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第三十八節「反旗に誓いと祈りを 六崩恐襲 救世主達は今を願いて」
~心惑わせし女郎達 アージ達 対 諦唯③~
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大地を、空を、黄金の軌跡が突き抜ける。
時には建物さえも貫き、拍子に飛ばした破片をも粉々に打ち砕いて。
幾度となく鋭角軌道を刻んで不規則に、衝撃波を絶えず生む程に荒々しく。
ただしそれは決して勇猛果敢に、という訳ではない。
アージは必死だったのだ。
背中に取り付いたマドパージェを祓うのに。
更には背を建物の壁へとぶつけては擦り付け。
削ぎ取る程に押し込み、なおその速度を上げていく。
そうして壁中腹から瓦礫と共に跳ね飛んでは、別の建物へ移ってを繰り返しながら。
「ぐううッ!? 何故だ、何故離れんのだあッ!?」
「クフフ。 其れは貴方が、本当は離れて欲しくないと心に願うているからではないでしょうか?」
「なんだとォ!? そんな訳があるかあッ!!」
しかしそこまでしても、マドパージェが離れる気配は一向に無い。
不敵に微笑みながらも、首が絞まる程の凄まじい力でアージにしがみついていたが為に。
掴んで引き離そうとしてもまるでダメだ。
何故か今までの個体と違って強靭で、千切るどころかビクともしない。
一体細い腕体のどこにそんな力があるというのか。
かといって魔剣をぶつけても意味は無い。
ここまで密着されると、当てても破壊力が透過してしまうから。
命力を自身に当てるのと同義であるが故に、魔剣自体が力を相殺してしまうからだ。
これは数少ないの魔剣の欠点であるが故に。
とはいえマドパージェも幾ら強靭とはいえ傷付くし、顔を叩けば呻きも漏らす。
だからこそ素拳で打ってはまたビルへとぶつけ、何とか引き剥がそうとしている。
今はそれしか抵抗する手段が思い付かないからこそ。
でも、それでも笑い声だけは止まらない。
例え何度も打ちのめされようと、それで腕の力が緩もうとも。
耳元で不敵に笑いを囁き続け、なお不気味さを曝け出しているのだ。
まるで、アージの行為を無駄だと嘲笑っているかの様に。
確かに、この程度でアージは止まりはしない。
それでも、笑いから生まれた言い得ぬ不安が心を取り巻き、焦りを隠せないでいる。
相手の正体が未だ掴めないからこそ。
「ならば強引にでも貴様を引き剥がすまでだッ!!」
その様な不安を祓う為にも、今度は空高くへと飛び上がる。
空気の層を押し上げ潰さんばかりの超加速を以って。
敵を振り払う為ならば、如何な重圧さえも耐えきってみせようと。
更には上空へと到達した途端、黄金の輝きが暗闇に落ちた街を照らし始める。
アージが強大な命力を解き放ったのだ。
命力が物理干渉を成す事は周知の事実。
ならばと、マドパージェを命力そのもので押し剥がそうとしたのだ。
まるで身垢を削ぎ落すかの如く。
空に上がったのは他でもない、その影響を街へと与えない為で。
加えて、他の個体からの追撃を避ける為でもある。
故に妨げるモノはもう何も無い。
命力を漲らせ、敵意全てを祓い尽くそう。
その姿、まさに太陽。
全身を覆い尽くす命力の輝きが空をも照らす。
遠くで戦うマヴォでさえすぐに気付く程の波動鳴音をももたらして。
だが、マドパージェは―――離れない。
何故か全く影響が無いのだ。
まるで己の身体の一部の如く、命力を全て透過させていて。
髪や服が靡いているだけで、抵抗の力は一切変わらない。
それどころか、更なる有り得ない事態にまで発展する事となる。
「なん、だとォ……ッ!?」
なんと腕に脚に、いつの間にか別の個体もが纏わり付いていたのである。
それも、肘膝関節の動きをも封じる程にきつく。
これ程の太陽の如き輝きの中でも、関係無く敵は増え続けている。
一体どこから現れたのかさえ、アージにはわからない。
これの如何に不気味な事か。
「アハハハッ!」
「言うたでありましょ……?」
「私達はぁ常にぃ」
「貴方と直ぐ御傍にいッ!!」
「なのに焦っちゃってカッワイー!」
しかも個々に個性があるのだろうか。
口調のみならずその仕草もが異なっていて。
背後には、妖艶さを見せつけ愛撫を続ける者。
右腕には、しがみつきながらも己の髪を弄る者。
左腕には、腕毛を全身で堪能して悦ぶ者。
右脚には、爪を牙をも立てて獣の如き敵意を見せる者。
左脚には、常に首を振り回して楽しそうにしている者。
姿は皆全て同じだ。
それに、アージの身体を縛るという行為も変わらない。
だからこそなお気味が悪い。
アージの全身の毛が嫌悪感で逆立つ程に。
よりにもよって、いずれもアージが嫌うタイプの性格なのだから。
まるでアージの事を知っていて、敢えてそんな性格を見せているかの様だ。
「兄者ーーーッ!!!」
そんなアージの下へと、マヴォが颯爽と駆け付ける。
やはり遠くからでも異変に気付けたのだろう。
【相対共振】があるのだから尚更だ。
しかし近づいた事で、異変の重大さにもようやく気付く。
他者から見ても不気味そのものだったからこそ。
五人ものマドパージェに憑りつかれ、苦痛に喘いでいるアージの姿は。
アージも相当に苦しいのだろう。
何せ全身を常軌の逸した力で締め付け続けられているのだから。
もはや空に浮く事しか出来ず、身体を動かす事さえままならない状態だ。
「兄者、今助けるッ!!」
そんな姿を見かねたマヴォが遂に飛び出して。
魔剣に力を籠め、一直線にアージの下へ。
するとそんな時、突如として周囲から新たなマドパージェの姿が。
下から左右から、あろう事か空からも飛び込んでくるではないか。
マヴォを阻止せんと、いずれも敵意を露わにして。
「ウオオオーーーッ!! それが何だと言うのだァァァーーーッ!!!」
でもマヴォがその程度で止まる訳が無い。
長斧槍を高速で振り回し、迫る相手達をミキサーの如く瞬時にして肉片へと換えて。
白迅甲の力のままに、二人の間隔を一気に詰めていく。
新たなマドパージェ達が更に襲い来ようとも、その勢い止める事など叶いはしない。
ガゴォンッ!!
そう、思っていた時だった。
その瞬間、突如としてマヴォの勢いが止まる事となる。
マヴォの身体が、跳ね返ったのだ。
まるで強固な壁に打ち当たったかの如く。
「ガハッ……!?」
いや、実際に壁がある。
透明な、見えない壁がそこにある。
兄弟を隔てる様にして、強固で堅牢な壁が確かに存在しているのだ。
それはマヴォ自身が復帰して間も無く、手で触れて理解する事に。
「なんだ、何なんだコレは!?」
本当に何なのか全くわからない。
何せ、その壁は何故かマヴォだけに作用しているのだから。
今なお新たなマドパージェ達がマヴォを襲い続けていて。
返り討ちにしてばら撒いた血肉は、壁をいとも容易く透過していくという。
血糊さえ付く事無く、形を浮き上がらせる事さえ叶わない。
場所を変えても関係無し。
押しても叩いてもビクともしない。
精々籠った衝撃音がマヴォ側にだけ響くだけで。
声すらも全く届いていない様だ。
「マヴォ……クッ、駄目か」
その不可思議な状況はアージにも充分理解出来ていた。
マヴォが助けようとしている事も、見えない壁に遮られている事も。
助けられる事に期待していたからこそ、落胆は計り知れない。
だからこそ自らへの憤りをも禁じ得ない。
この様な情けない姿を晒さねばならないからこそ。
「ぐぅぅ、くそォォォ!! こうなったらッ!!」
しかし脱出の手段は思い付く限り他にもある。
己の身体を傷付ける危険は伴うが。
でもこうなってしまった以上、もはや手段を選んではいられない。
情けない姿であり続けない為にも、アージが再び力を込める。
