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第十節「狂騒鳥曲 死と願い 少女が為の青空」
~哀にまみれ火は灯らん~
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秋田、某所―――【カラクラ族】の里。
「ジョゾウら派遣部隊、ただ今戻り申した」
空が漆黒を映す深夜の今、ジョゾウ達が里の中心で帰還を報告する。
そうして跪く彼等を迎えたのは、一人の人間で。
小石の輝きだけに照らされた暗がりの中、石椅子に座ったままに迎える姿が。
「ご苦労だったねぇ。 死なずに帰って来てくれたから僕安心したよ」
「勿体なきお言葉かと。 ミゴとライゴは討ち死に、拙僧らも満身創痍で快勝とはとても言えませぬ故」
「あ~結果報告は必要無いよ、もう既に知っているからねぇ。 勇君達とも協力出来て、ロゴウも倒してくれたんだろう? ちゃんと【オウフホジ】まで取り戻して。 おまけにフェノーダラの奴等とも仲良く出来たみたいじゃないか。 上出来もいい所さ」
ただその口ぶりはと言えばジョゾウ達の想いに反し、跳ねる様に軽くて。
ジョゾウ達への労いはあっても、ミゴやライゴの死へと手向ける言葉は一切無い。
このカラクラ現王たる存在―――獅堂 雄英には。
「その成果の礎は全て勇殿に在りまする。 拙僧らはただかの者に付き従ったのみ。 まさに主殿が仰った通りの御仁で御座った」
「ははっ、そうだったろう? だから面白いんだよねぇ、彼は」
「……面白い?」
「そうさ。 良い人に恵まれて、色んな仲間を見つけ、強くなっていく。 まるで物語の主人公じゃあないかってさ」
そうして話を交わす様子はとても自然体だ。
ジョゾウ達ともまるで友達の様に接していて、陽気さが滲み出て来るかのよう。
でもその中に優しさの様な雰囲気は感じられない。
こう会話していながらも、まるで一人で語っているかの様に。
勇を語る時はもはやジョゾウ達さえ見ていなかったから。
そんな語りもふと止まり、景色の彼方より覗く夜景に思わず誘われて。
僅かな明かりを受けて灯る顔に、片笑窪の上がった微笑みがほんのり浮かぶ。
獅堂が何を思っているかはジョゾウ達にはわからない。
彼等もまだ人間に対しての知見は乏しいから。
ただそれでも、形のある労いを前にすれば気持ちも伝わるものだ。
「さて、お堅い話はここまでとしよう。 ジョゾウ他四人の活躍を賞してこれを贈るよ」
そんな中で獅堂が足元に添えられていた籠を開き、内包物をそっと取り上げる。
すると出て来たのは、鞘に納められた太刃短刀で。
しかして小さな珠が輝き、灯を受けて柄元をも煌かせているという。
「魔剣【テオグル】だ。 収蔵品だったみたいだけどね、使わないよりは君に渡した方がマシだろう。 有効に使い、これからもこの里の為に尽くしてくれたまえよ」
「おぉなんと!! ありがたき幸せ!!」
そんな魔剣がとうとうジョゾウの手に。
獅堂自らが目前に掲げられた両手へと置き捧ぐ事によって。
これにはジョゾウも仲間達も目を輝かせずにはいられない。
やはり魔剣は彼等にとっても垂涎の逸品である事に変わりはない様だ。
そうしてジョゾウ達が一歩引いては再び跪く。
獅堂からの続くであろう言葉を待つかの様に。
とはいえ、どうやら獅堂自身もこれで用は済んだらしいが。
「それじゃここまでで。 皆ゆっくり休むといいよ、暫くはオフとしよう」
そこには手指を払うようにして見せつけ退出を促す姿が。
語りたい事も語れたから満足だったのだろうか。
もっとも、深夜だから軽く済ませたいという想いもあったからかもしれないけれど。
「ではこれにて御免」
もちろんそれはジョゾウ達も同じで。
賜った魔剣を手に、皆が揃って去っていく。
ようやく終わったか、という表情で疲労を隠せないままに。
ただそれでも獅堂自身は去る事無く。
立ったまま椅子の背もたれに腕を掛け、またしても夜空へ視線を向けていて。
「ふふ、これで御膳立ては済んだ。 後は暫く様子を見る事にしよう」
再びその顔に微笑みが浮かぶ。
石の灯さえ消し、照らすのが微かな月明りだけとなったその中で。
でもそうして滲む感情はどこか―――冷淡だ。
