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32.勇者アポロニオ、ブレンドロットへ到達す
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~テオたちがブレンドロットへ帰還する数時間前~
「や、やっと着いたか……」
ふらふらする足取りでアポロニオ一行はブレンドロットの石畳を踏んだ。
よろめく足に舌打ちをしながらなんとか通りを歩いていく。
ここへ来るまでは散々な道のりだった。
道中は人家らしい人家もなく、しかも途中の川を渡る際に馬が流されてしまったのだ。
さらにに具合の悪いことに馬には食料や水を含め野宿道具一式が一緒だった。
おかげで魔界に入ってからは夜っぴて飲まず食わずでここに来たのだ。
馬の番をまかせていたモブランを叱責する元気もなかった。
もっともモブランはモブランで荷物全てを馬の背に預けると言って聞かなかったアポロニオに心の中で不平を言いまくっていたのだが。
実のところ、モブランの魔法を使えば馬を使わずとも魔界に来ることはできた。
しかし、そうするわけにはいかない理由があった。
汎遊泳術のような高度で繊細な魔法はモブランには魔晶の助けがないと無理だ。
そしてモブランは今、魔晶は一つも持っていないことになっている。
正確には杖の中に隠し持っているのだが、これはあくまで非常用の予備だ。
魔晶を持っていると明かすと何故もっと早く使わなかったのかと叱責されるに決まっている。
既に尽きている路銀のために売り飛ばされる可能性もかなり高い。
モブランとしてはそれだけは避けねばならなかった。
三人はふらふらと路地をさまよった。
服は川に流されたせいで泥にまみれ、あちこち破れている。
英雄とは思えないような無残な格好だが、今はそんなことを気にしている余裕もなかった。
幸いこの街の住人は多少おかしな格好をした者が街を歩いていても気にしないらしい。
「あそこにレストランがあるぞ」
アポロニオが指差した先にあったのがゴブリンの胃袋亭だった。
ちょうど開店準備が終わったところで、路地に丸テーブルが出され、椅子が四脚置かれている。
三人は体を投げ出すように椅子に腰かけた。
もう一歩も動きたくなかった。
「飲み物!それに食い物もだ!何でもいいからすぐに出せるのを持ってこい!」
注文を取りに来たコースケに吐き捨てるように叫ぶ。
コースケはあまりの無礼な態度にびっくりしたが、三人の無残な格好を見て田舎の荒くれものがやむに已まれぬ事情でやってきたのだろうと理解した。
この街はそういう人間がたくさんいるのだ。
いちいち気にしていては体がもたない。
「はい、ワインとチーズサンド」
アポロニオはコースケの持ってきたグラスをひったくるように奪い、一気に喉に流し込む。
味など関係ない、とにかく水分がとれれば良かった。
モブランとサラも喉を鳴らし、口の端からこぼれるのも構わずワインを飲んだ。
多少乾きがおさまると今度はサンドイッチをむさぼり始めた。
「あの~他のご注文は……」
「肉だ!ありったけの肉を持ってこい!酒も追加だ!パンとスープもだ!」
コースケの方を振り向きもせず、食べることに集中しながらアポロニオが叫んだ。
やれやれ、この三人はマナーを知らないかなりの田舎から来たらしい。
肩をすくめながらコースケは言われるがままに料理を運んだ。
「ふう、薄汚い魔界のレストランにしてはまあまあの味だったな」
人心地つき、アポロニオは椅子に背をもたせてくつろいだ。
魔界の住人の世話になるのは癪だが、これもテオフラスを討伐するまでだ。
討伐した後は改めて魔界侵攻を始めなくてはならない。
この街はその橋頭保に使えるだろう。
「あの~、一旦お代をいただいてもよろしいでしょうか?」
コースケが恐る恐る尋ねた。
この大男、既に十人前は食べているのだ。
「金か。そんなものはない」
アポロニオは事も無げに言い放った。
「はあ?お金がないのに料理を注文したんですか?」
コースケは自分の耳が信じられかった。
「我々が下賤な魔界の通貨など持ってる訳がなかろう。よしんば持っていたとしても魔界の住人の懐を温めるような真似はせんがな」
「お客さん、流石にそれはマナーってもんがなさすぎるんじゃ……」
「マナー?下種な魔族が我々人間にマナーを説こうというのかっ!」
アポロニオは激高した。
「アポロニオさん、不味いですよ!ここは既に魔界なんですよ!騒ぎを起こしちゃ……」
「やかましいっ!元はと言えば貴様が馬ごと荷物を流したのが原因だろうが!」
「おいおい、兄ちゃんたち、もめ事か?」
そこにオークの衛兵が通りかかった。
「衛兵さん、こいつら食い逃げだ!捕まえておくれよ!」
コースケが衛兵たちに叫んだ。
「食い逃げだあ?そいつは聞き捨てならねえな。ちょっとこっちに来てもらおうか」
オクゾーという名のオークがアポロニオの腕を掴んだ。
瞬間、オクゾーの腕が飛んだ。
「……?っがああああああ!」
オクゾーは最初は何が起こったのか理解できなかったが、やがて絶叫と共に地面を転げまわった。
「ふん、汚らわしい手で私に触れるんじゃあないっ」
アポロニオは捕まれた部分を手で払いながら不遜にうそぶいている。
「て、手前!よくもオクゾーをっ!」
残りのオークたちが剣を抜き、三人を取り囲んだ。
騒ぎを聞きつけて街の住人たちも集まってきている。
「アポロニオ様、これはあんまりですっ」
あまりのことに流石にサラも抗議の声をあげた。
「あああ、言わんこっちゃない」
モブランは頭を抱えている。
「ふん、魔界の有象無象が何人かかってこようがこのアポロニオの敵ではない。全員この小汚い路地の染みに変えてくれる!」
闘いは一方的だった。
いや、闘いとすら呼べない、ただの凄惨なリンチだった。
襲い掛かるオークの衛兵はみなアポロニオに切り伏せられるかモブランの魔法の前に倒れていった。
コースケは走り出した。
先ほど客の一人がテオたちが戻ってきたと言っていたのを思い出したのだ。
だったら、きっと湖畔亭に行ってるはず。
この事態をなんとかできるのはザンギアックを倒したテオだけだ。
早く湖畔亭へ行かないと!
「や、やっと着いたか……」
ふらふらする足取りでアポロニオ一行はブレンドロットの石畳を踏んだ。
よろめく足に舌打ちをしながらなんとか通りを歩いていく。
ここへ来るまでは散々な道のりだった。
道中は人家らしい人家もなく、しかも途中の川を渡る際に馬が流されてしまったのだ。
さらにに具合の悪いことに馬には食料や水を含め野宿道具一式が一緒だった。
おかげで魔界に入ってからは夜っぴて飲まず食わずでここに来たのだ。
馬の番をまかせていたモブランを叱責する元気もなかった。
もっともモブランはモブランで荷物全てを馬の背に預けると言って聞かなかったアポロニオに心の中で不平を言いまくっていたのだが。
実のところ、モブランの魔法を使えば馬を使わずとも魔界に来ることはできた。
しかし、そうするわけにはいかない理由があった。
汎遊泳術のような高度で繊細な魔法はモブランには魔晶の助けがないと無理だ。
そしてモブランは今、魔晶は一つも持っていないことになっている。
正確には杖の中に隠し持っているのだが、これはあくまで非常用の予備だ。
魔晶を持っていると明かすと何故もっと早く使わなかったのかと叱責されるに決まっている。
既に尽きている路銀のために売り飛ばされる可能性もかなり高い。
モブランとしてはそれだけは避けねばならなかった。
三人はふらふらと路地をさまよった。
服は川に流されたせいで泥にまみれ、あちこち破れている。
英雄とは思えないような無残な格好だが、今はそんなことを気にしている余裕もなかった。
幸いこの街の住人は多少おかしな格好をした者が街を歩いていても気にしないらしい。
「あそこにレストランがあるぞ」
アポロニオが指差した先にあったのがゴブリンの胃袋亭だった。
ちょうど開店準備が終わったところで、路地に丸テーブルが出され、椅子が四脚置かれている。
三人は体を投げ出すように椅子に腰かけた。
もう一歩も動きたくなかった。
「飲み物!それに食い物もだ!何でもいいからすぐに出せるのを持ってこい!」
注文を取りに来たコースケに吐き捨てるように叫ぶ。
コースケはあまりの無礼な態度にびっくりしたが、三人の無残な格好を見て田舎の荒くれものがやむに已まれぬ事情でやってきたのだろうと理解した。
この街はそういう人間がたくさんいるのだ。
いちいち気にしていては体がもたない。
「はい、ワインとチーズサンド」
アポロニオはコースケの持ってきたグラスをひったくるように奪い、一気に喉に流し込む。
味など関係ない、とにかく水分がとれれば良かった。
モブランとサラも喉を鳴らし、口の端からこぼれるのも構わずワインを飲んだ。
多少乾きがおさまると今度はサンドイッチをむさぼり始めた。
「あの~他のご注文は……」
「肉だ!ありったけの肉を持ってこい!酒も追加だ!パンとスープもだ!」
コースケの方を振り向きもせず、食べることに集中しながらアポロニオが叫んだ。
やれやれ、この三人はマナーを知らないかなりの田舎から来たらしい。
肩をすくめながらコースケは言われるがままに料理を運んだ。
「ふう、薄汚い魔界のレストランにしてはまあまあの味だったな」
人心地つき、アポロニオは椅子に背をもたせてくつろいだ。
魔界の住人の世話になるのは癪だが、これもテオフラスを討伐するまでだ。
討伐した後は改めて魔界侵攻を始めなくてはならない。
この街はその橋頭保に使えるだろう。
「あの~、一旦お代をいただいてもよろしいでしょうか?」
コースケが恐る恐る尋ねた。
この大男、既に十人前は食べているのだ。
「金か。そんなものはない」
アポロニオは事も無げに言い放った。
「はあ?お金がないのに料理を注文したんですか?」
コースケは自分の耳が信じられかった。
「我々が下賤な魔界の通貨など持ってる訳がなかろう。よしんば持っていたとしても魔界の住人の懐を温めるような真似はせんがな」
「お客さん、流石にそれはマナーってもんがなさすぎるんじゃ……」
「マナー?下種な魔族が我々人間にマナーを説こうというのかっ!」
アポロニオは激高した。
「アポロニオさん、不味いですよ!ここは既に魔界なんですよ!騒ぎを起こしちゃ……」
「やかましいっ!元はと言えば貴様が馬ごと荷物を流したのが原因だろうが!」
「おいおい、兄ちゃんたち、もめ事か?」
そこにオークの衛兵が通りかかった。
「衛兵さん、こいつら食い逃げだ!捕まえておくれよ!」
コースケが衛兵たちに叫んだ。
「食い逃げだあ?そいつは聞き捨てならねえな。ちょっとこっちに来てもらおうか」
オクゾーという名のオークがアポロニオの腕を掴んだ。
瞬間、オクゾーの腕が飛んだ。
「……?っがああああああ!」
オクゾーは最初は何が起こったのか理解できなかったが、やがて絶叫と共に地面を転げまわった。
「ふん、汚らわしい手で私に触れるんじゃあないっ」
アポロニオは捕まれた部分を手で払いながら不遜にうそぶいている。
「て、手前!よくもオクゾーをっ!」
残りのオークたちが剣を抜き、三人を取り囲んだ。
騒ぎを聞きつけて街の住人たちも集まってきている。
「アポロニオ様、これはあんまりですっ」
あまりのことに流石にサラも抗議の声をあげた。
「あああ、言わんこっちゃない」
モブランは頭を抱えている。
「ふん、魔界の有象無象が何人かかってこようがこのアポロニオの敵ではない。全員この小汚い路地の染みに変えてくれる!」
闘いは一方的だった。
いや、闘いとすら呼べない、ただの凄惨なリンチだった。
襲い掛かるオークの衛兵はみなアポロニオに切り伏せられるかモブランの魔法の前に倒れていった。
コースケは走り出した。
先ほど客の一人がテオたちが戻ってきたと言っていたのを思い出したのだ。
だったら、きっと湖畔亭に行ってるはず。
この事態をなんとかできるのはザンギアックを倒したテオだけだ。
早く湖畔亭へ行かないと!
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