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23.盗賊都市ロバリー
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「し、死ぬかと思ったぜ……」
キツネがふらふらと絨毯から降り、地面に膝をついた。
盗賊都市ロバリーからほど近い森の中だった。
あれからものの一時間ほどで五人はロバリー近くに到着した。
流石にこのまま乗り込むのは衆目を集めすぎるからと、絨毯で行くのは近くまでにして残りは徒歩で行くことにしたのだ。
盗賊都市ロバリー。
遠目で見ると小高い丘全体がびっしりと家で埋め尽くされていて、まるで丘一つがまるまる街になっているように見える。
「一言言っておくけどよ、街の中に入ったら油断しない方がいいぜ」
森の中を歩きながらキツネが念を押した。
「あの街は子供や老人でも盗人だと思った方がいいぜ。うかうかしてるとあっという間に身ぐるみはがれちまうからな」
「ふん、誰に向かって言っている。たかが盗人の一人や二人に後れをとる私ではないぞ」
メリサが拳で胸を叩いてふんぞり返った。
ロバリーへはあっさり入る事が出来た。
一応門には衛兵がいることはいるが、ほぼ形ばかりで一人銅貨一枚払えば後は何も聞かれることすらなかった。
「心配してたけどなんてことなかったね」
ヨハンがひそひそとテオに耳打ちしてきた。
「ええ、しかしここから先は盗賊都市です。気を付けていきましょう」
テオは眉を引き締めて言った。
◆
「ええ、確かにそれらしき者どもがきたようです」
門も守っていた衛兵が隊長へ報告した。
「うむ、それではこれより私はダークロード様へ報告する。引き続き監視を怠るなよ」
オーガの衛兵長はそう言って立ち上がった。
「はっ」
そう言って数人の男たちが敬礼した。
オークやゴブリン、獣人など種族は様々だが全員平服に身を包み、一般人を装っている。
「適当なところで分散させ、連行するのだ!抵抗するようなら生死は問わんという命令だ。行けっ!」
隊長の命令で男たちが散っていく。
ただ一人、真っ黒な服に身を包み、顔も黒布で包んだ男だけを残して。
「何をしている。アラム、貴様もさっさと行け」
アラムと呼ばれた男はゆらりと隊長の方へ近寄っていった。
表情は全く読めないが濃緑色の瞳は殺気がほとばしっている。
「き、貴様!隊長である俺の命令に背く気か!?それはダークロード様への謀反だぞ!」
アラムは顔面中に冷や汗を流しながら身構える隊長の脇をすり抜け、消えていった。
「クソ、相変わらず不気味な野郎だ」
隊長は汗を拭きながら吐き捨てるように息をついた。
「だがアラムならどんな奴でも確実に捕らえるはずだ。むかつく奴だがダークロード様には逆らえない以上使い倒してやるまでだ」
◆
ロバリーの通りは人でごった返していた。
でこぼこに歪み、ところどころに水たまりのある石畳の上を爪先の割れた靴の群れが行き交っている。
通りを行く人々はみな一様に薄汚れた格好をしており、髪や髭の手入れすら碌にされてる様子はない。
みな目をギラギラさせて当たりの様子を伺い、時に鋭い叱責の声をあげて懐を狙おうとするスリの子供たちを追い払っている。
通りを行き交う人混みは終わることがなく、まるで打ち寄せる波のように通りを埋め尽くしている。
そしてその両側にはびっしりと屋台が並んでいる。
「安いよ安いよ!串肉五本で銅貨たったの1枚だ!何の肉かは聞かないでくれよ!俺も知らないんだからさ!」
「魔王を倒した勇者が持っていたという鎧だよ!今なら一式で金貨1枚!これを着ていけばドラゴンの炎だって防げるって代物だぞ!」
「スライムの油漬けだ!死んだらすぐに溶けてしまうスライムを生きたまま油に漬けたって珍品だ!死人だってびんびんになるぞ!」
ボロボロの垂れ幕で覆われた屋台では怪しげなものを売る怪しげな売り子たちが声を張り上げている。
