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転生先の世界 子供編

9話 初詣初迷子

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「……………」
「……………」


私達は今初詣に来ています。
それは別にいいんだけどさ、良いんだけど………

「凪仁、何その格好 まるで神官みたい」
「みたいじゃなくて神官だよ。」
「え? お前の家神社なの? ボンボンやんお前」
「そりゃどーも、ていうかお前ここにいるってことはまた迷子かよ?」

なぜバレたし!

「いや、違うおみくじ大吉を引き当てて、で、木におみくじを結ぼうと思って、それで結んで戻ろうとしたらあら不思議いつの間にか消えてる!」
「完全に迷子だな」

ぐうの音も出ない。

「ていうか人多くなってきたしひとまず家に避難するか?」
「まじか」
「まじだ」
「じゃあお言葉に甘えて~」

私は遠慮もなしに神社裏にあるという凪仁の家へとお邪魔した

「邪魔するでー」
「よし〇とのネタすんな」
「1度は言ってみたかったセリフだぜ!」
「知らんわ」
「家族の人は?」
「正月だからみんな神社の方」

たいへんだなー とか思いながら凪仁に出されたお茶を飲む私、遠慮の欠けらも無いな!

「瞳羽」
「なんじゃらほい」
「俺たち前世で会ったりしてなかったか?」

いきなりなんだ。

「……………さあ?知らね、見たこともないよ、あんまり男子とは関わってなかったし」
「………そう、か……」
「あ、でも確かとある不良に不良から助けてもらった気がする。」

それを聞いた凪仁はぴくりと反応し伏せていた顔を上げた。
そんなに食いつくことか?  まあ、でも不良に不良から助けてもらった話ってシュール過ぎて草生える。

「それがどうかした?」
「い、いや それさえ聞ければもういい」
「? ふーん? 変なの。」

そして暇だな、ただ茶を飲むって婆さんかよ。
ていうかお茶じゃなくてジュース出せよ馬鹿野郎。

「……………」
「……………」

ち、沈黙が………っ!
ていうかなんか喋ろよ、気まずすぎて何喋っていいのか分からん…………ってなんで私気まずくなってんだ?
気まずくなるとこないよな?

「ていうかおまえどうした?」
「あ?」
「いつもの凪仁らしくないよ?」 

まあ、たったの2、3年の付き合いだが何となく変ってことはわかる。

「前世のことで気になることでもあるの?
はたまた…………………………うん、言うのやめる」
「おい、今何を言いかけた?」
「別にー? 何でもないよ まあ、悩みとかあったら言ってみそ。」
「悩みか………」

多少ダジャレって言ってもこい無反応……大体は反応を返してくれるのに……

「やっぱこいつ変! 気持ち悪い!」
「あ? なんだって?」
「ごめんなさい」
「ったく、俺にだって考えたいとか悩んでる時期があんだよ、お前は俺をなんだと思ってるわけ?」

何と思ってるか、そんなの決まってる。
私は迷わず凪仁の目を言ってこう言ってやった。

「なんの悩みもない馬鹿野郎」
「お前、ホントマジで沈めんぞ」
「やめてください、そして何水の塊出してんの!?
ごめんなさい! ホントすみません! 思い直してください!」

などとやり取りをしていたら後ろの襖がゆっくりと開いてそこから出てきたのは綺麗な女の人だった。

「カンラ? 騒がしいけど何して……………って、その子誰?」
「友達。」

まあ、間違ってはいないよ。

「あ~この子がこの前カンラに電話かけてきたガールh………むがっ!」 

奴は素早い動きで手元にあった座布団をお姉さんに投げつけた。
なにやってんの!? こんな綺麗な人に!

「カ、カンラ君!? なにしてんの!?」
「見てわかんない? 座布団投げてる」

見てわかりますけどホント何やってんだこいつ。

「なになに~? カンラってば照れてんの? 」
「照れてねーし! ていうかさっさと仕事行けよババア!」
「もう! お母さんに向かってババアはないでしょ!?
ちゃんと「お母さん」か「ママ」って言いなさい!」
「ええ!?」

あまりにも聞き捨てならない単語が聞こえ私はつい声を上げてしまった。

「どうかした?」
「え、そのお姉さんって…もしかして?」

恐る恐る聞いてみるとお姉さんはニコッと笑いそして仁王立ちした。

「そう! 私こそがカンラの実の母! ココアちゃんなのだー!」

「…………」
「…………」

わ、わー、なんて言うか言葉が出ない。
そしてこの沈黙である。
お母さんの方はニコニコと笑ってんだけど、なに?
なんかノれってこと?

