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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」
~どの方がビンゴへの道を切り開くのか~!!~
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始まりはとても粛々としたものだった。
なにせビンゴ機は掌で持てるくらいに小さいので。
それをこの巨大な会場で回すシュールさといったらもう。
謎のマスクマンの異様な盛り上げが無ければきっと寒気さえ催しただろう。
おかげさまで、用意した勇はなお赤面を両手で覆い続ける事に。
「デレッデェ~~~ン!! さぁ最初の番号が出ましたァ!! 輝かしいスタートをキメたのはコイツだッ!! 七番ッ!! ラッキーセブンの七番来ましたァーーーッ!!」
その最中、遂に最初の番号球が排出。
たちまち叫びと共に、背後のスクリーンにでかでかと〝7〟の数字が浮かび上がる。
「びんごー!」
「おーっとビンゴでたぁ~って違ぁう!! 違うよ子供達!! 一列が並んだらビンゴだからね~?」
「「「ハハハ!!」」」
すると早速お茶目な一声が飛び出して。
仕掛け人はアルライの子供の一人だ。
もちろんウケ狙いなどではない。
どうやら初めてだから間違えてしまったらしい。
でもその天然の無邪気さ故に、周囲からの大笑いが上がって止まらない。
子供達も自分達で大ウケで、なんだかとっても楽しそう。
「さぁ、ビンゴはまだ始まったばかり! どんどん行きましょう、当たりが来るまでッ!! 次の番号はこちらッ!! デデン、六一番~!!」
という感じで番号が続いて表示される。
それに合わせ、シートに穴を開けて喜ぶ者がちらほらと。
こういったクジ的な遊びもまたビンゴの醍醐味と言えるだろう。
「フッ、ビンゴッスね」
「二番煎じだからつまんねーぞカプロ」
「ウググ……シン、ツッコミ厳しいッス」
その片隅では、こうして一役人気となった子供達を羨む者も。
しかし所詮は浅知恵、天然の面白さには到底及ばない。
なお、そんなカプロのビンゴシートは六個目の番号が来るまで一つも開かなかった。
「さぁどんどん番号が解放されていきます! そろそろリーチの人も居るのではないでしょうか? おっとぉ、どうやらもう二人くらいはリーチの模様。果たしてどの方がビンゴへの道を切り開くのか~!!」
その間にもリーチが二人に。
福留の知り合いな某企業社長と、瀬玲の母親だ。
揃って興味を持たなさそうな雰囲気だけど、意外と面白がっている模様。
しかし、ビンゴとは常に何が起きるかわからない。
早々のリーチだからと言って運が続くとは限らないのだから。
だからか、その後が怖かった。
どちらも上手く開かない、来て欲しい番号が来ない。
ビンゴ機がくるりと回る度に祈っても、続かない。
お陰で次々と後続リーチ者が現れ、ビンゴが出ないまま乱戦へ突入だ。
リーチ者同士で目を輝かせ合い、一抜ける者を牽制し合う。
こうなると皆さん中々の現金具合である。
だが、その中で遂に均衡を破る者が現れる事に。
「続いて出たのは二三番ッ!! さぁこれでどうだぁー!!」
「び、びんごー!! ホントにびんごだよー!!」
「おおッ!? 遂に来たァァァ!! しかも当てたのはなんと、最初にもビンゴを当ててしまったラッキーボーイだったァーーーッ!!」
そう、なんと先のアルライの子が見事にブチ当てたのだ。
最初の宣言通り、天然を現実のものとした事によって。
ちなみにこの子、かつて勇と出会った時にカプロをボロクソに言いまくった子で。
友をこき下ろして得た運は今ここで華開く事となったらしい。
正直者には福来るとはよく言ったものだ。
「さぁそれではこちらへ。お名前を教えて貰っていいかな~?」
「プカ!!」
「じゃあプカ君、早速このボックスからどれか一つ、ボールを選んで取ってくれ。いいかい、一つだけだからね?」
「はーい!」
ただここまで来たら、ちゃんと正直者らしく振舞ってくれる。
うっかり二個三個取り出す様なお茶目はしないでくれた様だ。
