時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
230 / 1,197
第八節「心の色 人の形 力の先」

~暗走、闇では戦士は止まらない~

しおりを挟む
 幾箇所で火の粉が高く舞い上がり、空を赤く染める。
 その様子を見ていたのは勇達や現場の魔者達だけではない。

 そこからほんの少し遠い丘林でもまた、その光景を静かに眺める者が。

「……魔剣使いが来たか。 ホホッ」

 その様子はと言えば、敵が来たというのにも拘らずどこか嬉し気で。
 兵士達が慄いているにも拘らず、堂々と見下ろしている。

 口元に細かく鋭い牙を覗かせながら。

「少しは楽しめそうじゃ。 ほれ、お前達も行くが良い。 骸となろうとも彼奴らを見事討ち取ってみせよ」

「え、えっ!?」

 その者、自身を囲う者達よりも一回り大きく。
 肩肘の張った体は己が強靭さを示すには充分。

 そんな者の口が宣うのは、姿形に似付かわしい理不尽な要求。
 兵士達もその一言を前には戸惑うばかりだ。

 だが。

「どうした? わらわの言う事が聞けぬと?」

「いえ、我等が王の言葉は絶対―――」

「ならば行け。 牙の一つでも突き立てねば【オンズ】の恥と思うてな」

 見下ろされる目から眼光が瞬き、兵士達をこれ以上になく脅えさせる。

 彼等は恐れているのだ。
 己が一族の王を。
 人間よりも、魔剣使いよりもずっと。

 その実力を深く知るからこそ。

 兵士達が足早に丘を駆け下りていく中で、王はなお静かに佇み続ける。
 炎の光を受けて輝く、巨大な棒状の得物を突き立てて。

 期待と自信のままに、ただほくそ笑むのみ。
 
 









 一方その頃、丘の麓では―――

 勇達の急襲に気付き、舗装道路を駆け降りていく三人の魔者達の姿が。

「王からの指令はまだかッ!?」

「まだだッ!! だが魔剣使いなれば討つ! 我等が麗しき王ならばそう言うハズだッ!!」

 王の護衛兵達と打って変わり、彼等の意思は強固だ。
 恐らくはそんな雑兵よりもずっと位の高い存在なのだろう。

 その証拠に、普通の物とはどこか雰囲気の異なる短剣を携えていて。
 他の個体と比べても、一際目立つほどに体格が大きい。

 そう、彼等の携える武器こそ―――なんと魔剣なのである。

 その造りは簡素的で、強い力こそ持ち合わせてはいない。
 かつて勇が持っていた魔剣【エブレ】と同等の一品だ。

 しかし魔者が持てばこれ以上に無い武器となる。
 何故なら、魔者が命力をナチュラルに扱える存在だから。
 いつか剣聖が言った通り、数日持つだけで使いこなす事が出来る様になるのである。

 そうなれば、並みの魔剣使いでは太刀打ちはほぼ不可能。

 そしてそれを魔者達も知るからこそ。
 この三人もまた、自信に溢れた眼で先を見据えるのみ。

「我等【特武隊】の実力を人間に思い知らせてや―――」



 だがこの時、その自信はもはや慢心と化す。



 その瞬間、先陣を走っていた者の腕が―――刎ねていたのだ。
 多量の体液を撒き散らしながら。

「「「えっ?」」」

 しかもその一瞬を、三人は理解する事が出来なかった。
 当人ですらも。

「オ……ぐぅおああ!?」

 しかしその事実に気付いた途端、斬られた者がもがき苦しむ事に。
 腕を失った絶望と、この上ない痛みが襲い掛かったが故に。

 苦しみの余り、たちまちその身を大地へ転がさせていく。
 まるでピンボールの様に跳ねながら。

「な、何が起こったァ!?」

 残った二人ももはや臨戦態勢だ。
 互いに背を合わせ、周囲からの攻撃に備えて魔剣を構える。

 そんな行為など何の意味も成さないとも知らずに。

 気付いた時にはもう手遅れだった。
 この時、二人が咄嗟に見上げれば―――
 


 自分達目掛け、暗闇を切り裂く一閃が走光はしっていたのだから。



キュゥゥゥーーーーーーンッ!!

 光が穿つ程の一撃は、大気を擦って鳴音を生む。
 風を裂いて生まれた風切り音と混じりながら。
 それが命力共鳴音。

 それ程までの一撃ともなれば、もはや金属とて物理抵抗になりはしない。

バッキャァーーーーーーンッ!!

 そうなれば、たちまち無数の金属片が弾け飛ぶ事となる。

 一瞬だった。
 たったその一瞬で、魔者達の持つ魔剣が砕け散ったのだ。

 それを成した者こそ―――あの勇である。

「ば、バカな、我等が見えなかっただとぉ!?」

「うぐぉ……有り得ん、どうして人間がそこまで動ける!?」

 オンズ屈指の戦士である彼等が慄いてしまうのも無理は無い。

 【オンズ族】は夜目が効く。
 これは彼等にとっての自信の一つであり、アイデンティティでもある。

 しかしそれをもこうして簡単に覆されてしまった。
 それも、こともあろう事か天敵である人間に。
 夜では行動力が落ちてしまう様な相手に。

 信じられる訳も無かったのだ。
 それ程までに、勇の動きが想像を絶していたのである。

「悪いな、俺は夜だとかもうからさ。 それよりも……死にたくなければ追って来るなよ? また来たら今度は容赦はしないからな」

 でも勇がトドメを刺す様な事はしない。

 魔者と触れあったから。
 彼等もまた心や命があると知ったから。
 出来る事なら彼等にも生きて欲しいから。

 だから勇はそのまま駆け抜けられる。

 その心があるならば理解出来るだろうから。
 自分達の実力では手も足も出ないのだという事を。

「我等を殺さないなどとは、なんなんだあの魔剣使いは……」

「わからん。 それよりもコイツの応急処置をしなければ」

 そして魔者達もまた意思があり、仲間意識もあるからこそ。
 傷付いた仲間を救うという現実性を選ぶ事が出来る。

 ただ、その想いの中には全く別の意思も介在している様だが。

「王はあの魔剣使いを倒せるだろうか……」

「どうだろうな。 だがもしかすればあるいは―――」

 そうして見上げるのは丘の上。
 彼等が敬うべき王が座する地。

 でも彼等がこれ以上言葉を連ねる事は無い。
 余計な一言は無用な誤解を生みかねないとわかっているから。

 それでも彼等は心にだけ想わずにはいられない。
 口で言い連ねたかった本心の一言を。

 勇という、実力者を目の当たりにしたからこそ。



 人の心を縛るのに必要なのは力か、それとも―――


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...