え?どうしろっての? などと思っていたら凪仁が先にその沈黙を破った。

「いい歳こいて何が「ココアちゃん」だよ キモい、歳考えろクソババア。」

言ったー! ていうか言ってはならない一言二言!
やばいこいつ肝座ってるわ。
ある意味で勇者だわ。

そう心の中で感心しているとお母さんはプルプルと震え、そして私がいるにも関わらずお説教。
凪仁すげぇちょくちょく欠伸とかしてるわ。

というか私、空気……。


この空間から抜け出したいのもあるけど出たとしてもオカン達を見つけかれるかどうか……

うーんと悩んでいる時インターホンが鳴った。

「(誰か来た?)」
「あ 誰かきたわね、もしかしたらあなたのお母さんが訪ねてきたのかもね」

そうかもね。
でもだからって来るかなー?

「良かったじゃん親迎えに来て」
「いや、まだ親と決まったわけじゃ…」

そう言い終わろうとした時勢いよくオカンが入ってきた。

「瞳羽!」
「お……ママ!」

あっぶねぇ、オカンって言いそうになった…。

「もう! 急にいなくなったからみんな心配したのよ!」
「ご、ごめんなさい……」
「でも良かった! ここにいて…!」

オカン、苦しい苦しいしまってるしまってる、抱きしめすぎ…。


まあ、その後はオカンがお礼を言って私達はみんながいる神社の方へと戻った。







「瞳羽! どこに言ってたんだ!? 心配したんだぞ!」

いきなりオトンに泣きながら怒られた。
おお、初泣きですね。

「ご、ごめんなさい…」
「まあまあま、無事に見つかってよかったじゃないほらひーちゃんわたあめ買いに行こっか!」
「わーい!」
「お兄ちゃん達は何がいい?」

兄貴はどうせ芋けんぴだよ。

あとの二人とオトンは知らん。

「俺スイカアメ」

全然違った! 何、スイカアメって!? りんご飴の進化版?!

「ボクはおしるこがいいです。」
「オレ肉まん。」
「パパは焼き鳥!」
「パパは自分で買いなさい。」
「…はい。」

あらら~まあ、そりゃそうだわな、オトンどんまい!


「はい、ひーちゃんわたあめどうぞー」
「わたあめー!」

いくつになってもわたあめ見るとテンション上がるなー
前世では普通に唐揚げ食べてたなー。
いや~、いい思い出だな。

わたあめを頬張りながら思いふけていると大河と龍哉がやってきた。

「瞳羽、ひと口くれよ肉まんひと口やるから」
「俺も一口ちょうだい?」
「……え?」


えっと、何ですかこれ、なんでイケショタが私のわたあめを狙っているんですか?
ていうかあげるわけない! これは私のわたあめだ!

とか思ったりしないよ、私は心が広いからひとくち程度なら食べさせてやるよ。

「いいよー、はいどうぞ~」

そういうと、二人は両側のわたあめをぱくりと食べた

うわ、ひと口でけぇ…特に大河…お前結構持って行きすぎな?

「…結構持ってかれた…。」
「ほら、俺の肉まんひと口やるから食えよ。」
「俺のおしるこもな。」

そうか、ならば大河貴様の肉まんふた口食ってやるわ。
……目的がしょうもないな。

まあ、差し出された肉まんをふた口分食べようと大きく口を開けて食べたが、どうも子供の口は小さくてひと口くらいしか行けなかった。

まあ、いいだろう、そしてもうひと口。

「あ、お前今二口目食べたろ」
「だって美味しいもん!」

ほんとに美味しかったからね。

「そうか、なら今度は俺がお前を食べるわ。」
「―――え?」
「ほら、こうしてな…」

そう言って顔がどんどん近づいて………え?
こいつは何をやっているの?
ロリ相手に、そして周りに人いるぞ?

私はちょっとやばいと思い兄貴の背後までテレポートして逃げた。

「どうした、ひと」
「お兄ちゃんのそばに居たくて…っ!」
「そう。」

そう言って頭を撫でる兄貴、こ、こいつ……イケメンか!
うん、何言ってんだ私。
そして私は兄貴におんぶしてもらいながらみんなで帰ったのだった。

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