「はいっ出ました!! 記号は〝Z〟!! この記号のプレゼントはと言えばぁ……!」
すると間も無く、背後のスクリーンに色んな商品写真が連写され始めて。
それもどんどんゆっくりとなっていき、遂に当選商品を映し出す。
そこに映し出されたのは―――
【甘味と共に愉しむ秘湯の素30選 詰め合わせパック】。
沢山の和菓子と温泉の素が一挙に詰まったバラエティパックだ。
……ただ、子供が嗜むには少し早いか。
甘味の方に限っては喜ぶとは思うが。
いいとこ里へのお土産として最適と言った所だろう。
「やったー!!」
「プカすごぉい!」
「みせてみせてー!」
でも子供達にはそんな理屈など関係無いらしい。
一番最初に貰った、ただそれだけで充分だったから。
「甘いお菓子と、世界の温泉が楽しめる入浴剤だ! お菓子は食べていいけど、入浴剤はお風呂に入れて使うんだぞ? 決して飲んじゃダメだからね?」
「「「はぁい!!」」」
それに使い道のわからない家電が当たるよりはずっといい。
子供達にとってはこれくらい軽い物でも何より珍しいのだから。
もちろん、ビンゴが一人出ただけでは止まらない。
全員が揃うまでこのビンゴは終わらないのだ。
「さぁ次に行きましょう!! 次の番号は~……三五番ッ!!」
しかし一人出てしまえば、後は次から次へと当選者はやってくるもの。
となると早速、二人目、三人目とビンゴを叫ぶ者が現れ始める。
けれど、高額品がなかなか当たらない。
良い所が来たのは四番目、あずーの【フェイシャルリフトアップマシン】。
顔全体に巻いて表情筋を鍛えるというベルト式美顔器の一種だ。
おまけにオプション製品も付いて中々の豪勢っぷり。
なので女の子だから結構合ってるのでは――と思いきや。
「これ使うのめんどくさそー!」
あまり好評では無かった模様。
タダで貰えるのに、実に贅沢極まりない小娘である。
なおその母親が頭を抱えてる辺り、きっとこれを狙っていたに違いない。
そんなこんなで賞品が一つまた一つと消えて行った訳だが。
ここで遂に高額商品をブチ当てる者が登場する。
「遂に!! 遂に来ました!! 最新大型テレビ取得者が現れましたァーーーッ!! さぁエウリィさん、今の気持ちをどうぞ!!」
「あ、えっと……嬉しいです、ありがとうございます」
なんと大型テレビは微笑む王女の懐へ。
当人は少し困惑気味だけど、拍手喝采に応えようと懸命だ。
確かに、フェノーダラ城には電気も電波も通っているけれども。
放送番組が日本語一辺倒なので、勉強以外では使わなさそう。
だとすれば宝の持ち腐れ感は否めない。
お陰で勇がフロアの端でまたしても頭を抱える事に。
折角色々と賞品を用意したのに喜んでくれる人になかなか当たってくれない。
これもビンゴの醍醐味だけど、用意した者としてはとても複雑である。
そんな賞品代わりのパネル板を手に、エウリィがそっと勇の肩を叩く。
どうやら勇の気持ちを察して励ましに来てくれたらしい。
「落ち込まないでください勇様。わたくし、どれでも嬉しい事に変わりはありませんから」
「そっか。エウリィさんはどれが一番欲しかった?」
「そうですね、わたくしはあずー様の手に入れた機械が気になっておりまして」
そんな彼女の狙いも美顔器。
さすが美少女代表のお姫様、美容と健康にはとても拘っている。
となるとあの賞品、なかなかに人気だった模様。
これには勇も「後で個人的に買ってあげようかな」なんて思ってやまない。
その間にも次々に当選者達が現れて賞品をかっさらっていく。
ドラム式洗濯機は自衛隊員の一人に。
高級マットレスは心輝の母親に。
最新タブレットはカプロに。
シャトーブリアンは某社長さんに。
温泉旅行券はお医者さんに。
こうも渡っていくと意外と誰しもが喜びを見せるもの。
やっぱり良い物が当たると何であろうと嬉しいものだ。
元々選りすぐった賞品ばかりなだけに、ハズレは殆ど無い。
最後の最後でマスクマンもが球を引き、【人をアカンくするクッション】を当てて終了。
これで無事、招待客全員に景品が渡る事となる。
だがしかし。
このプレゼント争奪戦は決してこれだけでは終わらなかった。
いや、むしろこれからが本番と言えよう。
