ピクトグラム君とバーチャルヘルパーちゃん ~異世界転生した底辺絵師ですが自由気ままに世界の常識を描き直そうと思います~

日奈 うさぎ

文字の大きさ
13 / 59
第二章

第12話 ギネスたち流民の実体

しおりを挟む
 結局、ギネスが見せた嫌悪感について聞くことはできなかった。
 あまりにも怖い剣幕だったもので、つい顔を逸らしてしまったのがいけなかった。

 そんな訳で特に会話を挟むことになく流民区の中を案内してもらったのだが。
 
「ここが共同食堂よン。以上」

「もう終わり!? 早いな!?」

 訪れたのは集落の中央にある木張りの大きなボロ屋だ。
 今も人が行き来していて、中を覗き込めば大勢の食事をする様子が拝めた。

 とはいえ食べられているのは薄そうなスープとパン一切れ。
 スープには根菜が細かく刻まれて少しだけ入っている程度だ。
 そこにパンを付けて食べるといった食事様式らしい。

「食事は配給制なんだな」

「ええそうよ。ここじゃ食料も乏しいから皆で分けるしかないの。時々魔物を倒してその肉を分けたりもするけど、奴らも強いし意外に賢いからそう簡単にはいかないわね」

「その魔物狩りも正規市民どもに制限されてるしな」

 眺めながらそんな話をしていると、食事をしていた男が突然会話に混じってくる。
 顔をよく見てみたら、昨日ギネスと話をしていた時に傍にいた側近の一人だった。

 たしか名前はマイゼルとかいったか。
 無精髭面だけど顔が整っているからか特徴的でわかりやすい奴だ。

 この男も他の人と同じ物を食べているらしい。
 どうやらギネス組だからといって特別扱いされる訳ではないようだ。

「あのチャージングラビットぐらい強い魔物だと規制されてないんだが、あっちはあっちでヤバ過ぎて手の出しようがねぇ。だから事実上、肉なんてほぼほぼ食えないのさ」

 そんな立場のありそうなマイゼルも食欲には勝てないのか、こう愚痴を零すとボロスプーンを掲げてまた机に振り返ってしまった。

 だがすまない、俺は今朝ギネスから干し肉を貰ってしまったのだ。
 まぁ正直あまり美味しくなかったけど、それを言ったら絶対キレられるので止めておこうと思う。

「もう一つ言っておくと、アタシたちギネス組はこの流民区の取り締まりを行っているわ。住民たちが問題を起こさないようにねン」

「なるほど、いいヤクザだったんだな」

「ヤクザ? まぁよくわからないけど基本的に悪いことはしていないわね。ガラが悪いのは生まれつきだから許してやって頂戴」

「そういうことなら受け入れるよ。昨日の俺の態度も許してくれよな?」

「ええもちろん」

 最初はどうなるかと思ったが、いざ蓋を開ければ平和そのものだ。
 ギネス組じゃないような人も笑って話し合ったりしているし、秩序は保たれている。
 よく見れば昨日の老人と女児らしい二人組もいるし、これが日常なんだろうな。

 こんな光景を見ていると、この流民区に少し興味が湧いた。
 おそらくはここにしばらく滞在するだろうし、多少は知っておいた方がよさそうだ。

「畑とかはあるのか?」

「ええ。ただし区の決められた敷地より拡げることは出来ないけれど」

 そこで軽く質問してみたが、ここでも例の「ルール」とやらの影がチラつく。
 いくら犯罪者を抑制するためとはいえやりすぎだ。

 普通ならそういった人に開墾させて生産物を増やすと思うのだけども。
 縛り過ぎて生産性を見失っている気がしてならない。

「ここが畑ね。主に根菜や野菜を育てているわ。もうすぐイモが採れそうねぇ」

 話題のままに連れてこられれば、今度は荒れた畑の登場だ。
 作物もまばらに植えられて育っていて、雑草も処理されているか怪しい。

 そもそもそんなに広くないときた。
 まるで日本の一農家さん所有の農地レベルだ。
 下手すると個人趣味用より土地が狭いぞ?

「これ、許されている他の場所にも追加で畑を作ることとかできないの?」

「人の家もあるし、なかなかねぇ」

 敷地拡張ができないなら内部に、と思ったがそうもいかないようだ。
 ふと振り返ってみれば、所せましと乱雑に建てられている小屋が見えた。

 地上げもできないから畑を増やすこともできないって訳か。
 優しいヤクザなのはいいのだが、もう少し厳しくてもいいんじゃないかギネス組。

「あとは今見ている民家くらいしかないわン。ま、流民区なんてそんなもんよ」

「皆なにして働いているんだ?」

「さぁ、そこらで道草を食ってるだけじゃないかしら。ほらあそこでも」

 畑のすぐ傍はもう集落の外。
 そんな柵だけで区切られた先には数人の十四~五歳くらいに見える若者たちの姿があった。

 ただなんか座って雑草を抜き取り、草の部分を噛みちぎっているんだが?

「本当に道の草食っとる……!」

「育ち盛りがあんなパンとスープだけで足りる訳がないからねぇ。こうやって空腹を紛らわすしかないのよ。幸い、このアースレム平原は雑草に事欠かないし」

 冗談抜きで困窮しているってことか。
 それこそ今の畑の何倍もの大きさが必要なんじゃないだろうか。

 だいたい、あんな若い子まで犯罪を犯さないと生きていけないなんて悲惨だな。
 この世の中は想像以上にかなり厳しいようだ。

「なぁギネス、あの子たちはいったいどんな犯罪を犯したんだ?」

 そんな現実が垣間見えたからか、ふとこんなことが気になってしまった。
 あまりにも流民に厳しい世界、その根源が妙に不透明だったから。

 だがこの時、俺は思ってもみなかった現実を教えられることとなる。



「どの子も罪を犯してはいないわ。ただ、生まれながらにして流民ってだけよ」



 犯罪者じゃないのに犯罪者扱い。
 つい先日まで法治国家日本の国民だった俺には、そんな理不尽な理屈はどうにも理解し難かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...