93 / 122
93
しおりを挟む
「りか! りか! こっち!」
遠くで誰かが呼んでいる。
薄っすらとした意識の中、身体が勝手に声のする方へと走り出し、小さい手足が視界の隅に映る。
……これが、私?
「まってよー! おいてかないで!」
疑問が脳裏に過った瞬間、私はとても幼い声を出しており、これは夢なのだと瞬時に気が付いた。
「だいじょうぶ、まってるよ! みせたいものがあるんだ」
何となく見覚えのある風景。
幼い時、確かに来た事があるように思える。
丘の上に立つ小さな男の子の向こうには、確か一面の花畑が広がっていた筈だ。
「あと、もうすこしー!」
「はぁ、はぁ……」
息を切らしながら走る私は、多分幼稚園児くらいの年齢なのだろう。
やっと男の子と同じ位置、丘の上まで辿り着けば、目の前に広がるのは私の思い描いた一面の花畑。
これは、私が忘れてしまっている記憶なのだろうか。
「すごい、すごいー! とってもすごい!」
「ね、これをみせたかったんだ」
「すごいね!」
幼さすぎて語彙力に乏しい私は、ずっと凄いという言葉を興奮しながら繰り返している。
「すごい、すごいね! ありがとう! はやとおにいちゃん!」
――!?
その言葉と共に幼い私が見上げた先に居たのは、幼いながらも顔立ちの整った……紛れもなく隼人の面影を宿している男の子が優しい微笑みを携えて、私を見ていた。
あぁ……隼人。隼人だ。
直感的に、隼人で間違いないと私は思った。
顔立ち、そしてこの優しい瞳、微笑み方。
愛情たっぷりに思える隼人が私に向ける視線は、今と昔で何も変わっていないのか。
私は……確かに隼人と出会っていたのか。
「りか」
「どうしたの? はやとおにいちゃん!」
徐に隼人が私に向かって片膝を付く。
その行動に幼い私は驚いて、隼人を立たせようとするのだけれど、隼人は優しく私の両手を自分の両手で包み、しっかりと視線を合わせて来た。
真剣な隼人の表情に、幼いながらも私は緊張感が走り、ドキリと心臓を高鳴らせて静かにしなきゃと口を閉じた。
「りか、おおきくなったら、けっこんしてほしい」
――!?
ドクンと、私自身の心臓が高鳴る。
隼人は、今、何を言ったのだろうかと耳を疑った。
「けっこん?」
「そう、ふうふになろう」
「ふうふ? パパとママ?」
「そうだよ、ずっといっしょにいようって、かみさまにちかうんだ」
私にわかるように、ゆっくり説明をする隼人の言葉で理解しただろう幼い私は、大きく頷いた。
「なる! ずっといっしょにいる! かみさまにちかう!」
幼い私が放った言葉で、隼人の顔は喜びと嬉しさで破顔した。
遠くで誰かが呼んでいる。
薄っすらとした意識の中、身体が勝手に声のする方へと走り出し、小さい手足が視界の隅に映る。
……これが、私?
「まってよー! おいてかないで!」
疑問が脳裏に過った瞬間、私はとても幼い声を出しており、これは夢なのだと瞬時に気が付いた。
「だいじょうぶ、まってるよ! みせたいものがあるんだ」
何となく見覚えのある風景。
幼い時、確かに来た事があるように思える。
丘の上に立つ小さな男の子の向こうには、確か一面の花畑が広がっていた筈だ。
「あと、もうすこしー!」
「はぁ、はぁ……」
息を切らしながら走る私は、多分幼稚園児くらいの年齢なのだろう。
やっと男の子と同じ位置、丘の上まで辿り着けば、目の前に広がるのは私の思い描いた一面の花畑。
これは、私が忘れてしまっている記憶なのだろうか。
「すごい、すごいー! とってもすごい!」
「ね、これをみせたかったんだ」
「すごいね!」
幼さすぎて語彙力に乏しい私は、ずっと凄いという言葉を興奮しながら繰り返している。
「すごい、すごいね! ありがとう! はやとおにいちゃん!」
――!?