クリスマスプレゼントと言えばそう、あのイベントが待ち構えているのだから。
故に招待客達は戦慄するだろう。
更なるチャンスが訪れた、その瞬間を目の当たりとする事によって。
なにせビンゴ機は掌で持てるくらいに小さいので。
それをこの巨大な会場で回すシュールさといったらもう。
謎のマスクマンの異様な盛り上げが無ければきっと寒気さえ催しただろう。
おかげさまで、用意した勇はなお赤面を両手で覆い続ける事に。
「デレッデェ~~~ン!! さぁ最初の番号が出ましたァ!! 輝かしいスタートをキメたのはコイツだッ!! 七番ッ!! ラッキーセブンの七番来ましたァーーーッ!!」
その最中、遂に最初の番号球が排出。
たちまち叫びと共に、背後のスクリーンにでかでかと〝7〟の数字が浮かび上がる。
「びんごー!」
「おーっとビンゴでたぁ~って違ぁう!! 違うよ子供達!! 一列が並んだらビンゴだからね~?」
「「「ハハハ!!」」」
すると早速お茶目な一声が飛び出して。
仕掛け人はアルライの子供の一人だ。
もちろんウケ狙いなどではない。
どうやら初めてだから間違えてしまったらしい。
でもその天然の無邪気さ故に、周囲からの大笑いが上がって止まらない。
子供達も自分達で大ウケで、なんだかとっても楽しそう。
「さぁ、ビンゴはまだ始まったばかり! どんどん行きましょう、当たりが来るまでッ!! 次の番号はこちらッ!! デデン、六一番~!!」
という感じで番号が続いて表示される。
それに合わせ、シートに穴を開けて喜ぶ者がちらほらと。
こういったクジ的な遊びもまたビンゴの醍醐味と言えるだろう。
「フッ、ビンゴッスね」
「二番煎じだからつまんねーぞカプロ」
「ウググ……シン、ツッコミ厳しいッス」
その片隅では、こうして一役人気となった子供達を羨む者も。
しかし所詮は浅知恵、天然の面白さには到底及ばない。
なお、そんなカプロのビンゴシートは六個目の番号が来るまで一つも開かなかった。
「さぁどんどん番号が解放されていきます! そろそろリーチの人も居るのではないでしょうか? おっとぉ、どうやらもう二人くらいはリーチの模様。果たしてどの方がビンゴへの道を切り開くのか~!!」
その間にもリーチが二人に。
福留の知り合いな某企業社長と、瀬玲の母親だ。
揃って興味を持たなさそうな雰囲気だけど、意外と面白がっている模様。
しかし、ビンゴとは常に何が起きるかわからない。
早々のリーチだからと言って運が続くとは限らないのだから。
だからか、その後が怖かった。
どちらも上手く開かない、来て欲しい番号が来ない。
ビンゴ機がくるりと回る度に祈っても、続かない。
お陰で次々と後続リーチ者が現れ、ビンゴが出ないまま乱戦へ突入だ。
リーチ者同士で目を輝かせ合い、一抜ける者を牽制し合う。
こうなると皆さん中々の現金具合である。
だが、その中で遂に均衡を破る者が現れる事に。
「続いて出たのは二三番ッ!! さぁこれでどうだぁー!!」
「び、びんごー!! ホントにびんごだよー!!」
「おおッ!? 遂に来たァァァ!! しかも当てたのはなんと、最初にもビンゴを当ててしまったラッキーボーイだったァーーーッ!!」
そう、なんと先のアルライの子が見事にブチ当てたのだ。
最初の宣言通り、天然を現実のものとした事によって。
ちなみにこの子、かつて勇と出会った時にカプロをボロクソに言いまくった子で。
友をこき下ろして得た運は今ここで華開く事となったらしい。
正直者には福来るとはよく言ったものだ。
「さぁそれではこちらへ。お名前を教えて貰っていいかな~?」
「プカ!!」
「じゃあプカ君、早速このボックスからどれか一つ、ボールを選んで取ってくれ。いいかい、一つだけだからね?」
「はーい!」
ただここまで来たら、ちゃんと正直者らしく振舞ってくれる。
うっかり二個三個取り出す様なお茶目はしないでくれた様だ。
「はいっ出ました!! 記号は〝Z〟!! この記号のプレゼントはと言えばぁ……!」
すると間も無く、背後のスクリーンに色んな商品写真が連写され始めて。
それもどんどんゆっくりとなっていき、遂に当選商品を映し出す。
そこに映し出されたのは―――
【甘味と共に愉しむ秘湯の素30選 詰め合わせパック】。
