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第40話 魔戦王の故郷へ
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大陸遠征となると、今までとは訳の違う厳しい戦いとなる。
食料や兵器などの物資も限られるし、現地の土や水さえ口に合わなかったり。
異なる土地の水を飲んだだけで腹を下すなど、よくある話だから。
けれど私達はそれでもなお恐れず、東のガウリヨン大陸へと上陸した。
十分な物資を持った上で、故郷からの継続的な補給を受ける手筈も付けて。
ただ現地状況はと言えば最悪だ。
私達が揚がった港でさえすでに魔物の支配下だったから。
上陸直後に殲滅したものの、近くのダンジョンを攻略しなければ安心はできない。
そこで私達は港を攻略拠点として設定。
ダンジョン攻略班と拠点整備班で分かれる事にした。
まず攻略班として私が先導を切り、拠点周りの魔物の集落を襲撃して殲滅。
その間に見つけたダンジョンへ魔導人形を送り込んで破壊。
他の部下達も同様に周囲を探索し、成果を上げていく。
一方で拠点では魔導人形生産工場を造り、ひとまず物資を確保。
また見つけた生存者を救助、拠点にて保護する事も忘れない。
さらには山奥で避難集落も見つけたようで、彼等も人員へと取り込む事に。
特に生存者の発見は私達に大きな進展をもたらした。
さすがに現地人だけあって、大陸の事にとても詳しい。
どこにどんな国があるのか、最近までどんな状況だったのか、などと。
おかげでどう攻めるべきかがすぐに判断できたわ。
例えば、帝国の奪還は後回しにする、など。
本当なら真っ先に奪還するべきだが、なにぶん状況がよろしくない。
なにせ帝国はこの五年間で広大な領土の九割を奪われてしまったので。
今や最後の砦である帝都さえも危うい状況だという。
つまり、それだけ魔物の密度が濃いという事。
さすが世界最強の国家を制圧しただけに、魔物自体の強さも並では無いだろうから。
もしかしたらシャウグハイ級の魔物さえゴロゴロといるかもしれない。
そこに今の戦力で突撃するなんてただの自殺行為だ。
だからまず周辺諸国を救う。
そうして物資と人員を確保し、戦力を集結させた上で突破しようという訳である。
いくら私でも部下達を犬死にさせるような真似はしたくないからね。
その計画の下、私達はさっそく海沿いにある一国の解放を果たした。
とはいえ、もうすでに滅びていた後だったけれど。
この大陸はもうかなり魔物の侵略率が進んでいた。
第二、第三の国も滅ぼされていたというくらいに。
もしかしたらこの大陸はもうほとんど人がいないのかもしれないわね。
ま、それもそうか。聖護防壁が無くなってもう五年以上も経つものね。
それでも耐え続けている帝国には正直感服するわ。
それだけの意地があるのか、それとも――
そう疑問視しながらも私達は戦い続けた。
本土からの援軍も駆け付け、戦力を増強させながら。
幸いにも無事だった国もあって、彼等もまた救っては取り込んで。
本土と比べて進みは遅かったけれど、確実に歩を進めていく。
時折、帝都の中心へと補給物資を投下したりなどで様子を見ながら。
ドレスギア、もうかなりキツくなってきたから新調しないといけないわね。
それで少しだけ戦力増強をと、少しの間だけお暇を貰った訳だけど。
その間にも部下達が勢いのまま周辺各国を解放し続けてくれていた。
始めは頼りなさそうな貴族達だったけど、今や頼りになる戦士になってくれたわ。
もうこの時点で私の当初の目標は超えたみたい。
けどもう少しだ。
あともう少しだけ彼等の力を借りたい。
せめてガウリヨン帝国を解放するという大仕事を果たすその時までは。
そう願いつつ、私は思い付くままに新装備開発を続けた。
自分の分のみならず、部下達が扱う物も含めて。
