、再びデュランの体が跳ね飛ばされて。
クレーターの縁さえ吹き飛ばし、大地上を盛大に舞い上がる。
でもその身は間も無く再び大地へ叩き付けられる事となるが。
「ぐぶおおおッッ!!?」
その一撃、急転直下の流星が如き突蹴。
遥か上空から隕石で撃ち抜いたかの様な衝撃がデュランを襲う。
これも当然、無間。
その凄まじいまでの一撃がデュランの体を再び大地へ叩き付けさせ。
まるで地面を転がる様にして彼方へ跳んでいく。
自力で制御出来ない程に荒々しく。
もはやデュランには、自身がどの様に転がっているのかさえ認識出来ていなかった。
それ程までに天地が乱転し、平衡感覚さえ失わせ。
その上でどこから攻撃してきているかも理解出来ないから。
更には、超速度で転がっているにも拘らず、胸部を狙った勇の蹴り上げが炸裂し。
太陽輝く大空へとその身が高く舞い上げられて。
「うおああああ!!??」
闇雲に拳撃を振り回すが、それもを無為に消える事となる。
その隙間を縫うかの様に、剛打が肩を撃ち抜いていたのだ。
虹の光が弾ける程の天力を篭めて。
創世拳の一撃である。
「がかッ……!?」
ズズウゥン……!!
そしてデュランの身はそのまま大地へ落ち、大量の土煙を巻き上げてその身を埋める。
相応なる威力故の振動を大地へ響かせながら。
圧倒的だった。
ここまでの形成逆転が成せる程に。
デュランもまさかここまでとは思っても見なかったのだろう。
勇の言い放った「省く」という力の根幹がこれ程とは。
そう、勇は全て見えているのだ。
デュランがどうやって反撃するかも、したのかも。
その上で決める事が出来る。
自身がどう攻撃したかを。
加えて、今の勇ならば創世武具の形成までをもプロセスアウト可能。
つまり、移動後に別武器へと持ち替えた状態で攻撃する事も出来るのだ。
これこそが【第四の門 ナ・ロゥダ】の真価。
人間と天士の存在が決定的にわかれる程の力をもたらす、中核点の能力なのである。
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主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。
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