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第十二節「折れた翼 友の想い 希望の片翼」
~朝日、意外なる者を照らす~
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本部で説明を受けた日から二日後、早朝。
勇達は福留に連れられ、神奈川の横須賀海軍基地へと訪れていた。
海の先に向かう船へと乗り込む為に。
しかし勇達、実は船に乗るのが初めて。
なので今回搭乗する事となる大型護衛艦を前に興奮を隠しきれない。
そんな浮ついた気持ちで眺めつつ乗船を果たし、早速船内へ――
そう思った矢先、ふと勇の視線にとある人物の影が映り込む事となる。
「え、あれって……!?」
ちらりと見えたのは、大きな背格好。
それでいて艦首に堂々と立ち、腕を組んで海の向こうを眺めていて。
その自信に満ち溢れた姿は、未だ低い朝日を受けて赤々と瞬いていた。
白く柔らかな体毛を靡かせながらに。
それに気付き、思わず勇が乗船ルートを外れて人影の傍へ。
予想だにもしていなかった者の存在感に惹かれてならなかったらしい。
「もしかして、アージさん?」
ああ言って頑なだったが、来てくれたのか。
そう思ってならなくて、期待がその名を囁かせる。
なんだかんだで義理人情には強い人だからと、可能性を拭えなくて。
「残念だが、兄者は今頃本部でおねんねだ」
「えッ!?」
しかしどうやら人情に厚いのは兄の方だけではなかったらしい。
そう、ここに居るのは弟マヴォの方だったのだ。
勇に気付いて振り向けば、ニヤリとした笑みを牙と共に見せつけていて。
「兄者が相変わらずお堅過ぎるからよ、内緒で代わりに来ちまったぜ。あれだけの事が起きてて動かねぇのはどうにも納得がいかねぇしな」
きっとマヴォも話を聞いている内に居ても立っても居られなくなったのだろう。
それで兄アージがあんな決定を下せば納得出来る訳も無い。
確かにわからない事だらけの話だが、それ以上に被害は甚大で。
だから鎮圧の為の力添えくらいならしたって問題にはならないと踏んだ。
人間側と魔者側、どちらの為でもなく勇達の為にならと。
「で、でもお腹の傷はもう大丈夫なんですか?」
「当たり前よぉ! むしろ兄者が心配性過ぎんだ。ならこうして実戦で証明して見せるってな。むしろ兄者以外と久しく戦えてねぇからセンス鈍っちまう方が怖いぜ」
こうやって自由に考えられるのがマヴォの強みだ。
対のアージが武人肌かつ堅い性格とあって、バランスが取れている様にさえ見える。
おまけに戦力としては申し分無い。
アージより劣るとはいえ、その能力は引けを取らない程に高いから。
魔剣無しの模擬戦で、勇を負かせられる程には。
「えぇ、そんな訳であの後マヴォさんからこっそりと参戦の打診がありましてね。ですのでアージさんには内緒で来て頂きました」
「感謝してるぜ、福留殿にはよ。あの兄者から少しでも離れられたからな。そもそも縛り過ぎんだ、息が詰まって仕方がねぇ。拘ってんのがどっちかわからねぇくらいに。だからきっと起きたら本部で咆えてるだろうぜ。『あいつめ、また勝手な事をしよって~』ってな」
「はは、確かに。アージさんなら言いそうだ」
そんなマヴォが参戦したなら百人力だ。
勇も心輝達のサポートに集中する事が出来る。
その上でちゃなとの三点突破が叶えば、あれだけの数相手でも優位になれるだろう。
これでアージもが加わってくれれば言う事は無かったのだけれども。
「さぁお二人とも、これから詳細な打ち合わせをしなければなりません。ですので付いてきてください」
でも今は無い物ねだりをしている暇など無い。
それに一度出航すれば増援は見込めないから。
今度の相手は島の上、そう簡単には近づけない場所なのだから。
ではその島にどうやって近づくのだろうか。
さすがに海の上では勇達でも戦えない。
そんな疑問があって不安は拭えずにいて。
だけどどうやら、福留はその辺りに考えがあるらしい。
だからか微笑む様子は相変わらずで。
おかげで勇達も不安に駆られず済んでいる様だ。
それでいざ、作戦打合せの場へと訪れてみれば。
「うおっ、なんだこれ! かっけぇ!!」
早速、福留秘策の素が姿を現す事に。
現れた物体を前にして、心輝やマヴォが思わず眼を輝かせる。
それは吊り下げられたボートの様な物だった。
まるで競艇用の胴短な高速艇を大きくしたかの様な。
三角を描いて抵抗を失くし、より速く走れる様にしたものである。
「今回は海上からの進攻となるので、こちらを使って頂きます。通常艦艇では残念ながら近づく事も叶いませんので」
おまけに戦闘員組の全員が乗れる様になっているらしい。
幾つもの小さな座席と取っ手が付き、操舵ペダルまでもが備わっていて。
その上で六人ギリギリのサイズへと絞り込まれている。
で、そのボートを使う理由としては福留が言った通り。
今乗る艦では島への接近が困難だから。
というのも、魔者が囲っている時点で物理的に不可能なのだとか。
彼等が浅瀬的な役割を担っている為である。
障壁が物理特性を殺してしまうので、例え艦艇で突撃しても逆に負けてしまう。
まさに岩礁の如く船底が抉られ、沈没する事となるだろう。
そう試算された結果、本艦は遠方待機になったという。
しかし勇達の乗るボートはその対策がしっかり施されているそうな。
「それでこちらの出番です。これには周囲に命力を張り巡らせられるよう、命力伝導率の高い素材を船底及び船首に這わせております。【ゴルリオヌ鉄鋼】をふんだんに使ってねぇ」
「だから船底に緑のラインがあるんだな。ただのデザインかと思ってた」
「おいおい、【ゴルリオヌ】をこんな風に使うなんて聞いた事ねぇぞ……」
噂の異世界素材を利用し、強度と命力との相性を格段に高めていて。
多少重いが、コンセプトとしては問題無いレベルなのだそう。
こんな仕様を思い付いたのはカプロからの情報があったからこそ。
命力さえあれば、本物の魔剣で無くても障壁を無効化出来ると。
恐らくボートが命力を帯びる事で一時的な魔剣に変わるのだろう。
「勇君には舵を切ってもらい、マヴォさんには命力伝達を。そうする事で一直線に島まで突破出来ると思います」
更には船首全域を覆う様に大型のシールドプレートが備わっている。
防弾にもなる強化樹脂を使用した特別製の防御装甲だ。
これで海上、海中も眺める事が可能となっている。
元々は普通のボートだったらしいが、ここまで改造されるともう原型が無い。
しかもたった二日間の間に仕上げたというのだから驚きだ。
でもここで心輝が気付く事となる。
このボートには一番大事な物が足りていないという事に。
「でもよ、これエンジンが無ぇじゃん」
そう、動力が無いのだ。
本来あるべきものが、少なくとも船尾には。
搭乗席のすぐ裏はもう船尾で、エンジンなどを積む余裕は無い。
強いて上げるなら、何か妙な台座が床から伸びているだけで。
「えぇ、動力はありません。これから乗るので。ちゃなさんという動力がねぇ」
「「「ええーっ!?」」」
だがそれも福留の想定内に過ぎない。
その台座こそがボート動力源の秘密を示していたのだから。
どうやら考えられた作戦は割ととんでもない様だ。
これにはちゃなも思わず「はぇ~……」と惚けずにはいられなかった。
勇達は福留に連れられ、神奈川の横須賀海軍基地へと訪れていた。
海の先に向かう船へと乗り込む為に。
しかし勇達、実は船に乗るのが初めて。
なので今回搭乗する事となる大型護衛艦を前に興奮を隠しきれない。
そんな浮ついた気持ちで眺めつつ乗船を果たし、早速船内へ――
そう思った矢先、ふと勇の視線にとある人物の影が映り込む事となる。
「え、あれって……!?」
ちらりと見えたのは、大きな背格好。
それでいて艦首に堂々と立ち、腕を組んで海の向こうを眺めていて。
その自信に満ち溢れた姿は、未だ低い朝日を受けて赤々と瞬いていた。
白く柔らかな体毛を靡かせながらに。
それに気付き、思わず勇が乗船ルートを外れて人影の傍へ。
予想だにもしていなかった者の存在感に惹かれてならなかったらしい。
「もしかして、アージさん?」
ああ言って頑なだったが、来てくれたのか。
そう思ってならなくて、期待がその名を囁かせる。
なんだかんだで義理人情には強い人だからと、可能性を拭えなくて。
「残念だが、兄者は今頃本部でおねんねだ」
「えッ!?」
しかしどうやら人情に厚いのは兄の方だけではなかったらしい。
そう、ここに居るのは弟マヴォの方だったのだ。
勇に気付いて振り向けば、ニヤリとした笑みを牙と共に見せつけていて。
「兄者が相変わらずお堅過ぎるからよ、内緒で代わりに来ちまったぜ。あれだけの事が起きてて動かねぇのはどうにも納得がいかねぇしな」
きっとマヴォも話を聞いている内に居ても立っても居られなくなったのだろう。
それで兄アージがあんな決定を下せば納得出来る訳も無い。
確かにわからない事だらけの話だが、それ以上に被害は甚大で。
だから鎮圧の為の力添えくらいならしたって問題にはならないと踏んだ。
人間側と魔者側、どちらの為でもなく勇達の為にならと。
「で、でもお腹の傷はもう大丈夫なんですか?」
「当たり前よぉ! むしろ兄者が心配性過ぎんだ。ならこうして実戦で証明して見せるってな。むしろ兄者以外と久しく戦えてねぇからセンス鈍っちまう方が怖いぜ」
こうやって自由に考えられるのがマヴォの強みだ。
対のアージが武人肌かつ堅い性格とあって、バランスが取れている様にさえ見える。
おまけに戦力としては申し分無い。
アージより劣るとはいえ、その能力は引けを取らない程に高いから。
魔剣無しの模擬戦で、勇を負かせられる程には。
「えぇ、そんな訳であの後マヴォさんからこっそりと参戦の打診がありましてね。ですのでアージさんには内緒で来て頂きました」
「感謝してるぜ、福留殿にはよ。あの兄者から少しでも離れられたからな。そもそも縛り過ぎんだ、息が詰まって仕方がねぇ。拘ってんのがどっちかわからねぇくらいに。だからきっと起きたら本部で咆えてるだろうぜ。『あいつめ、また勝手な事をしよって~』ってな」
「はは、確かに。アージさんなら言いそうだ」
そんなマヴォが参戦したなら百人力だ。
勇も心輝達のサポートに集中する事が出来る。
その上でちゃなとの三点突破が叶えば、あれだけの数相手でも優位になれるだろう。
これでアージもが加わってくれれば言う事は無かったのだけれども。
「さぁお二人とも、これから詳細な打ち合わせをしなければなりません。ですので付いてきてください」
でも今は無い物ねだりをしている暇など無い。
それに一度出航すれば増援は見込めないから。
今度の相手は島の上、そう簡単には近づけない場所なのだから。
ではその島にどうやって近づくのだろうか。
さすがに海の上では勇達でも戦えない。
そんな疑問があって不安は拭えずにいて。
だけどどうやら、福留はその辺りに考えがあるらしい。
だからか微笑む様子は相変わらずで。
おかげで勇達も不安に駆られず済んでいる様だ。
それでいざ、作戦打合せの場へと訪れてみれば。
「うおっ、なんだこれ! かっけぇ!!」
早速、福留秘策の素が姿を現す事に。
現れた物体を前にして、心輝やマヴォが思わず眼を輝かせる。
それは吊り下げられたボートの様な物だった。
まるで競艇用の胴短な高速艇を大きくしたかの様な。
三角を描いて抵抗を失くし、より速く走れる様にしたものである。
「今回は海上からの進攻となるので、こちらを使って頂きます。通常艦艇では残念ながら近づく事も叶いませんので」
おまけに戦闘員組の全員が乗れる様になっているらしい。
幾つもの小さな座席と取っ手が付き、操舵ペダルまでもが備わっていて。
その上で六人ギリギリのサイズへと絞り込まれている。
で、そのボートを使う理由としては福留が言った通り。
今乗る艦では島への接近が困難だから。
というのも、魔者が囲っている時点で物理的に不可能なのだとか。
彼等が浅瀬的な役割を担っている為である。
障壁が物理特性を殺してしまうので、例え艦艇で突撃しても逆に負けてしまう。
まさに岩礁の如く船底が抉られ、沈没する事となるだろう。
そう試算された結果、本艦は遠方待機になったという。
しかし勇達の乗るボートはその対策がしっかり施されているそうな。
「それでこちらの出番です。これには周囲に命力を張り巡らせられるよう、命力伝導率の高い素材を船底及び船首に這わせております。【ゴルリオヌ鉄鋼】をふんだんに使ってねぇ」
「だから船底に緑のラインがあるんだな。ただのデザインかと思ってた」
「おいおい、【ゴルリオヌ】をこんな風に使うなんて聞いた事ねぇぞ……」
噂の異世界素材を利用し、強度と命力との相性を格段に高めていて。
多少重いが、コンセプトとしては問題無いレベルなのだそう。
こんな仕様を思い付いたのはカプロからの情報があったからこそ。
命力さえあれば、本物の魔剣で無くても障壁を無効化出来ると。
恐らくボートが命力を帯びる事で一時的な魔剣に変わるのだろう。
「勇君には舵を切ってもらい、マヴォさんには命力伝達を。そうする事で一直線に島まで突破出来ると思います」
更には船首全域を覆う様に大型のシールドプレートが備わっている。
防弾にもなる強化樹脂を使用した特別製の防御装甲だ。
これで海上、海中も眺める事が可能となっている。
元々は普通のボートだったらしいが、ここまで改造されるともう原型が無い。
しかもたった二日間の間に仕上げたというのだから驚きだ。
でもここで心輝が気付く事となる。
このボートには一番大事な物が足りていないという事に。
「でもよ、これエンジンが無ぇじゃん」
そう、動力が無いのだ。
本来あるべきものが、少なくとも船尾には。
搭乗席のすぐ裏はもう船尾で、エンジンなどを積む余裕は無い。
強いて上げるなら、何か妙な台座が床から伸びているだけで。
「えぇ、動力はありません。これから乗るので。ちゃなさんという動力がねぇ」
「「「ええーっ!?」」」
だがそれも福留の想定内に過ぎない。
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