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「そういえば美優、言っていた高校を第一志望にしたの?」
「うん、一応! 今度三者面談あるから、美和ちゃん来てくれる?」
「え!?」
二人の会話に、私は驚いて声をあげた。
「何で……!? 母親は私よ!? 聞いてない!」
志望校も知らなければ、三者面談の事だって初耳だ。挙句、どうして美和に頼むというのか。
私の言葉に、冷たい眼差しをこちらに向けるだけの美優。もう会話もしたくないと態度に出しているのか、すぐ美和の方へと顔を向け、お願いと言って笑顔を浮かべる。
……どうして、こうなってしまったのだろうと考えても、全く思い浮かばない。
赤ん坊の頃は泣いてばかりで大変だったけれど……言葉を覚え始めたばかりの頃も、まだ私をママと呼んでくれて可愛かったのに。
「梨花、ちょっと……」
真っ青になった私を気遣うのか、大地が声をかけてきて、寝室へと連れ出してくれた。
後ろからは、美和と美優の楽し気な会話が聞こえ、私は目に涙を浮かべた。
「大地……あの……」
呆れられるのか、それとも怒られるのか……。
私は大地がどんな反応を返してくるのか怖いという気持ちもある。けれど、このまま一人で押し込むのも辛いと思い、相談しようと口を開いた。
「ごめん! 梨花!」
私の言葉を遮るように、大地は私の方へと向くと、顔の前で手を合わせて謝って来た。
「家に入れるお金、半分になる!」
「……は!?」
「いや、ホント会社の方がしんどくて……あと、俺も泊り込んだり何だりで自分の食事代とか確保したい」
まさかの言葉に、私は驚いて二の句が継げなくなった。
今でさえいっぱいいっぱいなのに……それが半分になる……?
「そんな! 美優の学費もあるし、生活できないよ!」
「もう義務教育は終わりだろ? そこらへんの事は梨花が何とかやりくりするなり、美優と話し合ってくれよ」
「さっきのやり取り見てなかったの?」
言いたい事は沢山あるけれど、言葉が出てこない代わりに涙が溢れて、次から次へと零れ落ちてくる。
それを見た大地は面倒くさそうに眉根を寄せた。
「……母親だろ。美優は俺に対しては普通だし。何かやらかしたんだろ? 自分で何とかしろよ」
「……」
そうかもしれない。けれど心当たりなんてない。
もはや話し合う事すらも拒否されており、打つ手なんてないというのに。
「とりあえず、決定事項だから」
それだけ言うと大地は私を置いて寝室から出て行った。
リビングからは三人の笑い声が聞こえる。
「なん……で」
私はそのまま力なく、寝室の床に座り込んで涙を流し続けた。
「うん、一応! 今度三者面談あるから、美和ちゃん来てくれる?」
「え!?」
二人の会話に、私は驚いて声をあげた。
「何で……!? 母親は私よ!? 聞いてない!」
志望校も知らなければ、三者面談の事だって初耳だ。挙句、どうして美和に頼むというのか。
私の言葉に、冷たい眼差しをこちらに向けるだけの美優。もう会話もしたくないと態度に出しているのか、すぐ美和の方へと顔を向け、お願いと言って笑顔を浮かべる。
……どうして、こうなってしまったのだろうと考えても、全く思い浮かばない。
赤ん坊の頃は泣いてばかりで大変だったけれど……言葉を覚え始めたばかりの頃も、まだ私をママと呼んでくれて可愛かったのに。
「梨花、ちょっと……」
真っ青になった私を気遣うのか、大地が声をかけてきて、寝室へと連れ出してくれた。
後ろからは、美和と美優の楽し気な会話が聞こえ、私は目に涙を浮かべた。
「大地……あの……」
呆れられるのか、それとも怒られるのか……。
私は大地がどんな反応を返してくるのか怖いという気持ちもある。けれど、このまま一人で押し込むのも辛いと思い、相談しようと口を開いた。
「ごめん! 梨花!」
私の言葉を遮るように、大地は私の方へと向くと、顔の前で手を合わせて謝って来た。
「家に入れるお金、半分になる!」
「……は!?」
「いや、ホント会社の方がしんどくて……あと、俺も泊り込んだり何だりで自分の食事代とか確保したい」
まさかの言葉に、私は驚いて二の句が継げなくなった。
今でさえいっぱいいっぱいなのに……それが半分になる……?
「そんな! 美優の学費もあるし、生活できないよ!」
「もう義務教育は終わりだろ? そこらへんの事は梨花が何とかやりくりするなり、美優と話し合ってくれよ」
「さっきのやり取り見てなかったの?」
言いたい事は沢山あるけれど、言葉が出てこない代わりに涙が溢れて、次から次へと零れ落ちてくる。
それを見た大地は面倒くさそうに眉根を寄せた。
「……母親だろ。美優は俺に対しては普通だし。何かやらかしたんだろ? 自分で何とかしろよ」
「……」
そうかもしれない。けれど心当たりなんてない。
もはや話し合う事すらも拒否されており、打つ手なんてないというのに。
「とりあえず、決定事項だから」
それだけ言うと大地は私を置いて寝室から出て行った。
リビングからは三人の笑い声が聞こえる。
「なん……で」
私はそのまま力なく、寝室の床に座り込んで涙を流し続けた。
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