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混乱
しおりを挟む「だ、誰かこいつを殺せ! この恩知らずを! 殺すのだ!!!」
汚く叫んだ王の言葉を行動に移せるものは誰もいなかった。
自分たちはもうカイラスの手のひらの上で踊っていただけの人形に過ぎない。
その事実を突き出された今、動けるものなど誰もいなかった。
開かない扉の前でうずくまり怯える王をカイラスはただ見つめている。
昔はカイラスを虐げていたはずの王と虐げられていたはずのカイラスという逆の立場だったはずの関係が逆転した滑稽さを笑う者はだれ一人いなかった。
「早く、殺すのだ! 殺して死体を城門に掲げろ!」
殺せ、殺せ、と叫ぶ王を弟であるカイラスは憐れみを込めた目つきで見ていた。
まだ小さかったころ、兄であった王はカイラスにとって恐ろしくも威厳のある存在だっただろう。
しかし、その王がやせ細り、薬を盛られ、形ばかりのお着せを着せられ、こうして惨めに床にうずくまりながら殺せと叫ぶ姿をカイラスはどう思っていたのだろうか。
王の叫び声だけが充満した会議室内で、カイラスは大きく右手を挙げた。
その手を、カイラスは大きく振りかぶった。
「殺せ! 殺すのだ! 早、――――」
カイラスの放った魔法弾は王の首へ的確に向かっていった。
威力も精度も十分な魔法弾に錯乱している王は避けるすべもない。
胴と切り離された首が王の首が会議室内を舞う。
そこから出た血が、まるで雨のようにバグダスたちの髪、皮膚、服に染みこんでいく。
そして、鈍い衝撃音が会議室内に響いた。
王『だった』者がカイラスに殺された。
そしてその首はバグダスの目の前に落ちる。
顔は恐怖に歪み、あるはずの瞳はまるで空洞のようにぽっかりと穴が開いていた。
その表情はまるで、バグダスに語り掛けているようだった。
いずれ、お前もこうなる、と――――
「う、あ――、ぎゃあああぁぁぁああぁぁ!!」
反逆者カイラスが王を殺した。
恐怖に歪んだ一同は、我先に唯一の出口である扉を走る。
カイラスの魔法によって開かない扉をこれでもか、と叩く血だらけの一同はまさに城の前にいる暴徒のようであった。
まるで天に祈るごとく、叩き続けた扉が開いたのは突然だった。
開いたのは会議室にいた人間ではなく、外にいた兵士だった。
バグダスはその兵士が会議前に会議室前にいた兵士ではないことをすぐにわかった。
兵士はバグダスたちが血だらけなのに、それを驚きしない。
今にも逃げ出そうとする要人たちに向かって大きく叫ぶように言った。
「大変です! 民衆が、民衆が城を制圧しようとしています!」
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