今日は。

桜海 ゆう

文字の大きさ
14 / 17

今日は特別

しおりを挟む

 「アヤ、お姉ちゃん千円見つけたの。ふふ」
 双子の一卵性の姉のアヤに部屋に呼び出してきたので妹のカヤは、部屋のドアをキチンと閉めた。


 2人は、まだ9歳の小学3年生だ。両親ですらうり2つの姉妹を間違える。


  姉のアヤは、外向的で人見知りをしない。妹のカヤは内向的で誰と話す時でも緊張をする。似ているのは色白の肌に二重の瞳、ツインテールをしている事くらいだ。


  姉のアヤは、何か秘密を見つけると、必ずカヤに話してくれる。


  「どこで見つけたの?交番に行かなくていいの?」
 心配性のカヤが聞く。


 アヤの手には、くしゃくしゃの千円札が1枚握られていた。


  ドアをノックする音が聞こえてカヤは飛び上がり、アヤは千円札をスカートのポケットに入れた。


  お母さんがドアをあけた。
 「カヤの部屋に行ったら、誰もいなかったから・・・もう11時よ、明日は土曜日で休みだからって早く眠りなさいね?」

  
   心臓がバクバクと脈打つカヤに対してアヤは、冷静な顔ではあーいと返事をする。


  「お母さん、明日カヤと遊びに行っていい?」
 突然アヤが話す。お母さんは思案顔の末に、防犯ブザーと帰りは子供携帯で連絡する事を約束したら、了解がでた。


  お母さんがドアを閉めて、階段をおりる音がするとアヤは、悪そうな顔で笑った。


  「カヤ、明日お出かけしよう!この千円は、お年玉にとってあった残り」
   その言葉に安心して、カヤはうなずき自分の部屋に戻った。


  次の日、おそろいのポシェットと防犯ブザーと子供携帯と隠した千円札を持ち、アヤとカヤは出かけた。


  どこに行くのか分からないアヤは、手を握っているカヤに何度も聞くが、教えてくれない。春の風が柔らかく2人のツインテールを流す。


  「ここ」
 カヤが見上げると、両親とたまに来るファミリーレストランだ。


  緊張するカヤに対してアヤは、グイグイ手をひく。ドアを開けるとベルが鳴る。


 「2名様かな?」
 優しそうなお姉さんが聞いて、4人がけの席に案内してくれた。


  「お子様パフェを2つお願いします」
 お姉さんに迷いなくアヤが注文する。お子様パフェと言えば、家族で食べにくるとお腹がいっぱいになると言う理由でお母さんが頼んでくれないスイーツだ。


  「すごい!」
 思わずカヤは声に出し、アヤは自慢そうな顔だ。


  運ばれてきたお子様パフェは、1番下がバニラアイスクッキーを砕いた3層で、1番上には、イチゴがのっている。


  「ごゆっくりどうぞ」
 お姉さんがニッコリ笑う。大人になった気分。


 アヤもカヤも夢中で食べた。お金を払うレシートを持つとアヤは千円札を取り出した。


  「お父さんとお母さんには、秘密ね」
 アヤがにっこり笑う。カヤも笑う。


 「お支払いお願いします」
 アヤがお母さんみたいに、レジのお姉さんにレシートとくしゃくしゃの千円札を出す。


  お姉さんは、少し困った顔をする。確かお子様パフェは500円ぴったりだ。


   「2人で、1100円するの。ぜいきん、て分かる?」
   自慢げだったアヤの顔が真っ青になる。カヤはもっと真っ青になる。


   「んー、今日は2人で来たの?ちょっと待っていてね」
   家のお母さんに連絡される。叱られる。アヤもカヤも涙目になっているとお姉さんが戻ってきた。


    「今日は、2人でお出かけ偉かったから、お姉さんから特別なプレゼント」
   お姉さんの手には、100円がキラリと光る。


  「またのお越しをお待ちしています」
 お姉さんは、レシートをアヤに渡して笑う。


  「ありがとうございます」
 アヤとカヤの声がそろった。お姉さんが笑う。


  帰り道、お母さんには公園に行っていたと嘘をついて電話をした。


  アヤとカヤは手を握って、クスクスと笑った。
オレンジ色の夕日が2人のツインテールをオレンジ色に染める。


   今日は、大人になった気分の特別な日だ。


  「パフェおいしかったね」
 アヤが笑う。


   「お姉さん優しかったね」
 カヤが笑う。


  今日はアヤとカヤが少しだけ大人になった特別な日だ。



  


  


  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...