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第六話
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しおりを挟む本気度がひしひしと伝わってくる様でした。
ありがとうございます。
「おうよ。まぁまだまだこれからだから、どうなるかはわかんねぇけどな!」
確かに今の知名度は明らかに神話エルフさんの方が小さいかもしれません。
ですがそんな不遇に立たされてもなお折れず戦う。
そんな姿勢だからこそ、かつても成功を収められたのでしょう。
やはり世代は過ぎてもハングリーさは失われていませんね。
見習いたい所です。
とはいえやはりレジェンド。もう既に手は打たれている様ですよ。
たとえばですね。時々コンビニで見かけませんか?
『〇〇神話 解体新書』みたいな本とか。
実はあれ、神話エルフさん達が裏で手を打って発行されてるんですよ。
自分達を正しく布教する為に。
もしかしたら、手に取られた方なら理解出来るのではないでしょうか。
ここに至るまでの神話エルフさん達の苦悩を。
新旧ギャップ違い過ぎますからね。
もちろん、今の時代はビジュアルに特化しているので劣勢は否めないでしょう。
あくまでもマイナーに広まっていく事にはなりそうです。
ただそれでも昨今、新エルフに対する批判も集まっています。
「どこにでもいる、また流用か」なんて話がちらほらと。
やはり気付いている方は皆思っているのかもしれませんね。
そう、新エルフもまた【ハッヤーリ】の衰退期に入っているのです。
余りにも増え過ぎたが故に物珍しくも無く、扱い方も差が無くなった為に。
「そういう事だ。奴等は結局俺達の後追いしかしてねぇ。同じ事を繰り返してりゃ売れるってな。けどそれじゃダメなのさ。やはり新しいモノを生んでいかなきゃなんねぇって事だ。たとえ女子高生になろうが宇宙人になろうが、エルフはエルフなのさ。皆一緒くたに見ちまうもんよ」
創世に感心の無い世間からの目もありますし。
ここまで露出が増えると悪い部分も見えてきますから。
最近はよく【セイテキサクシューガー】という主張者も増え、一層混迷を増しているのだとか。
もしかしたら近い将来、成体向けエルフは規制対象になるかもしれませんね。
「あれはあれでアリだとは思うがね。俺もだいぶお世話になったし。ただ正直、俺自身が抱かれろっていきなり言われたら抵抗はある。中身の素養問題もあるんだろうよ。だから、そっち系エルフはあらゆる行為に耐えうる超ハードな訓練を積んだんだろうな。それこそドロッドロのヌルッヌルになるくらいの。そういった意味じゃ感服するよ」
同業者なりの視点ですか。
確かに、成体向けに輸出された新エルフさんの末路はいずれも酷いものばかりなのだとか。
詳しくは言えませんが。
なにせ権利に煩い人間族と違って、彼等は主義主張をしませんからね。
役作りのプロ意識が高いのでしょう。
そう考えたら、私も見習わなければってなります。
あ、でも性的な意味でじゃないですよ。
「パプリエルさんが夜売りに出たらきっと買い手数多だと思いますぜ?(笑)」
いえいえ、私は仕事一筋の硬派なので。(笑)
――このような感じで、神話エルフのCさん達は現状も足掻いております。
とはいえ、やっている事は結局〝流用〟の延長でしかありませんが。
ただそれでもCさん達はこう考えているそうです。
「新旧エルフのミックスアップによって、次なる種族が生まれる可能性を引き出したい」と。
現状でもメジャー所ではハーフエルフ、ダークエルフ、ハイエルフ、エンシェントエルフなど様々ありますが、それを更に広げたいと考えているのでしょうね。
あるいはまったく違う様相を持った新型エルフの創造も。
しかし、これは結局のところ世界を創る神次第です。
Cさん達は所詮呼び水にしか過ぎません。
そんな彼等から何を得て何を学び、如何に根本から異なる者を産めるかどうか。
その創造力こそが肝となるでしょう。
もちろん、ただ食べ物が違うとか耳の形が違うなどという些細な変化ではなく。
まさしく新生物と言えるエルフの誕生を望まれているのです。
これはエルフに限った事ではないですが。
「あぁ。最初は〝新エルフめぇ!〟なんて思ってたけどよ、今では楽しみでもある。また違うエルフが生まれるんじゃねぇかって期待があるからな。神々の創造力はいつも俺達をも驚かせてくれるもんだぜ。――とはいえ、障害が無いとも言い切れないんだがな。神もどうやら一枚岩じゃないらしいからな」
えぇ、そうですね。
世界創造は主神だけの特権とは限りませんので。
もちろん今までに新生物の誕生を試みた世界は多く存在しています。
中にはエルフの亜種が生まれた事もありました。
有名どころの具体例ですと、エル○○○ンとか○○ゼンなどですね。
きっと馴染み深いと思う神もおられるのではないでしょうか。
主に、光を抱く戦士に心当たりのある方ならば。
ただそんな彼等でもメジャーとは言い切れません。
知らない神の方がずっと多いのです。だからこそ広まる事は無かった。
では何故、昨今その様な新種族が生まれなくなったのでしょうか?
