45 / 59
8
道を歩く
しおりを挟む
「13日!?」
驚きのあまりこちらを振り返ったユーリはコルドの体をまじまじと見る。
「お前、13日もあんな場所にいたのか!?」
「明日には出られると話していた」
「13日も閉じ込められてこんな無事なわけあるか!」
「本当だ」
「んなんけあるか。大方あんな場所に閉じこめられて頭がおかしくなってたんだろ。確かにそんくらい前に雨が降ったけど、気のせいだ」
言い切ったユーリは背を向けまた歩き出す。
ユーリはコルドの話を信じようとしなかった。
悲しむよりも先になぜ今ユーリが城内にいるのかが気になった。
「ユーリ、なんでここに……」
コルドとユーリが歩く道はコルドも通ったことのない道だ。
コルドはあの半地下の牢屋のような場所からユーリに出して貰えた。
今歩いている道は、通常の城内と城外を繋ぐ門の道ではなく、閉じ込められていた場所からそれなりに近い城内と城外の区切る壁の中の人知れず壊れていた部分から出た先の寂れた道だ。
この先に行くと未開拓の森があったはずということしかコルドもわからない。
おそらく城の勤めが長いユーリのような者しか知らない道なのだろう。
「俺も、初めての道だ。あの小屋の爺さんが教えてくれたんだよ」
「彼が?」
「お前を助けてくれとな」
助ける。
コルドとあの老人があったのはコルドが牢屋に入らされる数日前、ファルとの事で言い争い、老人と喧嘩別れをしたような状態になって以来である。
老人にとって、コルドは花を贈るほど大切なファルに対して陵辱をしていたコルドに怒っていたはずの老人がコルドを助けるとは思えなかった。
「……本当か?」
「なんで俺が嘘をつく理由があんだよ」
「彼は、今俺が閉じ込められている事を知っていたのか?」
「それはあの爺さんに聞けよ。俺はあの爺さんに頼まれてお前を連れてくるしか頼まれていねぇ。なんでお前かあそこにいたのか、爺さんがそれを知っていたのか、なんで見張りの兵士が誰もいなかったのか、俺には何も知らねぇよ。ま、俺は金を貰っているからな。頼み通りお前を爺さんの元に届けるだけだ」
「……」
ユーリの助け、老人の頼み、誰もいない見張り――。
まるでコルドに良い意味でお膳立てされたような状況である。
それをあの老人が仕組んだのだろうか? コルドの前任として城内の人間と関わりがあるだろうが、コルド
を助ける理由はない。
むしろ、コルドは憎まれても然るべきなのに。
「お前、城内の女に手を出したのか?」
「……そう、だな」
ユーリはそれを聞き、大きなため息を着いた。
後ろ姿でもわかるその落胆ぶりにコルドも縮こまる。
「だろうと思った。コルド、お前がこの城に来た時にあれほど俺が口酸っぱく言ってただろ? 城内の女には間違っても手は出すなって」
「……相手にも非がある」
「それで、その相手の女はお前と同じ目にあっているのか? 」
「……」
「言っただろう。城外と城内の揉め事の殆どは城外のせいにされるって。たとえお前の見た目に惚れた女がお前を誘惑して関係を持ってもめ事が起きたら城外のお前のせいにされるんだ」
「……だが」
「でがでもだってでもねぇ! お前、死んでたかもしれないのわかんなかったのか!?」
ユーリに一喝をされ、コルドは黙り込んだ。
「……」
「……さっさと行くぞ。爺さん待たしているんだ」
ユーリはそのまま歩きだした。
コルドも、黙ったままユーリの後を追った。
驚きのあまりこちらを振り返ったユーリはコルドの体をまじまじと見る。
「お前、13日もあんな場所にいたのか!?」
「明日には出られると話していた」
「13日も閉じ込められてこんな無事なわけあるか!」
「本当だ」
「んなんけあるか。大方あんな場所に閉じこめられて頭がおかしくなってたんだろ。確かにそんくらい前に雨が降ったけど、気のせいだ」
言い切ったユーリは背を向けまた歩き出す。
ユーリはコルドの話を信じようとしなかった。
悲しむよりも先になぜ今ユーリが城内にいるのかが気になった。
「ユーリ、なんでここに……」
コルドとユーリが歩く道はコルドも通ったことのない道だ。
コルドはあの半地下の牢屋のような場所からユーリに出して貰えた。
今歩いている道は、通常の城内と城外を繋ぐ門の道ではなく、閉じ込められていた場所からそれなりに近い城内と城外の区切る壁の中の人知れず壊れていた部分から出た先の寂れた道だ。
この先に行くと未開拓の森があったはずということしかコルドもわからない。
おそらく城の勤めが長いユーリのような者しか知らない道なのだろう。
「俺も、初めての道だ。あの小屋の爺さんが教えてくれたんだよ」
「彼が?」
「お前を助けてくれとな」
助ける。
コルドとあの老人があったのはコルドが牢屋に入らされる数日前、ファルとの事で言い争い、老人と喧嘩別れをしたような状態になって以来である。
老人にとって、コルドは花を贈るほど大切なファルに対して陵辱をしていたコルドに怒っていたはずの老人がコルドを助けるとは思えなかった。
「……本当か?」
「なんで俺が嘘をつく理由があんだよ」
「彼は、今俺が閉じ込められている事を知っていたのか?」
「それはあの爺さんに聞けよ。俺はあの爺さんに頼まれてお前を連れてくるしか頼まれていねぇ。なんでお前かあそこにいたのか、爺さんがそれを知っていたのか、なんで見張りの兵士が誰もいなかったのか、俺には何も知らねぇよ。ま、俺は金を貰っているからな。頼み通りお前を爺さんの元に届けるだけだ」
「……」
ユーリの助け、老人の頼み、誰もいない見張り――。
まるでコルドに良い意味でお膳立てされたような状況である。
それをあの老人が仕組んだのだろうか? コルドの前任として城内の人間と関わりがあるだろうが、コルド
を助ける理由はない。
むしろ、コルドは憎まれても然るべきなのに。
「お前、城内の女に手を出したのか?」
「……そう、だな」
ユーリはそれを聞き、大きなため息を着いた。
後ろ姿でもわかるその落胆ぶりにコルドも縮こまる。
「だろうと思った。コルド、お前がこの城に来た時にあれほど俺が口酸っぱく言ってただろ? 城内の女には間違っても手は出すなって」
「……相手にも非がある」
「それで、その相手の女はお前と同じ目にあっているのか? 」
「……」
「言っただろう。城外と城内の揉め事の殆どは城外のせいにされるって。たとえお前の見た目に惚れた女がお前を誘惑して関係を持ってもめ事が起きたら城外のお前のせいにされるんだ」
「……だが」
「でがでもだってでもねぇ! お前、死んでたかもしれないのわかんなかったのか!?」
ユーリに一喝をされ、コルドは黙り込んだ。
「……」
「……さっさと行くぞ。爺さん待たしているんだ」
ユーリはそのまま歩きだした。
コルドも、黙ったままユーリの後を追った。
1
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される
水ノ瀬 あおい
BL
若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。
昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。
年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。
リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる