ピクトグラム君とバーチャルヘルパーちゃん ~異世界転生した底辺絵師ですが自由気ままに世界の常識を描き直そうと思います~

日奈 うさぎ

文字の大きさ
10 / 59
第二章

第9話 チンピラの親玉、ドン・ギネス

しおりを挟む
 チンピラたちが距離を取りつつ囲んでくる。
 しかし不用意に突っ込んでくる奴はいない。
 仲間がやられたから警戒しているんだろうな。

 なるほど、ウサギちゃんみたいな化け物がいる世界なだけに、戦い慣れてるって感じがする。
 こりゃアニメの能無しモブキャラみたいにはいかねーか。

「あ~その、穏便に話し合いで済ませる、みたいなことは出来ませんかねぇ?」

「「「あァ!?」」」

「先に手を出したのはそっち側の人ですし……」

「「「あァん!!?」」」

 やはり説得もダメそうだ。
 全員、戦闘能力に極振りで代わりにオツムを削ってる感あるわ。
 そもそもお前たちの仲間が先に手を出したんだぞ? わかってんのか!?

 仕方ない、こうなったら全員順番に場外退場させて――

「お待ちなさぁい!」
「「「――!?」」」

 途端、場にチンピラのものとは思えない声が響いた。
 ほんの少し甲高い、だが野太さも感じさせる声が。

 するとチンピラどもが動きを止め、一歩二歩と下がっていく。

「なるほど、お前がウチのモンをやった奴ね。よそ者かしらン?」

 そんな中、暗い景色の向こうから一人の大きな人影がやってきた。
 デ、デケェ……! 特に上半身がヤベぇ!

 言うなれば筋肉の塊だ。
 丸太かと思えるほどに太い腕や脚。
 膨らんで張った大胸筋。
 そして男の憧れシックスパッド。

 そんな筋肉野郎がピンクのロングモヒカンを靡かせてやってきやがった!

「も、もう何度も言ったことなんスけどね、俺、ここに来たばかりで襲われる謂れはないんですけど」

「あらン、その割にはウチの部下を二人やってくれたらしいじゃない?」

「だからそれはそっちが一方的に追い剥ぎ紛いなことしてきた訳で!」

「問答無用ッッッ!!!!!」

「いいっ!?」

 しかもやっぱりリーダー的存在のクセにやっぱり人の話を聞かねぇ!
 あと聞いてきたのもお前からなのに問答無用ってなんだよォォォ!!!

 奴ももう臨戦態勢だ。
 巨大な両腕を構え上げて俺を威嚇してきた。
 あんなのに掴まれたら俺でも多分死ぬな、うん。

「お前みたいな迷惑な奴を野放しにするのはこの流民区を支配する『ギネス組』が許さないわ! その代表たるアタシ、ギネス様が直々に相手をしてやりましょうっ!」

「馬鹿な野郎だ、首領ドン・ギネス様を怒らせちまった」
「あーアイツ死んだわ」

 チンピラどもももう好き勝手言い放題だ。
 こっちはもう呆れて物も言えないってのに。

「さぁ覚悟しなさい無法者! この筋肉の錆にしてやるわン!」

 そしてその直後、ギネスとかいう筋肉野郎がツッコミ所の多い台詞を吐きつつ、腕を組みながらに走り込んでくる。
 大胸筋を左右に振り回すその走り方はもはや圧巻だ。つかキモいぞ!

 あんなのに突撃されればいくらケブラー素材の服を着ていてもひとたまりもない!



 それなのでサクッと奴を彼方にブッ飛ばしてやった。
 問答無用らしいのでこっちも容赦無しだ。



「アッ―――!!!!!……」

「「「ド、ドンが!?」」」
「「「負けた、だと!?」」」
「「「しかも瞬殺!?」」」

 結果的に一対一に持ち込めたのは助かった。
 相手が一人なら非常口・放の力で強引に戦闘終了させられるしな。

「さぁて、次はどいつが夜空の星になりたい!?」

「「「ヒッ!?」」」

 これみよがしに残されたチンピラどもを睨んで威嚇してみる。
 拳を「ゴキキッ」と鳴らして(ただし音は声で代用)迫力マシマシだ。

 するとチンピラどもはこぞって怯み、動揺を露わにし始めた。
 筋肉野郎をブッ飛ばして箔が付いたおかげだな。

「クッ! こうなったらドンの仇だ!」
「せめて俺もあの人の下へ!」
「やってやる、やってやるぞっ!」

 だけど奴らのオツムは前向きだったようです。
 どいつもこいつもまた一歩前に出てやる気を見せ始めている。
 一向に諦めようとしない奴らを前に、堪らず瞼をピクピクと震わせてしまった。

 これ、もう全員ブッ飛ばすしかないの?

「――ぉおー待ーちーなーさぁーーーいっ!!!!!」
「「「!!?」」」

 だがその時、聞いたことのある声が遠くから聞こえ始める。

 あ、あれは! さっきの筋肉野郎だッ!
 両手を高速で振って凄まじい速さで走ってきやがるぅ!!!

 嘘だろ!?
 俺の非常口・放を食らったのにもう自力で戻ってきやがったのかあ!?

 規格外過ぎるだろその筋肉ゥ!!!!!
 つかなんで見えるの!? 体が光っているように見えるけど!?

「お前たち待ちなさい! その男に手を出すのはアタシが許さないわ!」

「「「えっ……?」」」

 でも様子が変だ。
 筋肉野郎はズサーッと戻って来るや否やチンピラどもを制し、下がらせていて。
 
「悪かったわね、どうやらアタシの勘違いだったようだわ。許して頂戴」

 そんな奴自身も体を緩めたままに俺の下へ歩いてくる。
 近くに立つとなかなかの迫力だが、一転その表情から敵意とかは感じない。

「お前はさっきの力でアタシだけでなく部下もブッ飛ばしたのね。倒すのではなく強制で距離を離すことによって」

「お、おう……」

「実はここに戻る途中で、同じく走り戻ろうとしているアイツラに遭遇したの。殺された訳じゃなくてホッとしたわ」

 その通り、この筋肉野郎の言う通りだ。
 技に有効射程距離があることを理解した上で、集落のずっと先に落とすように放っていたのだ。
 そりゃ出来得る限り人殺しはしたくないからな。

 ただそれでも認識通りなら大体1キロメートルくらいと相当遠い筈なんだが。
 それをこの一瞬で戻ってきた筋肉野郎のなんと無茶苦茶なことか。

「そんなアイツラの筋肉でなんとなく状況も掴めたし、あなたの主張も嘘ではないってわかったワケ」

「筋肉で状況を掴むってどういう理屈?」

 なるほど、どうりで話が通じない訳だ。
 こいつら言葉じゃなくてボディランゲージで会話していたんだな。

 ……いや、まったく意味が分からん。

「部下に失礼があったことは詫びるわ。すまなかったわね」

「ま、まぁわかってくれればそれで構わないさ」

 なんにせよ、これで争う必要がなくなったってことか。
 筋肉野郎が少しは話のわかる人物で助かった。

 おかげで今夜はなんとかゆっくりすることができそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...