沢山の和菓子と温泉の素が一挙に詰まったバラエティパックだ。
……ただ、子供が嗜むには少し早いか。
甘味の方に限っては喜ぶとは思うが。
いいとこ里へのお土産として最適と言った所だろう。
「やったー!!」
「プカすごぉい!」
「みせてみせてー!」
でも子供達にはそんな理屈など関係無いらしい。
一番最初に貰った、ただそれだけで充分だったから。
「甘いお菓子と、世界の温泉が楽しめる入浴剤だ! お菓子は食べていいけど、入浴剤はお風呂に入れて使うんだぞ? 決して飲んじゃダメだからね?」
「「「はぁい!!」」」
それに使い道のわからない家電が当たるよりはずっといい。
子供達にとってはこれくらい軽い物でも何より珍しいのだから。
もちろん、ビンゴが一人出ただけでは止まらない。
全員が揃うまでこのビンゴは終わらないのだ。
「さぁ次に行きましょう!! 次の番号は~……三五番ッ!!」
しかし一人出てしまえば、後は次から次へと当選者はやってくるもの。
となると早速、二人目、三人目とビンゴを叫ぶ者が現れ始める。
けれど、高額品がなかなか当たらない。
良い所が来たのは四番目、あずーの【フェイシャルリフトアップマシン】。
顔全体に巻いて表情筋を鍛えるというベルト式美顔器の一種だ。
おまけにオプション製品も付いて中々の豪勢っぷり。
なので女の子だから結構合ってるのでは――と思いきや。
「これ使うのめんどくさそー!」
あまり好評では無かった模様。
タダで貰えるのに、実に贅沢極まりない小娘である。
なおその母親が頭を抱えてる辺り、きっとこれを狙っていたに違いない。
そんなこんなで賞品が一つまた一つと消えて行った訳だが。
ここで遂に高額商品をブチ当てる者が登場する。
「遂に!! 遂に来ました!! 最新大型テレビ取得者が現れましたァーーーッ!! さぁエウリィさん、今の気持ちをどうぞ!!」
「あ、えっと……嬉しいです、ありがとうございます」
なんと大型テレビは微笑む王女の懐へ。
当人は少し困惑気味だけど、拍手喝采に応えようと懸命だ。
確かに、フェノーダラ城には電気も電波も通っているけれども。
放送番組が日本語一辺倒なので、勉強以外では使わなさそう。
だとすれば宝の持ち腐れ感は否めない。
お陰で勇がフロアの端でまたしても頭を抱える事に。
折角色々と賞品を用意したのに喜んでくれる人になかなか当たってくれない。
これもビンゴの醍醐味だけど、用意した者としてはとても複雑である。
そんな賞品代わりのパネル板を手に、エウリィがそっと勇の肩を叩く。
どうやら勇の気持ちを察して励ましに来てくれたらしい。
「落ち込まないでください勇様。わたくし、どれでも嬉しい事に変わりはありませんから」
「そっか。エウリィさんはどれが一番欲しかった?」
「そうですね、わたくしはあずー様の手に入れた機械が気になっておりまして」
そんな彼女の狙いも美顔器。
さすが美少女代表のお姫様、美容と健康にはとても拘っている。
となるとあの賞品、なかなかに人気だった模様。
これには勇も「後で個人的に買ってあげようかな」なんて思ってやまない。
その間にも次々に当選者達が現れて賞品をかっさらっていく。
ドラム式洗濯機は自衛隊員の一人に。
高級マットレスは心輝の母親に。
最新タブレットはカプロに。
シャトーブリアンは某社長さんに。
温泉旅行券はお医者さんに。
こうも渡っていくと意外と誰しもが喜びを見せるもの。
やっぱり良い物が当たると何であろうと嬉しいものだ。
元々選りすぐった賞品ばかりなだけに、ハズレは殆ど無い。
最後の最後でマスクマンもが球を引き、【人をアカンくするクッション】を当てて終了。
これで無事、招待客全員に景品が渡る事となる。
だがしかし。
このプレゼント争奪戦は決してこれだけでは終わらなかった。
いや、むしろこれからが本番と言えよう。
クリスマスプレゼントと言えばそう、あのイベントが待ち構えているのだから。
故に招待客達は戦慄するだろう。
更なるチャンスが訪れた、その瞬間を目の当たりとする事によって。
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