4 / 41
第一話
1-3
しおりを挟むな、なるほど。
壮絶でしたね……。
私も軽く絶望しました。これは無理だと思う。(苦笑)
「気持ち、わかって貰えます? ええ、主に股間が大絶望ですよ(笑)」
常々性欲を抑えて生きなければならない。
しかも青春まっただ中の少年が。
そしてもし隙を一つでも見せたら最後という。
これは確かに辛いですね。
まさしく修行僧らしい人生だったのではないでしょうか。
「軽いノリで語りましたけど、向こうで目的の為に動いてたのは大体四年くらいですからね。その間ずっと耐えなきゃいけなかったんです。自慰も出来ませんし、何なら裸にすらなれませんから。彼女達、平気で男風呂やトイレにも入って来るんで警戒さえ解けないんです」
OH壮絶ゥ……。
「なのに彼女達はそれで更にエキサイティングするんですよ。『抱いてもらえないのは信頼が足りないからだ』って。やめて! 仲間と結託して俺の服を脱がそうとしないで!!」
もはや野獣の如き方々ですね。(笑)
「えぇ。なので対抗手段を得る必要がありました。不滅の金属オリハルコンが手に入った時、何に使ったと思います? 貞操帯ですよ。オリハルコンの貞操帯。俺の意思でしか開かない無敵のパンツです」
オリハルコンで造ったのがアマタの為の剣じゃなくてパンツ……ッ!!
「あと身体洗浄魔法も憶えてトイレと風呂も不要にしました。それくらいしないとダメだって道中で気付いて」
敵よりも気を遣う相手ですね。(笑)
もっとも、これは決して女性達が悪いという訳ではありません。
ただアマタさんの生態が世界に合わなかっただけで。
「おまけに『性別詐称は重大なマナー違反』という倫理があるんですよ。なので公になったら勇者失格にすらなるっていう。即犯罪者扱い確定です」
トコトン合いませんね……。
だからこその悲劇と言えるでしょう。
これは相性を知らず転行させた運営側に問題があったと言わざるをえません。
なおこの一件により、この世界の創造主は転行を諦めたそうな。
元々異性交遊を目的としてても、自世界の生態に興味が無かった様ですね。
なので気付かなかったと。
アマタさんが初めての転行者だそうで、思い通りに動いてくれなくて悩んだそうですよ。
何でこんなに大勢ヒロイン用意したのに誰ともくっついてくれないのか、と。
「一体ナニをさせる気で転移させたんでしょうねぇ。(笑)」
ご想像通りだと思います。
割とそういった趣向を目的として世界を創る神も多いですから。
神々も欲を持て余しているので、良い発散になると思ったのでしょう。
ちなみにかの世界は現在活動場所を【月光界】に変えたそうです。
現地人達だけで盛り上がっているそうな。
きっと将来は人口爆増待ったなしですね。
妄想するだけならまだ面白いのかもしれません。
「俺にとっては考えるだけでも恐ろしい話です。あの世界の事はもう二度と考えたくないですね」
性格次第では受け入れられる方もいそうですが。
でもどうやらアマタさんにとっては不幸以外の何者でも無かった様ですね。
「やっぱり女の子とイチャつきたいですから。罵倒されて生きるのはさすがに無理ッス」
ノーマルであるが故の不幸、という訳ですか。
こういった人選もまた神の采配ですから。
アマタさんに何の非も無いのが本当に辛い所です。
そう言えば、現在は元の世界で有意義に過ごされているのだとか?
「はい。多分異世界での経験と反動が出たんでしょうかね。そのお陰で、転移前の時に好きだった子にも告白出来て。それでもって交際もOKもらえました」
ずっと思い焦がれていたんですねぇ。
なんだかロマンチックで素敵だと思います。
「そうなんですよ! もう冒険中はずっと彼女に告白する事を夢見てましたから。たとえフラれようが関係無いって感じで。だから【大いなる闇】にも勝てたってもんです。お陰様で今ではその子が俺の嫁です。子供ももう二人いますよ」
なるほど、異世界での苦痛をバネに幸せを掴めたのですね。
失敗してもタダでは転ばなかったと。
これは前向きなアマタさんだったからこそ得られた結果だったのかもしれません。
「教訓・修行としては良かったんでしょうね。我慢せざるを得ない状況はやっぱ人を変えるもんなんだなぁって思います。今では陽キャなんて言われる事もありますし」
えぇ、どことなくそんな雰囲気を感じます。
人間とは変われるものなのですね。
とはいえ、その変化を異世界転行の成功例に、とは出来ませんが。
あくまでも失敗談を乗り切り、その上で成長を果たしたという事ですので。
以上から、異世界転移の危険性が垣間見えたと思います。
もちろんこれは一例であり、アマタさんがお呼び出来る状態だからこそ公開にいたれました。
失敗の中には会場にお呼び出来なくなった方もいらっしゃいますので。
むしろ、そっちの方が多い現状だと言わざるをえませんから。
実際、転行によって即座に死を迎えた転行者は数知れません。
中には跳んだ瞬間、大気が合わずに窒息死・中毒死した例さえもあるのです。
他にも転移先で魔物に負けたり。
知識が通用しなかったり。
人気が奮わないからと神に直接手を下された例もあると聞きます。
その中で生きて帰れたのは幸運中の幸運と言えるでしょう。
目的だけでも成し遂げてくれたアマタさんには感謝したいですね。
ではアマタさん、本日はお越し頂き、誠にありがとうございました。
「いえいえ。思う存分話せてよかったですよ。そういえばパプリエルさんの髪、桃色で綺麗ですよね。ふわっふわなエンジェルボブヘア可愛いです。良ければこの後――」
異世界転移。
それは最も簡単に渡れる手でありながら、失敗をも生み出し易い行為です。
だからこそ安易にではなく、転向者に配慮した形で行ってもらいたいですね。
今取り挙げた例などにしっかりと対策を施してもらうなどで。
以上、司会天使のパプリエルからお伝え致しました。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

