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31.再会
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「テオ!テオじゃないか!」
テオに気付いたメリサが一足飛びに飛んできてテオに抱きついた、というかテオを抱きしめ、持ち上げた。
「あんた無事だったんだね!火刑の宣告を受けたって聞いてたけど、なんでこんな所にいるのさ!」
そう言ってテオの顔にキスの雨を降らせる。
「ちょ、ちょっと待ってください!これは話せば長んっ」
テオは慌てて説明に入ろうとするが口を開いた途端にフォンの口で塞がれてしまう。
「おいそこの」
そのフォンの喉元で刃が光った。
ルーシーのハーベスターだ。
「貴様、見覚えがあるな。あの時の小癪な武道家か」
「誰だい、あんた?あたしはあんたのことなんて知らないよ」
喉元に刃を突き立てられているというのに一向に動じず、ルーシーを睨みつけるフォン。
二人の間に火花のような緊張が走る。
「フォン、彼女は魔王ルシファルザスです」
「はあ?」
テオの言葉にフォンが気の抜けたような声をあげた。
「こいつが?このちんちくりんなのが魔王?だいたいあいつはあんたが……」
「ちんちくりんじゃと?」
ルーシーの額に血管が浮き上がる。
「まあまあ、少し落ち着きましょう。これは少々込み入った話でして。良ければ一緒に食事でもしませんか?」
◆
「つまり、あんたが作ったホムンクルスに魔王の魂を移して復活させたってのかい?」
炒麺を啜りながらフォンがテオに確認した。
「ホムンクルスではありませんけどね。大体そんな感じです。おかげでインビクト王に神意冒涜罪の判決を下され、こうしてここへ逃げてきたという訳です。」
あれからみんなで湖畔亭に行き、食事がてら今までの経緯をフォンに説明したのだった。
「それで、あなたこそなんでこんなところに?」
「強い奴を探してたら自然と魔界に足が向いちまったんだよ。人界にあたしと張り合える奴はもういないからね。で、魔界であんたが火刑に処されるって話を聞いて戻る最中だったのさ。しかし……」
メリサはそう言ってテオの反対側にいるルーシーを見た。
「まさか、あの魔王ルシファルザスがこんな子供になってるなんてねえ……」
今でも信じられないというようにフォンはルーシーを見つめた。
「ふん、貴様の豪壮拳脚にはなかなか苦労させられたの。しかしそれも過ぎた話よ。貴様に恨みはない」
そう言ってルーシーはグラスを持ち上げた。
「こっちこそ。強い奴と戦うのがあたしの望みだっただけで、あたしもあんたに恨みなんか持っちゃいないさ」
フォンはルーシーのグラスと自分のグラスを鳴らし、二人はワインを飲みほした。
「だからテオは我の創造主なのだ。だがここは我の国だからテオは我の庇護下にあるとも言えるがの」
ルーシーがそう言って得意そうにテオに抱きついた。
「我はテオのものであり、テオは我のものなのだ」
そう言ってテオの顔に頬ずりする。
「ま、まさかあんた、その子供みたいなのと……」
驚いて言いかけ、フォンはやがて頭を振った。
「いや、その様子じゃあんたたちまだだね。」
そう言って得意そうにほくそ笑む。
それを見てギリギリと歯ぎしりするルーシー。
「き、貴様!まさか奴と寝たのか?我があれほど同衾しても何もしてこんのに!こんな、髪も瞳も黒くてごつごつした岩みたいな女と!こんなのが好みなのか!」
そう言って涙まじりにテオに食ってかかる。
「ほーっほっほっほっ、これが大人の女の魅力って奴さね。お子ちゃまは大人しくぬいぐるみでも抱いて寝ていなさいな」
それを見て高笑いするフォン。
「お待ちください、主様」
その時、テーブルの向かいにいたメリサが分厚いベーコンのステーキを噛み切りながら口を開いた。
「吸魔族である私は男女、まあ男同士でも女同士でも良いのですが二人の関係がどれだけ深いか見分けることが出来ます。私の見たところ、そこのフォンとテオは体を重ねたとはいえ、せいぜい一回か二回程度。恋仲というにはほど遠いかと」