強力な魔物を倒して素材も潤沢だったから、とても作業がはかどったわ。
そのおかげで、私達は遂に帝国奪還の算段がついた。
救世計画が始まっておおよそ二年が経った時の事である。
「遂に来ましたな、この時が」
「えぇ」
今、私達は帝都への足掛かりにしようと、とある都市を崖上から見下ろしている。
すでに魔物に支配されて久しい廃墟を。
「にしても随分と駆け足できたものね。おかげで足もクタクタよ」
「ハハハ……この二年間、二大陸をずっと歩き通しでしたからな」
「馬に乗ればいいのに、ミルカは強情だ」
「言ったでしょ? お尻が痛くなるから嫌なの」
見ただけでもおびただしい数の魔物がひしめいている。
こうしてつい雑談を交わして気を紛らわせたくなるくらいにね。
まぁそれだけ余裕もあるからなんだけど。
「ふふ、ご主人様は私の背以外にはまたがらないわ!」
というのも、私達も随分な人員増強を果たしたから。
イーリス叔母上が自ら乗り込んで来た時は驚いてしまったもの。
「いいや、彼女は僕の背にも座る」
「はぁ!? ずっと一緒だったからって調子に乗るんじゃないわよ!?」
「ははは、ずっと一緒だっただけだと思わないでくれ」
「エルエイスも誤解させるような事言わないの。何もできなかったクセに」
「ウッ……」
実は本土がかなり安定したようで、有力な人材を送れる事になったらしい。
それで選ばれたのが叔母ら上位魔術士部隊とグライオス精鋭派遣部隊だ。
私の部下達と比べたらまだまだだけど、露払いなら叶う充分な戦力だろう。
「ミルカ様、攻略戦の準備が整いました。いつでもいけます!」
「ずいぶん早いけど本当? お腹は空いてない? トイレとかは済ませた?」
「えっ……あ、へ、平気ですぅ!」
「わかったわ。それじゃあ五分後に出撃すると皆に伝えてください」
「ハッ!」
皆の士気も充分。
今の兵もなんだかやたらウキウキと走っているし。
それだけこの帝国奪還作戦が楽しみなのね。
「相変わらずミルカ殿の母性が極まっているな」
「なんだか姉さんに似てきた気がします。やっぱり親子なんだなって」
「君もあまり無理はしないでくれよ? 私の娘であるし、祖国の息子も悲しませたくはないからな」
「えぇ、ラギュース義父様も」
「……あら、結局まだ結婚解消してなかったの?」
「え? あぁ~~~なんだかんだでおざなりのままで、ウッフフフ!」
「そういえば叔母上もなんか変わったわね。女性っぽくなったっていうか」
「そ、そうかしらぁ~? モテ期きちゃったかな~みたいな!?」
「くくく、君も相変わらずアドリブが下手だな」
いや、きっと多くの者達が楽しみにしているのだ。
この戦いが終われば事実上、魔物との戦いにピリオドが打たれるから。
叔母上だって、この戦いが終われば改めて離婚話が進められるだろうし。
その必要があれば、だけどね。
「この戦いが終わったら自分、解放してもらえますかー!?」
「働け鳥人間」
「ブワワーッ! ミルカ様自分にだけ厳しいー!!」
なんだかんだでずっと付いて来たレスティも望み通りお役御免になる。
うっとおしいから早くくたばらないかなーとか思ってたけど意外にしぶといわ、この娘。逆境に強過ぎて。
本当は最初に「天界に帰れ」と罵倒したのだけどね。
そうしたら「追い返された事をしったら親に勘当されるから無理ですぅー!」って、強引に付いてくる事になったってワケ。
まぁおかげで今は主戦力の一人なのだけれども。
「さて、そろそろ時間ね。皆、最後まで気張って行くわよぉ!」
「「「おおおーーーッ!!!!!」」」
それと他の貴族達やヴァルグリンドナイツも健在。
皆ここまで付いて来てくれた心強い英雄達よ。
こんな私達の戦いが遂に終局へと向かい始める。
かつて世界一を誇っていた帝国の首都奪還、その足掛かりを前にして。
さぁて、それじゃあ一発ブチかましてやりましょうか!
