輝操士は儚き虹色世界にX(ジクス)を刻む

日奈 うさぎ

文字の大きさ
137 / 148
第三章

第128話 激戦の果てに

しおりを挟む
 業魔との戦いは一進一退。
 力量的にはまだ互角と言った所か。

 ただ防御力に関しては奴の方がまだ上だ。
 だとすればこのままだとこちらがジリ貧となるのは明白だろう。

 なら、あの硬さを突破する為にも切り札を切るしかない。

 しかしそう思った矢先、奴の様子に変化が訪れる。
 六脚を開いて姿勢を降ろし、首を地面へと擦る程に下げていて。

 しかもその眼にはこれまで以上の殺意が帯びていた。

 ――これはマズい!
 この低姿勢は、が来るッ!!?

 そう、この姿勢は反動を支える為だ。
 強力無比なあの光線砲に耐えうる為の。

 奴はこれを放つ為にわざと距離を取っていたのか……ッ!!



 そしてその予想は奇しくも正解だった。
 直後、業魔の口からあの光線砲が再び放たれたのだ。

 大陸をも両断たらしめる破滅の輝きを。



 故に再び世界が光に包まれる。
 周囲の砂や岩を赤熱融解させ、消し飛ばす程の波動と共に。

 だがこの輝きを前にして、俺達はもう怯まなかった。
 如何な力であろうとも負ける訳にはいかなかったからこそ。

『乗り越えてみせるッ!! この輝きでさえもッ!!』

 ならばと力を籠めて右腕を振り払う。
 俺達の誇る最高の武装を顕現する為にと。

 そうして右手先から解き放たれたのは、一振りの剣。
 ノオンが奮っていた六聖剣の一振り【フェタリオス】である。

 その剣を斜にして低く構え、輝きを迎え撃つ。
 すると直後、凄まじい衝撃と共に烈光が剣腹を走った。

 たちまち光が弾け飛ぶ。
 雨の如き閃筋を空へと描いて。
 彼方〝空の底〟さえ裂きながら。
 金属を裂いた様な鳴音を響かせて。

 それでも耐えられている。
 それだけの強度がこの聖剣には備わっているんだ。

 お陰で、光線砲が途切れた今もなお立ち続ける事が出来ていた。
 
『なんだとッ!?』
『この姿を象ったのは俺達の力だけでじゃない! 想いを託してくれた人達の願いがあるからこそなんだッ!! そうして生まれた力があれば、俺達は伝説さえ乗り越えられるッ!!』

 その末に剣を振り払い、その姿を見せつける。
 俺達に見合った形へと巨大化した聖剣の御姿を。

 この剣はノオンの兄カイオンが所持していた物。
 それを皇帝を介してノオンが受け取ったのだ。
 正義を貫き悪を挫く、その理念を貫いて欲しいという意志の下に。

 そんな【フェタリオス】には一つの特殊能力が秘められている。
 所持者の適正に合わせてその大きさや質量感を変えるという能力がな。

 だからカイオンの時は人の身程もある大剣に。
 ノオンが持っていた間は振り易い小剣に。
 
 そして今、俺達が持つ事でもその真価が発揮された。

 しかもそのノオンの能力もが俺達には秘められている。
 ならばこの聖剣の力を最大限に引き出す事も可能!

