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新しい生活
19.需要と可能性と誇り
「これは……?」
ゲーレンはテーブルの上に置かれたベアリングを手にしてしばらくいじくっていたが、やがてその顔が驚愕に包まれていった。
「アマーリア殿、これを一体どこで?」
流石に技術集団の長を務めているだけあってすぐにベアリングの可能性に気が付いたらしい。
食いつくようにアマーリアに尋ねてきた。
「実を言うとこれはこのテツヤ殿の考案したものなのだ。名前はベアリングというらしい。このベアリングをドワーフ街の職人たちに伝えたいというのがテツヤ殿の希望でね」
「これを、あなたが?」
ゲーレンが驚いて俺を見た。
「これはとんでもない物ですぞ!これはこの街の、いやこのミネラシアの産業をも一変させるかもしれない代物ですぞ!」
口角泡を飛ばしながらまくし立ててきた。
「まさかこんな考えがあったとは!軸と車輪の間に鉄球を配置し、鉄球の回転で摩擦力を軽減させるなんて!しかもこの滑らかさ!見なされ、ちょっと回しただけなのに今も回り続けておりますぞ!」
「実はこれをドワーフの職人さんたちが作って荷車なんかの車輪に組み込めるようにしてほしいんだ。できるかな?」
「ふーむ……まさか、今朝からドワーフ街の間で城外町で凄い荷車が作られていると噂になっておりましたが、テツヤ殿が?」
やべえ、そこまで噂になってたのか。
下手したら明日は今日どころの話じゃないってことになってたわけか。
これはなんとしてもドワーフたちに作ってもらわないと過労死で死にかねないぞ。
「ああ、試しに作ってみたら凄い騒ぎになっちゃってさ。恥ずかしい話ながら俺にはもうキャパオーバーなんだ。なのでドワーフ街のみなさんに作ってもらえないかと思って。もちろん仕組みやコツは教えるし、販売した分の利益は全部そちら持ちだ。使用料だって取らない。それでどうかな?」
もとよりこれで金を稼ごうなどとは思っていない。
「せっかくですが、それはお断りしますぞ」
「な、何故なのだ、ゲーレン殿?これはドワーフ街にとっても大きな仕事になるのだぞ?」
アマーリアが慌ててゲーレンに尋ねた。
「もちろんこのベアリングというのは大したものです。車輪の付いたもの全てにこのベアリングを組み込めば効率は今の倍、いや十倍にだってなるでしょう。需要だって無限と言ってもいいでしょうな」
「ならなんで」
「だからこそですじゃ。我らとて技術集団ドワーフギルドとして己の技術で飯を食っていることに誇りをもっております。それをいきなりやってきてさあ作れ、金なんか要らないと言われては我々の沽券にかかわるのです」
確かにゲーレンの言うとおりだ。
どんなに優れたものであっても施しとして与えられたら少なからずカチンとくることだってあるだろう。
技術に誇りを持った職人だったらなおさらのはずだ。
「悪かった」
俺はゲーレンに頭を下げた。
「あなたを怒らせるつもりはないんだ。作っていいなんて俺の思い上がりだった。ベアリングの委託製造として正式に依頼したい。もちろん正式な対価を払う。それで許してもらえないだろうか?」
「何を言っておるのです?」
ゲーレンが不思議そうな顔をした。
「これほど革新的な物をただで貰うのは我々の誇りが許さんのです。金を払うのは我々の方ですぞ」
「へ?いや、俺は別にお金なんか……」
「何を言いますか!いいですか!これはこの世界の産業を一変させる可能性を持っておるのですぞ!それをただで受け取って儲けを貪ることなどご先祖様が許すはずがない!ドワーフ族の鎚と金床に誓って、絶対にこれはただでは受け取りませんぞ!」
参ったな。
俺としては本当にお金なんか取る気はないんだけど、ゲーレンの言い分もわかる。
気難しいという話だし、一度言ったら絶対に曲げないだろう。
どうしたものか。
「じゃ、じゃあこれならどうかな。まずドワーフギルドにはなるべく安くこれを売ってもらう。俺としてはできるだけみんなに使ってもらいたいからだ。で、使用料として俺に払う分はこの町の孤児院や慈善団体に寄付してもらうってのは」
「ふむ……それなら我々としても気兼ねすることなく作れますな」
ゲーレンも納得してくれたようだ。
「うむ、売り上げの一部を寄付するということになれば町の人々にとっても励みになるだろうし国としても大いに利となるだろう。国王陛下以下諸侯へは私から話をつけておこう」
アマーリアも乗ってきた。
「まずはテツヤ殿とドワーフギルドの間で正式に契約を結ぶ必要があるな」
「それなんだけどさ、俺とドワーフギルドとの間に契約を結ぶんじゃなくて誰でも自由に作れるようにしてほしいんだ」
「それはどういうことですかな?」
ゲーレンが尋ねてきた。
「このベアリングっていうのは構造自体は単純なんだ。おそらく一旦広まったら俺とドワーフギルドが契約を結んでいようと真似して作り出すところがたくさん出てくると思う」
「確かに、これだけ便利なものだとそれは大いにあり得るでしょうな」
ゲーレンが頷いた。