マヴォに頼れない今、己の力だけで何とかする為に。
だがその手段も間も無く、無為に期す事となるが。
何とあろう事か、気付けばマドパージェが増えていた。
肩に、腹に、股関節に。
視線を変えれば、更に腰裏に、両足先に。
そして遂には後頭部にしがみつく者までが。
まるで最初からいたのかと思える程に、自然に憑りついていたのだ。
「な、なにィィィーーーーーーッ!!?」
もはやアージの露出面積の方がはるかに少ない。
それ程までの着物美女達が纏わり付く様にして全身を締め上げていたのだから。
まるでセメントで固められたかの様に、身体が動かせない。
指までも掴まれ、齧られ、抑え付けられていて。
「さぁ、今こそ」
「己が内に秘めし諦念を」
「吐き出すのです」
「そして共に快苦へ堕ちませう」
「永遠に、永遠に」
そして皆が揃ってこう囁く。
アージの心を闇へと誘うかの様に。
「兄者ーーーッ!!」
マヴォの叫びも届かない。
何を叫んでいるかはわかっていても。
「マヴォ、俺は……俺は―――うぐッ!?」
その抗えないという絶望を僅かに抱いた時、遂には信じられぬ事さえ現実となる。
何とあろう事か、アージの口から―――女の手が飛び出してきたのである。
ズボァァッ!!!
「ぐぶおおおーーーーーーッッ!!?」
それと同時に腹内部からも強烈な圧迫感が膨れ上がっていく。
今にも破裂してしまいそうな程に。
―――な、ば、馬鹿なぁぁぁ!?―――
しかしもう抗えない、防げない。
敵の能力も、正体さえも見当が付かない。
力さえも抑え付けられ、逆転の糸口も見当たらない。
そんな絶望が積み重なり、アージの意識を闇へと堕としていく。
無念と、悔しさと憤り、マヴォへの悔悟を胸に抱いたままに。
その暗闇の中で浮かび上がったのは、アージの諦念。
己が記憶の中に刻み込まれた、人生の中の諦め。
マドパージェの声に誘われ、その忌まわしき記憶が今甦る。
かつてアージとマヴォに起きた哀しき思い出と共に。
時には建物さえも貫き、拍子に飛ばした破片をも粉々に打ち砕いて。
幾度となく鋭角軌道を刻んで不規則に、衝撃波を絶えず生む程に荒々しく。
ただしそれは決して勇猛果敢に、という訳ではない。
アージは必死だったのだ。
背中に取り付いたマドパージェを祓うのに。
更には背を建物の壁へとぶつけては擦り付け。
削ぎ取る程に押し込み、なおその速度を上げていく。
そうして壁中腹から瓦礫と共に跳ね飛んでは、別の建物へ移ってを繰り返しながら。
「ぐううッ!? 何故だ、何故離れんのだあッ!?」
「クフフ。 其れは貴方が、本当は離れて欲しくないと心に願うているからではないでしょうか?」
「なんだとォ!? そんな訳があるかあッ!!」
しかしそこまでしても、マドパージェが離れる気配は一向に無い。
不敵に微笑みながらも、首が絞まる程の凄まじい力でアージにしがみついていたが為に。
掴んで引き離そうとしてもまるでダメだ。
何故か今までの個体と違って強靭で、千切るどころかビクともしない。
一体細い腕体のどこにそんな力があるというのか。
かといって魔剣をぶつけても意味は無い。
ここまで密着されると、当てても破壊力が透過してしまうから。
命力を自身に当てるのと同義であるが故に、魔剣自体が力を相殺してしまうからだ。
これは数少ないの魔剣の欠点であるが故に。
とはいえマドパージェも幾ら強靭とはいえ傷付くし、顔を叩けば呻きも漏らす。
だからこそ素拳で打ってはまたビルへとぶつけ、何とか引き剥がそうとしている。
今はそれしか抵抗する手段が思い付かないからこそ。
でも、それでも笑い声だけは止まらない。
例え何度も打ちのめされようと、それで腕の力が緩もうとも。
耳元で不敵に笑いを囁き続け、なお不気味さを曝け出しているのだ。
まるで、アージの行為を無駄だと嘲笑っているかの様に。