 この力を以て、一気に攻勢と仕掛けよう。

『おおおッ!! 【破・蓮・牙はれんが】ァァァーーーッ!!』
 
 その速さ、鋭さもまたノオンの能力を発揮させたもの。
 故に瞬時にして業魔へと詰め、必殺連撃で穿つ。

 ただ業魔もまた負けてはいなかった。
 俺達の動きに反応し、即座に横へと飛び避けていたのだ。

 だがな、こっちの方が――速いんだよ。

 確かに避けられはしたさ。
 けどその拍子に前足一本を貫き、跡形も無く弾き飛ばしてやった。

『グゥオオッ!?』

 どうやら今の一撃の威力は想定外だったらしいな。
 動揺からか、自ら避けたにも拘らず大地を転がっている。
 それだけ肉体を貫かれた事が意外だったのだろうさ。

 そう、聖剣ならばこうして奴の肉体を滅する事が出来るんだ。
 だったら最も硬いであろう頭蓋でさえ貫けるかもしれない。

 その可能性を信じ、再び業魔へと向けて駆け抜ける。
 剣を振り被り、奴を切り裂く為にと力を溜めながら。

『これで終わりだあッ!!』

 そうして横薙ぎ一閃が放たれた。
 奴を真っ二つとせんばかりの全力の一撃が。



 ――だったのだが。



 なんと奴はその一閃を、牙で受け止めていたのだ。
 両顎で挟み込み、顎の力で刃を塞き止めていたのである。

『なんだとッ!?』
『グフルォォォッ!!!』

 しかもあろう事か、たちまち聖剣に亀裂が帯びていく。
 奴の顎の力はそれ程までに強靭だったのか!?

 そうか、あの輝きもまたこの口から放たれたもの。
 つまり業魔にとって最大の武器はこの顎と牙だったのだ。
 神鉄さえも砕ける程の力を持つ、唯一無二の。

 だからか、奴の強張った表情に勝ち誇ったかの様な雰囲気が滲み出る。
 間も無く俺達の切り札を破壊出来ると悟ったからだろう。

 けどな、それは違うんだよ。

 何故なら、俺達の切り札はこれ一つじゃあないッ!!

『フグオッ!?』

 気付いた時にはもう遅い。
 俺達の切り札は既に左腕から解き放たれていたのだから。

 もう一本の【フェタリオス】という切り札がなッ!!

 これはいわば複製品。
 俺の輝操術が構築して創り上げた物である。

 だがその能力はもはや本物と変わらん!
 進化した俺の意志がその創造を完璧へと押し上げたのだ。

 その新たな切り札が遂に、業魔の眼部へと突き刺さる。
 それも頭蓋を側頭部から穿ち、両眼をくり貫く様にして。
 流々とドス黒い体液を大量に飛散させながら。

『グッギャアア!!』

 それだけでは済まさんぞ!
 拍子に怯んだ隙を狙い、オリジナルの聖剣を一気に振り抜く。
 その自慢の顎を切り裂き、削ぎ落す程に深々と。

 更には剣を投げ捨て、勢いのままに下顎部へと右手刀をぶち込む。
 脳髄へと至るまで力の限りに。

 ただしこれは奴の頭部を破壊する為じゃあない。
 脳部に存在するアルケティ本体を摘出する為だ。

 実は最初の一撃で、奴に輝操アークル探追シークを仕込んでいてな。
 今までの戦いの中でアルケティの居場所を探っていたんだ。
 それですぐわかったよ、アイツが脳部にいたって事がさ。

 故に今、その身体を強引に引き抜く。
 接合していた黒い肉からブチブチと千切り取りながら。
 業魔を倒すのではなく、こうして救う事こそが俺達の勝利条件なのだから。

 そして、その条件は全て成った。

『ウ、グワァァァーーーーーーッッッ!!!』

 お陰で業魔は直ちに崩れ落ち、その力を失う。
 アルケティという核を損失した事で制御する物が無くなったからだろう。
 間も無くその巨体もが腐った肉の如く崩れ落ち始めていた。

 で、肝心のアルケティは――無事だ。

 しっかりと人の形を成しており、僅かに呼吸の振動もある。
 生き絶え絶えではあるが、まだ死んだという決まった訳ではない。
 それならまだ処置の施しようはあるだろう。

 もう慌てる必要は無いんだ。
 脅威は全て取り払ったのだから。



 こうして俺達は激闘の末、業魔に勝利した。
 最後まで巧く立ち回れた事に安堵せずにはいられなかったよ。

 けどこの時、俺達はまだ気付いていなかったんだ。
 この戦いはまだ終わっていなかったって事に。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...