テオたち一行はその通りのど真ん中にいた。
いや、より正確にいうなら圧倒され、立ち往生していた。
「噂には聞いていたがこれほどとは……」
メリサが目をむいてキョロキョロ見渡している。
「テオ、どうしよう?どこに行ったらいいの?」
ヨハンは怯えたようにテオのシャツにしがみついている。
「クク、楽しそうなところではないか」
テオに肩車されながらルーシーは嬉しそうに笑っている。
「いやはや、凄いところですね」
テオもあまりの人混みに圧倒されていた。
「おいおい、ぼさっとしててもしょうがねえせ。とりあえずこっちだよ」
そんな四人を呆れたように見ながらキツネが裏路地へと案内した。
「ふ、ふん、盗賊都市というからどんなところかと思っていたが、存外大したことはないな」
人の少ない裏路地にたどり着き、一息ついてメリサが得意げに口を開いた。
「そういうセリフは服を盗まれないで言ってくんないかな」
キツネがため息をついた。
キツネの言う通り、メリサは下着姿だった。
胸当てと胴当てがいつの間にか消えていて、マントすらなくなっている。
「な、なにっ!?いつの間に?」
「ダハハハハハ、情けないのうっ!」
ルーシーがそれを見て爆笑する。
「ルーシー姐さん、そういうあんただって同じだぜ」
「なにっ?」
「やれやれ、みんな困ったものですね。もっと気を引き締めていただかないと」
「あんたもだ!」
気付けばテオ、ルーシー、メリサはみんな身ぐるみはがされていた。
無事なのはキツネとヨハンだけだ。
「驚きました。まさかここまでとは」
「感心してる場合じゃねえよ!とりあえずこれでも着といてくれ」
そう言ってキツネがどこからかボロボロのシャツとズボンを持ってくると投げてよこした。
「これは?」
「出所は聞かないでくれよな。この街じゃ野暮ってもんだ」
「しかし困りましたね」
服に着替えながらテオは言った。
「持ってきた金もすべてなくなってしまいました。これでは食事をすることもできませんよ」
「まあその辺はなんとかなるであろう」
キツネの渡した服を頑として拒否したメリサは下着姿のままだ。
「これからどうすんのさ?」
ヨハンが聞いた。
「うーん、ダークロードってのはおそらく丘の上にあるイチガンの屋敷だったところにいると思うんだよな。でもそこに行こうとするなら警備の目をくぐらにゃならんのよ」
「ふん、そんなものどうということもないわ」
ボロボロのワンピースに着替えたルーシーが鼻で笑った。
「まっすぐ行って邪魔するものは叩きのめす、それで良かろう」
「とはいえ、無駄に騒ぎを起こしても時間がかかるだけですね。ひとまずは目立たないように近づいてみましょうか」
「ならば、ここらで別行動をとるというのはどうだ?」
メリサが提案してきた。
「五人も固まっていては嫌でも目立ってしまうだろう?少人数で分かれて移動し、どこかで落ち合うというのはどうだ?」
「それもそうですね」
しばらく考えてからテオは賛同した。
「キツネ、そのイチガンの屋敷の近くになにか分かりやすい場所はありますか?」
「うーん、俺っちもここに来るのは一年ぶりだからなあ。今でもあるかわからねえけど良心屋っていう飯屋が屋敷の目の前にあったはずだぜ」
「では三時間後にそこで落ち合うようにしようではないか。私は主様と一緒に動く。お主らはお主らで行動するというのはどうだ?」
「は?何を言っておる?」
メリサの提案にルーシーは露骨に嫌そうな顔をした。
「我はテオと一緒だ。お主はキツネと行けばよかろう」
「主様~……だが仕方があるまい。それでは私は単独行動をとらせてもらおう。それでは!」
落ち込んだと思いきや一瞬で気を取り直し、メリサはそう言って即座に雑踏の中へ消えていった。
下着姿のままで。
「……いいんでしょうか?」
「良いのだ。あれはまあ奴の生理現象みたいなものよ」
テオの疑問にルーシーは何でもないというように手を振った。
「ま、まあ、気を取り直して行くとしようぜ!」
