先祖代々、視えている

桜海 ゆう

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第5話 祖母の死んだ息子から

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   派遣の契約の会社で面接を受け、契約が決まった帰りに銀行によると、残高25万だった。


 「何とか餓死は、逃れられそう」
 通帳を見ながら、マナは自分の手が震えている事に気がついた。


  外に出ると、夕日は落ち夜空が広がっている。


  「言い忘れてたわ、マナが先祖がなぜ視えるのか解かない限り、マナが死ぬまでご先祖様は、ずっと出てくるの」
   となりに、母方の祖母が通帳を覗き込みながらいたのでマナは、「ひいっ」と悲鳴をあげた。


  「だから、おばあちゃん突然出てこないでよ」
   周囲を歩く帰宅中の人がチラチラ見るので、マナは声をおさえた。



  「だって、仕方ないじゃない。何だかマナの事を想うと、すでに横にいるの。今月、大丈夫そう?」
    先祖の謎より孫の生活を心配してくれるのは、生前から変わらない。



 「仕事、決まったし、大丈夫」
   一言マナが言うと、祖母は安心したように微笑んで、ゆっくりと消えた。


  消えたと思った3ヶ月後、マナが正社員への気遣いや片道2時間かかる通勤にヘトヘトになっていた時に、また祖母があらわれた。


  片道2時間の通勤に足はむくみ、正社員は偉そうにマナに振る舞いだした。辞めたい。


  でも、次の仕事が早く見つかるとは思えない。


  夕食は、近くのコンビニで買った298円のハンバーグ弁当と98円のお茶だけだ。ご褒美にスイーツも買いたかったが、今は少しでも貯金したい。


  初夏が近ずき、マナは黒い上着のインナーとスウェットをはいてソファーの上で、ボンヤリ袋に入ったままのお弁当を見ていた。



  その先にいたのだ、祖母が10歳くらいの男の子の手をつないで。


 「だれっ!」
 先祖が時間、場所問わず出て来るのはなれていたマナだが、祖母が見知らぬ少年を連れている。


  「お母さん、はしたない女性です」
 開口1番、その少年はマナを指差し祖母に言った。

 お母さん?


 「マナ、悪いけど上着着てちょうだい。仕事はどう?その感じだと続きそうにもないけど」
   おしゃべりなのは、亡くなったマナの母親同様、遺伝かもしれないと思いながら、そばにあったTシャツを着る。


  テーブルを挟んで、祖母と少年とマナは向き合った。



 「この子、あなたの叔父さん」
 は?思わず祖母の紹介に声が出た。


  「マナのお母さんが産まれる前に、病気で10歳で死んだのよ。お母さんには言ってなかったけど、あの子まで早死にするんだもん、あの世で、びっくりされちゃったわよ、あははは!」

  豪快に笑う祖母をボンヤリ見ていたら、我に帰ったのか、祖母が真顔になった。


 「あなたの叔父さんがね、うちの家系では唯一の男なの。聞いてみたら、江戸時代にご先祖様を見えるようになって、迫害されて、消えた女性の記憶を少し覚えてるっていうの」
    仕事で疲れきっていたマナは、半分眠くなり、うとうとしてきた。


  「お母さん、この女性は失敬です」
 また指を少年に指された。


  「とりあえず話だけでも、聞いてくれない?」  
  祖母が困った顔をしたので、仕方なく聞く事にした。


  「マナさん、産まれ代わりを信じますか?まあ、先祖が見えている時点で信じますね」
   話し方が、強引な叔父さんだ。


  「僕が、死ぬ前に見えたのはあなたでした。それも、そんなふしだらな格好ではなく着物を着た、もっと美しい女性でした」

  何だか、いちいちトゲのある叔父だ。


 ふと、気がついた。私に似ていた?

 叔父さんは、やっと理解したのかと、うなずいた。


  「最初に、先祖が見えたのは江戸時代で産まれたマナさん、あなたなのです。だから、謎を解いて下さい。そうしないと、僕達が、成仏できません。以上」

 それだけ言うと、10歳の叔父さんはスッと消えた。


  祖母は困った顔をしていたが、呟いた。「あの子が死ぬ前に、母さんには娘が産まれる、僕の妹だ。その妹の娘が全てを解決するって、最期の言葉だったの」

  困り果てた祖母を前に、訳も分からなかったが仕事の疲れもあり、マナは安易に考えてみると言ったらしまった。


  Tシャツを着たせいで、また汗をかいた。弁当を電子レンジに入れ、またお風呂に向かった。


  「こまっしゃくれた10歳の叔父さん」
 マナは、思わず笑ってもいた。





 



   
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