確かに、この程度でアージは止まりはしない。
それでも、笑いから生まれた言い得ぬ不安が心を取り巻き、焦りを隠せないでいる。
相手の正体が未だ掴めないからこそ。
「ならば強引にでも貴様を引き剥がすまでだッ!!」
その様な不安を祓う為にも、今度は空高くへと飛び上がる。
空気の層を押し上げ潰さんばかりの超加速を以って。
敵を振り払う為ならば、如何な重圧さえも耐えきってみせようと。
更には上空へと到達した途端、黄金の輝きが暗闇に落ちた街を照らし始める。
アージが強大な命力を解き放ったのだ。
命力が物理干渉を成す事は周知の事実。
ならばと、マドパージェを命力そのもので押し剥がそうとしたのだ。
まるで身垢を削ぎ落すかの如く。
空に上がったのは他でもない、その影響を街へと与えない為で。
加えて、他の個体からの追撃を避ける為でもある。
故に妨げるモノはもう何も無い。
命力を漲らせ、敵意全てを祓い尽くそう。
その姿、まさに太陽。
全身を覆い尽くす命力の輝きが空をも照らす。
遠くで戦うマヴォでさえすぐに気付く程の波動鳴音をももたらして。
だが、マドパージェは―――離れない。
何故か全く影響が無いのだ。
まるで己の身体の一部の如く、命力を全て透過させていて。
髪や服が靡いているだけで、抵抗の力は一切変わらない。
それどころか、更なる有り得ない事態にまで発展する事となる。
「なん、だとォ……ッ!?」
なんと腕に脚に、いつの間にか別の個体もが纏わり付いていたのである。
それも、肘膝関節の動きをも封じる程にきつく。
これ程の太陽の如き輝きの中でも、関係無く敵は増え続けている。
一体どこから現れたのかさえ、アージにはわからない。
これの如何に不気味な事か。
「アハハハッ!」
「言うたでありましょ……?」
「私達はぁ常にぃ」
「貴方と直ぐ御傍にいッ!!」
「なのに焦っちゃってカッワイー!」
しかも個々に個性があるのだろうか。
口調のみならずその仕草もが異なっていて。
背後には、妖艶さを見せつけ愛撫を続ける者。
右腕には、しがみつきながらも己の髪を弄る者。
左腕には、腕毛を全身で堪能して悦ぶ者。
右脚には、爪を牙をも立てて獣の如き敵意を見せる者。
左脚には、常に首を振り回して楽しそうにしている者。
姿は皆全て同じだ。
それに、アージの身体を縛るという行為も変わらない。
だからこそなお気味が悪い。
アージの全身の毛が嫌悪感で逆立つ程に。
よりにもよって、いずれもアージが嫌うタイプの性格なのだから。
まるでアージの事を知っていて、敢えてそんな性格を見せているかの様だ。
「兄者ーーーッ!!!」
そんなアージの下へと、マヴォが颯爽と駆け付ける。
やはり遠くからでも異変に気付けたのだろう。
【相対共振】があるのだから尚更だ。
しかし近づいた事で、異変の重大さにもようやく気付く。
他者から見ても不気味そのものだったからこそ。
五人ものマドパージェに憑りつかれ、苦痛に喘いでいるアージの姿は。
アージも相当に苦しいのだろう。
何せ全身を常軌の逸した力で締め付け続けられているのだから。
もはや空に浮く事しか出来ず、身体を動かす事さえままならない状態だ。
「兄者、今助けるッ!!」
そんな姿を見かねたマヴォが遂に飛び出して。
魔剣に力を籠め、一直線にアージの下へ。
するとそんな時、突如として周囲から新たなマドパージェの姿が。
下から左右から、あろう事か空からも飛び込んでくるではないか。
マヴォを阻止せんと、いずれも敵意を露わにして。
「ウオオオーーーッ!! それが何だと言うのだァァァーーーッ!!!」
でもマヴォがその程度で止まる訳が無い。
長斧槍を高速で振り回し、迫る相手達をミキサーの如く瞬時にして肉片へと換えて。
白迅甲の力のままに、二人の間隔を一気に詰めていく。
新たなマドパージェ達が更に襲い来ようとも、その勢い止める事など叶いはしない。
ガゴォンッ!!
そう、思っていた時だった。
その瞬間、突如としてマヴォの勢いが止まる事となる。
マヴォの身体が、跳ね返ったのだ。
まるで強固な壁に打ち当たったかの如く。
「ガハッ……!?」
いや、実際に壁がある。
透明な、見えない壁がそこにある。
兄弟を隔てる様にして、強固で堅牢な壁が確かに存在しているのだ。
それはマヴォ自身が復帰して間も無く、手で触れて理解する事に。
「なんだ、何なんだコレは!?」
本当に何なのか全くわからない。
何せ、その壁は何故かマヴォだけに作用しているのだから。
今なお新たなマドパージェ達がマヴォを襲い続けていて。
返り討ちにしてばら撒いた血肉は、壁をいとも容易く透過していくという。
血糊さえ付く事無く、形を浮き上がらせる事さえ叶わない。
場所を変えても関係無し。
押しても叩いてもビクともしない。
精々籠った衝撃音がマヴォ側にだけ響くだけで。
声すらも全く届いていない様だ。
「マヴォ……クッ、駄目か」
その不可思議な状況はアージにも充分理解出来ていた。
マヴォが助けようとしている事も、見えない壁に遮られている事も。
助けられる事に期待していたからこそ、落胆は計り知れない。
だからこそ自らへの憤りをも禁じ得ない。
この様な情けない姿を晒さねばならないからこそ。
「ぐぅぅ、くそォォォ!! こうなったらッ!!」
しかし脱出の手段は思い付く限り他にもある。
己の身体を傷付ける危険は伴うが。
でもこうなってしまった以上、もはや手段を選んではいられない。
情けない姿であり続けない為にも、アージが再び力を込める。
マヴォに頼れない今、己の力だけで何とかする為に。
だがその手段も間も無く、無為に期す事となるが。
何とあろう事か、気付けばマドパージェが増えていた。
肩に、腹に、股関節に。
視線を変えれば、更に腰裏に、両足先に。
そして遂には後頭部にしがみつく者までが。
まるで最初からいたのかと思える程に、自然に憑りついていたのだ。
「な、なにィィィーーーーーーッ!!?」
もはやアージの露出面積の方がはるかに少ない。
それ程までの着物美女達が纏わり付く様にして全身を締め上げていたのだから。
まるでセメントで固められたかの様に、身体が動かせない。
指までも掴まれ、齧られ、抑え付けられていて。
「さぁ、今こそ」
「己が内に秘めし諦念を」
「吐き出すのです」
「そして共に快苦へ堕ちませう」
「永遠に、永遠に」
そして皆が揃ってこう囁く。
アージの心を闇へと誘うかの様に。
「兄者ーーーッ!!」
マヴォの叫びも届かない。
何を叫んでいるかはわかっていても。
「マヴォ、俺は……俺は―――うぐッ!?」
その抗えないという絶望を僅かに抱いた時、遂には信じられぬ事さえ現実となる。
何とあろう事か、アージの口から―――女の手が飛び出してきたのである。
ズボァァッ!!!
「ぐぶおおおーーーーーーッッ!!?」
それと同時に腹内部からも強烈な圧迫感が膨れ上がっていく。
今にも破裂してしまいそうな程に。
―――な、ば、馬鹿なぁぁぁ!?―――
しかしもう抗えない、防げない。
敵の能力も、正体さえも見当が付かない。
力さえも抑え付けられ、逆転の糸口も見当たらない。
そんな絶望が積み重なり、アージの意識を闇へと堕としていく。
無念と、悔しさと憤り、マヴォへの悔悟を胸に抱いたままに。
その暗闇の中で浮かび上がったのは、アージの諦念。
己が記憶の中に刻み込まれた、人生の中の諦め。
マドパージェの声に誘われ、その忌まわしき記憶が今甦る。
かつてアージとマヴォに起きた哀しき思い出と共に。
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