華は塔上に咲く

ブリリアント・ちむすぶ

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道を歩く

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「13日!?」

 驚きのあまりこちらを振り返ったユーリはコルドの体をまじまじと見る。
 
「お前、13日もあんな場所にいたのか!?」
「明日には出られると話していた」
「13日も閉じ込められてこんな無事なわけあるか!」
「本当だ」
「んなんけあるか。大方あんな場所に閉じこめられて頭がおかしくなってたんだろ。確かにそんくらい前に雨が降ったけど、気のせいだ」

 言い切ったユーリは背を向けまた歩き出す。
 ユーリはコルドの話を信じようとしなかった。
 悲しむよりも先になぜ今ユーリが城内にいるのかが気になった。

「ユーリ、なんでここに……」

 コルドとユーリが歩く道はコルドも通ったことのない道だ。
 コルドはあの半地下の牢屋のような場所からユーリに出して貰えた。
 今歩いている道は、通常の城内と城外を繋ぐ門の道ではなく、閉じ込められていた場所からそれなりに近い城内と城外の区切る壁の中の人知れず壊れていた部分から出た先の寂れた道だ。
 この先に行くと未開拓の森があったはずということしかコルドもわからない。
 おそらく城の勤めが長いユーリのような者しか知らない道なのだろう。
 
「俺も、初めての道だ。あの小屋の爺さんが教えてくれたんだよ」
「彼が?」
「お前を助けてくれとな」

 助ける。
 コルドとあの老人があったのはコルドが牢屋に入らされる数日前、ファルとの事で言い争い、老人と喧嘩別れをしたような状態になって以来である。
 老人にとって、コルドは花を贈るほど大切なファルに対して陵辱をしていたコルドに怒っていたはずの老人がコルドを助けるとは思えなかった。

「……本当か?」
「なんで俺が嘘をつく理由があんだよ」
「彼は、今俺が閉じ込められている事を知っていたのか?」
「それはあの爺さんに聞けよ。俺はあの爺さんに頼まれてお前を連れてくるしか頼まれていねぇ。なんでお前かあそこにいたのか、爺さんがそれを知っていたのか、なんで見張りの兵士が誰もいなかったのか、俺には何も知らねぇよ。ま、俺は金を貰っているからな。頼み通りお前を爺さんの元に届けるだけだ」
「……」

 ユーリの助け、老人の頼み、誰もいない見張り――。
 まるでコルドに良い意味でお膳立てされたような状況である。
 それをあの老人が仕組んだのだろうか? コルドの前任として城内の人間と関わりがあるだろうが、コルド
を助ける理由はない。
 むしろ、コルドは憎まれても然るべきなのに。

「お前、城内の女に手を出したのか?」
「……そう、だな」 

 ユーリはそれを聞き、大きなため息を着いた。
 後ろ姿でもわかるその落胆ぶりにコルドも縮こまる。

「だろうと思った。コルド、お前がこの城に来た時にあれほど俺が口酸っぱく言ってただろ? 城内の女には間違っても手は出すなって」
「……相手にも非がある」
「それで、その相手の女はお前と同じ目にあっているのか? 」
「……」
「言っただろう。城外と城内の揉め事の殆どは城外のせいにされるって。たとえお前の見た目に惚れた女がお前を誘惑して関係を持ってもめ事が起きたら城外のお前のせいにされるんだ」
「……だが」
「でがでもだってでもねぇ! お前、死んでたかもしれないのわかんなかったのか!?」

 ユーリに一喝をされ、コルドは黙り込んだ。

「……」
「……さっさと行くぞ。爺さん待たしているんだ」
 
 ユーリはそのまま歩きだした。
 コルドも、黙ったままユーリの後を追った。
  
 

 
 

 
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