キツネの先導で四人は再び雑踏の中へと足を踏み入れた。
キツネがふらふらと絨毯から降り、地面に膝をついた。
盗賊都市ロバリーからほど近い森の中だった。
あれからものの一時間ほどで五人はロバリー近くに到着した。
流石にこのまま乗り込むのは衆目を集めすぎるからと、絨毯で行くのは近くまでにして残りは徒歩で行くことにしたのだ。
盗賊都市ロバリー。
遠目で見ると小高い丘全体がびっしりと家で埋め尽くされていて、まるで丘一つがまるまる街になっているように見える。
「一言言っておくけどよ、街の中に入ったら油断しない方がいいぜ」
森の中を歩きながらキツネが念を押した。
「あの街は子供や老人でも盗人だと思った方がいいぜ。うかうかしてるとあっという間に身ぐるみはがれちまうからな」
「ふん、誰に向かって言っている。たかが盗人の一人や二人に後れをとる私ではないぞ」
メリサが拳で胸を叩いてふんぞり返った。
ロバリーへはあっさり入る事が出来た。
一応門には衛兵がいることはいるが、ほぼ形ばかりで一人銅貨一枚払えば後は何も聞かれることすらなかった。
「心配してたけどなんてことなかったね」
ヨハンがひそひそとテオに耳打ちしてきた。
「ええ、しかしここから先は盗賊都市です。気を付けていきましょう」
テオは眉を引き締めて言った。
◆
「ええ、確かにそれらしき者どもがきたようです」
門も守っていた衛兵が隊長へ報告した。
「うむ、それではこれより私はダークロード様へ報告する。引き続き監視を怠るなよ」
オーガの衛兵長はそう言って立ち上がった。
「はっ」
そう言って数人の男たちが敬礼した。
オークやゴブリン、獣人など種族は様々だが全員平服に身を包み、一般人を装っている。
「適当なところで分散させ、連行するのだ!抵抗するようなら生死は問わんという命令だ。行けっ!」
隊長の命令で男たちが散っていく。
ただ一人、真っ黒な服に身を包み、顔も黒布で包んだ男だけを残して。
「何をしている。アラム、貴様もさっさと行け」
アラムと呼ばれた男はゆらりと隊長の方へ近寄っていった。
表情は全く読めないが濃緑色の瞳は殺気がほとばしっている。
「き、貴様!隊長である俺の命令に背く気か!?それはダークロード様への謀反だぞ!」
アラムは顔面中に冷や汗を流しながら身構える隊長の脇をすり抜け、消えていった。
「クソ、相変わらず不気味な野郎だ」
隊長は汗を拭きながら吐き捨てるように息をついた。
「だがアラムならどんな奴でも確実に捕らえるはずだ。むかつく奴だがダークロード様には逆らえない以上使い倒してやるまでだ」
◆
ロバリーの通りは人でごった返していた。
でこぼこに歪み、ところどころに水たまりのある石畳の上を爪先の割れた靴の群れが行き交っている。
通りを行く人々はみな一様に薄汚れた格好をしており、髪や髭の手入れすら碌にされてる様子はない。
みな目をギラギラさせて当たりの様子を伺い、時に鋭い叱責の声をあげて懐を狙おうとするスリの子供たちを追い払っている。
通りを行き交う人混みは終わることがなく、まるで打ち寄せる波のように通りを埋め尽くしている。
そしてその両側にはびっしりと屋台が並んでいる。
「安いよ安いよ!串肉五本で銅貨たったの1枚だ!何の肉かは聞かないでくれよ!俺も知らないんだからさ!」
「魔王を倒した勇者が持っていたという鎧だよ!今なら一式で金貨1枚!これを着ていけばドラゴンの炎だって防げるって代物だぞ!」
「スライムの油漬けだ!死んだらすぐに溶けてしまうスライムを生きたまま油に漬けたって珍品だ!死人だってびんびんになるぞ!」
ボロボロの垂れ幕で覆われた屋台では怪しげなものを売る怪しげな売り子たちが声を張り上げている。
テオたち一行はその通りのど真ん中にいた。
いや、より正確にいうなら圧倒され、立ち往生していた。
「噂には聞いていたがこれほどとは……」
メリサが目をむいてキョロキョロ見渡している。
「テオ、どうしよう?どこに行ったらいいの?」
ヨハンは怯えたようにテオのシャツにしがみついている。
「クク、楽しそうなところではないか」
テオに肩車されながらルーシーは嬉しそうに笑っている。
「いやはや、凄いところですね」
テオもあまりの人混みに圧倒されていた。
「おいおい、ぼさっとしててもしょうがねえせ。とりあえずこっちだよ」
そんな四人を呆れたように見ながらキツネが裏路地へと案内した。
「ふ、ふん、盗賊都市というからどんなところかと思っていたが、存外大したことはないな」
人の少ない裏路地にたどり着き、一息ついてメリサが得意げに口を開いた。
「そういうセリフは服を盗まれないで言ってくんないかな」
キツネがため息をついた。
キツネの言う通り、メリサは下着姿だった。
胸当てと胴当てがいつの間にか消えていて、マントすらなくなっている。
「な、なにっ!?いつの間に?」
「ダハハハハハ、情けないのうっ!」
ルーシーがそれを見て爆笑する。
「ルーシー姐さん、そういうあんただって同じだぜ」
「なにっ?」
「やれやれ、みんな困ったものですね。もっと気を引き締めていただかないと」
「あんたもだ!」
気付けばテオ、ルーシー、メリサはみんな身ぐるみはがされていた。
無事なのはキツネとヨハンだけだ。
「驚きました。まさかここまでとは」
「感心してる場合じゃねえよ!とりあえずこれでも着といてくれ」
そう言ってキツネがどこからかボロボロのシャツとズボンを持ってくると投げてよこした。
「これは?」
「出所は聞かないでくれよな。この街じゃ野暮ってもんだ」
「しかし困りましたね」
服に着替えながらテオは言った。
「持ってきた金もすべてなくなってしまいました。これでは食事をすることもできませんよ」
「まあその辺はなんとかなるであろう」
キツネの渡した服を頑として拒否したメリサは下着姿のままだ。
「これからどうすんのさ?」
ヨハンが聞いた。
「うーん、ダークロードってのはおそらく丘の上にあるイチガンの屋敷だったところにいると思うんだよな。でもそこに行こうとするなら警備の目をくぐらにゃならんのよ」
「ふん、そんなものどうということもないわ」
ボロボロのワンピースに着替えたルーシーが鼻で笑った。
「まっすぐ行って邪魔するものは叩きのめす、それで良かろう」
「とはいえ、無駄に騒ぎを起こしても時間がかかるだけですね。ひとまずは目立たないように近づいてみましょうか」
「ならば、ここらで別行動をとるというのはどうだ?」
メリサが提案してきた。
「五人も固まっていては嫌でも目立ってしまうだろう?少人数で分かれて移動し、どこかで落ち合うというのはどうだ?」
「それもそうですね」
しばらく考えてからテオは賛同した。
「キツネ、そのイチガンの屋敷の近くになにか分かりやすい場所はありますか?」
「うーん、俺っちもここに来るのは一年ぶりだからなあ。今でもあるかわからねえけど良心屋っていう飯屋が屋敷の目の前にあったはずだぜ」
「では三時間後にそこで落ち合うようにしようではないか。私は主様と一緒に動く。お主らはお主らで行動するというのはどうだ?」
「は?何を言っておる?」
メリサの提案にルーシーは露骨に嫌そうな顔をした。
「我はテオと一緒だ。お主はキツネと行けばよかろう」
「主様~……だが仕方があるまい。それでは私は単独行動をとらせてもらおう。それでは!」
落ち込んだと思いきや一瞬で気を取り直し、メリサはそう言って即座に雑踏の中へ消えていった。
下着姿のままで。
「……いいんでしょうか?」
「良いのだ。あれはまあ奴の生理現象みたいなものよ」
テオの疑問にルーシーは何でもないというように手を振った。
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キツネの先導で四人は再び雑踏の中へと足を踏み入れた。
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