「魔者をも惹いて、遂には空も飛ぶ。 いいね、最高じゃないか。 それこそまさに僕の願う主人公像そのものなのだから。 是非とも勇君にはそうして成長し続けて貰いたいものだね。 どうなるか楽しみでしょうがないよ、フフッ」
放つ言葉はまるで勇を褒め称える様で、待ち遠しいという雰囲気すら醸し出している。
それでも冷淡に見えるのは、その言葉の先に思惑が覗き見えているからだろうか。
彼にしか見えない思惑が。
しかしそんな思想も思惑も、語らない以上は誰にも知る余地はない。
例え彼に付き従うジョゾウ達であろうとも例外無く。
だからこそ今は、その姿と共に闇へと埋めていくのみ。
誰にも知られないまま、悟られないままに。
ジョゾウが仲間達と別れ、石をくり貫いて造られた寝床へと帰る。
しかし床に就く事も無く、今はただ屋内のバルコニーより空を見上げていて。
今日起きた戦いに想いを馳せさせる姿がここに。
「あの時、ロゴウは確かに自分の意思で魔剣を離した。 それは間違い無い」
それは仲間の死よりも、ロゴウの事で頭が一杯だったから。
ロゴウの一連の不可解な行動はジョゾウを悩ませる程に複雑だった。
故に、あの戦いがまるで曖昧な夢幻の出来事なのではないかとさえ思えてならなくて。
それだけ理由もきっかけも残らない、無意味と言える戦いだったからこそ。
「其方の行動と言動、余りにも不可解が過ぎたぞ。 何故なのだ、教えてくれ我が恩師よ……ッ!!」
けれど空に幾ら希おうと答えは返ってこない。
思い出の中にあるロゴウの表情からも、何も導かれはしない。
訪れるのは不快な頭痛だけで、頭が回って遂には何もわからなくなる。
今こうして自分の家に居る事さえもが夢と思えてしまう程に。
だからジョゾウはもう寝る事にした。
自分には明日からにも考える時間があるからと。
それに今が夢なのならば、起きればきっと現実が待っているだろうからと。
静かなる夜が、鳥達に潔い眠気をもたらしてくれる。
冷たく厳しい空気が包んでいても、今の彼等には心地良くさえ感じられたから。
戦いで火照り疲れた身体は、それ程までに昂っていたのだろう。
易々と冷めやらぬ程までに、命と想いが迸った戦いだったからこそ。
だからこそ今は体をゆっくりと休めよう。
逝った仲間達の想いを、その心へと馴染ませる為に―――
「ジョゾウら派遣部隊、ただ今戻り申した」
空が漆黒を映す深夜の今、ジョゾウ達が里の中心で帰還を報告する。
そうして跪く彼等を迎えたのは、一人の人間で。
小石の輝きだけに照らされた暗がりの中、石椅子に座ったままに迎える姿が。
「ご苦労だったねぇ。 死なずに帰って来てくれたから僕安心したよ」
「勿体なきお言葉かと。 ミゴとライゴは討ち死に、拙僧らも満身創痍で快勝とはとても言えませぬ故」
「あ~結果報告は必要無いよ、もう既に知っているからねぇ。 勇君達とも協力出来て、ロゴウも倒してくれたんだろう? ちゃんと【オウフホジ】まで取り戻して。 おまけにフェノーダラの奴等とも仲良く出来たみたいじゃないか。 上出来もいい所さ」
ただその口ぶりはと言えばジョゾウ達の想いに反し、跳ねる様に軽くて。
ジョゾウ達への労いはあっても、ミゴやライゴの死へと手向ける言葉は一切無い。
このカラクラ現王たる存在―――獅堂 雄英には。
「その成果の礎は全て勇殿に在りまする。 拙僧らはただかの者に付き従ったのみ。 まさに主殿が仰った通りの御仁で御座った」
「ははっ、そうだったろう? だから面白いんだよねぇ、彼は」
「……面白い?」
「そうさ。 良い人に恵まれて、色んな仲間を見つけ、強くなっていく。 まるで物語の主人公じゃあないかってさ」
そうして話を交わす様子はとても自然体だ。
ジョゾウ達ともまるで友達の様に接していて、陽気さが滲み出て来るかのよう。
でもその中に優しさの様な雰囲気は感じられない。
こう会話していながらも、まるで一人で語っているかの様に。
勇を語る時はもはやジョゾウ達さえ見ていなかったから。
そんな語りもふと止まり、景色の彼方より覗く夜景に思わず誘われて。
僅かな明かりを受けて灯る顔に、片笑窪の上がった微笑みがほんのり浮かぶ。
獅堂が何を思っているかはジョゾウ達にはわからない。
彼等もまだ人間に対しての知見は乏しいから。
ただそれでも、形のある労いを前にすれば気持ちも伝わるものだ。
