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ラナ
ラナ
しおりを挟む「…貴女には本当に呆れたわ。まさか子供を連れて帰るなんて」
マナたちより一足先に帰宅していたアンドリーナがマナの隣にいる小さな子供をみて大きなため息をついた。
その様子に一気に怯えたようにマナの影に隠れた子供をマナはかばうように手を当てた。
「ラナ、というそうです」
「名前なんてどうでもいいわ。で、この子はどうするの? まさか養子にするなんて言わないでしょうね?」
「使用人にします。幸い、執事から使用人の人出が足りない、と言っておりましたので」
「…使用人ねぇ」
こんな汚い子供になにができる、というような目線を投げかけた後、アンドリーナは視線を夫であるタルードに戻す。
タルードとアンドリーナな意味ありげな視線を投げ勝かけたあと、タルードの方が口を開く。
「遅れてすまない。いいものは手に入ったか?」
「ええ。私に似合うとっておきを手に入れました。あとで香りを確認してください」
「あぁ。楽しみだ。では、タルド、マナ様。私たちは少し休むとするよ。夕食の時間になったら呼んでくれ」
「…かしこまりました」
マナとタルドはグルードとアンドリーナを見送ると、タルドはマナの影に隠れている少女、ラナをみた。
「…本当なのか? ミアナが見えるって」
疑るようにラナをみるタルドの前にラナを出す。
ラナはきっと急にこの家に連れてこられて不安に思っているに違いない。
もちろんラナ本人と孤児院の院長には話はしたが、きっと突然のことに困惑しているだろう。
マナはラナに話しかけたようにしゃがみ、ラナの視線に合わせた。
「ラナ、この方はタルド様。もちろん知っているわよね。貴女が見えている女の子の事、この方にも説明してくれる?」
ラナはマナの言葉に悩むように目線を泳がせながらも、たどたどしい言葉で話始めた。
「…その、貴女の後ろに、金髪で赤い瞳をしている女の人が、泣いて…います」
「その女の人とは喋れるの?」
ラナは首を横に振った。
「私はただ、見えるだけ。けど、声は聞こえます」
「くだらぬな」
ラナの言葉をタルドは遮った。
跳ねるように怯えたラナの髪をマナは優しく撫ぜる。
「タルド様。話しを最後までお聞きください」
「…………」
マナの珍しい強引さにタルドは驚き、自室に行こうといる足を止めた。
そのままマナ達の方を振り返る。
マナはそれを確認すると、ラナの目をしっかりと見ながら言った。
「ラナ、貴女はお話はできないけど亡くなった人の声は聞こえるのよね。では、その私たちをみて泣いている人はなんて言ってるの?」
「それは、その…」
ラナのたどたどしい声が、この時だけは良く響いた気がした。
「『マナ、タルド。共に青の庭で遊んだ記憶は忘れない』、と」
青の庭。
その言葉がラナの口から出た途端、タルド大きな瞳をより見開きラナを見た。
「そして、今は――」
「どこでそれを知った?」
「ひっ……」
怯えたラナにマナはラナを庇う様に前に立つ。
凛とした声でタルドにマナはいう。
「青の庭。ミアナの婚約者であったあなたならこの子が嘘をついていないというのがわかるでしょう」
「…………」
青の庭。
それはマナとミアナが幼いころに秘密基地にしていた庭の小さなスペースだ。
青い花が咲き乱れた庭でマナとタルドはそれぞれミアナと忘れられない思い出を過ごした。
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