本気ですか?お義姉さま

たかはし はしたか

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そっと引き出しを開ける。
なぜだかわからないけど、この引き出しを開ける時はお淑やかな気分になるわ。
色別アイテム別に並んだ宝石。
実家の公爵家でよく用いられるサファイアが多い。
生まれた時に贈られたもの、誕生日ごとのプレゼント。
社交に出ないのに他の兄弟に劣らないものがいただけていたので、社交に出るためのものが一通り揃っていて、宝石類だけで引き出しがいっぱいです。
売り払えばわたしとマウリーなら一生暮らせるわね。
一番大きいのは母方の祖父が杖につけていたという大きな黄水晶をリメイクしたブローチ。
子供の頃はよくこれであそんだっけ。
妹と光に当ててきらきらをながめたり、お兄様とプリンセスごっこしたり。
指輪は二つだけ。
前の結婚の婚約指輪と結婚指輪。
どちらも私のだけれど、私の指には合わないぶかぶかの指輪。
婚約指輪の宝石は大粒なアレキサンドロイド。
所有する宝石がこの国では序列を表す。
爵位や社会的地位とは関係ない、ただの昔からの慣習ですが。
その宝石を持つことになったその人の縁への敬意、だったかしら。
このアレキサンドライトは以前は王妃が持っていたこともある由緒あるもの。
私の序列は何番なのだろうか。
そっと引き出しをしめる。
そもそも学園にも行かず、公式の場に出たこともない私に序列があるのだろうか。
気になったことはあるけど、誰にも聞いたことはなかったけど、私の夫だった人は何者だったんだろうか。
お母様かお兄様に今度聞いてみようかしら。
あら、痛い。
よく見たら指先が傷ついています。
先日ジュリア様と茂みを抜けた時に引っ掛けたところ。
ふさがっていたのにまた開いたみたい。
軟膏を塗っておきましょう。
ジュリア様と過ごした日の夜は時々、もやもやとします。
そういえば、あの人形をセナ様はどうなさるのだろうか。
すごくよくできていました。
座れるし、ぱっと見はほんとに私たち二人に見えます。
本体はジュリア様が作りましたが、衣装は私が作りました。
あのドレスの刺繍とても気合を入れたんです。
それに上手く切り離せば「ジュリア様」のドレスからはショールが「ミラ夫人」のドレスは7枚のハンカチに作り替えできるようにしてあるのです。
ああ、せっかくあのお宅ですごして初めて形となった学びでしたのに、なんとかならないものでしょうか。
軟膏を塗りながら思い出しました。
なんで引き出しを開けたのか。
感傷に浸るためではなくマウリーの初めての婚約のためでした。
ただ私の宝石は格が高すぎて伯爵令息に送る婚約の品としては参考になりませんね。
馴染みの宝石商に相談しましょう。

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