確かに、求められ難くなったのもあるでしょう。
しかし理由はどうやらそれだけではないようで。
それというのも、実は新生物誕生が止められている事実もあるから。
それも主神ではなく【ヘンシューウ】という補助神の手によって。
一例を挙げますと、とある創造神の下でこういう出来事があったそうです。
ある日、主神が言いました。「新生物を創ったぞ」と。
すると補助神がこう返しました。
「これ、何かエルフっぽいですね。エルフじゃダメなんですか? もうエルフにしましょうよ。その方が顧客にわかりやすいし」と。
それで反論出来なかった主神が折れ、その新生物はエルフに変わったそうな。
そう、受けを狙う為に新生物を無かった事にされるのです。
しかもこれ、補助神が付くメジャー世界にはよくある事なのだとか。
とある神にはそんな意見を跳ね退けた方もいらっしゃいますが。
「ゴブリンと言ったら知能があって群れたらヤバイ奴等やろが、雑魚扱いなんて出来る訳が無い」とね。
これは聞いた話ですけれど。
確かに、ゴブリンは雑魚ってイメージ付いてますもんね。
最期に夢を見た結果でしょうか。
そんな感じで、補助神の価値観が別の世界観に引っ張られる事もあるそうで。
それで意外と話が噛み合わない事もザラだそうです。
やはりメジャー化すると管理も難しくなるのでしょう。大変そうですね。
「ま、【ヘンシューウ】自体は世界を調整してくれる凄い神だからな。主神に逆らえない所があるのは確からしい。むしろ従った方が良い事の方が多いもんさ。ただ、それで自分の世界がそっくり変わっちゃ何の意味も無いがね」
そうですね。それこそ前回のお話と同じ事が起きうりますから。
だからこそ主神には説得力を持つくらいの設定を持った新生物を創って頂きたい所です。
それもただ存在するのではなく、何故その世界に生まれたのか、という確固たる意味と意志を添えて。
「それが面倒臭いって神もいるらしいぜ」
悲しいですね。
一つそれを盛り込むだけで世界の完成度は大きく飛躍するはずなのですが。
「まず観る側の神々がそれを望んでないのさ。今溢れてる物だけで充分だってな。だから創る側も〝ならそれでいいか〟ってなるのよ。ただ、その在り方を望まない兆しは出てきている。後はその逆転の場面にどう食い込むかだ。その為にも投資を続けるんだ。そうすりゃまた儲けられるだろうよ」
あれ、これビジネスの話なのでしょうか?
なんだか株の話をしている様に聞こえてきました。
おっと、どうやらそろそろお時間が近い様です。
ですのでCさん、ここいらで一発レジェンドらしい一言をお願いしてもよろしいでしょうか?
「おう。レジェンドらしいかどうかはわからねぇが、これだけは言わせてもらうって事があるぜ」
はい、では遠慮なくどうぞ。
「やいやいディ○○○○ド!! テメーよくも俺達を差し置いて勝手にシノギ始めやがったな!? お陰で俺たちゃこんな苦労をするハメになったじゃねぇか!! テメーは大人しくパ○○とパンパンしてりゃいいんだよッ!! 憶えてやがれチキショウメェ!!」
実に本家らしいドスの効いた一言ですね。(笑)
そんな訳で、世界の裏側ではCさん達の様に抗い続けている方々が多くいます。
新たな種族が出てこないが為に生まれた境遇によって。
もちろん神々がそう望んでいるからこその在り方な訳ですが。
しかし結局は既出世界の引き延ばしに過ぎないのです。
ですから、どうか新しい種族を生み出しませんか?
Cさん達の様な不遇を産まない為にも。
そして自世界発の種族として売り出す為にも。
かつての神々がそうしてきた様に。
貴方もまた、是非ともその栄光を引き継ぎませんか?
我々はそう望んでおります。
決して【パックーリ】と呼ばれない、真なる新世界創造を。
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