異世界転移転生ドキュメンタリィ ~今明かされる転移転生被害者の証言。成功物語によって隠された失敗世界の真実とは!?~

日奈 うさぎ

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第九話

9-1

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 皆さまこんにちは、司会天使のパプリエルです。

 異世界転移。
 これに多くのバリエーションが存在する事はもう皆様もご存知と思います。
 たとえ知らなくとも、ここまでのお話できっと知り得たに違いありません。

 しかもその種類はなお増え続けているという。
 これも神々の溢れんばかりな知恵の賜物でしょう。
 お陰で実る豊かな活力の恩恵に、我々も強い感謝を禁じ得ません。

 さて、今回はそのバリエーションの一つでの失敗談を紹介致したいと思います。

 もちろん、ワタクシは相変わらず詳細内容に関して知らされておりません。
 ただ前回の無茶振りの結果はっちゃける事を許されたので、もう怖い物もありません。
 上層部の皆さま、御許可ありがとうございます。そしてディレクター自重しろ。

 そんな訳で早速ゲスト紹介をば。
 今日来てくださったのは通称Y・Fさんです。

 よろしくお願い致します。

「どうも、よろしくお願いします。にしてもすいません、イニシャル紹介で」
 
 いえいえ、ゲスト様にも都合はありますし。
 我々もプライバシー保護の協力は惜しみません。
 なので今回も要望上、モザイク処理と副音声マシマシでお送り致します。

 それで、Y・Fさんはどの様な異世界転移に見舞われたのでしょうか?

「えっと、どちらかというと異世界が丸ごと現代に転移してきた、みたいな感じですね」

 あ~! つまり現代をベースにした物語が展開されるというあの!

「そうです。なので異世界冒険譚とかじゃないんですよね。あくまで現代がベース舞台で、ほんのちょっと異世界感があるっていう。なので若干SFっぽさもあったりするんですよ。ほら、現代技術とかも影響受けて進化していくもんで。最後の方はもう未来かって思えるくらいでしたね」

 なるほど、現代側にもフォーカスしているから【エスエフ】にも繋がるんですね。
 新しい方向に進歩するのは良いと思います。
 異世界って大抵、物質文明が発達していませんから古い物が生まれがちですし。
 現代ベースの強みですよね。

 という事は今おなじみのダンジョンが形成されたり、「ステータスオープン!」が出来るようになったりしたって事でしょうか?

「あ、いえ、そこまでではなくて。精々街の一部とか森がちょっと変わったりする程度です。それと同時に異世界の住人がやってきて、戦ったり交流するって感じですね。まぁダンジョンも無きにしも非ずですけど、サブカル異世界でよくある『ダンジョンコアが~』とかそういうのは無いです。あって異世界人の住居、みたいな」

 ふむふむ。
 あくまで文明が転移してきただけで、謎の構造物などが増えたとかではないと。

 まぁ現代人にとっては異世界文明も充分謎でしょうからね。
 そこでダンジョンとか増えたら確かに一層混乱しそうです。

 ただそうすると意外性というものが余り目立ちませんね……。

「意外性って(笑)。それでも当時はほんと大変だったんですよ? 物流とかは平気だったんですが、やっぱり混乱はありましたし。転移場所から人が消えたり、異世界生物と争ったりと。だからもう混乱ばかりでテレビとかスマホから目が離せなくって」

 あ、それでもやっぱり現代人って感じしますね。余裕ありますもん。

「ですね(笑)。ヤバかったら皆逃げますし。それも無かったから大規模じゃなかったんだなって。だから皆すぐ普通の生活に戻ってましたよ。俺も当時学生で、普通に学校行ってましたから。ま、それも最初だけで、どんどん世界が酷い事になってくんですけどね」

 事態がゆっくりと進行していくタイプですね。
 スロースターターな世界という訳ですか。
 それだと確かに民衆は気付きにくい。

 でもY・Fさんはそれに気付いていたのです?

「えぇ、俺は一応当事者なんで。転移の場面に遭遇したクチなんですよ。おまけにどっぷり関係と浸かる事になっちゃって。だから学生でありながら関係者としても働いてましたよ」

 なるほど、だから世界の中心としてフォーカスされたと。
 確かに、今も主人公らしい雰囲気が漂ってますもんね。
 緩く語ってる様ですけど、なんかこうシャキっとしたオーラを感じます。

「いやいやいや……おだてたって何も出ませんよ? 確かに世界は救いましたけど、俺は別に自分がそれ程凄いなんて思ってないですし。むしろ最後の最後まで必死でそれどころじゃなかったっていうか」

 またまたー謙遜しちゃって。

 っていうか世界救ったんですね。本当にそれ失敗談なんです?
 聞く限りだと成功談としか思えないんですが。

「結果は成功してますけど、過程は酷いもんですよ? まぁ言うて悪いのは世界じゃないんですけどね。そう、俺達にとっての失敗は世界じゃあないんですよ」

 おや、随分と含みますねぇ第一回を思い出します。
 何か別の要因がありそうな。

 さぁではその要因を直に語って頂く事にしましょうか。
 異世界が現代に転移した、そのシチュエーションがもたらした失敗とは果たして。

 それではY・Fさん、よろしくお願い致します。
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