まずは目前にたむろっている魔物達の血祭りという盛大な狼煙をね!
食料や兵器などの物資も限られるし、現地の土や水さえ口に合わなかったり。
異なる土地の水を飲んだだけで腹を下すなど、よくある話だから。
けれど私達はそれでもなお恐れず、東のガウリヨン大陸へと上陸した。
十分な物資を持った上で、故郷からの継続的な補給を受ける手筈も付けて。
ただ現地状況はと言えば最悪だ。
私達が揚がった港でさえすでに魔物の支配下だったから。
上陸直後に殲滅したものの、近くのダンジョンを攻略しなければ安心はできない。
そこで私達は港を攻略拠点として設定。
ダンジョン攻略班と拠点整備班で分かれる事にした。
まず攻略班として私が先導を切り、拠点周りの魔物の集落を襲撃して殲滅。
その間に見つけたダンジョンへ魔導人形を送り込んで破壊。
他の部下達も同様に周囲を探索し、成果を上げていく。
一方で拠点では魔導人形生産工場を造り、ひとまず物資を確保。
また見つけた生存者を救助、拠点にて保護する事も忘れない。
さらには山奥で避難集落も見つけたようで、彼等も人員へと取り込む事に。
特に生存者の発見は私達に大きな進展をもたらした。
さすがに現地人だけあって、大陸の事にとても詳しい。
どこにどんな国があるのか、最近までどんな状況だったのか、などと。
おかげでどう攻めるべきかがすぐに判断できたわ。
例えば、帝国の奪還は後回しにする、など。
本当なら真っ先に奪還するべきだが、なにぶん状況がよろしくない。
なにせ帝国はこの五年間で広大な領土の九割を奪われてしまったので。
今や最後の砦である帝都さえも危うい状況だという。
つまり、それだけ魔物の密度が濃いという事。
さすが世界最強の国家を制圧しただけに、魔物自体の強さも並では無いだろうから。
もしかしたらシャウグハイ級の魔物さえゴロゴロといるかもしれない。
そこに今の戦力で突撃するなんてただの自殺行為だ。
だからまず周辺諸国を救う。
そうして物資と人員を確保し、戦力を集結させた上で突破しようという訳である。
いくら私でも部下達を犬死にさせるような真似はしたくないからね。
その計画の下、私達はさっそく海沿いにある一国の解放を果たした。
とはいえ、もうすでに滅びていた後だったけれど。
この大陸はもうかなり魔物の侵略率が進んでいた。
第二、第三の国も滅ぼされていたというくらいに。
もしかしたらこの大陸はもうほとんど人がいないのかもしれないわね。
ま、それもそうか。聖護防壁が無くなってもう五年以上も経つものね。
それでも耐え続けている帝国には正直感服するわ。
それだけの意地があるのか、それとも――
そう疑問視しながらも私達は戦い続けた。
本土からの援軍も駆け付け、戦力を増強させながら。
幸いにも無事だった国もあって、彼等もまた救っては取り込んで。
本土と比べて進みは遅かったけれど、確実に歩を進めていく。
時折、帝都の中心へと補給物資を投下したりなどで様子を見ながら。
ドレスギア、もうかなりキツくなってきたから新調しないといけないわね。
それで少しだけ戦力増強をと、少しの間だけお暇を貰った訳だけど。
その間にも部下達が勢いのまま周辺各国を解放し続けてくれていた。
始めは頼りなさそうな貴族達だったけど、今や頼りになる戦士になってくれたわ。
もうこの時点で私の当初の目標は超えたみたい。
けどもう少しだ。
あともう少しだけ彼等の力を借りたい。
せめてガウリヨン帝国を解放するという大仕事を果たすその時までは。
そう願いつつ、私は思い付くままに新装備開発を続けた。
自分の分のみならず、部下達が扱う物も含めて。
強力な魔物を倒して素材も潤沢だったから、とても作業がはかどったわ。
そのおかげで、私達は遂に帝国奪還の算段がついた。