「ほ、本当か?」
その言葉にぱあっと明るくなるルーシー。
「まあせいぜい一緒に旅した仲間同士で人肌恋しくなって慰め合った程度でしょう」
「なんじゃ、そんなのものか。それしきだったら飯を奢り奢られするのと変わらんではないか。ひょっとしてお主、その程度でのぼせあがっておったのか?とんだ初娘よのう?」
形勢逆転と見るや今度はルーシーがフォンを上から目線でからかいだした。
「……そ、その通りだよ!」
体をわなわなと震わせていたフォンが顔を真っ赤にして叫ぶ。
そしてテーブルにあったワインの瓶を掴むなりラッパ飲みした。
「こいつ、魔王に勝ったら続きをするって約束をしたのに結局私の方からベッドに行くまで何もしやしなかったんだ!」
空にしたワインの瓶をテーブルに叩き付ける。
衝撃で分厚いガラスでできたワインの瓶が粉々に砕けた
「なんなの!そりゃあたしはこんなガタイだし?魅力がないってのはわかってるけどさあ!一緒に戦った仲なんだしせめて女として扱ってくれても良いじゃないか!」
「そうじゃそうじゃ、こやつ不能なのではないのかと何度思った事か!」
ルーシーがそれに賛同する。
「テオ!それだけ魔法のことを知ってるんだから女心も知っときなよ!私がどれだけあんたのことを想ってるか!」
フォンがテオに詰め寄ってきた。
ワインで酔ったその眼は完全に座っている。
「そうじゃぞ、テオ!我が貴様の汎魔録晶に女の扱いを刻み込んでやる。そうじゃ、ここで知り合ったのも何かの縁、今宵は二人でテオに挑むというのはどうだ?」
「良いねえ、それ!前回は私とテオがあんたと戦ったけど、今夜はあたしとあんたでテオと戦うか!」
完全に意気投合してワインを酌み交わしあうフォンとルーシーだった。
「あのー、それでしたら是非私もお仲間に……」
メリサがおずおずと手をあげているが盛り上がっている二人の耳には届いていないようだ。
「大変だ!」
その時、湖畔亭のドアがけたたましく開かれた。
飛び込んできたのはゴブリン通りのレストラン、ゴブリンの胃袋亭で働いているホブゴブリンの少年コースケだった。
「人間がうちのレストランで暴れてるんだ!」
テオに気付いたメリサが一足飛びに飛んできてテオに抱きついた、というかテオを抱きしめ、持ち上げた。
「あんた無事だったんだね!火刑の宣告を受けたって聞いてたけど、なんでこんな所にいるのさ!」
そう言ってテオの顔にキスの雨を降らせる。
「ちょ、ちょっと待ってください!これは話せば長んっ」
テオは慌てて説明に入ろうとするが口を開いた途端にフォンの口で塞がれてしまう。
「おいそこの」
そのフォンの喉元で刃が光った。
ルーシーのハーベスターだ。
「貴様、見覚えがあるな。あの時の小癪な武道家か」
「誰だい、あんた?あたしはあんたのことなんて知らないよ」
喉元に刃を突き立てられているというのに一向に動じず、ルーシーを睨みつけるフォン。
二人の間に火花のような緊張が走る。
「フォン、彼女は魔王ルシファルザスです」
「はあ?」
テオの言葉にフォンが気の抜けたような声をあげた。
「こいつが?このちんちくりんなのが魔王?だいたいあいつはあんたが……」
「ちんちくりんじゃと?」
ルーシーの額に血管が浮き上がる。
「まあまあ、少し落ち着きましょう。これは少々込み入った話でして。良ければ一緒に食事でもしませんか?」
◆
「つまり、あんたが作ったホムンクルスに魔王の魂を移して復活させたってのかい?」
炒麺を啜りながらフォンがテオに確認した。
「ホムンクルスではありませんけどね。大体そんな感じです。おかげでインビクト王に神意冒涜罪の判決を下され、こうしてここへ逃げてきたという訳です。」
あれからみんなで湖畔亭に行き、食事がてら今までの経緯をフォンに説明したのだった。
「それで、あなたこそなんでこんなところに?」
「強い奴を探してたら自然と魔界に足が向いちまったんだよ。人界にあたしと張り合える奴はもういないからね。で、魔界であんたが火刑に処されるって話を聞いて戻る最中だったのさ。しかし……」
