追放チート魔道士、TS魔王と共に魔界で生活する

海道一人

文字の大きさ
18 / 37

18.格の違い

しおりを挟む
「な、なんなんだ、なんなんだっ!」

「ザンギアック様が……死んだ……?」

「なんだあいつは、なんなんだ、あいつはっ!」

「おい、テオ。お前の作ったこの体、なかなかに良いぞ」
騒然とするオーク兵をよそにルーシーは嬉しそうにテオに話しかけた。

「魔法の知識はなくなってしまったが、存外使える体ではないか。軽いしよく動くわ。魔力も相当持っているようだし、いずれこの体で魔法の知識を得れば元の体と遜色ない、あるいはそれ以上の性能になりそうだの」

「て、てめえっ!何者だ!」
オーク兵の一人、――昨日のザコーガだ―― が剣を抜いて叫んだ。
顔中に冷や汗をかき、全身が震えている。

「そ、そこの魔道士といい、おめえら一体なんなんだよ!」
恐怖に震えながら精一杯虚勢を張っている。

「言ったであろう、我はこの国の支配者であると」

「ふ、ふざけんじゃねぇ!ミッドランドの魔王、ルシファルザス様は人間に殺されたんだ!第一てめえとは似ても似つかねえ御姿だったぞ!」
ザコーガの指摘にルーシーはやれやれとため息をついた。

「所詮は目に映ったものしか信じられぬ小者か」
ルーシーは軽くため息をついた。

「ならば、これならわかるであろう」

言うなりルーシーの菫色の瞳から光が発し、全身から魔力が噴き出した。
魔王にしか発しえない濃密で凶悪な魔力が屋敷の敷地一体を包み込む。

敷地の半径数百メートルに渡って全ての小動物がのきなみ気絶し、小鳥は木から落ちた。
大型の獣は狂乱して逃げまどい、森中に獣の叫び声が木霊し、やがて消えていった。
テオの横ではヨハンが白目をむいて泡を吹いている。

「ひ……」
言葉を発する余裕もなくザコーガはへたり込んだ。
格が違うどころではない、目の前にいる小さな少女と比べたら己など足元を這う蟻と同様、いやそれ以下の存在だと魂が理解した。

他のオーク兵たちも同様だ。
中には失禁、気絶した者すらいる。

「理解したようだの」

「す、すいませんでしたぁ!」
意識のあるオーク兵はみな武器を捨てルーシーに平身低頭した。

既にルーシーが魔王であることに何の疑いもなかった。
いや、魔王であるかどうかは問題ではなかった。
自分たちの命が今やこの年端も行かぬ少女の手に握られていると心の底で理解していた。

「い、命ばかりは……」

「すいません!調子に乗っていました!」

「忠誠を誓います!ですから、どうか、どうか命だけはお助けください!」

全身全霊で命乞いをしている。


「どうしたものかの。田舎町とはいえ我を差し置いて我が物顔で振舞っていたのだ、死罪にするには十分な理由があるがの」

「ひぃぃぃっ!それだけは!」

「お願いします!お願いします!お願いします!お願いします!」
無慈悲なルーシーの言葉に全員身を震わし、更に哀願の声が響き渡る。

「待ってください」
テオがルーシーをたしなめた。

「なんじゃ貴様、こやつらを庇うのか」

「いえ、ですが彼らはブレンドロットの警備兵をしていたそうですので。今ここで殺してしまうとブレンドロットを警備するものがいなくなるのではと」

「それもそうだの、しかしなあ……」

「これからは心を入れ替えます!町民から金品を奪ったりしません!真面目に警備します!」

「これからもブレンドロットの警備をします、いやさせてください!」
悩むルーシーにオーク兵たちは必死に嘆願した。

「うーん、仕方がないのう。今回は見逃してやるか」

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

ルーシーの許しを得てオーク兵たちは涙を流して礼を言った。
心の底から、魂の芯から喜んでいた。

それからオーク兵たちは礼をしつつザンギアックの死体を持って町へと帰っていった。

「凄えお方だな。テオ兄さん、あんたの知り合いなのかい?」
オーク兵たちが去った後でキツネがテオの下にやってきた。
何故か全身をロープで縛られている。

「なんで縛られてんだよ」
意識を取り戻したヨハンが不思議そうに尋ねる。

「いやあ、てっきりテオ兄さんが負けると思ってたからさ、今のうちに遺品の整理でもしておこうと思ってたらなんか箱の中からロープが飛び出して縛られちゃって。これ、ほどいてくんねえかな?」

「呆れた。お前火事場泥棒するつもりだったのかよ!ほんとどうしようもない奴だな!」
「まあまあ、無事に解決したんだし良いじゃないの。それよりテオ兄さん、このお方は?」

「我はルーシー。テオの所有物であるが、同時にこの国を支配する魔王でもあるからテオの主でもあるな」

「そういうものなのでしょうか?」

「うむ、そういうものだ」
テオの問いに平然と答えるルーシー。

「で、では私はルーシー様の下僕であり、テオの下僕でもありつつ、テオの先輩という事になるのですか?」

「で、お主は何者だ?」
メリサの言葉を無視してルーシーはキツネに尋ねた。

「俺っちはキッツ・ネイサン。どうかキツネと呼んでください。魔王様、ブレンドロットについて知りたいのでしたらこのキツネめにお任せを。ネズミの通り道まで熟知していやすぜ」
ロープに縛られたままキツネが器用に礼をする。

「ふむ、確かにまずは我が留守にしていた一年の間に領土がどうなったのか確認せねばなるまいな。よし、キツネとやら案内せい」

「喜んで!」

やれやれとため息をつき、テオは苦笑した。
こうしてテオとその一行は再びブレンドロットに向かう事になったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...