【完結】全て切り捨てて自分の幸せを掴みます~都合良い駒として生きるのはやめてやる~

かずきりり

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 昨日、憔悴したような状態で帰って来た私を心配した両親は、何があったのか聞いてきた。
 けれど、私は言葉には出来なかった。
 美和と隼人が仲睦まじく一緒に居たなんて、心がまだ受け入れられていなかったのだろう。
 言葉にする事で、余計に現実味を帯びるのが怖かったから、ただ一言お願いをした。

 ――隼人との婚約を解消したい。

 二人を見て、心が張り裂けたように痛いどころか、もう感情が湧いてこないかのような……空っぽになった状態でも、どこかで隼人の幸せは願っている。
 相手が美和でなければ、そう思えばきっと受け入れられる。
 もう……忘れてしまおう。
 呆然とした両親に、一切表情が動かない私。

「考えなおしては!?」
「隼人くんは、とっても良い子で梨花の事を大事に……」
「どこが? なにが?」

 焦ったように声をかけてくる両親に対して、抑揚のない冷たい声で答える。
 私、こんな声も出せたんだと初めて知って衝撃を受けたけれど、その感情すら一切表情に現れない。否、表情が動かない。
 動かす気力もない。
 全身の筋肉が全て私の意思から離れたような……壊れた感じがする。

「梨花……」
「あなた……」

 何かを感じ取った両親は、それ以上私に何かを言う事もなく、私はフラリと自室へ足を向けた。
 疲れた。
 身体が重い。
 何かに押しつぶされそうだ。
 涙は出てこないけれど、心から色々な物が流れ出ていっているようだ。
 それこそ、私という人物を構成していた全てが消え去るような……否、凍り付いたような刺すような痛みだけは広がっている。
 心が死んでいるわけではないという事だろう。

 プルルルルルッ

 携帯が鳴り、液晶には隼人の文字が浮かび上がっている。
 隼人からの連絡で喜び弾んでいた心は、今はピクリとも動かない。
 ただ、携帯が鳴った。液晶に文字が浮かんでいる。だから着信なのだ。
 そういった機械的な思考だけが私を支配し、ただ眺めていた。
 着信に出るという考えもなければ、出る必要性も感じない。

「……これも、もう要らないか」

 むしろ携帯の必要性すら感じない。
 別に誰かと番号を交換していたわけでもなく、アドレス帳に登録されているのなんて両親と隼人くらいだ。
 そんな携帯、必要だと言えるのだろうか。
 私は罪悪感だとか後先といったものを考えず、ただ鳴り続ける携帯を手に取ると高く掲げた後、思いっきり床に叩きつけた。
 それでも鳴り続ける携帯は、とても頑丈なのだろう。

「……うるさい」

 冷静に、だけれどどこか衝動的に、私は携帯を持って自室を出て洗面所へ行くと、そのまま水へと沈めたのだ。
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