「さて、お堅い話はここまでとしよう。 ジョゾウ他四人の活躍を賞してこれを贈るよ」
そんな中で獅堂が足元に添えられていた籠を開き、内包物をそっと取り上げる。
すると出て来たのは、鞘に納められた太刃短刀で。
しかして小さな珠が輝き、灯を受けて柄元をも煌かせているという。
「魔剣【テオグル】だ。 収蔵品だったみたいだけどね、使わないよりは君に渡した方がマシだろう。 有効に使い、これからもこの里の為に尽くしてくれたまえよ」
「おぉなんと!! ありがたき幸せ!!」
そんな魔剣がとうとうジョゾウの手に。
獅堂自らが目前に掲げられた両手へと置き捧ぐ事によって。
これにはジョゾウも仲間達も目を輝かせずにはいられない。
やはり魔剣は彼等にとっても垂涎の逸品である事に変わりはない様だ。
そうしてジョゾウ達が一歩引いては再び跪く。
獅堂からの続くであろう言葉を待つかの様に。
とはいえ、どうやら獅堂自身もこれで用は済んだらしいが。
「それじゃここまでで。 皆ゆっくり休むといいよ、暫くはオフとしよう」
そこには手指を払うようにして見せつけ退出を促す姿が。
語りたい事も語れたから満足だったのだろうか。
もっとも、深夜だから軽く済ませたいという想いもあったからかもしれないけれど。
「ではこれにて御免」
もちろんそれはジョゾウ達も同じで。
賜った魔剣を手に、皆が揃って去っていく。
ようやく終わったか、という表情で疲労を隠せないままに。
ただそれでも獅堂自身は去る事無く。
立ったまま椅子の背もたれに腕を掛け、またしても夜空へ視線を向けていて。
「ふふ、これで御膳立ては済んだ。 後は暫く様子を見る事にしよう」
再びその顔に微笑みが浮かぶ。
石の灯さえ消し、照らすのが微かな月明りだけとなったその中で。
でもそうして滲む感情はどこか―――冷淡だ。
「魔者をも惹いて、遂には空も飛ぶ。 いいね、最高じゃないか。 それこそまさに僕の願う主人公像そのものなのだから。 是非とも勇君にはそうして成長し続けて貰いたいものだね。 どうなるか楽しみでしょうがないよ、フフッ」
放つ言葉はまるで勇を褒め称える様で、待ち遠しいという雰囲気すら醸し出している。
それでも冷淡に見えるのは、その言葉の先に思惑が覗き見えているからだろうか。
彼にしか見えない思惑が。
しかしそんな思想も思惑も、語らない以上は誰にも知る余地はない。
例え彼に付き従うジョゾウ達であろうとも例外無く。
だからこそ今は、その姿と共に闇へと埋めていくのみ。
誰にも知られないまま、悟られないままに。
ジョゾウが仲間達と別れ、石をくり貫いて造られた寝床へと帰る。
しかし床に就く事も無く、今はただ屋内のバルコニーより空を見上げていて。
今日起きた戦いに想いを馳せさせる姿がここに。
「あの時、ロゴウは確かに自分の意思で魔剣を離した。 それは間違い無い」
それは仲間の死よりも、ロゴウの事で頭が一杯だったから。
ロゴウの一連の不可解な行動はジョゾウを悩ませる程に複雑だった。
故に、あの戦いがまるで曖昧な夢幻の出来事なのではないかとさえ思えてならなくて。
それだけ理由もきっかけも残らない、無意味と言える戦いだったからこそ。
「其方の行動と言動、余りにも不可解が過ぎたぞ。 何故なのだ、教えてくれ我が恩師よ……ッ!!」
けれど空に幾ら希おうと答えは返ってこない。
思い出の中にあるロゴウの表情からも、何も導かれはしない。
訪れるのは不快な頭痛だけで、頭が回って遂には何もわからなくなる。
今こうして自分の家に居る事さえもが夢と思えてしまう程に。
だからジョゾウはもう寝る事にした。
自分には明日からにも考える時間があるからと。
それに今が夢なのならば、起きればきっと現実が待っているだろうからと。
静かなる夜が、鳥達に潔い眠気をもたらしてくれる。
冷たく厳しい空気が包んでいても、今の彼等には心地良くさえ感じられたから。
戦いで火照り疲れた身体は、それ程までに昂っていたのだろう。
易々と冷めやらぬ程までに、命と想いが迸った戦いだったからこそ。
だからこそ今は体をゆっくりと休めよう。
逝った仲間達の想いを、その心へと馴染ませる為に―――
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