外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人

文字の大きさ
221 / 298
第六部~魔界争乱:来たる変化に備えて

9.二人の夜

「うちの父がすまなかった」

 ソラノが頬を染めながら謝ってきた。

 食事も終わり、俺とソラノはリビングルームのソファに隣り合って座っていた。


 アダムは食事の後にテーブルでうとうとと眠りだし、エスラが寝室へと連れていっている。


「慣れない酒をあんなに飲むものだから」

 ソラノがため息をついた。

「ソラノのお父さんも緊張していたんだろうな。正直言うと俺も料理の味がよく分からないくらいだったんだ」

「私もだ。テツヤが来ると聞いた時は驚いたぞ」

 ソラノがそう言って微笑んだ。


「でもソラノのご両親に会えてよかったよ。一度あいさつしたいと思ってたんだ」

「そ、そうか?いつまでも子離れできない両親で恥ずかしいのだが…」

「そんなことないよ。ソラノが愛されて育ってきたというのがよくわかったよ。騎士隊に入ったソラノを心配するのだってよくわかるしね」

 恥ずかしそうにうつむくソラノの頬が淡く朱に染まった。


「私の家系は代々軍人の家系で親族にも軍人が多いのだが父様は生まれつき体が弱くて軍人への道を諦めざるを得なくてな。私が騎士隊に入った時はそれは喜んでくれたのだが、それでもやはり心配らしい。今でもしょっちゅう連絡してくるのだ」

 そう言って寝室の方を向いた。

 その瞳には優し気な光が瞬いている。


「それはわかる気がするな。ソラノは真面目だし職務に入れ込みすぎる部分があるから心配なんだろうな。そういえばソラノはお父さん似かもしれないな」

「そうかあ?」

 嫌そうな顔をしつつもソラノは少し嬉しそうだった。


「ああ、根が真面目な部分なんかそっくりだよ。お父さんはソラノが可愛くて仕方がないんだろうな。それにこんな可愛い子が男だらけの軍隊に入るとなったら誰だって心配するって」

「か、可愛いっ!?わわわ、私がか?」

 ソラノの顔が真っ赤になった。


「ああ、そのドレスだってよく似合ってるよ。そうしているとまるでどこかのお姫様みたいだ」

「か、からかうのはよせ!」

 耳まで真っ赤にしながらソラノが腕を伸ばして体を離そうとした。

 その手を掴んで引き寄せる。


「からかってなんかいないさ。お父さんにとってもソラノはきっとお姫様なんだよ。俺にもその気持ちはわかる。ソラノがどこかの戦場に送られるとなったらきっと気が気じゃなくなるよ」

「ほ、本当か?本当に私のことを心配してくれるのか…?」

 ソラノが驚いたようにこっちを見つめてきた。


「当たり前じゃないか。きっと夜も眠れなくなる、というかソラノが戦場に行くなら俺が一緒に行ってソラノを守る。約束する」

「テツヤ…」

 ソラノが俺のシャツの胸元を掴んだ。

 見上げるその眼が熱くうるんでいる。


 うっすらと開かれたバラの花弁のような唇から甘い吐息が漏れている。


「ソラノ…」

 ゆっくりとその唇に唇を近づけようとした時、誰かの視線を感じた。

 扉の方を向くとエスラが顔を半分だけのぞかせているところだった。


「お、お、お、お母様…」

 ソラノの頬が羞恥で真っ赤になっている。


「違うのよ、ソラノ。これは二人に飲み物でも持っていこうとしていたところなの。邪魔をするつもりはないから、どうぞ続きをしてちょうだい。母はあっちにいきますからね」

 そう言って部屋に入ってくると何食わぬ顔でテーブルの上にお茶のセットを並べだした。

「さ、あとは若い二人に任せるわね。テツヤさん、今日はお泊りになるんでしょう?ソラノの部屋で良かったかしら?」

「お母さん!」

「おお怖い。それではゆっくりしていってくださいましね」

 エスラはそう言って出ていった。

 そして扉から出ていこうとする時にソラノの方に振り向いてウィンクをした。


「ソラノ、しっかりね!」

「おか…!」


 ソラノが叫ぼうとした時にはエスラの姿は消えていた。


「~~~まったくあの人はっ」

 ソラノが顔を真っ赤にして頭を抱えている。


「まあまあ、明るくていいお母さんじゃないか」

「あれは明るいというんじゃない。私をからかっているだけなのだ!」

「でもソラノの家が仲のいい家族で良かったよ。俺にはそういうのが憧れだからさ」


 俺の言葉にソラノの動きが止まった。

 しまった、つい口が。


「す、すまない。テツヤのことも考えずに私は…私は…!」

 俺は狼狽するソラノの肩を掴んだ。


「いいんだ。こっちこそ余計な気を使わせちゃってごめん。知ってると思うけど俺は孤児院育ちだからさ。こういう温かな家族を見るのが嬉しいんだ。だからソラノが俺のこと気に病むことなんかないんだ。本当だよ」

「で、でも…」

 ソラノの双眸から涙が溢れだす。

 俺はそれを指で拭った。


「泣かなくてもいいって。むしろお礼を言いたいくらいなんだから。ソラノの家族は俺が思い描いていた家庭そのものだったからね。だからまた遊びに来てもいいかな?ご両親が了承してくれたらだけど」

「テツヤ…」

 俺はソラノを抱き寄せると唇を重ねた。

 薄いシャツ越しにソラノの体温を感じる。


「そ、それで…今日は泊っていくのか?わ、私は別に…構わないのだが…」

 胸元を掴んだまま熱い息と共にソラノが小さく聞いてきた。


「お言葉に甘えて…と言いたいところだけど今日は止めておくよ。なんかゆっくりと休めそうにないからね」

 扉の奥から二つの視線を感じながら俺は答えた。


「あ、の、二、人はぁぁぁ~~~」

 ソラノがわなわなと震えている。



「じゃあ今日はこれでお暇するよ」

 そう言って俺は立ち上がった。


「本当にまた来てくれるんだな?約束だぞ?」

 ソラノも立ち上がって俺を見上げてきた。

「もちろんだ。今度はもっとゆっくりさせてもらうよ」



 戸口で別れようとした時、ソラノが唇を重ねてきた。

 それは一瞬触れたと思うとすぐに離れた。


「こ、この続きは次に来た時だからな。こ、今度は二人きりの時に来てくれ」

「ああ、絶対にまた来るよ」



「あら、もう帰っちゃったの?夜はまだこれからなのに」

「お母さま!誰のせいでこうなったと…」

「で、ど、どうなんだソラノ?彼とはどこまで…」

「父さん!」


 ソラノ家の会話を背に俺は一人ゴルドの通りに足を進めた。

 まだ夜は肌寒かったけど胸の奥に温かな炎が灯っている気分だった。
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

元剣聖のスケルトンが追放された最弱美少女テイマーのテイムモンスターになって成り上がる

ゆる弥
ファンタジー
転生した体はなんと骨だった。 モンスターに転生してしまった俺は、たまたま助けたテイマーにテイムされる。 実は前世が剣聖の俺。 剣を持てば最強だ。 最弱テイマーにテイムされた最強のスケルトンとの成り上がり物語。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。