64 / 122
64
しおりを挟む
「ぜっっっったいに連絡を入れるように」
「……はい」
そんな事をしたところで無駄だったと気が付いたのは夕方だ。
迎えの連絡がないからと隼人から連絡が来た時、私はしまったと思い、うまく言い訳も出来ずに全て自白をさせられた。
そして……今だ。
大学の前に着き、しっかり念を押されている。
「悪いとか申し訳ないなんて考えず、ちゃんと報告するように!」
「……はい……」
「それが出来ないのであれば、いっそ辞めてほしい……」
「それは……っ!」
苦しそうな表情で言う隼人に、私は言葉を失った。
とてつもなく心配している中で、私の希望を叶えてくれている為に大学へ行かせてもらっているのだ。
なのに現状はどうだ。
毎日のように逃げ帰ってきている。
授業もマトモに受けていないというのだから、そう言われても仕方がないからこそ、私は何も返せない。
「……今日はちゃんと着替えを持ってきてるから……」
最後のチャンスを欲しいと訴えるように、私は隼人に対して真剣な表情を向けた。
心を折られる気はない。
きちんと親孝行をしたいのだ。
今度こそ、自分の人生ちゃんと自分の足で歩きたい。
「……俺が大学の中で守れれば……」
そう言って、隼人は顔をあげた。
そこまで思ってくれているというのに、私は自分の事ばかりな気がする。
以前の事を思えば、正反対だろう。
大地と美和のご機嫌ばかりうかがって、二人の意見ばかり汲んで……自分の事などお構いなしだった。
「頑なすぎると思うかもしれないけど……出来る所まで戦いたい。無理なら……頼らせて欲しい」
「……分かった。そう言われたら断れないよ」
最後まで戦い抜きたい。
でも、どうしても無理だったらと、逃げる場所まで用意してもらえている。
それだけで十分ではないか。
隼人は優しく私の頭を撫でて、ギュッと抱きしめてくれた。
それだけで、私は大学という名の戦場へと旅立てるのだから。
(今日は何もないな)
周囲の人は遠巻きで私を眺め、ヒソヒソと何か囁き合っているだけで、誰も私には近づいてこない。
無事に構内へと入る事が出来たし、もうすぐ教室へも到達する。
(気を緩めない方が良いわよね)
私は着替えが入っている大き目な鞄をギュっと握り締め、一歩一歩、しっかりとした足取りで階段をのぼる。
相変わらず、くすくすと嘲笑う声がどこからともなく聞こえてくるだけだ。
上から水が落ちてきたりもせず、階段を登りきる辺りでふっと息を吐いた瞬間だった。
「生意気」
背後からそんな声が聞こえたかと思えば、肩からかけていた鞄の紐を思いっきり後ろに引かれて、私はバランスを崩した。
「……はい」
そんな事をしたところで無駄だったと気が付いたのは夕方だ。
迎えの連絡がないからと隼人から連絡が来た時、私はしまったと思い、うまく言い訳も出来ずに全て自白をさせられた。
そして……今だ。
大学の前に着き、しっかり念を押されている。
「悪いとか申し訳ないなんて考えず、ちゃんと報告するように!」
「……はい……」
「それが出来ないのであれば、いっそ辞めてほしい……」
「それは……っ!」
苦しそうな表情で言う隼人に、私は言葉を失った。
とてつもなく心配している中で、私の希望を叶えてくれている為に大学へ行かせてもらっているのだ。
なのに現状はどうだ。
毎日のように逃げ帰ってきている。
授業もマトモに受けていないというのだから、そう言われても仕方がないからこそ、私は何も返せない。
「……今日はちゃんと着替えを持ってきてるから……」
最後のチャンスを欲しいと訴えるように、私は隼人に対して真剣な表情を向けた。
心を折られる気はない。
きちんと親孝行をしたいのだ。
今度こそ、自分の人生ちゃんと自分の足で歩きたい。
「……俺が大学の中で守れれば……」
そう言って、隼人は顔をあげた。
そこまで思ってくれているというのに、私は自分の事ばかりな気がする。
以前の事を思えば、正反対だろう。
大地と美和のご機嫌ばかりうかがって、二人の意見ばかり汲んで……自分の事などお構いなしだった。
「頑なすぎると思うかもしれないけど……出来る所まで戦いたい。無理なら……頼らせて欲しい」
「……分かった。そう言われたら断れないよ」
最後まで戦い抜きたい。
でも、どうしても無理だったらと、逃げる場所まで用意してもらえている。
それだけで十分ではないか。
隼人は優しく私の頭を撫でて、ギュッと抱きしめてくれた。
それだけで、私は大学という名の戦場へと旅立てるのだから。
(今日は何もないな)
周囲の人は遠巻きで私を眺め、ヒソヒソと何か囁き合っているだけで、誰も私には近づいてこない。
無事に構内へと入る事が出来たし、もうすぐ教室へも到達する。
(気を緩めない方が良いわよね)
私は着替えが入っている大き目な鞄をギュっと握り締め、一歩一歩、しっかりとした足取りで階段をのぼる。
相変わらず、くすくすと嘲笑う声がどこからともなく聞こえてくるだけだ。
上から水が落ちてきたりもせず、階段を登りきる辺りでふっと息を吐いた瞬間だった。
「生意気」
背後からそんな声が聞こえたかと思えば、肩からかけていた鞄の紐を思いっきり後ろに引かれて、私はバランスを崩した。
123
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
嘘つきな貴方を捨てさせていただきます
梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。
「さっさと死んでくれ」
フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。
愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。
嘘つきな貴方なんて、要らない。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
11/27HOTランキング5位ありがとうございます。
※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。
1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。
完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
【追加】アラマーのざまぁ
ジュレヌク
恋愛
幼い頃から愛を誓う人がいた。
周りも、家族も、2人が結ばれるのだと信じていた。
しかし、王命で運命は引き離され、彼女は第二王子の婚約者となる。
アラマーの死を覚悟した抗議に、王は、言った。
『一つだけ、何でも叶えよう』
彼女は、ある事を願った。
彼女は、一矢報いるために、大きな杭を打ち込んだのだ。
そして、月日が経ち、運命が再び動き出す。
もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる