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第三章
第111話 帝国の所業と思惑
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今までの戦いにおいてはれっきとした理由があったものだ。
侵略計画の阻止だったり、圧政や虐殺への報復だったり。
いずれも信頼のおける情報から動くべきだと判断してきた。
けど今回はまだその信頼性が足りない。
世論的にレジスタンスが正しいかどうかイマイチ判断出来ないんだ。
それにパパム爺という存在の信用度も低いからな。
「まず帝国の所業としましては、外面的なインフラにばかり投資を行い、国民に対してロクな支援を行っていませぬ。お陰で民は困窮し、いつまでも発展の道が見えないといった状況に陥っておられまする」
なんたってこの爺さんの語る事は一辺倒なんだ。
自分達の理屈をこうやって押し付けようとしてきてな。
相手側の悪い所・欠点だけを抜き出して印象を操作しようとしてくるのさ。
俺達にはお見通しだって事にも気付かないままにね。
言っておくが、街単位での発展支援をする国などこの世界には存在しない。
街とはあくまで街自体が運営しているもの。
国はその街同士を纏める存在に過ぎず、基本的には干渉しないんだ。
下手に支援すれば差別を生み、軋轢へと発展しかねないから。
その辺りはノオンが詳しいからな、少し前にそう教えてもらったよ。
そこはさすがの宰相の娘だけあって、内情までかなーり詳しくね。
つまりパパム爺は民の困窮を演出しているだけに過ぎない。
本当に困窮しているなら浮浪者がうろついているだろうしな。
それこそ赤空界の様に食う事さえままならない状況に陥っているだろうさ。
でもそれさえ無いから説得力が皆無なんだ。
「更には『帝を信ずるものは救われる』と宣って民衆から争う心を奪い、反対意見を押し殺してきたのですじゃ。お陰で今や反抗しているのは我等レジスタンスのみ!」
「良い事じゃないかぁ。国が宗教で言う所の神、つまり共生の象徴になっているという事でしょ? それで皆が守っているのなら、秩序が保たれているって事じゃないかい?」
「ぬぐぐ……」
だからこうして簡単に覆せる。
マオの知恵も半端じゃないぞ、元賢者なだけに。
そう、彼女の言う通り帝国は国らしい事をしっかりやってのけているんだ。
人心を纏め、秩序を守るという役目を果たしているのさ。
その観点から見れば、むしろレジスタンスの方が悪とさえ思えてくる。
まるで過去の栄光に囚われて今が見えていない、とな。
「ですがじゃ、そんな帝国も裏ではとんでもない悪行を行っとるのです……! なんと勝手に金を持ち出した者は――」
「金の流出を防ぐ徹底管理で勝手に持ち出した人は処罰持ち出せるのは製品登録された彫金製品のみしかも輸出後に再加工されない様に各製品には自動分解魔導式が組み込まれて迂闊に細工でーきなーいー」
「ま、金はこの国のアイデンティティだもんな。保護しなきゃあっという間に落ち目になっちまう。そう考えたら妥当だと思うぜー?」
「ウウッ……」
金の保護だって、あながちやり過ぎとは言えない。
少しでも許してしまえば今頃、黄空界は岩肌だけの国になっていただろうし。
金以外に何も無いこの国だからこそ、必要な徹底さだと言えるだろう。
そもそもこの保護政策はグゥマ光王国が存在していた時からもあったハズ。
それにイチャモン付けるのはいささか愚かではなかろうか。
「あと貴方~♪ とても胡散臭いですゥ~~~♪」
「ブワワッ!」
そしてニペル、それはさすがにストレート過ぎるだろう。
確かに皆思っている事だけれども。
と、パパム爺を涙目になるまで追い込んだ訳だが。
それでもどうやらまだ諦めていない様だ。
「し、仕方ありませぬ……ならばとっておきの悪事をバラすとしましょう。きっとこの話を聞けば皆様方は揃って納得いただけるかと」
「もったいぶらなくていい。そういう所が怪しいんだから」
「ビャワーーーッ!!」
なので俺からも厳しい一言を添えておこう。
普通の会話ならともかく、大事な話で前置きなど要らないんだってな。
徐々に引き込もうとするから無駄に演出染みてしまうのだと。
そこでテッシャに頼っても無駄だぞ。
爺、今とっても見下されてるから。
潰れた害虫を見る様な目付きで見離されてるから。
するとパパム爺が肩を降ろして椅子へと座り込む。
この中に味方がいないと今やっと気付いたのだろう。
でも、そのお陰でようやく淡々と話してくれたよ。
帝国が孕んだ悪意って奴をな。
「……実はですな、帝は極秘裏に奴隷工場を運営しているという話なのですじゃ。各国にそういった秘密施設を作って資金を調達していると密偵が調べもうした」
「まさか……2ステージ越えを量産しているというあの奴隷工場の事か!?」
「左様。しかも下手に資金があるゆえ、幾ら潰されてもすぐに別所にて再活動出来るそうですじゃ」
確かに、この話が本当ならば食い付かない訳が無い。
奴隷問題と言えば、俺やノオンにとって切り離せない話だからな。
しかもどうやらこの悪意は黄空界に留まらないらしい。
「おまけに言えば、帝は裏でバウカン元大統領とブブルク賢者長との繋がりがあったそうな」
「何……ッ!?」
「お二人の間を取り持ち、相互技術供与に協力したという話ですじゃ。その見返りとして、その二国において奴隷工場の建設に目を瞑ったとか」
まさかここで赤空界と緑空界の問題が繋がって来るとはな。
この事態は俺もさすがに予想しなかった。
バウカン大統領と対峙した時、アイツは確かこう言っていたな。
ランドドラーケンの極光炎を防ぐ程の強力な防御結界を前にして。
〝緑空界より供与された魔防技術を結界装置に組み込んだ〟と。
そうか、あの技術取得には黄空界も一枚噛んでいたんだな。
だからあれだけ自信満々だったんだ。
おまけに言えば、あの結界の話はほとんど目立っていない。
暴言ばかりが目立ってクローズアップされなかったからな。
だからこそパパム爺が得た情報の信憑性が増すというものだ。
これはあながち嘘とは言えないかもしれん。
「更にはあのエルナーシェ姫とも懇意だったとか。二人はよくお逢いしていたらしいですからなぁ、もしかしたら平和を謡った裏で何かよからぬ陰謀を企てていたのかもしれませぬ」
「待ちたまえ! エルナーシェ姫への冒涜はボクが許さないよ! 彼女はそういう人ではないのだから! 間違いなくね!」
「こっ、これは失礼をば……」
それ故に何故あのエルナーシェ姫とも関係が深いのか。
不可解な事も多いのは確かだ。
黄空界の帝、その存在はまるで悪意の元締めで。
けれど平和の象徴たる姫とは懇意という。
そしてその真意は恐らく二人だけにしかわからないだろう。
しかしここまで聞くと無関係とはとても思えない。
ノオンの様に手放しで庇うとはいかないくらいにな。
おまけにパパム爺の情報を鵜呑みには出来ない。
せいぜい半信半疑って所だ。
だとすれば、俺達で確かめなければならないかもしれん。
確たる情報を得なければとても動きようがないからな。
ならどうする?
どうやって情報を得る?
――少し、試したい事を思い付いた。
「アークィン、何か閃いたね?」
「あぁ、ちょっとな。テッシャ、ここから帝都までどれくらい掛かるかわかるか?」
「んとねースナスベリトカゲに乗って大体二〇分くらいだよー」
「なら今日中に行動出来そうだな」
故に立ち上がり、荷物を背負う。
続こうとする仲間達を掌で制しながら。
「けど行くのは俺だけでいい。どうせすぐ帰ってくるつもりだからな」
「全く、君はすぐ一人でどうにかしてしまおうとするねぇ」
「悪いな、性分なんだ。ただ今回は本当に一人でいい。人数が多いと逆に動きづらくなるだろうから」
「危ない事だーめーよ?」
「わかってる。戦いに行く訳でもないからな」
そう、俺はただ確かめたいから行くんだ。
今手元にあるパズルピースの嵌め込む場所を求めて。
ついでにそのピースが正しく加工されているかも確認する為にもな。
そうする事で見えて来る別の真実があるかもしれないからこそ。
こうして俺はすぐシャウシュミを発ち、【帝都ダナウ】へと向かった。
黄空界を取り仕切る【ヴァウラール帝国】のお膝元に。
さぁ見極めさせてもらうぞ。
この国が善なのか悪なのか、その正体をな……!
侵略計画の阻止だったり、圧政や虐殺への報復だったり。
いずれも信頼のおける情報から動くべきだと判断してきた。
けど今回はまだその信頼性が足りない。
世論的にレジスタンスが正しいかどうかイマイチ判断出来ないんだ。
それにパパム爺という存在の信用度も低いからな。
「まず帝国の所業としましては、外面的なインフラにばかり投資を行い、国民に対してロクな支援を行っていませぬ。お陰で民は困窮し、いつまでも発展の道が見えないといった状況に陥っておられまする」
なんたってこの爺さんの語る事は一辺倒なんだ。
自分達の理屈をこうやって押し付けようとしてきてな。
相手側の悪い所・欠点だけを抜き出して印象を操作しようとしてくるのさ。
俺達にはお見通しだって事にも気付かないままにね。
言っておくが、街単位での発展支援をする国などこの世界には存在しない。
街とはあくまで街自体が運営しているもの。
国はその街同士を纏める存在に過ぎず、基本的には干渉しないんだ。
下手に支援すれば差別を生み、軋轢へと発展しかねないから。
その辺りはノオンが詳しいからな、少し前にそう教えてもらったよ。
そこはさすがの宰相の娘だけあって、内情までかなーり詳しくね。
つまりパパム爺は民の困窮を演出しているだけに過ぎない。
本当に困窮しているなら浮浪者がうろついているだろうしな。
それこそ赤空界の様に食う事さえままならない状況に陥っているだろうさ。
でもそれさえ無いから説得力が皆無なんだ。
「更には『帝を信ずるものは救われる』と宣って民衆から争う心を奪い、反対意見を押し殺してきたのですじゃ。お陰で今や反抗しているのは我等レジスタンスのみ!」
「良い事じゃないかぁ。国が宗教で言う所の神、つまり共生の象徴になっているという事でしょ? それで皆が守っているのなら、秩序が保たれているって事じゃないかい?」
「ぬぐぐ……」
だからこうして簡単に覆せる。
マオの知恵も半端じゃないぞ、元賢者なだけに。
そう、彼女の言う通り帝国は国らしい事をしっかりやってのけているんだ。
人心を纏め、秩序を守るという役目を果たしているのさ。
その観点から見れば、むしろレジスタンスの方が悪とさえ思えてくる。
まるで過去の栄光に囚われて今が見えていない、とな。
「ですがじゃ、そんな帝国も裏ではとんでもない悪行を行っとるのです……! なんと勝手に金を持ち出した者は――」
「金の流出を防ぐ徹底管理で勝手に持ち出した人は処罰持ち出せるのは製品登録された彫金製品のみしかも輸出後に再加工されない様に各製品には自動分解魔導式が組み込まれて迂闊に細工でーきなーいー」
「ま、金はこの国のアイデンティティだもんな。保護しなきゃあっという間に落ち目になっちまう。そう考えたら妥当だと思うぜー?」
「ウウッ……」
金の保護だって、あながちやり過ぎとは言えない。
少しでも許してしまえば今頃、黄空界は岩肌だけの国になっていただろうし。
金以外に何も無いこの国だからこそ、必要な徹底さだと言えるだろう。
そもそもこの保護政策はグゥマ光王国が存在していた時からもあったハズ。
それにイチャモン付けるのはいささか愚かではなかろうか。
「あと貴方~♪ とても胡散臭いですゥ~~~♪」
「ブワワッ!」
そしてニペル、それはさすがにストレート過ぎるだろう。
確かに皆思っている事だけれども。
と、パパム爺を涙目になるまで追い込んだ訳だが。
それでもどうやらまだ諦めていない様だ。
「し、仕方ありませぬ……ならばとっておきの悪事をバラすとしましょう。きっとこの話を聞けば皆様方は揃って納得いただけるかと」
「もったいぶらなくていい。そういう所が怪しいんだから」
「ビャワーーーッ!!」
なので俺からも厳しい一言を添えておこう。
普通の会話ならともかく、大事な話で前置きなど要らないんだってな。
徐々に引き込もうとするから無駄に演出染みてしまうのだと。
そこでテッシャに頼っても無駄だぞ。
爺、今とっても見下されてるから。
潰れた害虫を見る様な目付きで見離されてるから。
するとパパム爺が肩を降ろして椅子へと座り込む。
この中に味方がいないと今やっと気付いたのだろう。
でも、そのお陰でようやく淡々と話してくれたよ。
帝国が孕んだ悪意って奴をな。
「……実はですな、帝は極秘裏に奴隷工場を運営しているという話なのですじゃ。各国にそういった秘密施設を作って資金を調達していると密偵が調べもうした」
「まさか……2ステージ越えを量産しているというあの奴隷工場の事か!?」
「左様。しかも下手に資金があるゆえ、幾ら潰されてもすぐに別所にて再活動出来るそうですじゃ」
確かに、この話が本当ならば食い付かない訳が無い。
奴隷問題と言えば、俺やノオンにとって切り離せない話だからな。
しかもどうやらこの悪意は黄空界に留まらないらしい。
「おまけに言えば、帝は裏でバウカン元大統領とブブルク賢者長との繋がりがあったそうな」
「何……ッ!?」
「お二人の間を取り持ち、相互技術供与に協力したという話ですじゃ。その見返りとして、その二国において奴隷工場の建設に目を瞑ったとか」
まさかここで赤空界と緑空界の問題が繋がって来るとはな。
この事態は俺もさすがに予想しなかった。
バウカン大統領と対峙した時、アイツは確かこう言っていたな。
ランドドラーケンの極光炎を防ぐ程の強力な防御結界を前にして。
〝緑空界より供与された魔防技術を結界装置に組み込んだ〟と。
そうか、あの技術取得には黄空界も一枚噛んでいたんだな。
だからあれだけ自信満々だったんだ。
おまけに言えば、あの結界の話はほとんど目立っていない。
暴言ばかりが目立ってクローズアップされなかったからな。
だからこそパパム爺が得た情報の信憑性が増すというものだ。
これはあながち嘘とは言えないかもしれん。
「更にはあのエルナーシェ姫とも懇意だったとか。二人はよくお逢いしていたらしいですからなぁ、もしかしたら平和を謡った裏で何かよからぬ陰謀を企てていたのかもしれませぬ」
「待ちたまえ! エルナーシェ姫への冒涜はボクが許さないよ! 彼女はそういう人ではないのだから! 間違いなくね!」
「こっ、これは失礼をば……」
それ故に何故あのエルナーシェ姫とも関係が深いのか。
不可解な事も多いのは確かだ。
黄空界の帝、その存在はまるで悪意の元締めで。
けれど平和の象徴たる姫とは懇意という。
そしてその真意は恐らく二人だけにしかわからないだろう。
しかしここまで聞くと無関係とはとても思えない。
ノオンの様に手放しで庇うとはいかないくらいにな。
おまけにパパム爺の情報を鵜呑みには出来ない。
せいぜい半信半疑って所だ。
だとすれば、俺達で確かめなければならないかもしれん。
確たる情報を得なければとても動きようがないからな。
ならどうする?
どうやって情報を得る?
――少し、試したい事を思い付いた。
「アークィン、何か閃いたね?」
「あぁ、ちょっとな。テッシャ、ここから帝都までどれくらい掛かるかわかるか?」
「んとねースナスベリトカゲに乗って大体二〇分くらいだよー」
「なら今日中に行動出来そうだな」
故に立ち上がり、荷物を背負う。
続こうとする仲間達を掌で制しながら。
「けど行くのは俺だけでいい。どうせすぐ帰ってくるつもりだからな」
「全く、君はすぐ一人でどうにかしてしまおうとするねぇ」
「悪いな、性分なんだ。ただ今回は本当に一人でいい。人数が多いと逆に動きづらくなるだろうから」
「危ない事だーめーよ?」
「わかってる。戦いに行く訳でもないからな」
そう、俺はただ確かめたいから行くんだ。
今手元にあるパズルピースの嵌め込む場所を求めて。
ついでにそのピースが正しく加工されているかも確認する為にもな。
そうする事で見えて来る別の真実があるかもしれないからこそ。
こうして俺はすぐシャウシュミを発ち、【帝都ダナウ】へと向かった。
黄空界を取り仕切る【ヴァウラール帝国】のお膝元に。
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