その言葉と共に幼い私が見上げた先に居たのは、幼いながらも顔立ちの整った……紛れもなく隼人の面影を宿している男の子が優しい微笑みを携えて、私を見ていた。
あぁ……隼人。隼人だ。
直感的に、隼人で間違いないと私は思った。
顔立ち、そしてこの優しい瞳、微笑み方。
愛情たっぷりに思える隼人が私に向ける視線は、今と昔で何も変わっていないのか。
私は……確かに隼人と出会っていたのか。
「りか」
「どうしたの? はやとおにいちゃん!」
徐に隼人が私に向かって片膝を付く。
その行動に幼い私は驚いて、隼人を立たせようとするのだけれど、隼人は優しく私の両手を自分の両手で包み、しっかりと視線を合わせて来た。
真剣な隼人の表情に、幼いながらも私は緊張感が走り、ドキリと心臓を高鳴らせて静かにしなきゃと口を閉じた。
「りか、おおきくなったら、けっこんしてほしい」
――!?
ドクンと、私自身の心臓が高鳴る。
隼人は、今、何を言ったのだろうかと耳を疑った。
「けっこん?」
「そう、ふうふになろう」
「ふうふ? パパとママ?」
「そうだよ、ずっといっしょにいようって、かみさまにちかうんだ」
私にわかるように、ゆっくり説明をする隼人の言葉で理解しただろう幼い私は、大きく頷いた。
「なる! ずっといっしょにいる! かみさまにちかう!」
幼い私が放った言葉で、隼人の顔は喜びと嬉しさで破顔した。
120
あなたにおすすめの小説
嘘つきな貴方を捨てさせていただきます
梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。
「さっさと死んでくれ」
フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。
愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。
嘘つきな貴方なんて、要らない。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
11/27HOTランキング5位ありがとうございます。
※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。
1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。
完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
〈完結〉ここは私のお家です。出て行くのはそちらでしょう。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」マニュレット・マゴベイド男爵令嬢は、男爵家の婿である父から追い出される。
そもそも男爵の娘であった母の婿であった父は結婚後ほとんど寄りつかず、愛人のもとに行っており、マニュレットと同じ歳のアリシアという娘を儲けていた。
母の死後、屋根裏部屋に住まわされ、使用人の暮らしを余儀なくされていたマニュレット。
アリシアの社交界デビューのためのドレスの仕上げで起こった事故をきっかけに、責任を押しつけられ、ついに父親から家を追い出される。
だがそれが、この「館」を母親から受け継いだマニュレットの反逆のはじまりだった。
白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
商人であった父が、お金で貴族の身分を手に入れた。私というコマを、貴族と結婚させることによって。
でもそれは酷い結婚生活の始まりでしかなかった。悪態をつく姑。私を妻と扱わない夫。夫には離れに囲った愛人がおり、その愛人を溺愛していたため、私たちは白い結婚だった。
結婚して三年。私は流行り病である『バラ病』にかかってしまう。治療費は金貨たった一枚。しかし夫も父も私のためにお金を出すことはなかった。その価値すら、もう私にはないというように。分かっていたはずの現実が、雨と共に冷たく突き刺さる。すべてを悲観した私は橋から身を投げたが、気づくと結婚する前に戻っていた。
健康な体。そして同じ病で死んでしまった仲間もいる。一度死んだ私は、すべてを彼らから取り戻すために動き出すことを決めた。もう二度と、私の人生を他の人間になど奪われないために。
父の元を離れ計画を実行するために再び仮初の結婚を行うと、なぜか彼の愛人に接近されたり、前の人生で関わってこなかった人たちが私の周りに集まり出す。
白い結婚も毒でしかない父も、全て切り捨てた先にあるものは――
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
【追加】アラマーのざまぁ
ジュレヌク
恋愛
幼い頃から愛を誓う人がいた。
周りも、家族も、2人が結ばれるのだと信じていた。
しかし、王命で運命は引き離され、彼女は第二王子の婚約者となる。
アラマーの死を覚悟した抗議に、王は、言った。
『一つだけ、何でも叶えよう』
彼女は、ある事を願った。
彼女は、一矢報いるために、大きな杭を打ち込んだのだ。
そして、月日が経ち、運命が再び動き出す。
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる