死んだ姉の代わりなんて、できるわけが無い ~深窓令嬢嫁と無口夫~

ブリリアント・ちむすぶ

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星の淑女

まるで親のごとく

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「アンドリーナ! 待たせたね!」

 グルードの嬉しそうな声が泉に響いた。
 グルードが妻のアンドリーナを見た後、視線は隣にいるマナに移動した。

「マナ様も、ずいぶん可憐になっているじゃないか」
「そうでしょう」

 自慢げに答えたのはマナではなくアンドリーナの方だった。
 マナの長い髪を結いあげたあとに、後ろにはアンドリーナがつけた髪飾りまよりマナの美しさを際立たせている。
 アンドリーナはマナをタルドの前に移動させ、固まるタルドにアンドリーナは言った。

「タルド様、社交界で呼ばれた『星の淑女』マナにぴったりでしょう?」
「…………」
「この日が昇る間近の紺色の髪色とこの髪飾り、マナに似合うと思って買っておいたのよ。とても似合うと思わない? ねえ、タルド様」
「………ああ」

 やっとの思いで声を絞り出したタルドにマナの顔は赤らみ、互いに相手の顔を見ずに下を向いたままだ。
 二人は結婚しているというのに、互いに初めて会ったようによそよそしい雰囲気にグルードとアンドリーナは二人でおかしそうに笑う。
 
 平和なこの一幕をラナは少し遠くから眺めていた。
 執事見習いになったラナはまだ覚えることはいっぱいで、毎日失敗してばかりだが、優しいマナのおかげで何とかやってこれている。
 それに、タルドも不器用ながらこの領地のことをよく考え、さらによくしようと努力しているのだ。
 それをラナは近い位置で見る事ができて心の底からうれしかった。

『ねえ、見た? あの子のあの顔』

 ラナの横で、半透明の女性が姦しく騒いでいる。
 
『とても喜んでいるわ。タルドもうれしそう』

 マナとタルドの二人の様子を女性は嬉しそうにラナに語る。
 それに返答することは今はできない。
 してしまったら、ラナは急に一人で喋りだしたと思い不審がられるからだ。
 それでも、女性は我慢できないようで休む間もなくラナにしゃべり続ける。

『あの子の髪によく合っている髪飾りよ。あの人があんなセンスがいいなんて思わなかったわ。それに、髪も綺麗に結われていて、本当に似合っている。これで社交界にいったら注目間違いなしよ!』

 女性はマナとタルドの様子を逐一しゃべり続ける。
 女性は一通り喋り終えた後、花が咲くような笑みでラナに振り向いた。

『あなたもそうおもうでしょ!』

 ラナは同意をするように小さな声で答えた。

「……ええ。ミアナ様」

 ミアナはラナの返答を聞いて、更に笑みを浮かばせた。
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