救世計画が始まっておおよそ二年が経った時の事である。
「遂に来ましたな、この時が」
「えぇ」
今、私達は帝都への足掛かりにしようと、とある都市を崖上から見下ろしている。
すでに魔物に支配されて久しい廃墟を。
「にしても随分と駆け足できたものね。おかげで足もクタクタよ」
「ハハハ……この二年間、二大陸をずっと歩き通しでしたからな」
「馬に乗ればいいのに、ミルカは強情だ」
「言ったでしょ? お尻が痛くなるから嫌なの」
見ただけでもおびただしい数の魔物がひしめいている。
こうしてつい雑談を交わして気を紛らわせたくなるくらいにね。
まぁそれだけ余裕もあるからなんだけど。
「ふふ、ご主人様は私の背以外にはまたがらないわ!」
というのも、私達も随分な人員増強を果たしたから。
イーリス叔母上が自ら乗り込んで来た時は驚いてしまったもの。
「いいや、彼女は僕の背にも座る」
「はぁ!? ずっと一緒だったからって調子に乗るんじゃないわよ!?」
「ははは、ずっと一緒だっただけだと思わないでくれ」
「エルエイスも誤解させるような事言わないの。何もできなかったクセに」
「ウッ……」
実は本土がかなり安定したようで、有力な人材を送れる事になったらしい。
それで選ばれたのが叔母ら上位魔術士部隊とグライオス精鋭派遣部隊だ。
私の部下達と比べたらまだまだだけど、露払いなら叶う充分な戦力だろう。
「ミルカ様、攻略戦の準備が整いました。いつでもいけます!」
「ずいぶん早いけど本当? お腹は空いてない? トイレとかは済ませた?」
「えっ……あ、へ、平気ですぅ!」
「わかったわ。それじゃあ五分後に出撃すると皆に伝えてください」
「ハッ!」
皆の士気も充分。
今の兵もなんだかやたらウキウキと走っているし。
それだけこの帝国奪還作戦が楽しみなのね。
「相変わらずミルカ殿の母性が極まっているな」
「なんだか姉さんに似てきた気がします。やっぱり親子なんだなって」
「君もあまり無理はしないでくれよ? 私の娘であるし、祖国の息子も悲しませたくはないからな」
「えぇ、ラギュース義父様も」
「……あら、結局まだ結婚解消してなかったの?」
「え? あぁ~~~なんだかんだでおざなりのままで、ウッフフフ!」
「そういえば叔母上もなんか変わったわね。女性っぽくなったっていうか」
「そ、そうかしらぁ~? モテ期きちゃったかな~みたいな!?」
「くくく、君も相変わらずアドリブが下手だな」
いや、きっと多くの者達が楽しみにしているのだ。
この戦いが終われば事実上、魔物との戦いにピリオドが打たれるから。
叔母上だって、この戦いが終われば改めて離婚話が進められるだろうし。
その必要があれば、だけどね。
「この戦いが終わったら自分、解放してもらえますかー!?」
「働け鳥人間」
「ブワワーッ! ミルカ様自分にだけ厳しいー!!」
なんだかんだでずっと付いて来たレスティも望み通りお役御免になる。
うっとおしいから早くくたばらないかなーとか思ってたけど意外にしぶといわ、この娘。逆境に強過ぎて。
本当は最初に「天界に帰れ」と罵倒したのだけどね。
そうしたら「追い返された事をしったら親に勘当されるから無理ですぅー!」って、強引に付いてくる事になったってワケ。
まぁおかげで今は主戦力の一人なのだけれども。
「さて、そろそろ時間ね。皆、最後まで気張って行くわよぉ!」
「「「おおおーーーッ!!!!!」」」
それと他の貴族達やヴァルグリンドナイツも健在。
皆ここまで付いて来てくれた心強い英雄達よ。
こんな私達の戦いが遂に終局へと向かい始める。
かつて世界一を誇っていた帝国の首都奪還、その足掛かりを前にして。
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