ピクトグラム君とバーチャルヘルパーちゃん ~異世界転生した底辺絵師ですが自由気ままに世界の常識を描き直そうと思います~

日奈 うさぎ

文字の大きさ
57 / 59
第四章

第56話 あなたが描くわたくしを見てみたいのです

しおりを挟む
 んっん~~~! 女王陛下の椅子に座った姿は実に麗しい。
 しかもその姿を隅々まで舐めるように眺めていいとなれば格別であぁ~る。
 出来ることならこの光景を脳内に延々と残るほど焼きつけたいものだぁ~!

『チッ、あんなスッケスケの服着やがってエロザルがよぉ~! 一丁前に盛ってんじゃねーぞ、あぁ~ん!?』

 しかし視界に延々と残るへるぱの悪態がウザくて気分が上がらない。
 何ならお前もネグリジェとか着て誘惑してくれてもいいのよ?

『はぁ!? べっ、別にピクトのためなら着てやっても、いいんだからねっ!?』

 おっツンデレか?
 しかし言ってみるもんだ。早速へるぱが視界外にトテトテと歩いていく。

 そして戻ってきたらキノコだった。

 赤キノコの着ぐるみを被ったへるぱが恥ずかしそうにこっちを見てきたのだ。
 ギュッギュと体をしならせる姿はキノコ好きにはきっと堪らないのだろう。

「それがネグリジェってどういうことだよおッ!!!!!」

「ひっ!?」

「あ! いやね、ちょっと妄想を拗らせすぎちゃって……」

 ついつい声に出してツッコんでしまった。
 へるぱめ、余計な事して気を散らすんじゃないよ。

 ……と自らも戒めつつ再びを向け、女王様をまじまじと見つめる。

 そう、これは大事なお願いを叶えるために必要なこと。
 彼女を描くという大業のためにもやらねばならぬことなのだ。



 ――それというのも、数時間前のこと。



「……わたくしのことを絵に、描いて頂きたいのです」

「は、はいぃ!?」

 唐突なお願いに心を躍らせていた俺だったが、意外な一言に驚かされた。
 でも恥ずかしそうに懇願する彼女は一生懸命で、つい聞き入ってしまった。

「実はセリエーネにあなたの話を伺っておりまして、聞くとあなたは、その、絵描きだと」

「あいつっ……余計なことをぉ」

「そこで百年前と同様、この節目のためにわたくしの絵をガルテニアに納めて頂きたいと思いまして――」

 どうやら話を聞くに、この国は昔から事あるごとにエルフが守って来たらしい。
 そうして互いに距離を取りつつも共存することが彼らの本懐なのだそう。

 それで大事を済ませると、都度代表者の絵を描いて残す習わしがあるのだとか。

「どうかお持ちになってくださいませ」

 そんな話を済ませると女王様が手をパンパンと鳴らし、誰かを大声で呼ぶ。
 するとすぐ扉が開かれ、二人の使用人が何かを抱えて部屋へと入ってきた。

 人一人分はある大きな絵画だ。
 しかも描かれているのは間違い無く、エーフェニミス本人。

 おまけに言えばかなり上手い。
 油絵なのに本人と相違ないくらいに写実的で緻密だ。

「こちら百年前に残された絵画でございます。国王の私室に飾られ続けた由緒ある代物ゆえ、扱いにはどうかお気をつけくださいませ」

「ええ、わかっております。ありがとう」

「では失礼いたします」 

 ついでに三人目が大きな置き台イーゼルまで持ってきて床へと設置。
 巨大な額縁に飾られた絵画を立てかけ、揃ってそそくさと退散してしまった。
 気を遣ってくれたのだろうけど、今はイヤラシイ気分にもなれない。

 是非ともこの絵画を描いた絵師に詳しく話を聞きたいくらいだ。
 この鮮やかな色使いとか、俺が追い求めてやまなかったものだから。

「これと同じようにわたくしを描いて頂きたいのです」

「同じように、ですか」

「ええ。絵描きというのはわたくしも詳しく存じませんが、絵を描ける方、ということに違いは無いのでしょう?」

 確かにそうだが、俺は……。

「ですから、どうかわたくしのためにも描いていただけないでしょうか?」

 ……この願いばかりは、俺にも叶えられそうにない。
 意気揚々と耳を傾けてみたのに、まさかこんな結果が待っているなんてな。
 こんなことならセリエーネとウルリーシャにあんな話をするんじゃなかった。

 そもそも俺はデジタルピクチャー派で、油絵なんて高校生の授業以来だ。
 嘘じゃない、けど俺と女王様とでは絵描きへの認識が違い過ぎるんだ。こんなプロ級の絵と同じ物なんて到底描ける訳が無いだろう。

 だったら、いっそ。

「ごめん女王様、これは俺には無理だ。俺は言うほど絵が上手い訳じゃないからさ」

 もう本当のことを話してしまおう。
 俺は絵師でも底辺中の底辺なんだって。
 SNSでもうだつの上がらない木っ端なんだってな。

「それでも構いません」

「――えっ?」

 だけど女王様のハッキリとした一言が俺の頭を突き抜けた。
 そんな彼女の表情は真剣で、でもどこか優しくて。

 その口元が僅かに微笑むと、柔らかく開いた。

「わたくしはそれでも、ピクト様に描いて頂きたいのです。あなたの描くわたくしを観たい、そう願っています」

「女王様……」

「あとですね、その女王様呼びはこういう二人きりの場所ではやめてください。名前で、呼び捨てで、愛情をもって囁いてください」

「ちゅ、注文が多いな!?」

「ふふっ、わたくし普段はこう我儘なのですよ? エルフらしくなく好奇心旺盛で、昔はよく禁を犯して森の外に出たり。あげく里を飛び出して冒険者となって、勇者とも出会って邪王と戦ったくらいなんですからっ」

「それ全部望んだことだっていうなら、最強の我儘女王だな」

「ええそうですとも?」

 俺の戯言も、彼女にとっては笑いの種にしかならなかったようだ。
 途端にクスクスと笑い、足まで子どものようにパタパタとさせてしまっていて。
 こういう無邪気な所が容姿に似つかわしくて可愛いって思う。

「ですから命令です。ピクトよ、わたくしを描きなさい。あなたの思うままに」

「……わかったよ、俺の負けだ。出来るだけの技術を奮わせて頂きますよ、エーフェ」

「ふふっ、よろしいっ」

 そんなエーフェの本当の姿が俺にも勇気を与えてくれたらしい。
 気付けばこっちにも笑顔が伝染うつってしまっていた。

 それに、何気なく呼んだ愛称も彼女は気に入ってくれた。
 俺のおぼつかない筆の持ち方も見過ごしてくれた。

 だからやるだけやってみようと思えたのだ。
 無理だと思わず、諦めずに、自分の思うがままに。
 親友の言葉を思い出して、初心に帰ったつもりで挑むとしよう。

 その意気込みに従い、用意された真っ白のキャンパスに絵の具を塗りたくった。
 悩んで、足掻いて、何度もやり直して。



 それから試行錯誤を繰り返してはや一ヵ月。
 ここまでやってようやく自分が納得する絵を描ききることが出来たのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...