「下手に取り締まってもなくならないだろうし、そこに人員を割いたってコストがかかるだけだと思う。それだったらいっそ自由に作れるようにした方が良いと思うんだ」
ゲーレンはテーブルの上に置かれたベアリングを手にしてしばらくいじくっていたが、やがてその顔が驚愕に包まれていった。
「アマーリア殿、これを一体どこで?」
流石に技術集団の長を務めているだけあってすぐにベアリングの可能性に気が付いたらしい。
食いつくようにアマーリアに尋ねてきた。
「実を言うとこれはこのテツヤ殿の考案したものなのだ。名前はベアリングというらしい。このベアリングをドワーフ街の職人たちに伝えたいというのがテツヤ殿の希望でね」
「これを、あなたが?」
ゲーレンが驚いて俺を見た。
「これはとんでもない物ですぞ!これはこの街の、いやこのミネラシアの産業をも一変させるかもしれない代物ですぞ!」
口角泡を飛ばしながらまくし立ててきた。
「まさかこんな考えがあったとは!軸と車輪の間に鉄球を配置し、鉄球の回転で摩擦力を軽減させるなんて!しかもこの滑らかさ!見なされ、ちょっと回しただけなのに今も回り続けておりますぞ!」
「実はこれをドワーフの職人さんたちが作って荷車なんかの車輪に組み込めるようにしてほしいんだ。できるかな?」
「ふーむ……まさか、今朝からドワーフ街の間で城外町で凄い荷車が作られていると噂になっておりましたが、テツヤ殿が?」
やべえ、そこまで噂になってたのか。
下手したら明日は今日どころの話じゃないってことになってたわけか。
これはなんとしてもドワーフたちに作ってもらわないと過労死で死にかねないぞ。
「ああ、試しに作ってみたら凄い騒ぎになっちゃってさ。恥ずかしい話ながら俺にはもうキャパオーバーなんだ。なのでドワーフ街のみなさんに作ってもらえないかと思って。もちろん仕組みやコツは教えるし、販売した分の利益は全部そちら持ちだ。使用料だって取らない。それでどうかな?」
もとよりこれで金を稼ごうなどとは思っていない。
「せっかくですが、それはお断りしますぞ」
「な、何故なのだ、ゲーレン殿?これはドワーフ街にとっても大きな仕事になるのだぞ?」
アマーリアが慌ててゲーレンに尋ねた。
「もちろんこのベアリングというのは大したものです。車輪の付いたもの全てにこのベアリングを組み込めば効率は今の倍、いや十倍にだってなるでしょう。需要だって無限と言ってもいいでしょうな」
「ならなんで」
「だからこそですじゃ。我らとて技術集団ドワーフギルドとして己の技術で飯を食っていることに誇りをもっております。それをいきなりやってきてさあ作れ、金なんか要らないと言われては我々の沽券にかかわるのです」
確かにゲーレンの言うとおりだ。
どんなに優れたものであっても施しとして与えられたら少なからずカチンとくることだってあるだろう。
技術に誇りを持った職人だったらなおさらのはずだ。
「悪かった」
俺はゲーレンに頭を下げた。
「あなたを怒らせるつもりはないんだ。作っていいなんて俺の思い上がりだった。ベアリングの委託製造として正式に依頼したい。もちろん正式な対価を払う。それで許してもらえないだろうか?」
「何を言っておるのです?」
ゲーレンが不思議そうな顔をした。
「これほど革新的な物をただで貰うのは我々の誇りが許さんのです。金を払うのは我々の方ですぞ」
「へ?いや、俺は別にお金なんか……」
「何を言いますか!いいですか!これはこの世界の産業を一変させる可能性を持っておるのですぞ!それをただで受け取って儲けを貪ることなどご先祖様が許すはずがない!ドワーフ族の鎚と金床に誓って、絶対にこれはただでは受け取りませんぞ!」
参ったな。
俺としては本当にお金なんか取る気はないんだけど、ゲーレンの言い分もわかる。
気難しいという話だし、一度言ったら絶対に曲げないだろう。
どうしたものか。
「じゃ、じゃあこれならどうかな。まずドワーフギルドにはなるべく安くこれを売ってもらう。俺としてはできるだけみんなに使ってもらいたいからだ。で、使用料として俺に払う分はこの町の孤児院や慈善団体に寄付してもらうってのは」
「ふむ……それなら我々としても気兼ねすることなく作れますな」
ゲーレンも納得してくれたようだ。
「うむ、売り上げの一部を寄付するということになれば町の人々にとっても励みになるだろうし国としても大いに利となるだろう。国王陛下以下諸侯へは私から話をつけておこう」
アマーリアも乗ってきた。
「まずはテツヤ殿とドワーフギルドの間で正式に契約を結ぶ必要があるな」
「それなんだけどさ、俺とドワーフギルドとの間に契約を結ぶんじゃなくて誰でも自由に作れるようにしてほしいんだ」
「それはどういうことですかな?」
ゲーレンが尋ねてきた。
「このベアリングっていうのは構造自体は単純なんだ。おそらく一旦広まったら俺とドワーフギルドが契約を結んでいようと真似して作り出すところがたくさん出てくると思う」
「確かに、これだけ便利なものだとそれは大いにあり得るでしょうな」
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