メリサはそう言ってテオの反対側にいるルーシーを見た。
「まさか、あの魔王ルシファルザスがこんな子供になってるなんてねえ……」
今でも信じられないというようにフォンはルーシーを見つめた。
「ふん、貴様の豪壮拳脚にはなかなか苦労させられたの。しかしそれも過ぎた話よ。貴様に恨みはない」
そう言ってルーシーはグラスを持ち上げた。
「こっちこそ。強い奴と戦うのがあたしの望みだっただけで、あたしもあんたに恨みなんか持っちゃいないさ」
フォンはルーシーのグラスと自分のグラスを鳴らし、二人はワインを飲みほした。
「だからテオは我の創造主なのだ。だがここは我の国だからテオは我の庇護下にあるとも言えるがの」
ルーシーがそう言って得意そうにテオに抱きついた。
「我はテオのものであり、テオは我のものなのだ」
そう言ってテオの顔に頬ずりする。
「ま、まさかあんた、その子供みたいなのと……」
驚いて言いかけ、フォンはやがて頭を振った。
「いや、その様子じゃあんたたちまだだね。」
そう言って得意そうにほくそ笑む。
それを見てギリギリと歯ぎしりするルーシー。
「き、貴様!まさか奴と寝たのか?我があれほど同衾しても何もしてこんのに!こんな、髪も瞳も黒くてごつごつした岩みたいな女と!こんなのが好みなのか!」
そう言って涙まじりにテオに食ってかかる。
「ほーっほっほっほっ、これが大人の女の魅力って奴さね。お子ちゃまは大人しくぬいぐるみでも抱いて寝ていなさいな」
それを見て高笑いするフォン。
「お待ちください、主様」
その時、テーブルの向かいにいたメリサが分厚いベーコンのステーキを噛み切りながら口を開いた。
「吸魔族である私は男女、まあ男同士でも女同士でも良いのですが二人の関係がどれだけ深いか見分けることが出来ます。私の見たところ、そこのフォンとテオは体を重ねたとはいえ、せいぜい一回か二回程度。恋仲というにはほど遠いかと」
「ほ、本当か?」
その言葉にぱあっと明るくなるルーシー。
「まあせいぜい一緒に旅した仲間同士で人肌恋しくなって慰め合った程度でしょう」
「なんじゃ、そんなのものか。それしきだったら飯を奢り奢られするのと変わらんではないか。ひょっとしてお主、その程度でのぼせあがっておったのか?とんだ初娘よのう?」
形勢逆転と見るや今度はルーシーがフォンを上から目線でからかいだした。
「……そ、その通りだよ!」
体をわなわなと震わせていたフォンが顔を真っ赤にして叫ぶ。
そしてテーブルにあったワインの瓶を掴むなりラッパ飲みした。
「こいつ、魔王に勝ったら続きをするって約束をしたのに結局私の方からベッドに行くまで何もしやしなかったんだ!」
空にしたワインの瓶をテーブルに叩き付ける。
衝撃で分厚いガラスでできたワインの瓶が粉々に砕けた
「なんなの!そりゃあたしはこんなガタイだし?魅力がないってのはわかってるけどさあ!一緒に戦った仲なんだしせめて女として扱ってくれても良いじゃないか!」
「そうじゃそうじゃ、こやつ不能なのではないのかと何度思った事か!」
ルーシーがそれに賛同する。
「テオ!それだけ魔法のことを知ってるんだから女心も知っときなよ!私がどれだけあんたのことを想ってるか!」
フォンがテオに詰め寄ってきた。
ワインで酔ったその眼は完全に座っている。
「そうじゃぞ、テオ!我が貴様の汎魔録晶に女の扱いを刻み込んでやる。そうじゃ、ここで知り合ったのも何かの縁、今宵は二人でテオに挑むというのはどうだ?」
「良いねえ、それ!前回は私とテオがあんたと戦ったけど、今夜はあたしとあんたでテオと戦うか!」
完全に意気投合してワインを酌み交わしあうフォンとルーシーだった。
「あのー、それでしたら是非私もお仲間に……」
メリサがおずおずと手をあげているが盛り上がっている二人の耳には届いていないようだ。
「大変だ!」
その時、湖畔亭のドアがけたたましく開かれた。
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