一度全てを諦めた王が全てを手に入れる話 －王を見守り続けた男－

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なるほどな、とひとり言のような陛下の声に彼女を非難する視線は減りました。
それと比較するように王太子を疑う視線が増えました。
王太子は、自分の立場が危ぶまれる危機を察知すると苦し紛れに彼の言葉を否定しました。

「っ……それだけではヘスティアがお前を怒鳴りつけた事を否定できないだろう！」

王太子の荒んだ声は、論点をずらそうとしていました。
そんな王太子の荒んだ態度に、彼は淡々と冷静さを保ったまま答えます。

「怒鳴られたという事実はございません。ヘスティア様はシュラウド様から届くお花をとても喜んでおいででした。時折、お花ばかりではなく私に会いに来てほしいと、癇癪めいた言葉をいわれる事もありましたが……」

彼は言葉を最後まで告げずに最後を濁しました。
これ以上は彼だけが知る彼女の可愛い話をシュラウドだけでなく見知らぬ人々に聞かせてしまうことになります。
なにより彼女はシュラウドの腕の中で羞恥のためか今にも倒れてしまいそうなほど赤くなってしまっていて、下手に言葉を続けると彼の怒りを買ってしまいかねません。

「つまり、ヘスティア嬢は花を邪険にしたことはなく、花を踏んだのはリリアン嬢だというのだな」
「はいその通りでございます」
「その上、ヘスティア嬢が怒鳴っていたという事実はないと……リリアン嬢、記録係の話をどう思う？」
「間違いありません……」

陛下は彼の言葉を聞いたうえで答え合わせをするように話を纏めました。
義妹は陛下の前で嘘をつけないと悟ったのか、噂の捏造を認めました。