追放チート魔道士、TS魔王と共に魔界で生活する

海道一人

文字の大きさ
23 / 37

23.盗賊都市ロバリー

しおりを挟む
「し、死ぬかと思ったぜ……」
キツネがふらふらと絨毯から降り、地面に膝をついた。

盗賊都市ロバリーからほど近い森の中だった。
あれからものの一時間ほどで五人はロバリー近くに到着した。

流石にこのまま乗り込むのは衆目を集めすぎるからと、絨毯で行くのは近くまでにして残りは徒歩で行くことにしたのだ。


盗賊都市ロバリー。


遠目で見ると小高い丘全体がびっしりと家で埋め尽くされていて、まるで丘一つがまるまる街になっているように見える。

「一言言っておくけどよ、街の中に入ったら油断しない方がいいぜ」
森の中を歩きながらキツネが念を押した。

「あの街は子供や老人でも盗人だと思った方がいいぜ。うかうかしてるとあっという間に身ぐるみはがれちまうからな」

「ふん、誰に向かって言っている。たかが盗人の一人や二人に後れをとる私ではないぞ」
メリサが拳で胸を叩いてふんぞり返った。

ロバリーへはあっさり入る事が出来た。
一応門には衛兵がいることはいるが、ほぼ形ばかりで一人銅貨一枚払えば後は何も聞かれることすらなかった。

「心配してたけどなんてことなかったね」
ヨハンがひそひそとテオに耳打ちしてきた。

「ええ、しかしここから先は盗賊都市です。気を付けていきましょう」
テオは眉を引き締めて言った。


    ◆


「ええ、確かにそれらしき者どもがきたようです」
門も守っていた衛兵が隊長へ報告した。

「うむ、それではこれより私はダークロード様へ報告する。引き続き監視を怠るなよ」
オーガの衛兵長はそう言って立ち上がった。

「はっ」
そう言って数人の男たちが敬礼した。
オークやゴブリン、獣人など種族は様々だが全員平服に身を包み、一般人を装っている。

「適当なところで分散させ、連行するのだ!抵抗するようなら生死は問わんという命令だ。行けっ!」
隊長の命令で男たちが散っていく。
ただ一人、真っ黒な服に身を包み、顔も黒布で包んだ男だけを残して。

「何をしている。アラム、貴様もさっさと行け」
アラムと呼ばれた男はゆらりと隊長の方へ近寄っていった。
表情は全く読めないが濃緑色の瞳は殺気がほとばしっている。

「き、貴様!隊長である俺の命令に背く気か!?それはダークロード様への謀反だぞ!」
アラムは顔面中に冷や汗を流しながら身構える隊長の脇をすり抜け、消えていった。

「クソ、相変わらず不気味な野郎だ」
隊長は汗を拭きながら吐き捨てるように息をついた。

「だがアラムならどんな奴でも確実に捕らえるはずだ。むかつく奴だがダークロード様には逆らえない以上使い倒してやるまでだ」


    ◆


ロバリーの通りは人でごった返していた。

でこぼこに歪み、ところどころに水たまりのある石畳の上を爪先の割れた靴の群れが行き交っている。

通りを行く人々はみな一様に薄汚れた格好をしており、髪や髭の手入れすら碌にされてる様子はない。
みな目をギラギラさせて当たりの様子を伺い、時に鋭い叱責の声をあげて懐を狙おうとするスリの子供たちを追い払っている。

通りを行き交う人混みは終わることがなく、まるで打ち寄せる波のように通りを埋め尽くしている。

そしてその両側にはびっしりと屋台が並んでいる。

「安いよ安いよ!串肉五本で銅貨たったの1枚だ!何の肉かは聞かないでくれよ!俺も知らないんだからさ!」

「魔王を倒した勇者が持っていたという鎧だよ!今なら一式で金貨1枚!これを着ていけばドラゴンの炎だって防げるって代物だぞ!」

「スライムの油漬けだ!死んだらすぐに溶けてしまうスライムを生きたまま油に漬けたって珍品だ!死人だってびんびんになるぞ!」

ボロボロの垂れ幕で覆われた屋台では怪しげなものを売る怪しげな売り子たちが声を張り上げている。

テオたち一行はその通りのど真ん中にいた。
いや、より正確にいうなら圧倒され、立ち往生していた。

「噂には聞いていたがこれほどとは……」
メリサが目をむいてキョロキョロ見渡している。

「テオ、どうしよう?どこに行ったらいいの?」
ヨハンは怯えたようにテオのシャツにしがみついている。

「クク、楽しそうなところではないか」
テオに肩車されながらルーシーは嬉しそうに笑っている。

「いやはや、凄いところですね」
テオもあまりの人混みに圧倒されていた。

「おいおい、ぼさっとしててもしょうがねえせ。とりあえずこっちだよ」
そんな四人を呆れたように見ながらキツネが裏路地へと案内した。

「ふ、ふん、盗賊都市というからどんなところかと思っていたが、存外大したことはないな」
人の少ない裏路地にたどり着き、一息ついてメリサが得意げに口を開いた。

「そういうセリフは服を盗まれないで言ってくんないかな」
キツネがため息をついた。

キツネの言う通り、メリサは下着姿だった。
胸当てと胴当てがいつの間にか消えていて、マントすらなくなっている。

「な、なにっ!?いつの間に?」

「ダハハハハハ、情けないのうっ!」
ルーシーがそれを見て爆笑する。

「ルーシー姐さん、そういうあんただって同じだぜ」

「なにっ?」

「やれやれ、みんな困ったものですね。もっと気を引き締めていただかないと」

「あんたもだ!」

気付けばテオ、ルーシー、メリサはみんな身ぐるみはがされていた。

無事なのはキツネとヨハンだけだ。

「驚きました。まさかここまでとは」

「感心してる場合じゃねえよ!とりあえずこれでも着といてくれ」

そう言ってキツネがどこからかボロボロのシャツとズボンを持ってくると投げてよこした。

「これは?」

「出所は聞かないでくれよな。この街じゃ野暮ってもんだ」

「しかし困りましたね」
服に着替えながらテオは言った。

「持ってきた金もすべてなくなってしまいました。これでは食事をすることもできませんよ」

「まあその辺はなんとかなるであろう」
キツネの渡した服を頑として拒否したメリサは下着姿のままだ。

「これからどうすんのさ?」
ヨハンが聞いた。

「うーん、ダークロードってのはおそらく丘の上にあるイチガンの屋敷だったところにいると思うんだよな。でもそこに行こうとするなら警備の目をくぐらにゃならんのよ」

「ふん、そんなものどうということもないわ」
ボロボロのワンピースに着替えたルーシーが鼻で笑った。

「まっすぐ行って邪魔するものは叩きのめす、それで良かろう」

「とはいえ、無駄に騒ぎを起こしても時間がかかるだけですね。ひとまずは目立たないように近づいてみましょうか」

「ならば、ここらで別行動をとるというのはどうだ?」
メリサが提案してきた。

「五人も固まっていては嫌でも目立ってしまうだろう?少人数で分かれて移動し、どこかで落ち合うというのはどうだ?」

「それもそうですね」
しばらく考えてからテオは賛同した。

「キツネ、そのイチガンの屋敷の近くになにか分かりやすい場所はありますか?」

「うーん、俺っちもここに来るのは一年ぶりだからなあ。今でもあるかわからねえけど良心屋っていう飯屋が屋敷の目の前にあったはずだぜ」

「では三時間後にそこで落ち合うようにしようではないか。私は主様と一緒に動く。お主らはお主らで行動するというのはどうだ?」

「は?何を言っておる?」
メリサの提案にルーシーは露骨に嫌そうな顔をした。

「我はテオと一緒だ。お主はキツネと行けばよかろう」

「主様~……だが仕方があるまい。それでは私は単独行動をとらせてもらおう。それでは!」

落ち込んだと思いきや一瞬で気を取り直し、メリサはそう言って即座に雑踏の中へ消えていった。

下着姿のままで。

「……いいんでしょうか?」

「良いのだ。あれはまあ奴の生理現象みたいなものよ」

テオの疑問にルーシーは何でもないというように手を振った。

「ま、まあ、気を取り直して行くとしようぜ!」

キツネの先導で四人は再び雑踏の中へと足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...