追放王子と出奔魔法使いの一冬の話

ブリリアント・ちむすぶ

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関係の変化 R-15

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「シャオ」
「はい」
「そういえばお前、俺に罰して欲しいと言っていたな?」
「罰……?」

 突然の話の変わりように一瞬なんのことかと思ったが、答えは直ぐにわかった。
 昨日、シャオがアランの前で不格好に過呼吸になった時のことをアランは言っているのだ。
 今の話と昨日の失態は別。シャオはアランの前に膝をついた。

「昨日は、申し訳ございませんでした。どうぞ私に罰を」

 昨日は本当に失態だった。ましてや今日のネズミの件など、アランがシャオに失望するのも無理はない。
 しかし、それでもアランはシャオを拒絶せず、罰を与えることでシャオがアランのそばに居ることを許してくれるのだ。
 そのアランの寛大な心に涙が出そうになる。

「こちらに来い」
「は、はい!」

 言われた通りにアランの座る机の前に行く。すると、アランはここだと言うように指を下に向け座るように促した。
 シャオは戸惑いつつ、アランの命令通りアランの座る椅子の前に跪く。アランの足の間に挟まれる形となり、銀の瞳がシャオをじっと見下ろしている。
 このまま殴られるのだろうかと考えていると、ゆっくりとアランは口を開いた。

「口を開けろ」
「は、はい」

 言われた通り、シャオは口を開く。
 アランはシャオの顎を掴み、シャオの口の中を覗き込む。
 今まで誰にも見られたことの無い場所にアランの視線が突き刺さり、羞恥と緊張で心臓が早鐘を打つ。
 何をするのか全く分からない。

「ぁ、ぁふ……」
 
 そういいかけた時、シャオの口になにかが入り込んできた。
 冷たく、固く、滑らかで、それがアランの指だとわかるまで少し時間がかかった。

「ん、む……っ!?」

 まさか1度ならぬ2度までも指を口に入れられるとは思わず、シャオの目は大きく見開いた。
 反射的に閉じかけた口を必死で開き、アランの指を傷つけないように歯を立てないよう顎を最大限開く。

「……」

 アランの長く細い指がシャオの舌を撫ぜる。
 指で舌を揉みんだり、裏返したりと様々だ。

 ーーこ、これが、罰……!?

 普通、罰といった、殴るとか、蹴るとか、鞭打ちとか――、そんな痛みに伴ったものを想像していたが、これはそれとは全く違う。
 まるで女性など、体に傷をつけてはならぬ人間に対して行う罰のようで男のシャオに行う罰とは大きくかけはなれている。

「ぁ、あふ――」
「喋るな」
「はっ――」

 そうだ、これは罰なのだとシャオは自分に言い聞かそ、喉を締め声を出さぬよう息をとめた。
 アランの指はシャオの舌を探りながら、奥へと侵入していく。
 長い人差し指がシャオの奥歯に触れた瞬間、ゾクッとした感覚が背筋に走った。
 奥歯から、その反対側の奥歯までをなぞるように動いた後、上顎を爪先でカリっと引っかかれる。
 無意識に体が跳ね上がり、鼻から甘い息が漏れた。

「ん、ぅ……!」

 動かしてもいない腰が揺れた。
 主の銀の目はそのシャオの姿を見逃さず、楽し気に細められる。
 上顎を何度も引っ掻かれた。
 その度に、体中に痺れるような快感が走り抜ける。
 こんなことは、いけないことだ。主の指を噛んでしまうかもしれない。
 そう思っても、体は言うことをきかず、膝を床につけ座っていると言うのに、シャオの体がビクビクとゆれた。

「ぁ……、ふっ、ん……」

 唾液が口から溢れ、アランの手を汚す。
 しかし、アランの指は一向にシャオの口内から出て行こうとしない。それどころか、もっと深くまで入れようとしているのか、長い指がシャオの喉奥を突いた。
 反射的に嘔吐いてしまいそうになるのを必死で堪える。目には涙が浮かんでいた。
 体験したことのない不快感と、体が痺れる感覚に頭の中の判断力が低下していく。このままではいけない。
 なんとかして冷静を取り戻さなくてはいけないというのに、身体は動かない。
 むしろ、この罰を喜んでいる自分もいる。
 アランの手が離れ、口が解放されるが、口の端から溢れる唾液を拭う余裕もなく、シャオはアランの銀の瞳の視線を一身に受けていた。
その瞳は、熱を帯びている。温まりきらないこの部屋の空気と正反対だ。
 その瞳を見つめ返し、ぼんやりとする頭の中で、シャオは思った。

――美しい。

 美しい、シャオの主。
 アランはシャオの口端から垂れる唾液を指で掬った。
 そして、それをシャオに見せつけるかのように目の前に差し出す。
 シャオは抵抗することなく、ゆっくりと口を開けた。
 先ほどまで口内で暴れていた指がシャオの舌に触れる。

「ぅ……ん」

必死で舐めとるシャオにアランから、啓示のような声が降り注ぐ。

「明日、ルカを連れて行け。わかったな?」

 アランの言葉を、シャオは理解できなかった。
 だが、熱に浮かされたシャオの体は無意識に頷いてしまった。
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